小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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前話後書きで書いていた生徒は登場──します!



ブラックマーケット②

 徹底的に打ちのめされた不良たちは、撤退していく。また増援を呼びに行くつもりかと、アビドス組は追撃しようとするが──それに待ったをかける人物が二人。

 

 カオナシとヒフミに止められたホシノ達は足を止めて振り返ると、"何故これ以上戦ってはいけないのか?"と訊ねる。

 

「だ、だって……ブラックマーケットで騒ぎを起こしたら、ここを管理している治安機関に見つかってしまうかもしれません!」

 

「あうう……そうなってしまったら、本当に大ごとです……。まずはこの場から離れた方が……」

 

『……ヒフミの言う通り、俺たちの目的はあくまでも探し物を見つけることだ。不良どもを撃退するくらいはいいが、不用意に追いかけて無用な騒ぎを起こす必要はないからな』

 

 自分たちよりもブラックマーケットのことに詳しいであろう二人の言葉にホシノ達は納得すると、この場を離脱することに決めた。

 

 ◇

 

「……ここまで来れば大丈夫でしょう」

 

 面倒ごとにこれ以上巻き込まれないようにと、しばらく走り続けた*1カオナシたちは、ヒフミの言葉に足を止める。

 

 ……便利屋であるカオナシと違い、トリニティ総合学園というお嬢様学校に通う彼女が何故ここまでブラックマーケットに詳しいのか──疑問を抱いた彼女らは、ヒフミへと問いかける。

 

 

 問われた彼女曰く──危険な場所であるため、事前調査をしっかりしていたらしい。

 

 その調査した内容を教えてもらうと──ここは連邦生徒会の手が及ばない場所のひとつであり、規模も学園数個分に匹敵するため、決して無視はできない場所である。

 

 また、ここでは様々な"企業"が違法な事柄を巡って利権争いをしており、果てにはここ専用の金融機関や、先ほど話題に上がっていた治安機関もあり……特に、治安機関(マーケットガード)は、とにかく避けるべきであるとのことであった。

 

「……なので騒ぎを起こしたら、今回みたいにまずは身を潜めるべきなんです」

 

 

 神妙な顔つきで語るヒフミは、ともすればカオナシ以上にブラックマーケットについて詳しいかもしれない。

 

 ──故に迷う、ここで彼女に協力を仰ぐか、それともカオナシに案内を続けてもらうか。

 

 

 調査のためとはいえ、今日みたいにアビドスから離れる様な日が頻繁に続くようなことになれば、依頼主側から襲撃日まで指定されてしまうかもしれない。

 もしそうなれば、いくら便利屋68がこちらの味方となったとはいえ、依頼主に強制されれば例え演技であってもアビドスを襲撃する必要がある。

 

 ……その際に、アビドスに生徒がいなかったのにも関わらず、占拠できませんでしたなど誤魔化せるほど、依頼主もバカではないだろう。

 

 故にこそ、可能であれば今日中に証拠を手に入れる必要がある。その為には……

 

 

「よし、決めたー」

 

「……?」

 

「助けてあげたお礼に、私たちの探し物が手に入るまで一緒に行動してもらうねー♪」

 

 

 ──ヒフミに案内を頼むべきである。あくまでも探し物を手伝ってもらうだけ、別に危険なことに巻き込むつもりは……今のところはないから大丈夫だろうとホシノは判断した。

 

 初めのうちは慌てふためく彼女であったが、流石は善良(?)な一生徒であるヒフミ。自分では役に立てるかどうかはわからないが、助けてもらった礼を返すためにと案内役を引き受けてくれた。

 

「よーし。それじゃあ、ちょっとだけ同行頼むね~」

 

 

 ホシノの音頭と共に、改めて襲撃犯の証拠集めを行おうと調査に赴こうと歩みを進める彼女たち

 

 

 

 

 

 

 

 ──その背後から迫る一つの影

 

 影は武器を構え、音を立てることなく襲い掛かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギィンッ!!

 

 

「──ッ!?」

 

 背後から響く金属同士がぶつかったような音に、すわ何事かと先生たちは振り返る。視線の先には──ガスマスクをつけた女生徒が振り下ろした銃身を、いつの間にかその手に持っていた金属棒を背に構えて防ぐカオナシの姿が目に映る。

 

 女生徒は防がれたとみるや即座に距離を取り、対策委員会のメンバーは新たな襲撃犯がやってきたのかと臨戦態勢に入った。

 

 身のこなしからして、先ほどの不良どもとは比べ物にならないほどの手練れである。警戒しつつも、数の利を生かして迎え撃とうとし──行く手を遮るように差し出された金属棒に足を止める。

 

『……全員止まれ』

 

「な、何言ってるのカオナシさん!?」

 

 まさか、また一人で何とかしようとするつもりなんじゃないかとユメが苦言を呈そうとした時……同タイミングで、ヒフミから告げられた──"あの制服、改造されてはいるものの私と同じトリニティの制服です!"という言葉。

 

 推定トリニティの学生である目の前に立つ怪しげな女生徒に、怪訝な目を向ける先生たちであったが──襲撃してきた女生徒は、まるで"これ以上は争うつもりはない"とでも言いたげに、銃口を下した。

 

「……久しぶり、カオナシ。結構今回は自信があったんだけど、防がれるとは思わなかった」

 

 "流石だね"と頷く彼女の様子から、どうやらカオナシと知り合いらしい。カオナシは女生徒へと近づくと……ズビシッと手刀を振り下ろした。

 

『滅多矢鱈と襲い掛かってくんなっていつも言ってるだろうが』

 

「あうっ」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「私の勘違いだったのか、ごめん……」

 

 カオナシたちに向けて頭を下げて謝る、未だガスマスクをつけたままの女生徒。どうやら彼女は、自校の生徒が不良に追われているという話を耳にして探していたところ、丁度良く見つけたホシノ達とヒフミの姿を見つけ、助け出そうと襲撃を仕掛けたらしい。

 

 先ほどカオナシに対して"久しぶり"と声をかける際に間が開いたのは、カオナシを目にしてもしや誘拐犯ではないのかと思ったものの、素直に勘違いしたというのが恥ずかしくて誤魔化そうとしたとのことであった。

 

 

 

「……そういえば、自己紹介がまだだった」

 

「私は白洲アズサ。最近、トリニティ総合学園に転校したばかり。カオナシとは、転校する際に必要な準備とか、その他諸々を手伝ってもらう際に知り合った」

 

(──本当は、もっと前に会ってるけど)

 

 ガスマスクを外しながら自己紹介をする女生徒改め、アズサ。

 

 転校手続きを手伝ってもらったということであれば、便利屋であるカオナシと顔見知りであっても不自然ではない。

 

「えっと……アズサちゃんはどうしてブラックマーケットに……?」

 

 自分で言うのもなんだが、トリニティの生徒は滅多なことでは立ち寄ろうとしないブラックマーケットに、何が目的で訪れたのか……もしかして彼女も何か探し物があるのかというヒフミの問いに、アズサは首肯する。

 

 お嬢様学校に通う彼女がいったい何を求めて──もしや彼女もモモフレンズのグッズを……?そう予想していた先生たちに向けて告げられたアズサの探し物に、先生たちは困惑した。

 

「うん?何って──手榴弾とか、催涙弾とか、ワイヤー……トラップの作成で使えそうなものを買いに」

 

 それ以外態々このようなところに来る理由はないだろうと言いたげに首をかしげるアズサ。

 

 まぁ確かに、通常の手段では手に入らないようなものを入手するため以外でこんなところに来るはずもない。しかし、直前に出会っていたヒフミの探し物は一応可愛らしい(?)ものであったがために、先生たちは苦笑いを浮かべるしかできなかった。

 

 ……この中で唯一彼女と知り合いであるカオナシは、"またか……"と呆れ、ため息をついていた。

 

 

 

「……ただ、思ったよりもいいものはなかったけど」

 

 "これなら、いつも通りトリニティで購入するか、カオナシに頼んだ方が良かった"──先生たちを置いて、そうぼやくアズサであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

『──二手に分かれよう』

 

 アズサの自己紹介が終わってから程なくして、カオナシは徐にそう提案をした。

 

 カオナシ曰く、これだけの大所帯で行動しても悪目立ちをするし、せっかくブラックマーケットのことを知っている人物が複数人いるのだから、別行動をした方が互いの目当てのものを見つけやすいだろうとのこと。

 

 その案に納得した彼女らは、早速組み分けを決めることにした。

 

 

「……なんかしれっとアズサちゃんも巻き込んじゃう雰囲気だけど、大丈夫?」

 

 "いまなら断ってもいいんだよ"と気に掛ける先生に対し、アズサは"問題ない、勘違いで襲い掛かってしまったお詫びみたいなものだから"と、特に気にした様子も見せなかった。

 

 

 ──数刻後、カオナシによって組み分けが決められた。

 

 

 ■チーム1(表からの聞き込み調査)

 ・先生

 ・梔子ユメ

 ・小鳥遊ホシノ

 ・砂狼シロコ

 ・十六夜ノノミ

 ・奥空アヤネ

 ・黒見セリカ

 ・阿慈谷ヒフミ

 

 ■チーム2(裏からの隠密調査)

 ・カオナシ

 ・白洲アズサ

 

 

「「「ちょっと待って?」」」

 

 チーム1に組み分けられた、対策委員会のメンバーから不満げな声が上がる。

 

 "あまりにも人数が偏りすぎではないか"

 "分けるにしてももうちょっと均等にするべきではないか"

 "まさかカオナシさんは、アズサちゃんとそういう関係なんですか?"

 

 そんな抗議の声に──なんか変なものが混ざっていた気がするが無視をして──カオナシとアズサは顔を見合わせた後、チーム1のメンバーに問いかける。

 

『「皆は、隠密行動できるの(か)?」』

 

「「「………無理かも(だね)」」」

 

 ──聞き込みならまだしも、また、いくら戦いなれているとは言え、隠密行動など一生徒である彼女らに経験などあるはずもなかった。

 

 唯一シロコについては適正はありそうでは──いや、どちらかと言えば事を荒立てるタイプな気がするなと、カオナシは思考の隅へと追いやった。

 

 ◇

 

「──っていうか、なんで隠密調査なんかが必要なわけ?」

 

 "態々そんな面倒で危険なことはしなくてもいいんじゃないか"──そんな疑問を抱いたセリカに対し、カオナシは理由を説明する。

 

『偶々、黒幕の正体だけは知ることは出来ているが……そいつが黒幕であると言う証拠については巧妙に隠されてる』

 

『だからこそ、場合によっては潜入調査をする必要がある。もしそうなれば、潜入になれた少数精鋭でないと却って危険が及ぶからな』

 

 "ただ、意外と表側からの調査というのも馬鹿にならないから、皆にはそっちをお願いしたい"──と頼み込むカオナシに、チーム1に振り分けられた彼女たちは不承不承ではあるが了承した。

 

 

 

 ──その後はいくつか注意事項等を改めて確認し、カオナシたちは二手に分かれて調査を再開したのであった。

*1
先生はシロコが背負っていた





というわけで、まさかのアズサちゃんがここで登場。
今はまだ補習授業部は出来ていないので、ヒフミとアズサは初対面です。

……読者様方は誰を予想はしてました?合ってましたか?
是非感想に書き込んで行ってくださいね。
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