「──いやぁ~悪かったってば、アヤネちゃーん。ラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで?ねっ?」
怒ってしまったアヤネを宥めようと、先ずはホシノが先陣を切る……が、アヤネには"怒ってませんっ"っとそっぽを向かれ、敢え無く撃沈する。
その後もノノミがアヤネの口を拭いたり、シロコがチャーシューを食べさせてあげたりなど、あの手この手でご機嫌取りをした成果が出てきたのか、少しずつではあるがアヤネの怒りが収まっていくと、今度はカオナシへの話題へと移る。
「……それにしても、カオナシさんはどこに行ったんだろうね?」
柴関ラーメンに行こうという話になった時、カオナシは"やらないといけない事が出来たから、先に行っててくれ"と言って、一人どこかに行ってしまっていた。
ただ、カオナシが何処へ行ったのかについては先生が知っているようであったため、そこで話は終わる。……先生の目が笑っていなかったことに恐れをなしたというわけでは断じてない。
「ん、カオナシがどこに行ったのかは一旦置いておくとして」
「──まさか、カオナシさんがホシノ先輩の事を"可愛い"って言うなんて思ってもいませんでした☆」
"ホシノ先輩が可愛らしいのは周知の事実ですけど♪"──忘れようと努めていた事を掘り返されたホシノはむせ返り、ギロリとノノミを睨みつける。
「……ノノミちゃん、なぁんでわざわざ蒸し返すようなこと言うのかなぁ?」
"悪いのはこの口かー!"と、ホシノはノノミのもちもちとした頬をこねくり回す。こねくり回し始めた直後から、もちもち感に心奪われたホシノの怒りはどこかへ消えていった……が、それはそれとして堪能するのは辞めない。
"やめてくらひゃい~"と言ってはいるものの、ノノミもまた案外満更でも無さそうな表情を浮かべている。そんな二人を見ていたユメは──私も後で触らせてもらおうかなと思いつつ──ホシノの手を離させる。
「ほら、ホシノちゃん。ラーメンも伸びてきちゃうし、そろそろ辞めてあげよ?……ホシノちゃんが可愛いのは事実なんだし」
「……仕方ないなぁ、ユメ先輩がそういうなら離してあげようかなー……ん?」
ユメが最後に付け足した言葉に対して、ノノミにやったように詰め寄ろうとした時──"ガタッ、ガララッ"と店の扉が音を立てながら開かれた。
◇◇◇◇◇
"カオナシが来たのかな?"と思った彼女たちは、扉の方に視線を向け……急に多くの視線を向けられた紫色の少女──伊草ハルカは"ヒッ…!"と委縮してしまった。
……しかし、ここで引いてしまっては尊敬する社長のお役に立てないと勇気を出し彼女は訊ねる。
「あ……あのう……」
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「……こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」
「一番安いのは……580円の紫関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」
声を震わせるハルカとは反対に、セリカは溌溂とした声で質問に答える。するとその答えを聞いたハルカは、"あ、ありがとうございます!"と言って、店を出て行ってしまった。
そのことに対してセリカが疑問を抱いていると、再び"ガララッ"と扉が開き、ハルカを含めた四人の少女が入ってくる。
"ようやく600円以下のメニューが見つかった!"と喜ぶ彼女たちを席へと案内しようとするが、"どうせ一杯しかたのまないから大丈夫"と断られてしまった。
四人もいて一杯だけ…?と気になったセリカであったが、何か事情があるんだろうと思い深くは聞かず、"今は席も空いてるし、どうせならごゆっくりしていってほしい"と、席へと案内する。
「おー、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃあお言葉に甘えさせてもらうね~!……あ、我儘のついでに、箸は四膳でよろしく。優しいバイトちゃん!」
「えっ?四膳ですか?……ま、まさか一杯を四人で分け合うつもり?」
一杯を複数人で分け合うというお客様はこれまでいなかったために、つい口に出してしまったセリカに対し、ハルカは責められていると感じたのか謝罪の言葉を口にする。何とか宥めようとするも、ハルカの謝罪は止まらない。そして──
「──いいえ!お金がないのは首がないのも同じ!生きる資格なんて「そんなことないよ」──はいっ!?」
自身を卑下し続ける彼女を見かねたユメが、ハルカへと近づきながら否定の言葉を口にする。
「……確かにお金がないと、生きていくのは大変かもしれない。でも、お金がないからって生きちゃいけないなんてことは絶対にないよ。……命は、お金がいくらあっても買うことのできない大事なものだから」
ユメはハルカの目線の高さに合わせるように屈みながら告げる──"もし自分にとって大切な人が、お金がないからって命を投げ出そうとしていても同じことが言える?"と
「そ、それは……」
「……貴方は自分のことを"生きる資格がない"って言うけれど、そんなことない。誰にだって生きる権利はあるの。……少なくとも貴方と一緒にいる三人は、そう思ってるんじゃないかな?」
真剣な表情を崩し、笑みを浮かべながらハルカの後ろに立つ三人へと視線をずらす。
"自分なんて……"と思っていたハルカも、つられて後ろへ視線を向けると──ハルカを除く便利屋68の少女たちは皆、笑みを浮かべていた。
便利屋68を代表して、社長であるアルがハルカへと歩みを進める。その様を見たユメは、"もう大丈夫かな"と判断して立ち上がり、譲るように席へと戻って行った。
そんなユメに向けて、真面目な性格のアルは"ありがとうございます"と小さく礼をして、ハルカと向かい合いその目をじっと見つめる。いたたまれなくなったハルカは俯き視線をずらそうとするが、逃がさないようにアルはハルカの顔に両手を添えて前を向かせる。
「ア、アル様……?」
「……ハルカ、貴方は私たち──便利屋68の立派な一員よ。だから、欠けるようなことは許さないわ」
簡潔に、ただし伝えたいことははっきりと伝えたアルは、立ち上がるとともにハルカの頭を"ポンポン"と撫でた。
「──さぁ、せっかく店員さんが案内してくれたんだし、早く席につきましょう?」
そう言って席へと歩みを進めるアルに向けて、"二ヒヒッ"とシリアスな空気を壊すように、アルのことをからかいながらムツキは笑う。
「……なんかいいように〆たつもりかもしれないけどさー、社長の癖に社員にラーメン一杯奢れないのはどーなのさ?」
同調するように、カヨコも"金使いが荒いのは今更だけど、せめて四杯分は残しておこうよ……"と呆れながら──しかし、その顔には薄っすらと笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
「ねーねーアルちゃん、どうせならカオナシに頼んで奢ってもらったらよかったんじゃない?」
「うっ、ううううるさい!カオナシさんに奢ってもらうなんてそんなことできるわけないじゃない!?」
──気付けば、ムツキの思惑通り先ほどまでのシリアスな空気は崩れ、いつもの騒がしい便利屋68へと戻っていた。
◇◇◇◇◇
今まで、ずっと自信を卑下し続けてきた紫色の少女は、自身の胸をギュッと締め付けるような感覚に困惑する。
ただし、その感覚は決して苦しいものではなく……ぽかぽかとした、温かな気持ちになるようなものであった。
かつて、自身の崇拝する社長が己を助けてくれた時のような鮮烈な光とは違う、温かな光に困惑しつつも、彼女は自身の抱いた気持ちを告げる。
「──アル様」
「ん?どうしたのハルカ」
「私、もっとアル様のために……皆さんのために頑張ります。……だ、だから…えっと」
"これからも、よろしくお願いいたします"と、ハルカはぎこちなくも笑みを浮かべる。──便利屋68の一員として、自身を助けてくれたアル様に恥じぬよう頑張っていこうと、気持ちを新たにしながら。
なんか気付いたら後半ハルカちゃん回になってた。
……でもまぁ、既に予定している今後の展開的には問題ないからいいかな。むしろ必要ともいえる。
本作では原作のようなアル様過激派な面はそのままに、ただし発揮すべきところはほんの少し考慮しつつ、ハルカちゃんの自己肯定感を高めていきたい所存であります。
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読んでくださる皆さま方、本当にありがとうございます!
今後とも是非、『小鳥遊ホシノの先輩』をよろしくお願いいたします!
当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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