小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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先日、日間ランキング最高順位を更新し、7位になりました!
読者様方、いつもありがとうございます!今後とも是非当小説をよろしくお願いします!

それでは本編へどうぞ!



いってらっしゃい

「落ち着いたか?」

 

「うん……ごめんね?なんと言うか……すっごくびちゃびちゃになっちゃったね」

 

「いや、まぁ…うん。……俺にも原因があるし」

 

 ユメに抱き締められてから十数分の間、溢れる涙を受け止め続けたリンの便利屋としての仕事服は、見るも無惨な程にぐちゃぐちゃになっていた。

 

 苦笑いを浮かべ誤魔化すが、流石にこの格好のままという訳にもいかない。

 

 自分の格好は勿論だが、それ以上に泣き腫らしたユメの顔を見られるとまずい……まず間違いなく、ホシノは激怒する。

 

 ……自分だって、事情を知らない状態でユメが泣いているのを目にしたら間違いなく仕立人を〆るのだから。

 

 激怒したホシノに襲われた結果バレるとかシャレにならない、ただ自分が怒られるだけなら良いが……万が一正体に気付いたホシノが自分自身を責めるような事になってしまったらと考えると……。

 

 うんうんと頭を悩ませているリンであったが、そんな彼の心情を無視するようにユメは腕を掴んで立ち上がらせると──そのまま腕を引いて、生徒会室から飛び出していこうとする。

 

「リンくんっ!早くホシノちゃんのところに行こっ!」

 

「いやちょっと待っ……力強いなっ!?」

 

 必死に耐えるが、想定以上に強い力でズルズルと引き摺られる。……先程抑え込まれた時といい、何でこんなにも力が強くなってるんだと内心疑問に思っていると……自信満々な笑みを浮かべながらユメが振り返る。

 

「もしリンくんを見つけた時に逃げられないように、神秘操作で身体能力を上昇させる技術を鍛えてきたからね!」

 

「……え、今しれっと心の中読んだ?……っちょっ、ホントに待ってくれって……!」

 

 ◇

 

 "ムフー!"と言わんばかりのドヤ顔を浮かべるユメに対抗するように、リンもまた神秘操作で身体能力を向上させた状態で格闘すること数分──二人は生徒会室の中で息を荒げていた。

 

「はぁ、はぁ……もうっ!どうして抵抗するのっ!?」

 

「はぁ、ふぅ……さっきも言っただろ、俺にも正体を明かせない事情があるって……!」

 

「……むぅ…しょうもない理由だったら怒るからね」

 

 流石にここまで抵抗すれば、"何か事情があるんだろう"と息を落ち着かせながらもユメは話を聴く体勢に入る。……内心では全く納得していない彼女は、ムスッとしながら椅子に座り込んだ。

 

 取り敢えず聞いてくれると言うことに、ホッと息を吐きつつ……リンもユメと同じように椅子に座ると、理由を語りだす。

 

 

 

 

 

「って言っても、理由はそこまで複雑なものじゃなくてだな。俺の左腕についてなんだが……」

 

「っ!…左腕って言うと確か……」

 

 ユメはリンの腕へと視線をずらすと、そっと手を伸ばす。

 

 見た目は普通の腕に見えるが、触れれば嫌でも分かってしまう──人肌では決して有り得ない、金属のような硬さと冷たさに。

 

「義手、なんだよね……?」

 

 ユメの問い掛けに対してリンは頷くと、手首に嵌められた腕時計を外し──

 

 

 

 

 

 ──直後、チョーカーを外した時と同様に、腕を覆う立体映像が消え去り義手が露になる。

 

「──ッ」

 

 理解しているつもりだった。それでもやはり、身近な人の腕が無くなってしまっているというその事実に、優しい彼女は心を痛める。

 

 ……失ってしまった理由も、お互いにアビドスを想うが故のすれ違いが原因であるということも、彼女の傷心に拍車をかけていた。

 

 

「見ての通り、俺の左腕はもう無い。……義手があっても、以前のように柏手を打って能力を発動することも出来ない」

 

「……じゃあ、リンくんはもうホシノちゃんに会わないつもりなの?」

 

 

 顔を顰めながらユメは訊ねる。……ホシノが会いたがっていることを知っている彼女は、もしここでリンが"会わない"と言うようであれば──彼がどれだけ抵抗しようとも、無理矢理にでも連れて行こうと決意する。

 

 

 

 ──そんな彼女の決意は直ぐに霧散する事になるのだが。

 

「ちゃんと会うに決まってるだろ。……そもそも、何時までも隠し通せるものでもないし……ただ、今はまだ準備が整ってないんだ」

 

「……準備ってなに?」

 

 首を傾げるユメの問い掛けに対して、リンは義手となった自身の左腕を指す──直後に告げられた言葉に、ユメは大きく目を見開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……実はな、左腕自体は今のところは治る見込みはないんだが──」

 

 ──"能力については、以前みたいに使えるようになる可能性があるんだ"

 

 

 

 

 

 ◇

 

「……なる、ほど?」

 

 リン曰く──自身の肉体及び神秘と同調する特殊な義手を用いれば、以前と同じように能力が使えるようになる可能性があるとのことであった。

 

 現段階ではあくまでも可能性の段階ではあるものの、能力が使えるようになれば多少なりとも自分の行いの所為でホシノが負う事になってしまった罪悪感を払拭させることが出来るかもしれない。

 

 ──故にこそ、今はまだ知らせる訳にはいかない。下手に正体を明かしたことでホシノのトラウマを刺激する訳にはいけないというのが、ギリギリまで正体を隠そうとする理由であった。

 

 これまでの説明を聞き……リンが語る理由については確かに一理あると、ユメは一先ず納得する。

 

 特殊な義手というのがどのような物かは分からないが……"そういえばリンくんは──"と思い至る。

 

「ミレニアムにツテがあるって言ってたよね?義手はそこで作ってもらってるの?」

 

 "流石キヴォトス一の技術力を誇る学校だね、そんな事も出来るんだ〜"と感心するユメであったが……冷や汗をかきながら目を逸らす幼馴染の姿を目にし、首を傾げる。

 

 

「……?どうしたの?」

 

「いや、えっとー……その話はアルたちとの打ち合わせが終わってからでもいいか?そろそろ時間が……」

 

「あ、そういえばそんな事言ってたね。……私も着いていっちゃダメかな?」

 

 

 話を逸らせたことに対して胸を撫で下ろすリンであったが、逸らした結果今度はユメから"打ち合わせに着いていきたい"と懇願される。……しかし、対策委員会と便利屋68は現在対立中ということになっているため、流石に連れて行くわけにはいかない。

 

「……いや、辞めておいた方がいいな。不用意に接触してカイザーに怪しまれるといけないし」

 

「そっか……そう、だよね……」

 

 ユメ自身も頼みを聞いてもらうのは難しいだろうと思っていたのか、思いの外あっさりと引き下がったのだが……リンの目に映る彼女は、どこか浮かない表情を浮かべていた。

 

 

「ねぇ、リンくん……」

 

「ん?」

 

「……ちゃんと、戻ってきてくれる?」

 

 

 リンの袖口を掴み、俯きながらユメは願う。……正体を隠した状態ではそれなりに長い間接してきたが、顔を合わせて話をするのは1年半ぶりであり……

 

 

 "もし、また前みたいに急に居なくなってしまったら"──そんな不安を彼女が抱いてしまうのも仕方が無い事であった。

 

 

 リンは不安を抱かせてしまうようなことをしてしまった過去の行いへの後悔と罪悪感を抱くが……それよりも先ずは不安を払拭するべきだろうと言葉を紡ぐ。

 

 

「──もちろん、ちゃんと戻ってくる。……裏切ったりしないって約束したしな」

 

「……でも、リンくんは"ずっと一緒に居る"って約束破ったからなー……」

 

「それはっ……ごめん……」

 

 

 ──拗ねるようにむくれるユメに痛いところを突かれたリンには、謝るという選択肢しか残されていなかった。

 

 "そうだよな、信じれる訳ないよな……"と沈む姿を暫く無言で見つめていたユメであったが──暫くすると、もう我慢の限界と言いたげに噴き出した。

 

 

「ふふっ……ごめん、ちょっと意地悪だったね。……大丈夫だよ、あの日のリンくんの行動は、私達の事を思ってのものだっていうのは知ってるから」

 

「……でも、もう一人で背負い込もうとしないでね?」

 

 

 ユメはそう言うと、袖口を掴んでいた手を離すと共に、小指だけ伸ばした状態で握り拳を作り差し出す。

 

 

「──ホシノちゃんともしてたし、私達も指切りしよっ!……ちゃんと言わないとダメだよ?」

 

 指切りの句を言わないといけないと告げられ、一瞬伸ばしかけた手を止めるリンであったが、ユメに無理やり絡め取られてしまう。

 

 ──僅かに残る反骨心も、キラキラと期待した目で見つめるユメを前にしてしまえば無力なものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ゆーびきーりげーんまーん、うーそついたら──」」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 色々と話が逸れ続けてしまっていたが、流石にこれ以上は本当にアルたちとの打ち合わせに間に合わなくなってしまう為、最低限の身嗜みを整えると二人は生徒会室を後にする。

 

「うーん……流石に完璧には痕消えないなぁ……」

 

『まぁ、仕方ないんじゃないか?』

 

「……むぅ…なにその反応?……元はと言えばリンくん……じゃなくて、カオナシくんのせいだよ?」

 

 ユメは"泣かされたってみんなに言っちゃってもいいの〜?"と、隣を歩くリン改めカオナシの頬をツンツンと突つきながら、からかうように笑みを浮かべる。

 

『それはほんとに辞めてくれ、ホシノ達全員を相手とか流石にきつい』

 

「えっへへ、冗談だよ冗談♪」

 

 心の底から楽しそうに、凡そ1年半ぶりの幼馴染との会話を楽しむように笑うユメの姿に、カオナシもまたつられて笑みを浮かべ──ふと気になったことを訊ねる。

 

『そういえば……さっきから気になってたんだが、呼び方変わってないか?』

 

「んー……リンくんだって分かってるのに、カオナシさんって呼ぶのはなんだか距離感あるかな〜って思って………ダメ?」

 

『……まぁ、そのくらいなら問題ないか』

 

 ◇

 

 その後も会話に花を咲かせる二人──気付けば、校舎の玄関前に立っていた。

 

『すまんが、皆にはアルたちとの打ち合わせに行ったって伝えておいてくれ』

 

「うん、まかせて!」

 

 ユメに伝言を頼むと、カオナシは打ち合わせに向かう為に校舎外へと出ようとした直後、"リンくん"と名前を呼ばれ足を止める。

 

 玄関前という、他の対策委員に聞かれそうな場所で本名で呼ばれたことに対して苦言を呈そうとし──

 

「いってらっしゃい、リンくん♪」

 

 はにかみながら告げられた言葉に、喉元まで出かかっていた苦言を飲み込むと、別の言葉を紡いだ。

 

「──あぁ、いってくる」

 

 ◇

 

「みんなお待たせー!今日カオナシくんは……って、あれ?ホシノちゃんは?」

 

 部室へと辿り着いたユメは、早速カオナシからの伝言を伝えようとするのだが……辺りを見渡せど、ホシノの姿だけが見当たらない。

 

 ……行方を訊ねてみるが誰も知らないようであり──唯一分かったのは、電話がかかって来た途端に普段見せないような鋭い雰囲気を醸し出し、行き先も告げずに何処かに行ってしまったということだけであった。

 

 

 ──モモトークを確認してみるが連絡はない。これまでずっと、何処かへ行く時は行き先を伝えるようにしていたにもかかわらず……

 

 

 一抹の不安をユメは抱く。

 

 

 "どうか危ない事はしていませんように"……そんなユメの思いも虚しく、ホシノはとある人物と一年半ぶりの会合を果たす──






ブルアカ3.5周年おめでとう!アビドス3章最っ高でした!!写真フォルダはブルアカのスクショまみれです!

臨戦ホシノちゃんかっこいい!クロコちゃん綺麗!ミカちゃんかわよ!……皆幸せになれ!!

……もちろん全員引きました。一天井以内に三人揃いましたが、初フェスだったので三天井しました|´-`)チラッ
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