サブサブタイトル:「ハルカの想い」
──柴関ラーメンにて仲良くなった少女たちが、まさかの標的であるアビドスの生徒だったと知ったアルは今、戻ってきたオフィスの社長席に座りながら、某名探偵な電気鼠の如くしわしわとした表情で項垂れていた。
「はぁ……随分と参っちゃってるね、社長」
「あはは、仕方ないよ。アルちゃん優しいもん」
カヨコとムツキが自身の事を見ている事にも気付かぬ様子で、アルはブツブツと、"私、今からあの子たちを……"、"でも依頼を投げ出したりしたら……"、"ううぅっ……一体どうしたらっ!"と、百面相の様相で表情をコロコロと変えながら悩み続ける。
"そろそろ発破かけないとダメかな~"と、ムツキがアルへと声をかけようとした時──カヨコが何かに気付いた様子で"あれ、そう言えば……"と呟く。
「ん?どうしたのカヨコちゃん」
「いや……普段だったら真っ先に"敵を潰してきましょうか"って先走るハルカが、やけに静かだと思って」
"潰すなんて生温いもんじゃないけどね~"と、茶々を入れながら二人が揃ってハルカへと視線を向けると──そこには何か思い悩む様に俯くハルカの姿が。
普段とはかけ離れたその様相に、心配になったカヨコが"何処か具合でも悪いのか"と訊ねるが……ハルカはただ"あ…すみません……"と謝るだけであり、また俯いてしまう。
そんないつもと違う空気を感じとったのか、先程まで頭を抱え悩んでいたアルもまた、三人の方へと向かっていく。
そのままハルカの前でしゃがみ込んで、目線を合わせると、"ハルカ、何か気になる事があるなら遠慮せずに言ってちょうだい"と優しく微笑みながら語りかけた。
ハルカは、尊敬するアルに訊ねられてもなお、躊躇うかのように口を開いては閉じを繰り返し──暫くして、意を決したのかポツポツと語り始める。
「──以前、カオナシさんが仰っていたんです」
◇◇◇◇◇
【あ、あのう……】
【ん?……ハルカか、どうした?】
【じ、実はその…カオナシさんにお訊ねしたいことが……】
【……俺に?】
【はい……あっ!すみません、ご迷惑でしたよね!私なんかが話しかけてしまって!今のは忘れて──】
【いや、別にそこまで謝らなくても……ただ単に、珍しいなって思っただけだ。別に迷惑だなんて思ってない。……それで?何を聞きたいんだ?】
【えっと、その……】
……あの時は自分から話しかけておいて、いざ聞こうと思ったら吃ってしまっても、カオナシさんは嫌な顔一つせずに待ってくれてました。……なので、意を決して聞いてみたんです。
──どうしたら私も、アル様や皆さんのように、アウトローになれるのでしょうか……
【アウトローに、か……どうしてハルカはアウトローになりたいんだ?】
【……私なんかのことを救って下さったアル様に、少しでも恩返しがしたいんです。……恩返しが無理でも、せめてご迷惑をおかけすることがないように……】
【わ、私は……何をやっても失敗ばかりで、いつも皆さんに迷惑をかけてばかりなんです。……私なんかがアル様のようになれるだなんて、そんな烏滸がましいことは考えていません】
【で、でも……私が少しでもアル様たちと同じようにアウトローに近づけたなら、少しはお役に立てるんじゃないかって……そう、思ったんです】
【それで、その……ムツキ室長から、カオナシさんはアル様が憧れている凄いアウトローとお聞きして……】
【……それで俺に訊ねに来た、と】
私が頷くと、カオナシさんはガシガシと頭を掻いた後、大きくため息をつかれました。……やっぱり迷惑だったのかと謝ろうとしたんですが、どうやらそういうわけではなかったみたいで
【あいつ、変なこと吹き込みやがって……とりあえず、後でデコピンでもかましとくか】
「あぁ、なるほど。あの時は急にムツキにデコピンしだして何事かと思ったけど、そういうことだったんだ」
「あれは痛かったなぁ……うっ、思い出すだけでまた痛みが……」
「こら、まだハルカが話をしている途中なんだから、話をそらさないの」
──話が逸れてしまいそうになったところを、アル様が正してくださいました。すみませんアル様、私がもっとスムーズにお話しできていれば……いえ、今は謝るよりも先にお話すべきですよね。
「え、えっと……それでは、続きをお話いたしますね?」
【……まず初めに、一つ誤解を解いておこうか──俺は別に、アウトローってわけじゃない】
「えぇっ!?そうなの!?」
「はーい、アルちゃん静かにしようねー」
【そ、そうなんですか……?】
【あぁ、……だから、ハルカの"どうしたらアウトローになれるのか"っていう質問には答えることが難しい】
"ごめんな"──そう言ってカオナシさんは頭を下げようとされていて……まさか私が謝られることになるとは思ってもいなかったので、あの時は吃驚してしまいました。咄嗟に私も謝ろうとしたんですが、カオナシさんに手で遮られてしまい、その時は結局謝れずじまいで……あ、すみません、話をもとに戻しますね。
【──ただ、まぁ……"これをやったら、アウトローにはなれない"っていうのでよければ、教えることはできるが……】
【──っほ、本当ですか!?……あっ!す、すみません!】
私は、少しでもアル様のお役に立てるならと、藁にも縋る気持ちでカオナシさんにお訊ねしました。……その際に、カオナシさんの腕を強く掴んでしまったのは、今でも死んでお詫びを……いえ、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
(──あれ、そう言えばあの時のカオナシさんの
【別に謝らなくてもいい。……それと、これはあくまでも俺の持論であって、必ずしも正しいってわけじゃないってことだけは前提に置いておいてくれ】
【……アウトローになれない行い、それは──】
◇◇◇◇◇
「──"受けた恩を、仇で返すこと"と、仰られていました」
「恩を、仇で……」
「はい。カオナシさん曰く──恩を仇で返すような奴は、アウトローではなくただの人でなしだと。……友達や家族、大切な仲間のためにせざるを得ない場合はその限りではないとも仰られていましたが……」
ハルカの言葉を聞き──アルも、ムツキも、カヨコも……三人とも、押し黙ってしまっていた。
「私は、あの日アル様が手を差し伸べてくださったのが、助けてくださったのが凄く嬉しかったんです。……だから、アル様の邪魔をする奴らは、どんな手を使ってでも排除してやろうと思ってます。……それだけでは、あの日のご恩をお返しすることなんてできませんが」
「……でも、あの人たちは、こんな私にも優しくしてくださって……こんな私でも生きていいんだって言ってくださったんです。その後に、アル様が私のことを"立派な便利屋の一員だ"って、"欠けちゃいけない"って言って下さったのが嬉しくてっ……なんだか、胸のあたりがポカポカしてきて……!」
気付けば……ハルカは両の瞳から、ボロボロと涙を流していた。矛盾した想いに押しつぶされそうになりながら、それでもなお……内気で卑屈であった少女は、たとえ嗚咽まじりの声であっても、その胸の内を吐露する。
「わ、私はっ……アル様の邪魔をする奴らを、排除しないといけないのに──」
──あの優しい人たちを、傷つけたくないって思ってしまったんです……!
「ごめんなさい、アル様……!わた、わたし──っ!?」
涙を流しながら謝ろうとするハルカを、アルとムツキが抱きしめる。カヨコもまた、抱きしめこそしないものの、その手に持ったハンカチでハルカの涙を拭きとった。
「──話してくれてありがとう、ハルカ。……私がなりたいのは、自由でハードボイルドなアウトローであって、人でなしなんかじゃない」
"貴方のおかげで、道を踏み外さないですんだわ"と、アルはハルカに微笑みかける。ムツキやカヨコもまた、内向的であった彼女が自身の胸の内を吐露できるようになったことに──自身の意思を持って、悩むことができるようになったことを、嬉しく思っていた。
◇◇◇◇◇
暫くしてハルカの涙が止まったのを確認すると、ムツキは改めて、"依頼はどうするのか"とアルに訊ねる。
「──ここの社長はアルちゃんだし、なんだかんだ言っても最後に決めるのはアルちゃんだよ」
「そうだね。……私は、社長がどんな判断をしたとしても、それに従うよ」
「わ、私も……アル様がお決めになられたことであれば……」
三人の視線が一点に集中する。その視線を向けられたアルは、"そうね"と思案気に呟くが──既に彼女の中では、結論は出ていた。
「──カオナシさんに連絡しましょうか」
アルは、今回の依頼のことをカオナシに伝えることを決断する。アルの言葉を聞いた三人が頷いたのを確認した彼女は、事務所に備え付けられた電話の受話器を取り、ダイヤルを回していく。
プルルルル……ガチャ
『──こちら、便利屋『カオナシ』』
「──便利屋68、陸八魔アルよ。カオナシさん、貴方に伝えたいことがあるの」
◇◇◇◇◇
──とある建物内、己が権力を誇示する様に飾り付けられた一室にて
「──ふむ、便利屋は相当数の傭兵を雇ったようだな」
"これだけの戦力差があれば、問題なくアビドスを掌握出来るだろう"──そう言って、とあるオートマタはほくそ笑んでいた。
アビドスを狙う魔の手は、未だ気付くことはない──自身の用意した駒が、既に己へと反旗を翻していることに
本作のハルカちゃんは多少マイルドにはなりましたが、原作通りアルを侮辱するような輩は問答無用で爆破します。
ついつい先走って行動してしまう部分も普通に残っています。
……君が一番アウトローしてるよとは言ってはいけない。
……ただ本作では、いわば原作先生がいた枠に、アルほどではないけど柴大将とアビドスの生徒、特に気付く切っ掛けをくれたユメと、カオナシもいるって感じです。
当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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男
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女
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オネエ
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姉御