遂に本格的な修行を開始する事になった彼女たちは、リンの案内の元再び校庭へと足を踏み入れる。……すると丁度そのタイミングで、一台の自動走行車が学校の敷地内へとやってきた。
アポ無しの急な来客に、アビドスの生徒達は警戒心を顕にし……車体に描かれたミレニアムの校章を見つけ、銃を下ろす。
──彼女たちの前で停車した車から、一名の生徒が姿を現した。
「やぁリンさん、数日ぶりだね。以前貸し出したバイクの調子はどうだい?」
「そうだな……可能なら、買い取りたいくらいって言っておこうか」
「そうか、それは良かった。……頼まれた物を持ってきたけど、ここに下ろしてしまえばいいかい?」
「あぁ、頼む」
リンの言葉に対して頷きを返した彼女──エンジニア部三年生、白石ウタハが手元の端末を操作すると、車のバックドアが開き幾つかの白柱が運び出される。
いったい、この柱が修行にどんな関係があるのか……そんな疑問を口に出す前に、ウタハからの説明が入る。
「こうして面と向かって顔を合わせるのは初めましてだね。私の名前は白石ウタハ、君たちのことはリンさんから良く聞いているよ。……まさか、かの有名なゲヘナ風紀委員長殿もいるとは思わなかったけど」
「まぁ自己紹介はこの辺にして、君たちも気になっているであろうこの柱について説明させてもらおうか」
「もしかしたら色味から勘づいている人も居るかもしれないが……この柱はビナーの装甲を解析し、強度を再現した特殊合金で出来たものだよ」
「「「………んっ?」」」
「「「………はァッ!?!?」」」
まさかの言葉に目を剥く彼女たち。……彼女はいったい何を再現したと言った?……装甲?……ビナーの!?
「いやはや、ここまで来るのに三年近く掛かってしまったよ。……一年生の時に、大金はたいてリンさんから買い取っておいて正解だったね」
「「……あっ!100万円の人!?」」
「ひゃく……いや、間違ってはいないけどね?」
思わぬ認識のされ方に苦笑いを浮かべるウタハ。100万円とはいったいどういうことかという問いをシロコたちが口にするよりも前に二回、手を打つ音が校庭に響く。
鳴らしたのは赤飛リン、修行についての説明が始まると理解した彼女たちは出かかった疑問を喉奥へと飲み込み、先輩の言葉を待つ。
「神秘操作の取得難易度については以前伝えたと思う。──その上で、劇的に習得までの期間を短縮する方法が一つだけある」
「それが、それこそが──」
──"白閃"
「さっき白閃は打撃の威力を2.5乗に引き上げるって説明したけど、実は威力の上昇はおまけみたいなものらしくてな。──白閃の本質は他にあるんだ」
彼は語る──"白閃を一度でも決めた者と、そうでない者の間には己が身を巡る神秘への理解度に雲泥の差が生まれる"、と
「まあ白閃を決めた前例は俺しか居ないらしいから皆がそうとも限らないが、神秘操作を元々行えてた俺ですら明確に"変わった"と断言出来る程の効果があったからな。……白閃を一度でも決めることが出来れば、それだけで神秘操作が出来るようになる可能性は大いにある」
「んで、白閃を経験する為に必要なものがコイツだ。……皆には普通に神秘操作を身につける為の修練を行いつつ、これを素手で壊すことを目標としてもらう。……生半可な強度のものじゃ、白閃を発生させなくても壊せちまうからな」
「──ただし、チャンスは一日につき一回だけだ」
人差し指を立てながら告げられたその言葉に、"何故"と疑問を呈するシロコたち。白閃を一度でも発生させれば良いのであれば何度も試せば良いのではないかと思う彼女たちであったが……"ビナーの装甲と同等の強度を誇る柱を何度も殴ったら痛いじゃ済まないぞ"と言われ、口を噤んだ。
「それに、仮に大丈夫だったとしても何度も打ち込めばいいってものじゃない。白閃っていうのはいわば極限の集中下において、あらゆる条件が"カチッ"と噛み合った時にのみ発生する現象だからな」
「うへ……その一回のチャンスをものに出来ないようじゃ、いざと言う時にその白閃っていう現象を発生させることも出来ない。……先輩はそう言いたいんでしょ〜?」
「あぁ、その通りだ。……そうだな、いきなりやれって言われても困るだろうし、先ずはしっかりと手本を見せるとしようか。ウタハは「こちらの準備は出来てるから、何時でも始めてくれて構わないよ」……ならいいか」
いつの間にやら自分たちの後ろで大きな機械を組み上げていたウタハに驚くイオリたちをおいて、リンは柱の前へと歩みを進める。
「柱は人数分しかないから、一発だけだ………よく見ておけよ」
──赤飛リンの身に纏う雰囲気が変わる。ピリピリと肌を突き刺すような、ピンと張り詰めた糸のような緊張感が漂う空気の中で、彼は目を伏せ──静かに開く。
"
──"白閃"
打撃と共に衝突した神秘が青白い火花を散らし、空間を歪ませ───ビナーの装甲と同等の強度を誇る柱を、容易く粉砕する。
バラバラと足元に崩れ落ちる柱を前にして、彼はきっかり五秒の残心をとり……振り返る。
「……とまあこんな感じだな、それじゃあ早速やってみようか。……全員終わった後は三手に別れて修行を行っていくからそのつもりでな」
彼の言葉に従いイオリやシロコたちだけでなく、既に神秘操作をある程度行えているユメやホシノ、ヒナもまた柱の前に立つと──一斉に、拳を柱にたたきつけた。
「「「──痛っったァ!!」」」
──当然、都合よくたった一回で白閃が発動するようなことはなく……神秘で拳を固めていた三人以外は一切の例外なく、痛みに悶えるのであった。
◇◇◇◇◇
「リン先輩、今度は何するの?」
シロコ、セリカ、そしてイオリの三名がリンの前に横並びに立つ。
尚この場にいないノノミはユメやホシノと、アヤネはミレニアムからやってきたウタハとリモート越しでもう一人の人物と共に、それぞれ少し離れたところに居た。
未だ痛みを訴えてくる手を擦りながらも、次の修行内容は何だろうかと思考を巡らせる彼女たちに対して彼は言う──"三人には神秘操作の習得と並行して、縮地を覚えてもらう"と
「縮地っていうと確か、普通に走ったりするのとは比べ物にならないほど素早く移動出来る歩法……だったよな?」
「あぁ、ざっくりと噛み砕いて言えばそんな感じだな。……以前、神秘操作はコツを掴むまでにかなり時間がかかるって伝えてたと思う」
「ん、ホシノ先輩が五ヶ月かかったって言ってた」
「そう、神秘操作は有用な技術ではあるが習得難易度が高い。──そこで神秘操作よりは難易度が低く、それでいて身につければ大幅なパワーアップが望める"縮地"を覚えてもらおうと思ってな」
「……言いたいことは分かったけど、ならノノミ先輩やアヤネちゃんは?リン先輩が二人をハブろうとしてるって事はないと思うけど……」
「もちろんそんな意図は無い。ただ単純に二人の役割の関係上、前衛を務めて駆け回る三人と違って縮地を覚えても使う機会が無いだろうからな。……ならもっと別の、自分の長所を活かすための技術を身に付けて貰った方がいいだろ?」
「……確かにそうね」
「他には無いか?……よし、それじゃあ改めて始めるとしようか」
後2、3話くらいで書き上げて別の番外編、もしくは一足早くパヴァーヌのプロローグor第1話……かなぁと考えています。
プロットはもう、出来上がったので|´-`)チラッ
当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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男
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女
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オネエ
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姉御