小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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前話でヒナちゃんが空を飛んでいるのは、リンとの組手(参照:ゲヘナ風紀委員長)で神秘の操作を意図的に行う方法を学んだから。
膨大な量を誇る神秘をスラスター、もしくはジェットエンジンのごとく噴出し、他の生徒と比べてかなりの大きさを誇る羽で空気を掴むことにより空を駆けている。
※細かな制御はまだ苦手なため、軌道修正などは羽頼り。

地上戦でもこの技術は有効。真っ直ぐに向かってきたかと思えば急に直角に移動したりなど、予備動作無しの進路変更が可能

他の羽を持つ生徒がやろうとすると、羽の大きさが足りないor神秘の総量が足りずすぐにガス欠になってしまうorそもそも強烈な負荷に耐えることが出来ないのいずれかに引っかかる為、現状キヴォトス内で空を飛べるのはヒナちゃんただ一人
※地上での変則軌道は他にも幾人か可能or可能になる予定


総力戦-ビナー-③

 全身から黒い煙を漂わせながら身悶え暴れ回るビナーを尻目に、乱入者はリンたちの側へと着陸する。──同時に、遠方からこちらに向けて走ってくる数台の自動走行車。

 

 車から一台のドローンが飛び出すと、先生の方へと近づいてきた。……それはどうやら通信機能を持っているらしく、操縦者はドローン越しに声をかける。

 

 

『──初めまして、先生。私はミレニアム生徒会"セミナー"の生徒会長、調月リオ。……貴女のことは、ユウカや同盟者から聞いているわ』

 

「ミレニアムの……同盟者って、もしかしなくてもカオナシのことだよね?」

 

『えぇ、そうよ。……既にC&Cが参戦しているのだから言う必要も無いかもしれないけれど』

 

『ミレニアムの生徒会長である私、調月リオ及びC&Cは──カオナシ改め赤飛リンとの盟約により、デカグラマトン"ビナー"撃滅戦に参戦するわ』

 

 

 ──二年前に結んだ盟約を果たすため、ミレニアムサイエンススクール、本格参戦

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

『アビドス対策委員会、貴女たちに渡すものがあるわ』

 

 

 そういうや否や、自動走行車の後部扉が一斉に開く。中には無数のドローンが搭載されており……その内の数機が何かの入ったケースを持ち、ホシノたちの前へと前進する。

 

 開かれたケースの中にあるは──白い銃弾(ホワイト・ブレット)

 

 

『それは、二年前に同盟者から受け取ったビナーの外殻の破片を解析し、貴女たちの銃の規格に合わせて対ビナー用に作成した特別製の銃弾。──撃ち込んだ周辺の外殻に含まれるナノマシンによる自己修復機能を阻害することができるわ』

 

「おー!これがリンくんが言ってたビナーに対する秘策なん「それだけではありません」わわっ!?」

 

 

 先程"アツィルトの光"の掃射を妨害したパワードスーツを身に纏った女生徒は、ユメの言葉を遮りながら"ニュっ"と間に割り込んだ。

 

 ……パワードスーツと言っても、全身を覆うようなものではない。寧ろほぼ全身が露となっており、パワードスーツ以外に身に付けているものは目元を覆うバイザーと……ピチッとしたハイレグのみであった。

 

 "結構際どい格好してるね!?"……というユメたちの内心に気づいていないのか、気付いた上で無視しているのかは不明だが、女生徒はバイザーを外しながら語り始める。

 

 

「私が身に付けているのはアビ・エシュフ-βと言って、リオ様とヒマリ様が対デカグラマトン用に作ってくださったパワードスーツになります」

 

 

 "ぴーすぴーす"と無表情ながらも、どこか自慢げに語る彼女は、C&C五人目のエージェント──"飛鳥馬トキ"

 

 コールサイン"04"の名を冠する彼女はリオ専属のメイドであり、本来であればこの時点ではまだ同じC&Cのメンバーですら彼女との面識は無いはずなのだが……

 

 

「おっせーぞ後輩!遅刻だぞ!」

 

「……ネル先輩、もしかしてご存知ないんですか?──ヒーローとは、遅れてやってくるものなのですよ?」

 

「何自分で言ってやがんだお前は!?」

 

「まぁまぁ、落ち着いてくださいリーダー。トキちゃんにも準備しなけれならないことがあって遅れるというのは、事前に聞き及んでいたではないですか」

 

 

 ……気安いやり取りから察することができる通り、トキは既にネルを筆頭とする他のC&Cメンバーと顔合わせ済みであった。何故既に知り合っているのかは、リオが一年時にリンと同盟を結んだことに起因するのだが……今はまだ、語るべき時ではない。

 

 

「んんっ……とにかく、これでビナーの自己修復機能についてはどうにかなるって事でいいんだよね?」

 

『えぇ、そうよ。……私は直接戦闘には参加出来ないけれど、AMASで随時支援するわ』

 

「ありがとう、助かるよ」

 

『……お礼はエンジニア部の生徒に言ってあげてちょうだい。対ビナー用の銃弾を用意したのは彼女達だから』

 

「そうなんだ。……うん、エンジニア部の子達にも今度お礼を言いに行くよ」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 対ビナー用の銃弾を詰め終えるのと時を同じくして、修復を終えたビナー……しかし、未だ完璧ではない。行動に支障が出ないように機体の修復を優先していた機蛇は今、"アツィルトの光"が放てない状況にあった。

 

 

≪■■■■■■■ッ!!!≫

 

 

 咆哮と共に、殺意の籠った目を生徒たちへと向ける。──機蛇は既に、リン以外も含めたこの場に立つ全ての人間が、己が存在を脅かしうる外敵であると認めていた。

 

 彼女らを排するために、ビナーは無数のミサイルを撃ち放つ。二年前と違って神秘の込められていないそれは、リンの能力の対象外となっているためビナーに返すことはできないが……それならそれで、やり様はいくらでもある。

 

 

 ──響く三発の銃声

 

 

 スナイパー組の狙撃は寸分たがわずに直撃、連鎖する爆発によってすべてのミサイルが撃ち落とされる。

 

 

「標的の破壊を確認。……ゲヘナの生徒も、中々いい腕を持っているな」

 

「ふんっ、当然よ!この程度造作もないわ!」

 

「油断するなよ便利屋!まだまだ来るぞ!」

 

 

 イオリの警告を肯定するように──今度は巻き上げた砂嵐を自身の周囲に纏うのではなく、彼女たちを飲み込むように叩き付ける。

 

 圧縮され渦を巻くそれはまるでミキサーの様であり、もし直撃しようものならヘイローを持つ生徒ですら無事では済まない砂嵐に対し彼女たちがとった行動は──防御ではなく、迎撃であった。

 

 

 

「──変型神話(Deformatio Mythologia)、芭蕉扇」

 

 

 

 トキが言葉を発するとともに、彼女が持つハンマーは柄を残してバラバラになった……かと思えばほんの僅かの間中に漂い、接合され──身の丈程の巨大な鉄扇へと姿を変える。

 

 彼女は鉄扇を腰だめに構え、勢い良く振り抜き……直後、暴風が吹き荒れた。

 

 トキを起点として発生した風はそのまま突き進むと、向かう先にある砂嵐とぶつかり合い──相殺する。

 

 

≪!?≫

 

 

 弾け、霧散する砂嵐の先には──数多のAMASが宙を漂い、己へと銃口を向けていた。

 

 ◇

 

(私だけ、何も……)

 

 

 後方支援組であるが故に対ビナー用の銃弾を渡されなかったアヤネは、適材適所というものがあるとは理解していても、もどかしさを感じずにはいられなかった。

 

 ……そんな彼女へと、リオは声をかける。

 

 

【奥空アヤネさん……で、あってたかしら】

 

【……?はい、私に何か?】

 

【……貴女のことは……いえ、単刀直入に言うわ】

 

 

 ──"AMASの操作を一部お願いしたいのだけれど、構わないかしら"

 

 ◇

 

 "ダラララララッ!!"と四方から撃ち込まれる弾幕の嵐、それその物はビナーの装甲を貫くには至らないが、頭部を目掛けて集中的に放たれたそれは機蛇の視界を著しく遮る。

 

 

 ──"効きはしない、しないが……ただひたすらに鬱陶しい"

 

 

 "アツィルトの光"を放つことが出来ない今、ビナーはその巨体を操り目障りなドローンを破壊していく。壊して、壊して、壊して……ふとした拍子に、自身の装甲が砕かれる感覚を覚える。

 

 損傷の大きさからして、ショットガンを持った人間によるものだと当たりをつけたビナー。確かに他の人間よりも威力は大きいし、二年前の己であれば下手をすれば討ち取られていたかもしれないが……今は強化されたナノマシンによる自己修復機能がある。

 

 後ほんの数秒もあれば、この程度の損傷くらい──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪……?≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪──ッ!!?≫

 

 

 ……どれだけ時間が経っても修復が始まらないことに、ビナーはようやく気が付いた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

『……!ホシノ先輩の銃撃による破損箇所の修復、始まりません!』

 

「「「よしっ!」」」

 

 

 一部移譲された権限によってAMASを操作し、ビナーの妨害を行っていたアヤネがカメラ越しに得た情報が仲間たちへと共有される。

 

 最も厄介であった修復能力を封じることが出来た彼女たちは、思わず歓声を上げた。

 

 今が好機──ビナーが対抗策をこうじる前に倒しきってしまおうと、彼女たちは守りはユメやAMASに任せ攻勢に打って出た。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ──ドォンッ!!

 

 ──ドォンッ!!

 

 ──ズガガガガガガァンッ!!!

 

 

 二年前より強化されたはずの装甲が砕かれていく、つい先程まではどれだけ砕かれても修復できていたというのに……今はそれも出来ない。

 

 自身の機体が壊されていくのがわかる。このままでは直に機能を停止してしまうと理解出来ても、どうすることも出来ない……逃げ出すことすら叶わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このままでは、己の使命を果たすことすら叶わずに終わってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪■■■■■■■■■■ッ!!!≫

 

 

 

 ──追い込まれたビナーは、再びその身を砂嵐で覆い隠した。




アビ・エシュフ-β
⇒空戦特化型。他にα(陸戦、よく見るヤツ)とγ(水中戦)がある。
エリドゥの補助を受けていないため、言ってしまえばただの高性能なパワードスーツ……なのだが、βとγはそもそも補助を受けることを前提としていない分、リソースが他の機能に多く振られている。
βは主に機動力増加の為にスラスターが増設されており、併せて搭乗者の負担を和らげる為に耐G性能が向上している。

変型神話(Deformatio Mythologia)
⇒アビ・エシュフ専用の特殊武装。リオ、ヒマリ、エンジニア部の合作。
対デカグラマトン用に作成されたこの武装は、状況に応じてその姿を変える。前話でビナーに叩きつけたハンマーの名は"トールハンマー"、通常時は腕輪として身に付けており、名は"ドラウプニル"
※当武装の作成時、頼まれたヒマリは驚愕のあまり煽るのを忘れリオを5度見した。命名はヒマリ、リオの命名は即満場一致で却下された。


以下オマケ

「……ホシノ、前が見えん」

「先輩は見ちゃダメです」

「いや、あいつのはもう何度も目にして「は?どういう事ですか?」……待ってくれホシノ、俺の言葉選びが悪かった」

※リンは開発時の性能テストに関わっていただけです
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