小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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「そういえばカオナシさん、いつもと声違いませんか?」

「……変声機オフにしてるからな」

「へー、今のがカオナシの地声なんだ。……なんか男の人みたいな声してるんだね」

「みたいって言うか……男の人なんじゃない?」

「……えッ!?そうなのッ!?」

「うるさいよお姉ちゃん……気持ちは分かるけど」

「……まぁ、俺自身ヘイローのある男なんて自分以外知らないし、"ヘイロー=女"って思っても仕方ないわな」



以上、入れようと思って入れるタイミングを逃してしまったおまけでした。それでは本編へどうぞ|´-`)チラッ


裸の少女

 工場に逃げ込んだ先生たちは、ロボットの包囲網を無事突破してきたリンを出迎える。

 

 

 

「いやー分かってはいたけど、カオナシって強いんだね!ロボットたちも恐れ慄いて逃げ帰って行ったし、これならゆっくり探索出来そう!……って、どうしたの?」

 

「何か気になることでもあったんですか……?」

 

 

 

 押し黙り、外の様子をじっと見つめる彼の様子に疑問符を浮かべる双子。

 

 

 

「……先生、気づいたか?」

 

「うん。……あのロボットたち、リンくんが工場に入った途端に追うのを止めてた」

 

 

 

 はっきりとした理由は分からない。この工場に足を踏み入れることが出来ないようにプログラムされているのか、それともロボットたちが恐れるような何かがあるのか……少なくとも、リンに蹴散らされたから追うのを辞めたという訳では無いだろう。

 

 そんな先生たちの仮説を聞いた双子は、途端に工場内部が化け物の腹の中のように感じ思わず身震いする。

 

 

 

「い、いやいやいや……考えすぎだって!」

 

「そ、そうですよ!私たちを怖がらせようったってそうは『接近を感知』ぴぃっ!?」

 

「うごぉッ!?ミドリ首じまっでるッ!」

 

 

 

 明らかに電気の通っていなさそうな場所で突如として鳴り響く機械音声に二人は警戒心を露わにし、一人は怯え、一人は死にかける。

 

 

 

『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません』

 

『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません』

 

「はぁ……はぁ……!死ぬかと思った……!」

 

「ご、ごめんねお姉ちゃん……それにしても、なんで私たちの事を知ってるんだろう……」

 

 

 

 危機を脱したと思った直後に妹に殺されかけ、息を荒らげながら深呼吸を繰り返すモモイに謝りながらも……謎の機械音声が自分達のことを知っているという事実に更に不安を煽られるミドリ。

 

 

 

『対象の身元を確認します。……不明』

 

『再度対象の身元を確認………確認成功。赤飛リン、資格がありません』

 

「ん?赤飛リンって誰……?」

 

「……俺の本名だ」

 

「あっ、そういえばさっき先生がカオナシさんのことを"リンくん"って呼んでたような……」

 

「……つまり、この声はカオナシの正体を一目で見破ったってこと!?」

 

「そうなるな……モモイにミドリ、何時でも先生を守れるように準備しておけ」

 

 

 

 顔を隠してもなお判別してきたという事実に、自ずと警戒心が高まっていく。

 

 残るは先生、もし全員資格がないのだとしたら一体何が起きるというのか……もし仮に襲われるようなことがあっても即座に対応できるように、リンは戦闘へと意識を切りかえ全身に神秘を張り巡らせる。

 

 

 

『対象の身元を確認します……シャーレの先生』

 

『………』

 

 

 

 先程までとは明らかに違う反応に、三人は先生を囲むように立ち臨戦態勢を取る。先生もまた、何時でも対応できるようにシッテムの箱を構えつつ、懐にしまい込んだ()()()()へと手を伸ばすが……どうやら、彼らの抱いた心配は杞憂なようであった。

 

 

 

『資格を確認しました。入室権限を付与します』

 

「えぇっ!?」

 

「え、どういうこと!?先生はいつこの建物と仲良しになったの!?」

 

「いや……私にもさっぱり……」

 

 

 

 ……戸惑う先生たちを置いて、機械音声は淡々と言葉を紡いでいく。

 

 

 

『才羽モモイ、才羽ミドリの両名を先生の"生徒"として認定、同行者である生徒にも資格を与えます。承認しました』

 

『ついでに、赤飛リンにも資格を与えます。……承認しました』

 

「……今ついでって言った?」

 

『……下部の扉を解放します』

 

「おい無視すんな……ん?」

 

「「「「……下部?」」」」

 

 

 

 一体何を言っているのだろうか……目の前には扉があるが、足元は当然ながら床しかない。もしかして間違えたのだろうか、ちょっと可愛いところも有るじゃんなんて、脳裏に過った嫌な予感を振り払おうとする彼女たちを嘲笑うように……

 

 

 ガチャン

 

 

 ……と、先程まで足元にあったはずの床が音を立て消えさった。

 

 ほんの一瞬の浮遊感の後……四人の体は地下へと向けて落下を開始、まさかの事態に慌てふためく双子を見てすぐさま冷静さを取り戻した先生は、リンに対して指示を出す。

 

 

 

「リンくん──着地任せた!」

 

「任されたッ!」

 

 

 

 彼は神秘を込めた銃弾を二発分取り出すと下へ向けて思い切り投げ……床に落ちた際に響いた"カァン"という音を耳にすると共に三度、柏手を打つ。

 

 一度目──リンと銃弾の位置が入れ替わる。

 

 二度目──着地した先が安全であることを確認した彼はもう一発の銃弾とモモイを入れ替え、三度目で自身とミドリの位置を入れ替えた。

 

 

 

「おわぁッ!?なになになに!?」

 

「わ、私たちさっきまで落ちてる最中だったはずじゃ……!?」

 

 

 

 下から響いてくる双子の声を聞きながら、リンは神秘を持たぬが故に能力の対象とすることが出来ない先生を抱えるとそのまま落ちてゆき……もう間もなく着地という所で空を蹴り落下の勢いを弱めると、無事着地を果たす。

 

 

 

「ふぅ……ありがとね、リンくん」

 

「気にするな、これくらいどうってことない」

 

「………いやいやいや、なんでそんなに平然としてるのさ!?今の何!?何したの!?」

 

「今、カオナシさん何も無いところを蹴ってなかった……?」

 

 

 

 廃墟という謎に包まれた場所に足を踏み入れて以降、最も不可解な事象を起こして見せたリンに対して驚愕を露にする二人を"それについてはまた後でな"と宥めながら彼は状況把握のために辺りを再度見渡し………徐に両手で目元を覆う。

 

 

 

「どうしたのさカオナシ」

 

「……向こうを見てくれ」

 

「向こう?………えっ!?」

 

「「「お、女の子!?」」」

 

 

 

 リンが下を向きながら指を指した方へと先生たちが視線を向けたその先には……一人の、裸の少女が横たわっていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 恐る恐る近づく先生達に対し……少女は一切の反応を示さない。

 

 

 

「……返事がない、ただの死体のようだ」

 

「不謹慎なネタ言わないで!それに死体っていうか……ねぇ、見て」

 

 

 

 ミドリの言葉を受け、リンを除く二人の視線が少女へと向けられる。静かに横たわるその様は、怪我をして倒れていたり、気絶や眠っていたりと言うよりも……

 

 

 

「……何だか、"電源が入ってない"みたいな感じがしない?」

 

「言われてみれば確かに……」

 

 

 

 "何だかマネキンっぽいね"と、少女にそっと触れる。柔らかくてしっとりとしたその肌は普通の人と何ら変わりなく、モモイは思わず感嘆の声を上げ───ふと、少女の横たわる台座に文字が書かれていることに気がついた。

 

 

 

「……AL-IS……もしかして、この子の名前?なんて読むんだろ……アル、イズ……エー、エル、アイ、エス?うーん、なんかしっくり来ない……あ、もしかして──」

 

 

 ──"アリス?"

 

 

「……ちょっと待って、これよく見ると全部ローマ字な訳じゃなくて……AL-1Sじゃない?」

 

「え、そう?」

 

 

 

 ミドリに言われて改めてよく見てみると、確かに"AL-1S"と書かれていた。

 

 まるで型番を表しているかのような文字の羅列……少女は一体何者なのか、そもそもこの場所は一体何なのだろう?

 

 次々と湧き上がる疑問に頭を悩ませる彼女たちに対し、リンは一つの提案をする。

 

 

 

「……取り敢えず、何か着せてやらないか?」

 

「……そういえばカオナシも居たね」

 

「は、早く着せてあげよっか……!」

 

 

 

 ……未だ目を隠したままの彼の姿を目にしたモモイたちは、抱いた多くの疑問を一旦頭の片隅へと追いやり、いそいそと目の前の少女に服を着せていくのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 程なくして、予備として持ってきていた制服を着せ終えたその時──"ピピッ、ピピピッ"と、警報音のような音が四人の耳朶を打つ。

 

 

 音の発生源は───目の前の少女

 

 

 "まさか"……と思ったのも束の間、少女は目を開くと当たりをキョロキョロと見渡す。……その様はまるで、目覚めたばかりの雛鳥が親を探しているようにも感じ取れた。

 

 

 

「……状況把握、難航。会話を試みます……説明をお願い出来ますか」

 

「え、えっ?せ、説明?なんのこと?」

 

「せ、説明が欲しいのはこっちの方!あなたは何者?ここはいったい何なの!?」

 

「……本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認。データがありません」

 

 

 

 "データなし"──現状唯一の手掛かりである少女が告げたその言葉、人で例えるならば……現在の彼女は記憶喪失状態に当たるのだろう。

 

 長年放棄されていたが故に記憶域に障害が発生したのか、それとも他の要因があるのかは不明だが……今この場で少女に対する答えを得ることが出来ないことだけははっきりとしていた。

 

 また少女から敵意や害意といったものは感じられず、しかし無表情ながらも何処か、不安や困惑を抱いているようにも見受けられる。

 

 四人は目配せすると同時に頷く。……この場に、記憶喪失の少女を一人放置する選択を取るような非情な人間は一人としていなかった。

 

 

 

「一旦、私たちの部室に連れていこう」

 

「そうだね。……私たちと一緒に、着いてきてもらってもいいかな?」

 

「……了承、あなた方の指示に従います」

 

 

 

 同意を得た先生たちは、少女を連れて来た道を戻っていく。……その道すがら、少女を背負いながら歩くリンは一人考え事をしていた。

 

 

 

(普通の人間と見分けのつかないほどのロボットか……一旦、リオとヒマリ……後はユメとホシノにも報告しておいた方が良さそうだな)

 

「……疑問、どうかしましたか」

 

「ん?いや何、ちょっと君の今後について考え事をな。……まぁ、悪いようにはしないし、させるつもりも無いからそう気にするな」

 

「……了承」

 

 

 

 その後彼女たちはロボットの監視の目を掻い潜り……無事、ゲーム開発部の部室へと帰還するのであった。

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  • いる
  • いるけど、活動報告とかでいいかな?
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