小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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今回は試しで、普段と比べて会話文と地の文の行間を一行分多くしてます。

※予約投稿したつもりが出来てなかったです……


お気に入りして下さった方ついに3400名を超えました!更には総UA数も50万が目前に迫り……!
いつも読んでくださり、ありがとうございます!


後日談③

「あれ?イオリ、昼食は食べないんですか?」

 

「ちゃんと食べるよ。……ただその前に、ちょっとカオナシと話したいことがあるからさ」

 

 

 

 おにぎりを配膳し終えた後、イオリは同僚からの昼食の誘いを断ってキョロキョロと辺りを見渡し……程なくして目立つ黒いコートを傍に置き、ラフな格好をした目的の人物を見つけた彼女は其方へと足を進める。

 

 カツ、カツと靴音を響かせながら近づく彼女にいち早く気付いたホシノが振り返る。

 

 

 

「うへ?確か風紀委員の……どーしたの〜?」

 

 

 

 ゆるりとした……しかし奥底に警戒の色を宿す青と金の瞳(オッドアイ)

 

 己が所属する組織の長、ゲヘナ風紀委員長の空崎ヒナと同じ──絶対的な強者の目に、イオリは背筋を冷や汗が伝う感覚を覚える。

 

 ……しかし、ここで引いては聞きたいことも聞けないし……何より、()()()()()()()()()()()()()()()()と、一歩前へと踏み出した。

 

 

 

「……カオナシに、聞きたいことがあるんだ」

 

「リン先輩に?………あっ、そう言えばそんな事言ってたっけ」

 

 

 

 圧が一瞬増したかと思えば……いきなり霧散する。……緊張故に無意識のうちに呼吸を止めていたイオリは、ここに来てようやく酸素を取り込もうと息を吸い──空腹を誘う醤油の香りが、彼女の鼻腔を刺激した。

 

 まだ昼食を食べていなかった彼女にとってその香りは、まさに劇物と言っても過言ではなく──

 

 

 

 クゥ……

 

「──ッ」

 

 

 

 ……とお腹の虫が鳴ってしまうのも、仕方の無いことであった。

 

 咄嗟にお腹を抑える彼女の頬が朱に染った時……ピクリとリンが反応したかと思えば、己の方へと振り返る。

 

 

 

「ん、来たのか」

 

「んなっ……絶対わざとさっきまで気付いてないふりしてたでしょッ!?」

 

 

 

 僅かに上がる口角から、確信犯だと察した彼女はリンへと詰め寄ろうとするが……先輩ガチ勢且つ過激派のホシノによるガード──通称、ホシノセ〇ムが発動。

 

 ……イオリがホシノの防御を突破できる道理はなく、終ぞ近づく事は叶わなかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「それで……聞きたいことってなんだ?」

 

「この流れで……いや、さっきのはもういいか……」

 

 

 

 無駄に体力を消費してしまった彼女は、ノノミが譲ってくれたおにぎりを摘み空腹を紛らわしながら訊ねる。

 

 問いの内容はとてもシンプルなもので……端的に言うのなら、"どうやったら強くなれるのか"というものであった。

 

 

 

「どうやったら、ねぇ……何でわざわざ俺に訊ねる?」

 

 

 

 ヒナという、キヴォトス全体で見ても最上位に位置する人物が身近に居るにも関わらず、何故自分なのか……首を傾げる彼の言葉に対し、イオリは"委員長がカオナシに聞いてみるといい"と言ったからだと答える。

 

 

 

「委員長は、"私や小鳥遊ホシノは、良くも悪くも他の生徒より神秘が多いから参考にならない"って言ってたから……正直、神秘の多い少ないとか私にはよく分からないんだけど、そんなに変わるのか?」

 

 

 

 彼女の口にした疑問を聞き、リンはヒナが何故自分に訊ねるように言ったのかを察する。……確かに神秘、特にその扱い方という点においては自分の方が一日の長があるし……何なら、ヒナやホシノに神秘の効率的な扱い方を教えたのは自分なのだから。

 

 …………まさか、空を飛べるようになるとは夢にも思っていなかったが。

 

 何はともあれ、理由がわかった彼は神秘というものが強さにどのように影響するのか、またその扱い方に関する講義を始める。

 

 

 

「……そうだ、ちょうど良い機会だしシロコ達も聞くか?」

 

「ん、聞く。……前にホシノ先輩に聞いた時はよく分かんなかったから」

 

「うへ!?シロコちゃん!?」

 

「私も是非お聞きしたいです♪」

 

「そうね、私も聞かせてもらおうかしら」

 

「私も……あまり使う機会は無いかもしれませんが、後学のために聞かせてもらいますね」

 

「私も聞かせてもらおうかな」

 

「先生もか。……時間も限られてるし、手短に説明するぞ」

 

 

 

 

・神秘とはキヴォトスに住む住人は多かれ少なかれ持っているものである。例外として、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

・神秘の総量が多ければ多いほど、身体能力や肉体強度が増す。端的に言うなれば総量=その人物の強さ。ヘイローを持つ生徒は他の住人よりも神秘総量が多く、ホシノやヒナに関しては他の生徒と比べても隔絶した量と質を持っている。

 

・神秘の総量は運動能力や戦闘センスには影響しない。ただし、多ければその分取れる選択肢は増える。

 

・基本的に、キヴォトスの住人は自分の意思で神秘の操作を行えず、出力は保持する神秘に比例する。

 

 

 

 

「まぁ、簡単に言うとこんなところだな。……四つ目に関しては、そもそも神秘の扱い方を知らないって言った方が正しいが」

 

 

 

 いつの間にやらユメが持ってきていたホワイトボードへと書く手を止め、振り返り……リンが"質問は?"と問えば、早速と言わんばかりに手が上がったため、彼は一つ一つ答えていく。

 

 

 

「私って神秘な「ない、次」取り付く島もないっ!」

 

「ん、私の神秘の量ってどのくらい?」

 

「そうだな……この場にいる全員が他の生徒よりも神秘の量は多めで、シロコはそれよりもちょっと多いな。……1.1、1.2倍くらいか?因みに言うと、ホシノやヒナは1.8〜2倍近くあるな」

 

「えぇ……規格外過ぎない?」

 

「神秘の総量ってどうすれば分かるんでしょうか?」

 

「一般的には対象の身体能力とかの高さから判断する。人によって力が強いだったり、耐久力が高いだったりとバラツキはあるが……総量が多い奴ほど、そのどちらともを高水準で備えてることが多いな。後は強者と対峙した時に感じる圧とかでも察する事は出来る」

 

「中には対象の神秘がオーラみたいにぼんやりとだけど見える人もいて……この場だと俺やユメがそうだな。……ホシノは見えるようになったか?」

 

「んー……ちょっとだけ?」

 

「ちょっとだけでも見えるようになったなら十分だ、よく頑張ったな。……あぁ、因みに言っておくと、これは誰しもが出来るようになる可能性があるぞ」

 

 

 

 ホシノの頭を撫でながらなんてことのないように語るリンの言葉に、てっきり先天的な才能だと思っていたシロコたちは目を丸くする。

 

 

 

「……もしかして、さっき四つ目で"基本的に"って言ったのが関係してるんでしょうか?」

 

「お、早速気づいたか。……そう、神秘の操作は皆やり方を知らないだけなんだ」

 

「出来るようになれば……神秘に対する理解度が上がれば、自ずと見えるようになってくるし──精密な操作ができるようになればなるほど出力上限が上昇し、神秘総量の差を埋めれるようにもなる」

 

「「「……!」」」

 

 

 

 リン曰く──神秘操作はゲームで例えるならばその時その時に応じて都度適切にステータスを振り分けることである。

 

 総合的なステータスに差があれども、一点集中で研ぎ澄ませればその一点においては格上にも勝るとも劣らないステータスを誇るようになるのと同じように……神秘総量に差があれど、神秘操作が出来るようになればイオリがヒナに並ぶ実力を身につけることが出来るようになるかもしれないと、彼は語る。

 

 

 

「……まぁ、簡単に出来るものでもないけどな。先ずは自分の中に流れる神秘を感じ取れるようにならないと話にならないし」

 

「そうそう、私でも最低限扱えるようになるまでに五ヶ月はかかったからね〜」

 

 

 

 "正直、神秘の操作に関しては勝てる気がしないよ〜"と肩を竦めるホシノ。

 

 あの巨大な機械の蛇、確かビナーと言っていたか……人智を超えたかの存在に委員長たちに混ざって痛打を与え、あまつさえとどめを刺した目の前の男が自分と大差ない量の神秘しか持たぬと言う事実に、イオリは言葉を失う。

 

 ……にわかには信じがたいが、もし彼の言う通りなのだとしたら──

 

 僅かに希望が見え始めたことで、彼女は無意識に両の手を握りしめる。"難易度が高かろうと知ったことか、絶対に身に付けてやる"と意気込みながら、彼女は教えを乞う為に頼み込もうとし──

 

 

 

「そうだ、ひとつ聞いておきたいんだが──なんでお前は、そんなにも強くなりたがる?」

 

 

 

 ──リンの言葉に、遮られた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「な、なんでって……そんなの強くなりたいから以外に「本当にそれだけか?」──ッ!?」

 

 

 

 圧が増す。大岩を乗せられているかのような重圧……言葉にせずとも目を見れば分かる。

 

 ──次、本当の事を言わなければ二度と彼に師事を仰ぐことは出来ないだろうということが……あえて言葉にしない今の状況は、彼の温情なのかもしれない。

 

 

 

(……そう、だよな。もし私が教えられたことを悪用したらって考えたら……理由を言わない私に、店を壊した前科のある私に教えようなんて思えないよな……)

 

「……笑わないか?」

 

「……笑われるような理由なのか?」

 

「……いや、笑われるような理由じゃない。──もし笑うような奴がいるなら、私はそいつをぶん殴ってやる」

 

 

 

 先程までのどこか迷いのある揺らいだ目とは違う──覚悟の色を宿したその瞳を目にしたリンは、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

 

「私は強くなりたい……その気持ちに、嘘偽りはない」

 

「私は悔しかった。あれだけの人数差がありながら手も足も出ずに負けたことが」

 

「私は私を許せない──同じ風紀委員の身でありながら、委員長一人に負担を掛けてしまっている今の現状を……"委員長が居れば最終的には何とかなる"っていう甘ったれた考えが心のどこかにあった私を、許せない」

 

「だから私は、今よりもっと、もっともっと強くなって──」

 

 

 

「何時も私たちを導いてくれる委員長のことを、隣に立って支えたいッ!」

 

 

 

 拳を握り締め胸に当て、彼女は真っ直ぐにリンの目を見る。恥ずかしい事などどこにも無い、これが私のやりたい事、強くなりたい理由だと告げるイオリに対して──彼は"ぱちぱち"と手を打ち鳴らす。

 

 

 

「神秘操作を身につける上で……いや、強くなる上で最も大事なのは──如何な事があろうと決して譲らない、確固たる一つの芯を胸の内に抱くことだと俺は思ってる」

 

「故に──()()だ、銀鏡イオリ」

 

 

 

 "いい覚悟だな"と、リンは静かに笑みを浮かべる。

 

 今この時を持って、過去の遺恨を捨て去り──自治区の壁を越えて師弟関係が結ばれた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 昼食後の復興作業は恙無く……どころか想定よりも早く進み、たった一日で瓦礫の撤去作業は完了して残るは補修作業のみとなった。

 

 ボランティアとして訪れてくれた方々と一緒に風紀委員の面々の大半は既に帰宅し、最終確認の為に残っていたイオリとチナツもまた帰路へつこうとしたその時──"おーい!"と手を振りながら彼女らの元へとユメが走ってきた。

 

 一体何事か、もしや何かやらかしてしまったのだろうかという不安が彼女らの脳裏に過ぎるが……どうやら、違うらしい。

 

 ユメは二人の手を掴み、何かの書かれた紙の束を渡す。受け取ったそれには──"柴関ラーメン一杯無料券"と書かれていた。

 

 

 

「あの、これは……?」

 

「大将さんから、今日手伝いに来てくれた風紀委員のみんなにって!」

 

「えっ!?……いやいや、受け取れないって!」

 

 

 

 二人は"そもそも店を壊してしまった自分達がいけないのだから"と無料券を返そうとするが、対するユメは首を横に振るのみで返却を受けつけない。

 

 

 

「大将さんって、昔からこうなの。美味しそうに食べてくれる人の顔を見るのが好きだからって言っていつもサービスしたりしててね」

 

「……だから、もし大将さんのお店を壊しちゃったことに負い目を感じちゃってるなら──」

 

 

 

 "その券をただ返すんじゃなくて、ラーメンを食べに行ってあげて欲しいな"と、ユメは微笑む。

 

 ……そこまで言われてしまったらただ返すのも失礼だなと、二人は紙の束を鞄にしまい込んだ。

 

 

 

「……そうだ、どうせなら今から食べに行く?」

 

「そうですね、お腹も空いてきましたし……あ、でも今行っても大丈夫なんでしょうか?」

 

「もちろん!リンくんたちも屋台で待ってるし、案内するね!」

 

 

 

 二人は"少し帰りが遅くなる"と上司であるアコに連絡を入れると、ユメに連れられて屋台へと歩みを進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おいしっ!!(美味しいです……!)」」

 

 

 

 ──後日、度々アビドスのとある屋台にてゲヘナの生徒の姿が見受けられるようになったとか。




イオリ
⇒何時ぞやで言ってた強化予定キャラの一人。どういう方面で強化するかは過去編書いてた時から既に決めてる。


撫でられホシノちゃん
⇒褒められて大変ご満悦、"うへ〜"ととろけていた。


リンを筆頭としたアビドス組と便利屋68
⇒柴関ラーメンの美味さに舌鼓を打つ二人に対して後方腕組してた。



後日談は一応次で終わる予定をしております。……もしかすると文字数伸びすぎて分ける可能性もありますが。
どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。

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  • いるけど、活動報告とかでいいかな?
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