小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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因みにですが、ビナー戦は流石に配信していないです。
※前話の後書きで書くの忘れてました


後日談②

 ──カイザー及びビナーとの戦いから一週間後

 

 

「ホシノちゃん……私、夢でも見てるのかな?」

 

 

 目の前の光景が未だに信じられないと言いたげに、ユメは自分の頬を引っ張る。……何度試しても痛みを訴える頬が、目の前に広がる光景を真実だと伝えてくる。

 

 彼女の……否、彼女たちの視線の先には、他の自治区から訪れた生徒や大人達。

 

 彼らはカイザーとの戦闘で被害の出た市街地から瓦礫を撤去したり、損傷した建造物を補修したり等……端的に言うなれば、アビドスの復興作業に従事していた。

 

 一体何がおきているのか……彼女たちを呼び出した張本人であるリンの姿を探すと、大人たちに混ざって瓦礫を撤去している様が目に映った。

 

 声を掛けようとしたタイミングで丁度よくユメ達が来ていることに気づいたリンは、作業する手を止めると幼馴染や後輩達に向かって手を振りながら近づく。

 

 

「みんな来たみたいだな」

 

「先輩に呼ばれたからね〜。……呼んだ理由は後ろの人達?」

 

「そうだ。……折角だし、俺の方から紹介させてもらうか」

 

 

 代表者と思われる他の人物たちよりも一際ガタイのいい獣人へとリンが声を掛けると、獣人はよく響く大きな声で周囲の人々へと指示を出す。

 

 

「おいお前ら!アビドスの生徒さんがおいでなすったぞ!」

 

 

 "並べッ!!"──思わず背筋がピンと伸びてしまうような張りのある声で獣人が呼び掛けると、先程まで作業をしていた他の大人や生徒達が一斉に彼の後ろで横並ぶ。

 

 統率の取れたその動きに、思わず"おぉ"と感嘆の声を漏らしながらぱちぱちと手を鳴らす先生と対策委員会たち。

 

 

「この人達は、先日のアビドスとカイザーの戦いのLIVE配信を見て復興に協力したいって申し出てくれたボラn「あんたらのファンだ!!」…………ファンの方達だ」

 

「次いでに言っとくと、このおっさんが先日のメッセージの差出人な」

 

 

 呆れた様子で指を指すリンに対して、おっさんと呼ばれた獣人は"ガッハッハッ"と呵々大笑する。

 

 "ファン"──凡そこの場において似つかわしくない言葉が聞こえてきたことに対し、ホシノ達はポカンと惚ける。

 

 "ファン、ファン……ファン?"と脳内で繰り返すほど計五回……漸く理解が追いついた彼女らは驚きの声を上げた。

 

 

「ファン!?……えっ!!?」

 

「ああそうさ!ここに居るヤツら全員、あの戦いを見てあんたらのファンになっちまったんだ!」

 

 

 獣人曰く──ここにいる者の大半は元はカイザーによって何らかの被害を受けた、若しくは受けそうになった人々らしい。

 

 彼等は最初、カオナシに頼まれて動画を拡散するついでに自分たちが受けた被害についても世間に知ってもらおうとコメントを送っていたらしいのだが……少人数でありながら無数の軍隊相手に啖呵を切り、一歩も引かずに立ち向かう彼女らの姿に勇気を貰い──気づけば、ファンになってしまったという。

 

 

「いやぁ、最初は何で便利屋のあんちゃんが態々って思ってたけどよ。……まぁさかアビドスの関係者だったとはな!」

 

 

 "配信に出てきた時はびっくりしちまったぜ!"とリンの背中をバシバシと叩きながら笑う獣人。

 

 周りの人々も"かっこよかったよ!"、"応援してる!"等々、口々に自分たちが如何にあの戦いを見て勇気を貰ったか、心奪われたかをユメ達へと伝えていく。

 

 

「ま、そういうわけでここに居る奴らは、俺含めて復興の手伝いを……って、どうした嬢ちゃん!?」

 

 

 後ろに立つ人たちへと振り返り目を向けていた獣人は、再び視線を正面に戻し……涙を流すユメを目にし狼狽える。

 

 もしや何か気に障るようなことをしてしまったのかと先程までの豪胆な様子から一転、慌て始める獣人に対してユメは"違うんです"と首を横に振る。

 

 

「今までずっと、助けを求めても手を取ってくれる人はほとんど居なくって……でも私、アビドスのことが…みんなの事が大好きだから……っ諦められなくて……!」

 

「だから、こんなにも色んな人が力を貸してくれるのが嬉しくて、それで……!」

 

 

 溢れ出る涙を拭いながら、ユメは深く頭を下げる。

 

 

「本当に……あり、がとう…ございますっ!」

 

 

 ──顔を上げた彼女は未だ涙を携えながらも……晴れ渡るような、満面の笑みを浮かべていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「お、順調にすすんでるみたいだな」

 

 

 途中で何処からともなくやって来た作業用ドローンやアル達便利屋68の協力もあり、順調に瓦礫の撤去を推し進めている頃、柴大将が屋台を引きながら……後ろにはアビドスの住人やゲヘナ風紀委員の生徒を引き連れながら現れた。

 

 

「大将さん、こんにちは。……どうしてゲヘナの子達と一緒に?」

 

「おぉ先生か、こんにちは。後ろの子達は──」

 

 

 曰く、彼女たちは先日店を壊してしまったことに対する謝罪と賠償を兼ねて大将の元に訪れたらしい。

 

 

「俺としては、アビドスの為に戦ってくれたってリンくんから聞いてたから、別に気にしなくてもいいって言ったんだけどよ……」

 

「──私たちがどうしても、と頼んだんです」

 

 

 大将の言葉を遮って前に出てきたのは──チナツとイオリの二名

 

 

「先日の戦いは……結局のところ、ヒナ委員長が殆どお一人で終わらせてしまいましたから」

 

「私達が掛けちゃった迷惑の尻拭いを委員長に任せたまま"はい、おしまい"なんて事、出来るわけないでしょ。……まぁ結局、今回も何か出来たのかって言われると微妙なんだけど……」

 

「いや、君たちが手伝ってくれたお陰でこっちの準備も早く終わったからな、助かったよ。……時間も丁度いいし、準備してもらうか!」

 

 

 大将が言うや否や、風紀委員達は運んでいた荷物を広げていく。彼女らが運んでいたのは──無数のおにぎりであった。

 

 

「腹が減っては何とやらだ!昼飯を用意してきたから是非食べてくれ!……ちゃんと手は綺麗にしてからな!」

 

 

 一斉におにぎりの元へ向かおうとしていた人々は大将の一声で回れ右……手を洗いに近場の水道や、持ってきた水の入ったペットボトルへと駆けていった。

 

 

 ◇

 

 

「あ……」

 

 

 他の風紀委員たちと一緒になってせっせとおにぎりを配るイオリは、目の前に立つ男の服装に既視感を覚える。

 

 ……否、既視感などではない……彼女は明確に、その男の服装を覚えていた。

 

 

「お前……まさかカオナシか?」

 

「?……あぁ、そう言えば何だかんだで言ってなかったか」

 

「カオナシ改め、赤飛リンだ。……早速で悪いが、おにぎり貰ってもいいか?」

 

「あ、うん…勿論いいけど……っ!?」

 

 

 イオリはおにぎりを渡し……渡したそれが、他のものと比べて形が崩れていた事に気づく。咄嗟に制止しようとするも……先程から空腹の為にお腹を鳴らしていたリンは、彼女が言葉を発する前にパクリと食べてしまった。

 

 モグモグ……ゴクリと飲み込んだ彼は、こちらに向けて手を伸ばそうとしていたイオリに気がつくと首を傾げる。

 

 

「どうした?」

 

「あ、いや……形の崩れてたの渡しちゃったから、取り替えた方が良いかと思ったんだけど……」

 

「そうか?……このくらい、別に気にならないけどな」

 

 

 ……実際には、自分が作った不出来なものを渡してしまったが故に引き止めようとしたのだが……差程気にした様子を見せないリンに対し、"大丈夫だったのかな…?"とイオリは内心ホッとする。

 

 その後、流石に一つでは足りないからと幾つか見繕い受け取った彼は、その場を後にしようとし──"待って!"と、引き止められる。

 

 

「なんだ?……店を壊したことについては、大将も許してるみたいだから俺からはもう何も言うことはないぞ?」

 

「ちがっ……いや、違わなくは無いけど…そうじゃなくて……」

 

 

 言い淀むイオリ……何処か迷いと葛藤を抱いた色を見せる彼女の様子を目にした彼は──

 

 

「……話は後で聞くから、先ずは後ろで待ってる人達におにぎり配ってやれ」

 

「えっ?……うわっ、ごめん!」

 

 

 ──慌てて配り始める彼女を横目に、幼馴染や後輩たちの待つ場所へと向かっていった。




獣人のおっさん
⇒キヴォトスでも珍しい熊の獣人、故に他者よりもガタイがいい。素の話し方と文面での対応があまりにも違いすぎて、初見だと同一人物だと思われない。

実は他の大人や生徒達は極一部を除き初対面、リンに一言伝えた上でボランティアを募集したところ思いの外集まったことに、驚き2割、納得8割だったらしい。



おにぎり
⇒ホシノ(一年)が作った時のがもっと形は酷かったし、塩っぱかった。でも全部余すことなく食べた。ホシノが自分で食べて顔を顰め、私の方で処理しますと言った時も、ユメと二人で全部食べ切った。……故に、相手に悪意がないのであれば多少の崩れとかは気にしない。

なお、悪意のある輩には「食べ物を粗末にするんじゃねぇッ!!」と神秘込みのマジビンタを繰り出す模様。

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