前話の後書きで今話ではリンが誰に協力を仰ぎに行ったかを書くと記載していましたが、あえて書かないことにしました。
誰が救援に来るのかは、その時のお楽しみということで
「あ!リン先輩と先生が戻ってきまし、た……よ?」
──時刻は午後六時
カイザーとの決戦に向け、これまでに紡いだ縁をもとに協力を要請しに他の自治区に赴いていた二人がアビドスに戻ってきた。
そんな二人は、此処を出る時には持っていなかった袋を手に持ち……リンに至っては、何かがぎゅうぎゅうに詰め込まれたリュックを背負っている。
……更には、二人の後ろを追従するように自動走行するエンジニア部製のバイク、その荷台やサイドカーにはクーラーボックスや何かの機材が積まれていた。
「ノノミちゃん、先輩達が戻ってきたって?」
「あ、ホシノ先輩……はい、戻っては来たんですけど……」
何故か言い淀んだ後輩の様子に首を傾げるホシノに加え、シロコたちも窓へと近付き、視線を外へと向けた。
「……なんだろうね、あの荷物」
「明日に備えての補給物資……でしょうか?」
揃って首を傾げる対策委員会の少女たち。……窓から顔を覗かせる彼女たちに気づいたリンと先生は、皆がまだ学校に残っていたことに対して何処か安堵した様子を見せたのち、その手に持った荷物を下ろし彼女たちを呼ぶように手招きをする。
一体全体何をしようと言うのか……状況は未だよく呑み込めていないものの、呼ばれたのならとりあえず向かおうかと、ホシノたちは校庭へと歩みを進めるのであった。
◇◇◇◇◇
外に出た彼女たちの目に映るのは、せっせと何かの準備をする二人の姿。
──先程までバイクに積まれていた機材が広げられ、組み立てられていくそれを目にした彼女たちの脳裏に、ひとつの可能性が過ぎる。
「二人ともおかえり〜。……帰ってきて早々申し訳ないんだけどさ……何してるの?」
時間を置いたことで精神的にも安定してきたホシノは、普段皆に接しているようなダラっとした口調で疑問を呈し、対するリンは"見て分からないか?"と言いたげに首を傾げながらも答える。
「なにって……バーベキューの準備だけど」
「……なんでですか??」
……いや、本当に何故急にバーベキューをやろうと考えたのか。何となく察していたとはいえ、なんの脈絡もなく始められようとするそれに、思わず敬語に戻ってしまったホシノは更に疑問符を浮かべる。
てっきり明日に備えて弾薬等の物資を持ってきたのかと思っていたのだが……それはそれで、こんな大々的に持ち運んでたらカイザーに不審がられてしまうかもしれないけれど。
というより、やるならやるで前もって教えておいて欲しかった。……もし皆が帰宅していたらどうするつもりだったのかと苦言を呈するホシノへと、もう一人の先輩が近づいてゆく。
リンを窘めるならユメの説教が効果的だと、彼女にも援護射撃を願うホシノであったが……どうも様子がおかしい。
怒るどころか満面の笑みを浮かべているユメはリンと先生の側に立つと、くるりとこちらへ振り返り──
「サプライズ大成功〜!」
──と、何処から取り出したのか、その手に持ったクラッカーをパァン!と響かせた。
ひらひらとまう紙吹雪を鬱陶しそうに払い除けながら"サプライズとはどういうことか"と訊ねると、返ってきたのは"明日の決戦に備えて英気を養って欲しかった"というユメの言葉。
「……って言っても、提案したのはリンくん何だけどね?」
「先輩が……?」
二人の視線が
「皆には大変な役回りを任せてるからな、終わった後は疲労や事後処理でしばらくの間こういう事をしてる暇もないだろうし、なら今やっておいた方が良いだろ?」
「……まぁ、一理あると思いますけど……でも、これは流石に多すぎません?」
視線の先には、ノノミやアヤネがクーラーボックスなどから取り出し仕分けた食材の山、山、山……明らかに、十人にも満たない人数で食べ切れる量ではない。
(肉だけじゃなくてサザエとかの海鮮も……えっ、今松茸って聞こえた気がするんだけど!?)
一体どこにそんな金を持っていたのか、時折聞こえてくるノノミの解説とそれに驚く一年組の声に戦慄を抱いてしまう。
その後話を聞いた限りでは、どうやら他にも何人か呼んでいるらしいが……それでもちょっと勢い余って買いすぎたなと苦笑いを浮かべるリンへと助け舟を出すように、ユメはいくらか祝勝会のために残しておこうかと提案する。
「そうだな……そうするか」
「私もそれがいいと思いますけど……もう勝った時の事を考えてるなんて、気が早すぎませんか?」
まだ戦いは始まってもいないにも関わらず、既に勝った気でいる先輩たち……しかし、そんな彼、彼女らを見るホシノの表情に、呆れた様子は見られない。
何故ならば──
「「──まぁ、カイザーなんかに負ける訳がないって
「……うへへ、それもそうですね」
──自分が抱いている気持ちが、先輩たちと同じものだと理解しているから。
揃って笑みを浮かべる三人の様子はまるで、仲の良い友人同士のようであり、また長き時を共にした仲間のような……えも言われぬ雰囲気を醸し出していた。
◇◇◇◇◇
約一時間程の時が経ち、バーベキューの準備は完了した。
……明らかに使い切れないであろう食材についてはカイザーとの戦いを終えた後の楽しみとして、リンがエンジニア部から買い取った"未来直行エクスプレス-Prototype"*1に詰め込んだ。
各々のリクエストしたものが仕舞われたそれの扉が開かれるのは、全てにケリがついた後。今からもう楽しみだと言わんばかりの表情を浮かべる彼女たちの心境には、"負けるかもしれない"という不安は既に存在していなかった。
呼んだ人達はまだ来ていないが、どうせそのうち来るだろうし……それに、食材が無くなってしまうこともないだろうということで、先に始めることにする。
……美味しそうな食材の数々を前にし、我慢が効かなくなったことに対するただの言い訳でしかないが……それも仕方の無いことだろう。
「じゃあ先生、開始の音頭頼んだ」
「………えぇっ!?私!?」
"ここはカオナシがやるところじゃないの!?"と嘆きながら先生は彼へと詰め寄るが、リンは聞く耳を持たない。
……因みに先生が未だにカオナシと呼んでいるのは、シャーレにいるリンちゃんと区別を付けるためというのと……単純に、その呼び方になれてしまっているからである。
しかし、折角本当の名前を知れたのにカオナシと呼び続けるのはどうなのかと考えた先生は、何か彼の名に因んだ呼び方でもつけようかな?……リンリンとかどう?と思案しているのだが……残念ながら、彼がその事に気付くことはなかった。
その後は、振られたからには仕方がないとジュースの入ったコップを先生が掲げ、皆も同じようにそれぞれ飲み物の入ったコップを掲げる。
「……明日は皆の運命を左右する、大事な日だね。大変な一日になるかもしれない……それでも私は、私たちは!アビドスのみんなが必ず勝利を手にするって信じてる!」
「勿論私も最後まで力を貸すよ!絶対に勝とうね、みんな!」
応ッ!!と、気合いの入った雄叫びがアビドスの砂漠に響き渡る。気合いは十分、彼女たちにはもう、カイザーPMCの軍隊に対する恐れはない。
「いいねみんな!……それじゃあ前置きはここまでにしておいて──」
──乾杯!!
◇◇◇◇◇
「うわ何これ美味しッ!?」
口の中に入れた肉が解けていくという、テレビでしか見たことの無いような現象を体感したセリカの声が辺りに響く。
これだけの品……一体どれだけお金を稼いでいるというのか。もしかしたら、もう借金返済できるまで稼いでいるのでは……?
そんな疑問が喉まで出かかったが、そんな筈ないかと思考を切り上げた彼女は、目の前の料理に舌鼓を打つ。
「いい食いっぷりだな、セリカちゃん」
「あ、大将も来てたんだ。………えっ、大将!?」
食事中に声を掛けてきた相手はまさかの柴大将であった。思わず二度見してしまった彼女の脳裏に、いつの間に、どうしてここにといった疑問が湧き出てくる。
「あぁ、実はリンくんにお呼ばれしてな。初めのうちは学生だけで楽しむべきなんじゃないかって断ろうとしたんだが、"昔から世話になってる大将には是非来て欲しい"って頼まれちまったからな」
"そんな大したことはしてない筈だけどな……"と少し照れを含ませながら告げる大将の言葉に、"なるほどね"とセリカは納得した様子を見せた。
「あ、大将さん!お怪我はもう大丈夫なんですか?」
「おう、もうなんの問題もないぞ」
力こぶを作るように袖を捲り、腕をグッと構え無事なことをアピールする柴大将。……なお、もふもふとした毛に覆われている為力こぶ等は見えていない。
"リンくんが庇ってくれたおかげだな"と若干の申し訳なさを携えた笑みを浮かべる大将に、ふと疑問を抱いたアヤネが問いかける。
「……大将、もしかして気付かれてたんですか?」
「ん?……あぁ、カオナシくんの正体がリンくんだってことにか?」
「はい、そうです。……つかぬ事をお聞きしますけど……いつから?」
「リンくんが久しぶりに店に入ってきた時だな」
"一目見てリンくんだって気がついたよ"──そう大将が語った直後、リンや先生と共に挨拶をしようと近付いていたユメとホシノは揃って膝を着いた。
「「
幼馴染と後輩のあまりの落ち込みように……リンは困惑しながら"俺がバラした訳じゃないからな…?"とフォローとは口が裂けても言えないような、寧ろ追い打ちとも言える言葉を投げ掛けることしか出来なかった。
そんな彼らへと、更なる来訪者が声をかける。
「カオナシさん、ご相伴に預かりに来たわよ!……って、何これ、どういう状況?」
◇
──大将の次にアビドス高校へとやってきたのは、アルを筆頭とする便利屋68のメンバーであった。
彼女たちはカオナシにバーベキューに誘われた際に二つ返事で了承し、漂ってくる美味しそうな香り出遅れたかと少し駆け足で校庭へと足を踏み入れたのだが……その矢先に、アビドスの生徒が見知らぬ男性の前で膝を着いているという光景を目にしてしまった。
"これは一体どういう状況なのか"……他のアビドスの生徒たちは苦笑いを浮かべる程度で、特に男性を責め立てると言った様子もない。それ故に、彼女たちの知り合いかとも思うのだが……斯様な人物は一度も目にしたことがなかった。
「……お、アルたちも来てくれたか。肉も野菜もいっぱいあるからな、好きなだけ食べてってくれ」
……しかし、目の前の人物はアビドスの生徒たちだけでなくこちらの事も知っている様子。初対面でないにも関わらず、"誰ですか?"なんて失礼な事は言えないし、何より自分の矜恃に反する。
必死に思い出そうとする彼女の後ろで、何かに気づいた様子のハルカがおずおずとしながら訊ねる。
「あの……もしかして、カオナシさんでしょうか?」
「おう、あってるぞ。……あぁ、そういえばなんだかんだ言って素顔を見せるのは初めてだったか?」
「──カオナシ改め、赤飛リンだ。顔を隠してない時は出来れば名前で呼ぶようにして欲しい」
"まぁ、今は別にどっちでもいいけどな"──と告げる男性改め赤飛リン。……カヨコやムツキですら確証がなかったにも関わらず、ハルカが正体を暴いたことに便利屋68の少女たちは少なからず驚愕の感情を抱く。
……かく言うハルカも確証があった訳では無く、間違っていなかったことに対して安堵の息を吐いていた。
「それにしても、よくわかったな」
「えっと……そのコート、以前カオナシさんが特注で作ってもらったと仰られていたものと同じでしたので……それに、背丈とか声の抑揚も同じでしたし……」
"あ、合っていたようで良かったです……"と語る彼女の観察眼は、アルに救われる前、いじめを受けていた時に少しでも被害を減らせるようにと相手を観察し、悪意を向けてくる相手を避けようとしたのが切っ掛けで身につけたものである。
その後、便利屋68と出会い彼女の観察眼に気付いたリンがとある助言をしたことで、知り合い、若しくは悪意を向けてくる相手限定ではあるもののかなりの精度を誇るまでに成長したという背景があった。
──全ては、アル様のお役に立つために
"ふへへ"と笑う彼女に、リンは満足気に頷くと──おもむろに、焼きたての肉や野菜を紙皿に取り分け、ハルカへと差し出した。
目の前に差し出されたそれに、キョトンとした表情を浮かべるハルカ。……皿とリンの顔に交互に目をやり、漂う香りで自分に対して渡されたと気付いた彼女は大いに慌てる。
"自分なんかがこんな立派なお肉を頂くことなんて出来ない"、"私よりも先ずはアル様達に"……そういってアルたちへと視線を向けるが、いつの間にかホシノやユメによって彼女たちもまた料理を手渡されていた。
「これは明日協力してくれるアルやハルカたちへの礼みたいなものだからな、遠慮は要らん。むしろ食べて貰えなくちゃ食材が余っちまう」
「……それに、いざって時に力が出なくてアルたちを守れなかったら嫌だろ?」
「……!」
リンの言葉を受け、ハッとした様子を見せた後、ハルカはおずおずとした手つきで皿を受け取った。
「そ、そうですね……あ、ありがとうございます」
「気にするな。……ほら、アル達が呼んでるぞ?」
"行ってこい"──と、リンはハルカの背を軽く押し、アルたちのいる場所へと歩みを進めさせる。
彼女は少しして振り返ると……ぺこりと頭を下げ、アルやシロコたちの待つもとへと駆けていった。
◇
「みんな、とっても楽しそうですね」
「そうだな……呼んでくれなけりゃこの光景は見れなかったわけだし、リンくんには感謝しなくちゃな」
わいわいとはしゃぐシロコ達から少し離れたところで、先生と柴大将が肉や貝を焼きながら飲んでいた。……ちなみに言うと、二人とも手にしているのは酒ではない。
──そこへ、少し疲弊した様子のリンが近付いて来た。
「お、どうしたリンくん。ホシノちゃんたちのとこに居なくていいのか?」
「……戻ったらまた質問攻めにあうから、今はいい」
自己紹介もそこそこに、カイザーに対する作戦を伝えたり他の自治区へと協力者を募りに行ったり等をしていた彼のことについて、彼がアビドスを去った後に入学したノノミたちはホシノやユメから聞いたことがあるな〜程度にしか知らない。
それ故に、方法はあまり良くなかったとはいえ、これまでずっとアビドスの為に働き続けた先輩のことを知りたいと思うのは必然であり……そこからはもう怒涛の質問攻めであった。
……仕方の無いこととはいえ、質問に答えてばかりで食べたいのに食べることが出来ないという状況に陥った彼は、軈て我慢の限界が訪れ逃げ出してきたというわけである。
リンは先生に差し出されたお茶を受け取ると、一気に飲み干していく。
「……ふぅ、生き返った」
「大変だねぇ……まぁ、皆の気持ちも分かるけどね」
話もそこそこに、三人は静かに肉や野菜を口に運んでいく。そう頻繁に食べることの出来ないようなお高い食材に舌鼓を打つこと五分、おもむろに、大将が口を開く。
「リンくん……俺な、一週間後にラーメン屋を再開しようと思ってんだ」
「誰かは分からねぇけどよ、店の跡地の前に大量の現金の入った鞄が置かれててな?……うちのラーメンを待ち望んでくれてる人がいるって思ったらいてもたってもいられなくなっちまった」
「店を構えることは難しいから、前みたいに屋台で経営するつもりだ。……出来たら、まず一番にアビドスの生徒さん達に食べてもらいたいとも思ってる」
「──だから、勝ってこい!特製柴関ラーメン奢ってやっからよ!」
握り締めた拳を、リンに向かって突き出す。大人の身でありながら、応援することしか出来ないことに心苦しさを感じるが──それでも、彼、彼女達ならアビドスを悪意から守り切れると信じている。
──そしてリンもまた、大将と同じように拳を突き出しぶつけ合う。
「最近食えてなかったからな、楽しみにしてるよ。……それに皆が居るからな、はっきり言って負ける気がしねぇ」
笑みを浮かべ自信満々に語られたその言葉に、大将は満足気に頷く。
「あの何でもかんでも一人で抱え込もうとしてたリンくんが……成長したなぁ」
「ぐっ……」
「はっはっは!ぐうの音は出たな!…………もう二度と、あの子たちを置いていくんじゃないぞ?」
「……わかってるよ。もう二度と、あいつらとの約束を違えたりはしない」
「そうか、ならいい。……先生、リンくんもホシノちゃんも、みんな大切なものを守る為に一生懸命になりすぎるあまり、無茶しがちだからな。俺の代わりに、皆を支えてやってくれや」
「はい、勿論です。……私、皆の笑顔が大好きですから」
先生の返答に、"この人がアビドスに来てくれて……ホシノたちの味方になってくれて良かった"と、リンと大将は同じ感情を抱く。
……今まで、色んな大人を見てきた。多くの大人は自分の利益の事ばかり考えて、柴大将のような心の底から信頼をおけるような人は殆どいなかった。……普段は頼りないかもしれない、それでも──
──
「なぁ、先生……初めて会ったあの日、俺になんで便利屋なんて危険な仕事してるんだって聞いたよな?」
「……うん、聞いたね」
所詮はただの口約束……それでも彼は、約束を果たす。
──"信ずるに値する"と認めた時に、己のことを教えるという約束を
「……俺が便利屋を始めたのは、ユメやホシノに少しでも長く、まともな学生生活を送って欲しかったからだ」
「稼いで、稼いで、稼いで……ユメは間に合わなかったけど、それでも何とかホシノだけでもって、金をかき集めてた」
「……先生と会うまでは、金が溜まったら一気にアビドスの抱える借金を支払って、ビナーの事も片付けたら……何処か別の場所で、万が一にもホシノたちと再会してしまわないように生きていこうと思ってたんだ」
「……俺には、あいつらと会う資格はないと思ってたから」
「それは……」
「……でも、そうはならなかった。先生がアビドスからの手紙を見つけてくれたおかげで、俺はユメと再会できた。……久しぶりにアビドスに足を踏み入れて、ホシノともまた会うことができた」
「それに、俺が去った後に入学してくれた後輩たちとも会うことができた。……アビドスを見捨てることなく今日まで守り続けてくれたことに対しては、どれだけ感謝の言葉を尽くしても足りないと思ってる」
……自分が二人を傷つけたという事実は消えないし、消す気もない。それでも、今はただ──
「──またこうして、ユメやホシノと会えたことが堪らなく嬉しいんだ」
「ありがとう、先生。……先生が俺を雇ってくれたおかげで、俺は今こうしてここに居られる」
静かに笑みを浮かべたリンは、心の底からの感謝の言葉を述べながら顔を上げ──ニヤニヤと、温かい目を向けてくる先生と大将が目に映った。
怪訝な顔を見せる彼は……ふと背後に複数人の気配を感じ、たらりと冷や汗が背筋を伝う。
慌てた様子で振り返れば──やはりそこには、ユメとホシノがいた。
「……いつから、聞いてた?」
「「初めから」」
……やってしまった、気を抜き過ぎた。恥ずかしさのあまり逃げ出したいが、明日はカイザーとの決戦もあるため逃げ出すわけにもいかず、リンは両手で顔を覆う。
「明日、全部片付いたら……今まで何をしてきたのか、ちゃんと教えてね?」
「分かってるとはおもうけど、逃げても無駄だからね〜。……どこへ行こうと、必ず見つけ出すからさ」
「「──
二人は顔を覆っている
◇◇◇◇◇
それからまたしばらくの時が経ち、全員が満腹となったところでバーベキューは終了した。
準備に間に合わなかったということもあり、アルたちも率先して片付けを手伝っているその最中──リンが持つ携帯に、一通のメールが届いた。
──それは、仕事用でもプライベート用でもない、第三の携帯。リンがカオナシとして行動していた時にも一度も見せたことの無いそれに、付かず離れずの距離で片付けをしていたホシノは首を傾げる。
差出人を確認した彼は僅かに眉を顰めたあと、メッセージを開き内容を確認していく。……身長差もあり、彼女には何が書かれているのか見ることは叶わなかったが──
「……そうか、ついに完成したのか」
"完璧なタイミングだな"──と、口角を上げる様子から、その内容が先輩にとって好ましいものであるとホシノは察したのであった。