VS便利屋では、ユメとホシノに焦点を当てて書き進めていこうと思ってます。
──先生がアヤネから緊急事態を告げる連絡を受け取った数刻後。校庭に集まった先生たちは、学校へと進軍してくる敵手の確認を行っていた。
「──アヤネちゃん、相手の姿は見える?」
「まさか、またヘルメット団?」
先生とシロコの問い掛けに対し、アヤネは"いえ、違います!"と答える。ドローンを用いて確認を行っていた彼女は、相手の姿を捉え目を見開く。
「あれは……ッ!傭兵です!恐らく日雇いの傭兵かと思われます!」
「へぇ、傭兵かぁ……結構高いはずだけどね」
「先生、交戦命令を──ッ!?」
"お願いします!"──その言葉は、最後まで続くことは無かった。"どうしたの?"という先生の問いかけに対し、アヤネはボソリと呟く。
「……ドローンが、撃ち落とされました」
アヤネ曰く、撃ち落とされづらい様にかなりの距離をとって、なおかつ常時移動させていたのにも関わらず、一瞬にして反応がロストしたとの事。
「……なるほど、相手には結構な腕前のスナイパーが居るみたいだね」
(カオナシから聞いた情報から判断すると、多分撃ち落としたのは便利屋68の社長"陸八魔アル"って娘の仕業かな……)
"容赦ないなぁ……"と、交戦前にこちらの手を一つ奪われたと言う事実に、先生は苦笑する。
……もし彼女達がこちらの協力者だと知らなければ、先生は対策委員会の皆と同じように、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたことだろう。
しかし、先生は即座に意識を戦闘へと切り替えて指示を出していく。
「……皆、戦闘準備。フォーメーションはいつも通り、ユメちゃんとホシノちゃんが前衛で相手を引き付けて、シロコちゃんとセリカちゃんが中衛で前の二人を援護、ノノミちゃんは四人が相手を誘導して、一塊になった所を一網打尽にして」
"ただし、相手はヘルメット団と違って戦い慣れた傭兵だから、私の合図を待たずに臨機応変に対応してね"という先生の言葉に、指示を受けた五人は頷く。
「アヤネちゃん、まだドローンはある?」
「はい、送られてきていた物資の中には偶にドローンも含まれていたので、数にはまだ余裕があります」
アヤネから告げられた内容に、先生はチラリとカオナシの方へと視線を向ける。
(……まさか、ドローンまで支援してたなんて)
視線の先のカオナシは、先生が自身を見ていることに気付いていないのか、それとも気付いてなお知らないフリをしているのか、我関せずといった様子で銃の調整を行っていた。
「──先生、どうされましたか?」
「……ううん、何でもないよ」
"それじゃあアヤネちゃんも、いつも通り皆の支援お願いね"と、先生は指示を出すと、アヤネは"了解しました!"と返事をして後方へと下がって行った。
「カオナシは──」
『後方支援、だろ?……相手にはスナイパーが居るからな、牽制は必要だろう……だが』
──悪いが、アル達がよっぽど油断してない限りは基本的に傭兵しか狙わないからな
「……」
"どうして"とは、問わない。既に理由はカオナシから聞いている……しかし、アビドスとは無関係な彼女たちを巻き込まなければならない事に対して先生は、理解はしても、やはり罪悪感を抱く事を辞められない。
『先生……気にするなとは言わないが、これはアルたち自身が納得した上で決めた事だ』
"だから今は、アイツらの指示に集中しろ"と、カオナシに叱咤された先生は、意識を切り替えるように目を瞑り、深く深く息を吐く。
「──ごめんね、もう大丈夫」
閉じた瞼を開き、己を見つめる先生の表情を確認し、問題ないと判断したカオナシもまたひとつ頷きを返すと、自身の持ち場に着いた。
◇◇◇◇◇
「前方に傭兵を率いている集団を確認!」
アヤネから報告を受けた対策委員会の少女たちは、敵手の正体を視界に収めようと目を凝らす。
「あれ……ラーメン屋さんの……?」
「誰かと思えばあんた達だったのね!!ラーメンも無料で特盛にしてあげたってのに……この恩知らず!!」
自分たちに困惑や怒りの込められた目を向けられたアルは、今から行うのが襲撃のフリだと分かっていてもなお、良心が苛まれていた。
(うぅ……いくら自分で決めた事とはいえ、やっぱり彼女たちを攻撃しなくちゃいけないのは心が痛むわね……)
「あははは、その件はありがとっ♪……でも、それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ~」
「残念だけど、公私は区別しないとね。受けた仕事はきっちりこなす」
((……まぁ、既に元の依頼主は裏切ってるんだけど))
二人もまたアル同様罪悪感を抱いてはいるが、当初の予定とは違って今回の襲撃はあくまでもフリだということで、比較的気楽な気持ちではあった。先ほどから黙り込んでいるものの、ハルカもまた、今はただアル様のお役に立てるようにできる限りのことをやろうと意識を改めていた。
「さてと、それじゃあお互い準備もできているみたいだし──」
アルは不敵に笑い銃口を突き付ける。銃口を向けられた彼女たちもまた、己が手に持つ銃を握りしめ、即座に戦闘を開始できるように意識を切り替える。
「──始めましょうか」
今ここに、開戦の火蓋が切って落とされた。
◇◇◇◇◇
(──なんて、かっこつけたはいいものの……)
「流石にちょっと強すぎないかしらぁ!?」
戦闘が始まってしばらくして、アルの絶叫が辺りに響き渡る。……警戒していなかったわけではない、カオナシからホシノが
……しかし、その策のすべてが真正面からねじ伏せられる。
数の利を生かして囲み物量で叩こうとしても、すぐさま包囲網に風穴をあけられ脱せられる。
孤立させようとも、必ず誰かしらがフォローに入るため、ツーマンセルを崩せない。
盾で防ぎきれないはずの広範囲の爆撃は、何故か殆どダメージが通らない。
極めつけには、離れた位置から狙う相手へと一瞬で距離を詰める移動速度。
……しかしこれについては、他の生徒を狙おうとした時にのみ時折見せるだけ、且つ、
連発出来ないのか、それとも何か条件があるのか……何はともあれ、一瞬で懐に入られ至近距離で高火力を叩き込まれると言うのは脅威という他ない。
……カオナシの言っていたことは、決して誇張表現ではなかった。ベクトルこそ違えど、彼女は間違いなく──キヴォトス最強格の一角であった。
そんな彼女が、空崎ヒナとは違って他の生徒と常に──特にユメと──連携を取りながら戦っているのだ。単騎でさえ崩しがたいのにも関わらず、万全なサポート体制が引かれているホシノは、ある種ヒナ以上の厄介さを備えていた。
(……いや、確かにカオナシの言っていた通り、小鳥遊ホシノは間違いなく強い。……でも、彼女が万全な状態で戦えているのは──)
カヨコの視線の先には、今も尚ホシノの隣に立つ、お揃いの盾を手に持つ水色の髪の女性──梔子ユメ。
使用武器や神秘総量の関係上、火力面こそホシノには遠く及ばないものの、防御面についてはホシノに勝るとも劣らない───否、乱戦においてはユメの方が厄介であった。
ホシノは己自身の耐久力に任せて正面から受け止めるのに対し、ユメは迫りくる銃弾を受け流すように防ぐ。受け流された銃弾は、周囲にいる傭兵へと吸い込まれるように向かっていき同士討ちを誘うため、彼女の周りにいる傭兵は攻撃を躊躇ってしまっていたのも、ホシノが伸び伸びと戦える要因の一つであった。
……中には同士討ちを恐れてあえて接近戦を選ぶ者もいたが、銃弾を的確に弾く彼女に──キヴォトスという銃社会に置いて、所持する能力の仕様上仕方ないとはいえ近接格闘を主とする変態じみた戦い方をしていた幼馴染がいる彼女に、付け焼き刃の近接格闘術など通用するはずもない。
霞を掴むことなど出来ないように、全ての攻撃はいなされ──生じた隙をユメ本人、もしくはホシノやカオナシの狙撃による返しの一撃で意識を落とされる……その繰り返しであった。
◇◇◇◇◇
「……どうする?このままじゃジリ貧だよ?」
「わかってる……どうにかして、あの二人を引き離さないと……」
カヨコは戦場を見据えながら、今も尚互いに降りかかる火の粉を振り払い、襲い来る傭兵を蹴散らしているユメとホシノを引き離すための作戦を思案する。
(うちのメンバーの中で、一番爆発力があるのはハルカだけど……出来れば小鳥遊ホシノが一人になった時にぶつけたい。……でも、傭兵程度の実力じゃ孤立させれない)
(……と言うより、カオナシ含む他の生徒たちに邪魔されてまともに分断できない)
「唯一分断する方法があるとしたら……」
"私達が直接やり合うしかない"──その結論に至り、カヨコはため息をつく。
(……多分、カオナシが私達はなるべく狙わないって事前に伝えてたのは、こうして私達が直接戦わざるを得ない状況を作り出すため。……私たち自身のレベルアップのためにも、傭兵を使っての逃げは許さないって事なんだろうね)
再びため息をつきながら、カヨコは思案する。自分たち便利屋68のメンバーが対処に当たるとして、問題は誰をぶつけるか……
「──選択肢は、あってないようなものか」
カヨコはすぐさま無線を繋ぎ、指示を出す。……当然この間も動きは止めない。乱戦の中動きを止めれば油断していると判断され、カオナシに狙われるから。
「みんな、あの二人を分断するから力を貸してほしい」
◇◇◇◇◇
──便利屋側に、動きがあった。
警戒するアビドスの生徒たち──前衛のユメとホシノに向け、一発の銃弾が撃ち込まれる。……しかし、その軌道はどちらにも当たらない、二人の間を縫うような一撃であった。
訝しむユメとホシノ……突如として、二人の直感が大音量で警鐘を鳴らす。
咄嗟に二人は盾を構え──衝撃。足元から捲り上げるような爆発に踏ん張りが効かず、互いの距離が離れていく。
「「──ッ!?」」
殺気もなく、掠りもしない軌道だったために油断していた。
(まさか、狙撃銃の銃弾が爆発するなんてっ……!)
「ユメ先輩ッ!!」
未だ宙に浮き上がったままのホシノは、爆煙に隔たれ姿が見えなくなったユメへと大きな声で呼びかける。
……別に、この程度でユメ先輩が傷付くだなんて微塵も思っていない──普段は抜けていて頼りないように見える先輩でも、いざという時は凄く頼りになるということを彼女は知っていた。
それはそれとして、先輩の安否は気になるから声はかける。爆発する銃弾という、特殊な手札を切ってまで二人を引き離そうとしたのなら、この程度で終わるはずが無いのだから。
そんな考えを肯定するかのように、爆煙を切り裂いてホシノへと迫る小さな影が一つ──便利屋68の小さき
「アル様たちの邪魔はさせませんッ!」
「……うへぇ、おじさんを一人で止めようって?──やれるもんならやってみなよ」
危なげなく着地したホシノもまた、盾を構えて駆けてゆく──
◇◇◇◇◇
──時は少し遡り、ユメとホシノが爆発に呑まれた直後、便利屋68は無線を繋いでいた。
『──カヨコ、二人の距離が離れたわよ』
「ありがとう、社長……ハルカ、大変かもしれないけど、小鳥遊ホシノの足止めお願い」
『わ、わかりましたっ!』
「ムツキは他の生徒たちがこっちに来ないように、傭兵を使って妨害して」
『了解っ♪カヨコちゃんも頑張ってね!』
指示を出し終えたカヨコは通信を切ると、自身の標的を見やる。視線の先には──柴関ラーメンで会ったときのような優しく包み込むような雰囲気は鳴りを潜め、ただただ静かに、カヨコを見据えるユメの姿
見た目とは裏腹に、静かに燃ゆるその瞳は──まるで、死の淵から生還した歴戦の戦士のようであった。
「随分と余裕そうだね。……後輩のことは心配じゃないの?」
少しでも冷静さを奪おうとカヨコはユメを挑発するが、ユメは意に介さない。
「うーん、別に心配してないわけじゃないけど──」
──ホシノちゃんが負けるとは微塵も思ってないからね
「……ただ、目を離すと一人で突っ走っていっちゃいそうだから、早くホシノちゃんのところに戻らさせてもらうね」
ユメは苦笑いを浮かべながら、構える。そんな彼女を、カヨコは鋭い目つきで睨みつける。
「私程度余裕って?いってくれるじゃん」
「……えぇっ!?それは誤解だよ!?別にそんな風に思ってなんか──」
……先ほどまでの凛とした雰囲気はどこへやら。急にわたわたと慌てだすユメに、カヨコは気が抜けそうになってしまうのをため息を吐いて誤魔化した。
「ハルカのこととか、あんた達には感謝してる。……悪いとは思うけど、これも仕事だから」
「……うん、貴方たちにも譲れないものがあるんだろうね───でも、アビドスは渡さない」
「ここは、ホシノちゃん、シロコちゃん、ノノミちゃん、アヤネちゃん、セリカちゃん、先生、カオナシさん──」
──そして、リンくん
「みんなと過ごした、大切な思い出が沢山詰まった場所だから。……覚悟してね?私、守るのはすっごく得意なの」
言い終わるや否や、二人は駆け出し距離を詰めていく──
──ショットガンを手にする小柄なタンクという、ある種似た者同士の二人
──共通点と言えば、獲物がハンドガンであるということと、互いの組織の年長者であるということくらいの、似ても似つかぬ二人
未だ巻き上がる爆煙によって隔たれた二つの戦場にて、奇しくも同じタイミングで戦闘が始まる。
ユメとホシノ、互いの姿は見ることは叶わない──それでも、二人の気持ちは、覚悟は同じであった。
当キヴォトスのユメパイセンには技巧派タンクになってもらいました。
ちなみにこの路線は初期から決めておりました。
……普段はゆるッとしてる優しい人が、いざという時に見せるかっこよさというギャップ、いいと思いません?いいですよね?
今のところは次話で便利屋戦は終わる想定です、次回もお楽しみに
当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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男
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女
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オネエ
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姉御