小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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廃墟へ行こう

 即座に廃部されることは免れたゲーム開発部。……それでも猶予はたったの二週間であり、ぼーっとしていたらあっという間に過ぎ去ってしまう。

 

 

 

「お姉ちゃん、どうするの……?どっちも確率は低いだろうけど……今から私たちがゲームを作るより、部員を募集する方がまだいいんじゃないの?」

 

「それならこの一ヶ月、散々やってみたでしょ。……結局、誰も入ってくれなかったし」

 

 

 

【ぷーっ!VRですら古いのに、何がレトロ風ゲームだよ】

 

 

 

「……ってバカにされるのは、もううんざり」

 

 

 

 部員の募集による廃部の撤回は最早絶望的であり……となれば必然的に、ユウカに対して宣言した通り"ミレニアムプライスでの受賞"という結果で示すしか道は残されていない。

 

 その道が決して楽なものではないという事は百も承知だが、やらなければならない。……あれだけの啖呵をきったのだから出来なかったでは済まされないし、済ますつもりもない。

 

 

 

「という訳で、早速──"廃墟"に行こう!」

 

「……廃墟?」

 

 

 

 唐突にモモイの口から飛び出した、凡そゲーム開発に関係のなさそうなワードに首を傾げる先生。

 

 

 

「そういえば、まだ話せてなかったね」

 

 

 

 双子曰く──"廃墟"という場所は、元々は連邦生徒会が出入りを制限していた、ミレニアム郊外にある謎の領域の事である。

 

 "危険な場所だから"という理由で出入りを制限されていた場所はその実……何がどう危険なのを知るものは誰も居ない。

 

 誰も入ったことがないのか、そもそも入ることが出来ないのか、それとも戻ってきた人が誰も居ないのか……何もかもが謎に包まれたその場所こそが、彼女たちの言う"廃墟"なのだ。

 

 

 

「……どうして、そんな所に行こうと思ったの?」

 

「それはもちろん──いいゲームが作りたいから!」

 

「例え、今の私たちのレベルは"今年のクソゲーランキング1位"に過ぎないとしても……」

 

「私が大好きな……私たちを幸せにしてくれた、このゲームたちが──」

 

「決してガラクタなんかじゃない、大事な宝物なんだってことを!」

 

 

 

 

 ──私は証明したい!

 

 

 

 

 覚悟の秘められたその瞳はきらきらと輝き……彼女が本当に、心の底からゲームが好きなんだということが伝わってくる。

 

 

 ──"好きだ"という気持ちに貴賎はない

 

 

 先生はアビドスでの経験を思い出し……隣に立つ、大切な場所を、大切な人たちを守る為に奮闘し続けたリンをちらりと見る。……視線に気付いた彼は、小さく頷いた。

 

 

 

「お姉ちゃん……先生、私からもお願いします」

 

「うん、二人の気持ちはよく分かったよ。……私()()でよければ、協力させて欲しいな」

 

「本当に!?ありがとう先せ……ん?たち?」

 

()()だよ。危険な場所に行くなら、戦力が多いに越したことはないからね」

 

 

 

 首を傾げ、理解の追いついていない様子だった双子は……先生の視線が隣に立つ者へと向けられていること確認し、その者が頷く様を見て、他の協力者が誰なのかということを順に理解し……揃って、目を見開いた。

 

 

 

「い、いいんですか…?」

 

「あぁ。……俺も、大切な場所を守りたいっていう気持ちはわかるからな」

 

「やった!ネル先輩に匹敵するって噂のカオナシが味方になってくれるなんてラッキーすぎる!」

 

 

 

 予想だにしていなかった援軍に双子は満面の笑みを浮かべる。──仲間の数は十分、目指すべき場所も決まった。

 

 

 

「それじゃあ早速!廃墟にしゅっぱーつ!」

 

「「おーっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、結局廃墟には何を探しに行くの?」

 

「「……あ」」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 先生とゲーム開発部、そしてリンは、立入禁止のテープをくぐり抜け廃墟を探索していた。……探索は、順調とは言えなかった。

 

 

 

「うわ、またロボットが歩いてる……」

 

「ここ廃墟だよね?なんでこんなに沢山いるんだろ……」

 

 

 

 廃墟には武装した謎のロボットが闊歩しており……一体一体はそう強くはなくても、もし戦えば戦闘音につられて次から次へとやってくることは明白。もしそうなれば目当てのお宝、ゲーム開発における聖書とも言える"Gbible"を見つけ出すのは困難となってしまう。

 

 故に彼女たちは、ロボットの目をかいくぐりながらゆっくりと進んでいくしかなかった。

 

 

 

「ねぇナシえもん~、ロボット邪魔だから全部倒してよ~」

 

「誰がナシえもんだ。……戦闘ってのは避けれるなら避けるに越したことはないんだ、文句言わずにさっさと歩きな」

 

「ぐぅ……!正論すぎて何も言い返せない……!」

 

 

 

 いくら先生がいるとはいえ、本来であれば立入禁止区域である廃墟に足を踏み入れていることには代わりが無いことはモモイとて理解している。

 

 故に無用な騒ぎを起こすわけにはいかないが……それでもやはり、廃部まで残り二週間しか残されていない彼女たちが徘徊するロボットに対して"邪魔だなぁ"と思ってしまうのは仕方のないことであった。

 

 

 

「んー、それにしても全然進まない……あ!そういえばカオナシに聞きたいことがあったんだけどさ」

 

「……質問には答えてもいいが、声は小さめにな」

 

「はーい。それで質問なんだけどさ……カオナシって前にアビドスVSカイザーPMCのライブ配信で、最後の方に出てきてたよね?なんでいたの?」

 

「なんでって……俺が、アビドスの人間だからだけど」

 

「……えっ!?そうn……モゴモゴ」

 

 

 

 ミレニアムでよく見かけるため、てっきりミレニアムの生徒か住人かと思っていたモモイは驚きのあまり大きな声を出してしまいそうになり……その直前でミドリが咄嗟に口を塞いだことで、なんとかロボットに見つかるという事態は免れた。

 

 

 

「気をつけてよね、お姉ちゃん……」

 

「ごめんごめん。……それで話を戻すんだけどさ、どうしてカオナシは最後の方に出てきたの?」

 

「……裏で色々やってたんだよ」

 

 

 

 "別働隊を潰したりな"と、流石にビナーという最大級の厄ネタについては話すわけには行かないため、リンは話しても問題ない真実の一部のみを伝える。

 

 

 

「なるほどね~。確かにカオナシは配信とかで表舞台に出るよりかは、裏方で悪巧みしてそうな感じあるもんね」

 

「せめて暗躍って言えよ、お前ちょくちょく失礼だよな」

 

「……でもリンくん、最初にあったときユウカちゃんに"胡散臭い"っていわれてたよね」

 

「ぶっは!先生それほんと!?ユウカに言われたの!?」

 

「お姉ちゃん、笑ったら失礼……フフッ…!」

 

「お前らな……!」

 

 

 

 自分の便利屋としての格好に対して、半ば自覚があるだけに何も言い返せない彼は向ける先のない憤りを抑え込もうとし……ガシャン、ガシャンと当たりに響く音に気がついた。

 

 

 

「「「「……あ」」」」

 

 

 

 視線の先には、廃墟を徘徊する武装したロボット。……それも一機だけではなく、三機、五機……十機と、どんどんと増えていく。

 

 

 

「な、何だかすごい狙われてない!?こっちの方に集まってきてるし!?」

 

 

 

 このままでは、程なくして包囲されてしまうことは明白。"どうしよう!?"と慌てふためく双子とは対象的に冷静さを残していた先生は打開策がないかとあたりを見渡し──少し先にある、とある建造物を見つけた。

 

 

 

「あっち!工場みたいなのが見える!」

 

「え?こ、工場!?」

 

「先生ナイス!急いで!ロボットたちに囲まれる前にあの工場に逃げ込もう!」

 

 

 

 双子と先生は工場に向けて走り出し……一人だけついてきていないことにすぐさま気づくと、背後へと振り返った。

 

 

 

「カオナシ!?何してるの!?」

 

「ん?何って……こんな数のロボットに背後から撃たれたら、俺達はともかく先生が危ないだろ」

 

 

 

 三人は理解した──彼が、殿としてロボットの群れの足止めをしようとしていることに。

 

 

 

「ほら早く走れ、囲まれないうちにな」

 

「そんなのだめだよ!そんなことしたらカオナシが……!」

 

「待ってお姉ちゃん!行ったら駄目だよっ」

 

「でもカオナシを置いていくわけにはいかないでしょ!?」

 

 

 

 口論を始めそうになった双子に対して先生は、努めて冷静に窘めながら告げる──"行こう"と

 

 

 

「先生!?」

 

「大丈夫、彼の強さは私がよく分かってる。……あんなロボット何かに負けたりしないよ」

 

「そうだよお姉ちゃん!カオナシさんの強さは私たちも身をもって知ってるでしょ?……仮にもネル先輩に匹敵するって噂のある人なんだから、今は信じよう……!」

 

「ネル先輩に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかそれ聞いたら負けるイメージどっか行っちゃった。って言うことであとは任せた!」

 

「「いや切り替え早くない……?」」

 

 

 

 その後、先生たちが工場に辿り着いたことを確認したリンは特に苦もなくロボットを蹴散らし撃ち抜き放り投げ……数が減ったところで即座に離脱、これといった怪我もなく無事に工場へと足を踏み入れたのであったとさ。

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