※2024/11/17本文修正
「みてみてっ!ホシノちゃん!リンくん!」
教室に入ってくるなり、何かの描かれた紙を手に持って駆け寄ってくるユメ先輩
「……ん?どうした?ユメ、そんなにはしゃいで」
「手に持ってるのは……地図、ですか?まさか…」
私がそう訊ねると、ユメ先輩は"その言葉を待ってました!"と言わんばかりに満面の笑みを浮かべながら、私たちに見えるように両手で紙を広げ、見せてきた。
「そのまさかだよ!これはね~、宝の地図だよ!さっき倉庫を掃除してたら見つけたの!」
「「宝の地図……」」
「そう!お宝が見つかれば、一気に借金を減らせると思うの!もしかしたら、返済してなおプラスになるかも!そしたらそしたら──」
どんどん1人で盛り上がるユメ先輩。……そんな先輩に対して私は
「……バカなこと言ってないで、さっさと会議を始めますよ」
──白けた目を向ける。
「えぇ!?ホシノちゃん、宝の地図だよ!?金銀財宝が眠ってるかもしれないんだよ!?ホシノちゃんも喜んでくれると思ったのに……」
「うぐっ……そ、そんなこと言ってもダメですよ!今月すでに五回も同じようなこと言って全部偽物だったじゃないですか。それに、次の利息返済日まで残り一週間を切っているんです、あるかもわからないお宝を探すのに時間を割いている場合じゃないんですよ」
「それにもし仮にその地図が本物だったとしたら、過去に行われていた地質調査の時に何かしら見つかってるはずじゃないですか。そんな奇跡にすがっている暇があったら、もっと現実を見て借金返済の方法を考えてください!」
「ひぃん!そんなぁ……」
まったく、ユメ先輩は……まぁそんなところもかわゲフンゲフン
……こんなことをしている場合じゃないんですよ、今は一刻も早く借金の返済方法を考えないと。……また来年、入学してくれるかもしれない後輩たちの負担が少しでも減るようにしなければいけないというのに……。
「うぅ………あ!リ、リンくんは?リンくんはどう思う!?」
「往生際が悪いですよ、ユメ先輩。リン先輩もそう思いますよね?」
未だ諦めようとしないユメ先輩を横目に見つつ、リン先輩を味方に引き込もうとする私たちに対して、先輩は──
「ホシノ」
「──この地図、本物かもしれんぞ……!」
──至極真面目な表情をしながら、荒唐無稽なことを言い出した。
◇◇◇◇◇
「………はぁ?何を言ってるんですか、そんなことあるはずが──」
「まぁ落ち着け、これをよく見ろホシノ」
リン先輩は呆れ返る私の言葉を遮りながら、地図の一点を指さした。そこに描かれているのは──在り来りなバツ印。
「……宝の地図によくある、宝の在り処を示したバツ印ですね。それがどうしたっていうんですか」
「そこじゃない、その周りだ。この形に見覚えはないか?
形?地図ということであれば、どこか似た地形の場所があるということなのでしょうが、砂漠だらけのアビドスにこんな地形の場所は無かったはずです。
……そう思う私に反して、どうやらユメ先輩は何か思い当たる節があったようでした。
「ねぇリンくん。これってもしかして、オアシスの形かな?」
「……何言ってるんですか、ユメ先輩。今のアビドスにオアシスなんて──ん?待ってください、オアシスですか?」
"オアシス"──その言葉を聞き、とある可能性が脳裏を過ぎる。
「ホシノも気づいたみたいだな」
そう言うと、リン先輩は分厚い本を──まだアビドスの砂漠化が、そこまで進行していなかった頃の地図帳を鞄から取り出した。
「いや、なんでそんなものが鞄の中に入ってるんですか?」
「いざという時に必要かと思ってな」
──古い地図帳が必要になる
「武器として」
「……そういえば先輩もバカでしたね」
「失敬な、バカとはなんだバカとは。分厚い本を武器にして戦う、ロマンだろう」
「…えっ、ホシノちゃん?"も"ってどういうこと?私も含まれてないよね!?」
"まったく、先輩ときたら"──そんな感情を抱きながら呆れ返り、なんなら溜息をつきながら、先輩に対して告げる。
「キヴォトスは銃社会ですよ?先輩だって使ってるじゃないですか。それに、仮に接近戦になったとしても、地図帳なんて使いにくいものを武器にするより、素手のほうが先輩は強いでしょう」
(──いや、先輩の場合は寧ろ銃使わない方が強いまでありますね……)
「あれ、ホシノちゃん?もしかして聞こえてない?ホシノちゃーん?」
「む……確かに、そう考えたらなんかだんだん腹立ってきたな、無駄に分厚くて重いし」
「なんで気づかないんですか……」
「リンくんもなの!?無視しないで~!」
この先輩、ユメ先輩ほどじゃないけど割と抜けてるんですよね……
「って、そんなことはどうでもいいんですよ。このタイミングでそれを取り出したってことは、載ってるんですか?」
「あぁ、この地図帳を見る限りだと、ここから南西方面に約60km先に、ユメが持ってきた地図と一致する形のオアシスが存在していたみたいなんだ。…その周辺にも、地図に描かれている形と類似する地形がいくつかあるから、間違いないと思うぞ」
先輩から説明を受ける度に、次第に"お宝"の存在が現実味を帯びてくる。……いやしかし、過去の地質調査の記録では何も無かったはず──
「それと、さっきホシノは地質調査の件について話してたけど、この地図に描かれている箇所は地質調査は行われていない。厳密には、行う前に砂漠化が進行して、できなかったみたいだけどな」
──そんな反論すらも、口に出す前に封殺されてしまった。
もしかして、本当にあるんでしょうか?もしそうだとしたら、ユメ先輩が言っていたように一気にアビドスが抱えた借金を減らすことも夢じゃない。
「あとは、これだな」
「…なんですかこれ?ここにきてガラクタですか?」
もしかしたら、という感情が芽生えてきてる最中にリン先輩が自信ありげに取り出したのは、
「こいつは、趣味の探索をしていたときに、ユメが持ってきた地図に描かれているところから500mほど離れた地点で見つけたものだ。……正直これが何なのかは俺にもわからん」
「えぇ、わからないんですか…?」
……先程まで抱き始めていた宝探しへの熱意が急に冷めていく感じがする。
「はぁ、バカバカしい。もういいですから早く会議を──」
「まぁ待てホシノ、コイツはな、ミレニアムのエンジニア部ですら見たことのないものらしいんだ」
リン先輩の言葉を聞き、口を噤む。
(……ミレニアムのエンジニア部でもわからない?)
「ミレニアムって、キヴォトス一の科学技術の最先端を行くマンモス校じゃないですか。そんな学校でエンジニア部を名乗る部活ですらわからないなんて、そんなことあるんですか?」
「あぁ、新素材開発部ってところにも一緒に調べてもらったが──既存の金属とは全く異なる成分でできているらしい」
……なんで先輩がミレニアムと接点があるのかは気になるところではあるが、そこは後で問いただす事にしましょうか。
「そこまで自信たっぷりってことは、その金属塊が?」
「そうだ、未知の物質に興味津々らしくてな、100万円で買い取ってくれるらしい」
「へぇ、100万ですか。それはまた…………んっ?」
私は、なんてことの無いように告げたリン先輩の言葉を脳内で反芻する。
──100万……
──100万?
──……100万ッ!?
「えっ!?ひゃ、100万ですか!?そんな小さな金属塊に!?」
「びっくりだよなぁ、俺も聞いた当初は半信半疑だったが、科学に対する熱意が半端なくてな、『もし追加で見つかったのなら、このサイズを基準とした額を設定して買い取らせてほしい。一塊でもっと大きければさらに上乗せもする!信じがたいなら、契約書を今この場で書いてもいいッ!』っていってた」
……こんな、手のひらサイズで100万、もっと大きければさらに上乗せ!?そんなの……
「…先輩」
──そんなのっ!
「何のんびりしてるんですか!早く探しに行きましょう!」
──探しに行くしかないじゃないですか!うへ、お宝、一攫千金~♪
「よし来た!それじゃあ早速準備するか!掘り出すための道具と、後は結構遠いからな、水や食料もしっかり準備していくか」
「そうしましょう!ユメ先輩も早く準備してください!誰かに取られてしまう前に、探しに行きましょう!」
そう言ってユメ先輩の方を振り向くと、そこには──
「どうせ私はバカですよ~…」
……体育座りでしゃがみ込み、床に"の"の字を書きながらいじけているユメ先輩がいた。
「ユ、ユメ先輩?」
「私が見つけてきたのにさ?二人だけで盛り上がっちゃって、話しかけても無視するし」
(ホシノ、お前がからかってすぐに否定しないから…)
(せ、先輩だって盛り上がってユメ先輩に返事しなかったじゃないですか!)
「むぅーっ!!ずるい、ずるいずるいずるい!またそうやって二人だけで盛り上がって!もう二人だけで行ってきたらいいんだよ……」
こそこそと、互いに責任を押し付けあっていたら、さらにいじけてしまいました。……心なしか、ユメ先輩の周囲の空気も澱んでいるように見えます……。
「ユ、ユメ先輩、そんなこと言わないで一緒に行きましょう。ユメ先輩がいないと寂しいですよ」
「………ウソ」
「嘘じゃないですって!リン先輩もそう思いますよね!?」
なんとかいつものユメ先輩に戻ってもらうために、リン先輩にも元気づけてもらおうとそう訊ねる。
「……そうだな、ユメは少し頼りないところもあるけれど──」
(──今このタイミングでそういうこと言います!?一発ぶんなぐって…!)
「──でも、ユメがいるからこそ、俺は、俺たちはアビドスの現状にも悲観的にならず、どうにかしようと頑張れる。ユメがいつも笑顔で俺たちを照らしてくれるから、前を向いて歩いて行ける」
「ユメは俺達にはいなくちゃならない、アビドス生徒会のムードメーカーで、大事な、頼れる生徒会長なんだ」
「だからその、ユメがいないと、俺も少し寂しいっていうか……」
顔を少し赤くし、それでもユメ先輩からは目を離さずに告げるリン先輩。
──先輩
「ずいぶんこっぱずかしいこと言いますね」
「お前が言えって言ったんだろうがァ!」
それからまたギャーギャーと騒いでいると
「……もっと」
「………もっと褒めてくれたら、一緒に行く、かも」
そんなことを言いながら、上目遣いでチラチラと私たちの方に視線を向けながら告げるユメ先輩。そんな先輩を見て私たちは互いに目を見合せた後、ユメ先輩の方へと再び視線を向け──
「「ユメは/ユメ先輩は」」
──ユメ先輩が「もうやめて~!」って音を上げるまで褒め倒しました。*1
主人公の簡単な設定
名前:紅飛 リン(アカトビ リン)
性別:男
関係:ホシノのもう一人の先輩、ユメ先輩とは幼馴染
苗字はもしかすると変わるかもしれませんが、いったんこのままで
シャーレのリンちゃんと名前はかぶってますが、まあ世の中同じ名前の人なんていくらでもいるので…
当キヴォトスの先生は ※あくまでも参考程度です。必ずしも結果通りになるとは限りません。また、オネエ、姉御の場合はイオリの足は舐めません
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男
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女
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オネエ
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姉御