小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

92 / 115
廃墟で出会った、少女の名は

 部室へと無事に戻ってきた先生たちは、廃墟で出会った少女の今後について話あって……モグモグ

 

 

 

「ああっ、私のWeeリモコンを口に入れないで!ペッてして!ペッて!」

 

 

 

 ……話し合っていた。

 

 

 

「ねぇお姉ちゃん、連れてきたのはいいけどどうするの?連邦生徒会やヴァルキューレに連絡する?」

 

「ふっふっふ……安心しなよミドリ。この子のことについてどうするかは、ついさっき私の灰色の脳細胞がいい案を出してくれたからね!」

 

「え、すっごく不安なんだけど」

 

「ミドリ???」

 

 

 

 実の妹からのあまりにもあんまりな言い草に内心涙を流すモモイ。しかし心の強い彼女はこの程度の言葉ではめげたりせず、咳払いをして場の空気をリセットすると自身の案を自慢気に語りだす。

 

 

 

「思い出してほしいんだけど、そもそも私達が危険を冒してまで"G.Bible"を探してた理由は何だったっけ?」

 

「それは……いいゲームを作って、廃部を免れるためでしょ?」

 

「そう、今一番大事な問題はそれ。良いゲームも作りたいけど、まずは部活の維持が最優先……そのためには二つの条件のうち、どっちかをクリアする必要がある」

 

 

 

 どっちかも何も、部員を増やすのが無理だからミレニアムプライスでの受賞を目指すという話になっていたはず……そこまで考えて、ミドリは姉の言いたいことに気づき目を見開く。

 

 

 

「まさかお姉ちゃん、この子をミレニアムの生徒に偽装して、うちの部に入れようとしてるの……!?」

 

「その通り!という訳で私たちの仲間に……ああっ!私の"ゲームガールズアドバンスSP"食べちゃダメ!8コア16スレッドカスタムCPUに8K解像度を誇る、キヴォトス唯一の16bitゲーム機なんだよ!?」

 

 

 

 モモイのドヤ顔は、ほんの十秒ほどで崩れ去った。慌てふためく彼女の様子に苦笑いを浮かべながらも……彼女の案は打算に満ちたものではあるが、存外悪いものでは無いかもしれないと残る二人(リンと先生)は考えていた。

 

 もちろんシャーレで面倒を見ることも可能ではあるし……何ならアビドスに入学させてもいいとは思う。……アビドスは何時でも新入生、転入生を募集している故に。

 

 然しながら、少女はゲーム開発部の依頼で廃墟に訪れた結果出会ったのだ。……それに、見た目的な面だけ見れば歳も近そうな彼女たちと一緒にいた方が少女にもいい影響があるかもしれないと、二人は賛同の意を示す。

 

 

 

(正直、部員を増やしただけで"はい解決"ってなるほど単純な問題じゃない気がするが……まぁ、いいか)

 

「……生徒として迎え入れるんなら、名前が必要なんじゃないか?」

 

「そうだね。"AL-1S"はコードネームとしては良いかもしれないけど、流石に人の名前としてはちょっとね」

 

「折角だし、お姉ちゃんが決めてあげたら?」

 

「私?んー……じゃあ"アリス"で!」

 

 

 

 "どう、気に入った?"……と、笑みを浮かべながら返答を待つモモイと、見守る先生たち。暫し無言の時間が続いた後──

 

 

 

「……肯定。本機、アリス」

 

 

 

 と、小さく頷いた少女の表情は……ほんの少しだけ、笑みを浮かべているようにも見えた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 方針は決まったものの、問題は未だ山積みである。武器を用意し、学生登録をし、学生証を入手する……というのも大事だが、何よりもまず早急にどうにかしなければならないのは──少女の口調。

 

 

 

「やらなきゃいけないのは分かるけど……この子をうちの部員に偽装するなんて、本当に大丈夫なのかな?」

 

「"大丈夫"の意味を確認……"状態が悪くなく問題が発生していない状況"のことと推定、肯定します」

 

「……うん、全然大丈夫じゃないね」

 

 

 

 ……正直今の話し方では、生徒として偽装したところで疑われるのは明白、もしユウカに"本当にゲーム開発部なのか"と聞かれた際に

 

 

 ──"肯定、あなたの質問に対し、アリスの回答を提示。私はゲーム開発部の部員"

 

 

 ……なんて言ってしまった際には、全部が台無しになりかねない。

 

 

 

「はぁー……先生とカオナシさんはもう帰っちゃったし、お姉ちゃんは"学生証は私の方で何とかするから!"って言ってどっか行っちゃったし……話し方を教えるっていっても、どうやれば良いんだろ……」

 

 

 

 普通は動画を見たり、周りの言葉を真似していくうちに自然にって感じだよね……子供用の教育プログラムとか、検索したら出てくるかな?と一人頭を悩ませるミドリの傍で、物珍しそうにキョロキョロと辺りを見渡していたアリスは"あるもの"を見つけた。

 

 彼女が拾い上げたそれは、一冊のゲーム雑誌であった。……それも、彼女たちの作ったゲームが載せられ、こっぴどく酷評されたもの。

 

 ……そんな苦い思い出の込められた雑誌を拾うアリスを目にしたミドリの脳裏に、一つの考えが浮かび上がった。

 

 

 

「ねぇ、アリスちゃん……私たちのゲーム、やってみない?」

 

「……?」

 

「えっと……会話をしながら進められるから、ゲームをやってみるのも勉強になるかなって思ったんだけど……駄目、かな?」

 

「……」

 

 

 

 "沈黙"──問い掛けに対して悩みを見せるアリスの様子に、"やっぱりクソゲーランキング一位を取るようなゲームなんてやりたくないよね……"と沈む気持ちを抑えながら、ミドリが自身の提案を取り消そうとした時──アリスが口を開く。

 

 

 

「ここまでの言動の意図、完璧には把握しかねます。しかし……」

 

 

 ──"肯定、アリスはゲームをします"

 

 

「……っ!ほ、本当に!?ちょ、ちょっと待ってて、すぐにセッティングするから!」

 

 

 

 自分で提案しておきながらも、本当に肯定の言葉が返ってくると思っていなかった彼女は慌ただしく、それでいて確かな喜色を滲ませながらゲームが遊べるように準備をしていく。

 

 程なくして準備が完了すると、ミドリはコントローラーを手渡し……アリスは初めての、一生涯忘れることの無いゲームの世界へと旅立つのであった。

 

 

 ◇

 

 

 ──"まずはBボタンを押して、目の前の武器を装備してみてください。"

 

「ボタンを押します……Bボタン……」

 

 ドカーーーン!!

 

「???」

 

 ──"GAME OVER"

 

「!?!?」

 

 

 ◇

 

 

 ゲームを開始してから、二時間後──途中で合流したモモイも混ざり、開発者の解説ありきでもなお余りにも予測不能な展開の連続に、アリスの脳内CPUはオーバーヒートを起こしかけていた。

 

 

 

「……電算処理系統、及び意思表示システムに致命的なエラーが発生」

 

「質問。どうして母親がヒロインで、それでいて前世の妻で、さらにどうしてその妻の元に子供の頃に別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきているのか……」

 

「いえ、そもそも"腹違いの友人"という表現はキヴォトスの辞書データに登載されていな──エラー発生、エラー発生!」

 

 

 

 ……いやもうこれは予測不能とかそんな生易しいものでは無いのかもしれない。

 

 まさに混沌(カオス)、遊んだ者全ての脳をぐちゃぐちゃに掻き乱すような、作った張本人のうちの一人であるミドリですら度々"これどうなんだ?"と思ってしまうようなゲームであっても……アリスは、コントローラーを手放すことは無かった。

 

 

 

「……リブート、プロセスを回復。……ふぅ」

 

「これが、ゲーム……再開します」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 それから更に一時間後──アリスは遂に、"テイルズ・サガ・クロニクル"をクリアした。

 

 

 

「こ、ろ、し、て……」

 

 

 

 ……決して無事にとはいかなかったが、それでも彼女はやり遂げたのだ。──否、成果はそれだけでは無い。

 

 なんとアリスは、ゲームをやればやるほど会話の練度が上昇していたのだ。

 

 

 

「勇者よ、汝が同意を求めるならば──私はそれを肯定しよう」

 

 

 

 ……ゲームからそのまま覚えた影響か、未だ不自然なところもあるが……最初の、ただ言葉を羅列していただけの頃よりかは遥かにマシであった。

 

 ゲームがアリスの会話能力向上に役立つことは分かった。となればやるべき事はあとひとつ──ゲームの感想を訪ねる事である。

 

 

 

「アリスちゃん……私たちのゲーム、どうだった?面白かった!?」

 

「……説明不可」

 

「え、ええっ!?なんで!?」

 

 

 

 やっぱりつまらなかったのだろうか……"類似表現を検索"と言って以降押し黙っている彼女の様子に不安を覚え始めた頃、アリスはおもむろに口を開いた。

 

 

 

「……面白さ、それは、明確に存在……プレイを進めれば進めるほど、まるで別の世界を旅しているような……夢を見ているような、そんな気分……もう一度……」

 

「もう一度……」

 

「……」

 

 

 ツー……と、一滴の涙が頬を伝う。

 

 

「ええっ!?」

 

「あ、アリスちゃん!?どうして泣いてるの!?」

 

 

 

 "そんなに感動してくれたんだ!"とはしゃぐモモイと、"ギャグよりRPGのはずなんだけどなぁ"と困惑するミドリ。

 

 初めこそまさか涙を流すとは思っておらず驚いてしまったものの……とうに二人の心の内は喜びに満ちていた。

 

 

 

「ありがとうアリス!その辺の評論家の言葉なんかより、その涙の方が100倍嬉しいよ!あー、早くユズにも教えてあげたい……!」

 

「……ちゃ、ちゃんと、全部見てた」

 

 

 

 モモイの言葉に呼応するように、突如として聞こえてきた第三者の声と"ギギーッ"というロッカーの開く音。

 

 まさか廃墟からお化けが着いてきたのかと、震え後退りながら手に持ったゲーム機を投げようとしてしまうミドリをなだめている間も扉は止まることなく開いていき……双子やアリスとほとんど背丈の変わらない、赤色髪の少女が姿を現した。

 

 疑問符を浮かべながらじっと見つめるアリスと無言で視線を交わし合う彼女の名は──花岡ユズ。……どうやらモモイ達が廃墟から帰ってきた辺りからずっとロッカーの中に隠れていたらしかった。

 

 ゲーム開発部の部長である彼女は、言葉を詰まらせながらもアリスに向けて告げる。

 

 

 

 ──"ありがとう"、と

 

 

 

「ゲーム、面白いって言ってくれて……もう一度やりたいって言ってくれて……」

 

「泣いてくれて……本当に、ありがとう」

 

「面白いとか、もう一度とか……そういう言葉が、ずっと聞きたかったの」

 

 

 

 "だから、ありがとう"──と、ユズは心の底から嬉しそうに、少しばかりの涙を携えながら……小さく笑みを浮かべるのであった。




↓以下おまけ↓

「そういえば先輩、ミレニアムに行ってたらしいね〜。……どんな用事だったの?」

「ん?先生に道案内を頼まれてな……その後は成り行きで廃墟に行ってた」

「へぇ………廃墟?」

「おう。……隙あり」

「うへぇ、このくらい余裕で弾いて……いったぁ!?」

「計算通り、かんぺき〜。……そうそう、明日から暫くの間様子見でミレニアムに顔出しに行ってくるわ」

「……何か危険な事に首突っ込んだりはしてないですよね?」

「今のところはな、もしそうなりそうだったらちゃんと伝えるから安心してくれ……はい終わり」

「……あっ!?私のカ〇ビィがっ!?」

「負けちゃったねホシノちゃん……よーし、今度はチーム戦でやろ!……リンくんは一人ね!」

「おい待て大激闘クラッシュシスターズで6対1は流石にダメだろ」

オリ主の容姿情報

  • いる
  • いるけど、活動報告とかでいいかな?
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。