小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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遂に総合評価が6000を超えました、当小説を読んでくださる読者の皆様方、いつもありがとうございます。
ミレニアム編も始まったばかり、エデンや最終編まで辿り着くのにはあとどれだけかかることやら……しかし決して投げ出すことはしないので、今後ともどうぞ『小鳥遊ホシノの先輩』をよろしくお願い致します。


それでは、本編へどうぞ|´-`)チラッ


忍び寄る危機

 ──ミレニアムサイエンススクール、差押品保管所前

 

 

 

 ヴェリタスとエンジニア部の協力の元、セミナー及びC&Cの包囲網を辛うじて潜り抜けた先生とゲーム開発部の少女たちは目的の物()が保管されているであろうセミナーの差押品保管所へと無事に辿り着いた。

 

 

 

「はあ、はあ……!なんっ…とか逃げ切れた……っ!先生、ミドリ、アリス、大丈夫!?」

 

「アリスのHPは十分です!」

 

「ふぅ……私も先生も無事だよ、お姉ちゃん」

 

「そっか、良かった……!」

 

 

 

 懸命に逃げて来たゲーム開発部。……モモイは振り返り、皆の無事を確認すると乱れた息を整えながらほっと胸を撫で下ろす。

 

 

 

「ふぅ……よし、落ち着いた。……ここが保管所で合ってるんだよね?だいぶめちゃくちゃになってるけど……」

 

「戦闘や爆発の余波がここまで届いたのかな、結構激しい戦いだったし。……鏡が無事だと良いんだけど」

 

「……ユウカたちはさっきの時点でアリスが鏡を持ち出したって思い込んでるだろうし、きっと今は部室の方に逃げたって考えてるはず」

 

「そうだね。……ただ、時間はあるかも知れないけど万が一ってこともあるから…… 兎に角、今は鏡を見つけることに専念しよっか。時間制限クエスト……『ユウカちゃんが来る前に"鏡"を探せ!』ってところかな」

 

「はい!アリス、クエストを開始します!」

 

 

 

 先生たちは散乱した機材などを退けながら、鏡を探していく。

 

 どのような見た目かは聞いているが、実物を目にしたことが無い彼女たちは時折確認し合いながら鏡を探し……数分後、ようやく目的の物を見つけ出した。

 

 

 

「あった!」

 

「ナイスミドリ!よし、見つかる前に早く──」

 

 

 

 "帰ろう"……と、扉に向かって行くモモイの手を掴み、引き止めるアリス。

 

 

 

「ん?どうしたのアr「静かに、ミュートでお願いします」んむぅ」

 

「……誰かがこちらに向かって来ています。足音から考えて、恐らく人数は一人」

 

「うーん……人数はこっちのが多いし、一人くらいなら無理やり突破しちゃおうか」

 

 

 

 "このまま此処で隠れて、ユウカやC&Cが纏めて戻ってきたら面倒だし"と、銃を構え速攻を仕掛けようとするゲーム開発部。……そんな彼女たちの元に、ヴェリタスからの連絡が届いた。

 

 何かあったのだろうかとミドリが応答すると、返ってきたのは『逃げて、いや隠れて!早く!何としてもそこから──……』と、普段冷静な小鈎ハレからは考えられないような、慌てふためいた声。

 

 ネズミでも出たのかなと呑気なことを考えていた双子を他所に、接近してくる相手を調べていたアリスはその特徴を告げる。

 

 

 

「ミレニアムの生徒名簿を確認……対象を把握。身長146cm、ダブルSMG、メイド服の上から龍柄のスカジャン……」

 

「え?………!?そ、それってまさか……!?」

 

 

 

 差押品保管所へと近づいてくる生徒の特徴を聞いた双子は、先程までの余裕綽々な表情から一転、顔を青ざめさせて息を飲む。

 

 アリスの言っていることが本当なのだとしたら、対峙するのは不味い……あまりにも不味すぎる。

 

 いくら先生の指揮があるとはいえ、たった三人では勝てるビジョンが全くもって思い浮かばないミレニアムの最高戦力が近付いてきているのだと悟った彼女達は、大慌てで机の下に身を隠す。

 

 直後、音を立てながら保管所の扉が開かれ──C&C、コールサイン・ダブルオー"美甘ネル"が姿を現した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……ふーん、随分とめちゃくちゃになってんな。こりゃ片付けが面倒そうだ」

 

 

 

 保管所の中をぐるりと見渡す、ミレニアム最強の名を恣にする彼女の姿は身を隠しているが故に直接目にすることが出来ないながらも……ゲーム開発部の少女たちは恐れ戦き、決して見つからないようにと息を潜める。

 

 

 

「ね、ネル先輩!?どうしてこんなところに!?」

「カオナシさんとデート中なんじゃなかったの!?」

 

 

 

 鏡も手に入れ、後は保管所を出て部室に帰るだけだと言う時に限って最も出会したくない相手が、絶対に現れることがないと思っていた相手が現れた事に絶望を覚え……双子は無意識に小さく愚痴を零してしまった。

 

 ……その愚痴が、命取りになるとも知らずに。

 

 

 

「んん……?今、何か聞こえたような気が……」

 

「……気配もあるな。……机の下か?」

 

 

 

 ──普通なら決して気付かないような、とても小さな声をネルは聞き逃さなかった。

 

 

 

((!?))

 

 

 

 よもや気づかれると思っていなかったモモイたちは、両手で口を塞ぎ息を殺す。……例えもう全ての行動が遅かったのだとしても、そうする事しか彼女たちには出来なかった。

 

 ザッ…ザッ……と、足音が少しずつ近付いてくる。……死神の鎌が首元に添えられているかのような錯覚を覚え、双子は恐怖と絶望に涙を滲ませる。

 

 

 

(……この人、今までエンカウントしたどの人とも違います)

 

(恐怖……初めての感情……今この状況で、戦闘が発生した場合の勝利確率……0%……!)

 

 

 

 机の下に隠れるゲーム開発部の視界の端に、遂にネルの脚が映り込んだ。

 

 "もうダメだ…おしまいだぁ…"と絶望の縁に立たされた彼女達の脳裏には、一か八か戦ってみようという選択肢は微塵も存在していなかった。……それ程までに、"美甘ネル"の名はミレニアム生から恐れられていた。

 

 バレたら終わり、しかしもう逃げ出すことすら不可能……机の端に手を置いたのか、僅かに除く指先をじっと見つめることしか出来ないモモイ達の事を………天はまだ、見放してはいなかった。

 

 

 

「あ、あの!」

 

「あん?」

 

 

 

 突如として第三者の、然してゲーム開発部にとってはとても馴染みのある声が保管所内に響きわたり、ネルは声の主へと向き直る。

 

 ……机に置かれていた手が離れていく様子を息を潜めて見守るモモイ達は安堵すると共に……この場に同部活の仲間であるユズが訪れた事に、内心驚きを露わにしていた。

 

 

 

(ユズちゃん、どうしてこんなところに……!?)

 

「……あんたは?」

 

「あ、えっと……せ、セミナー所属の、ユズキです」

 

「ユズキ、か……随分と慌ててたけど、何かあったのか?」

 

「は、はい。戦闘ロボットが暴走したせいで、あちこちがめちゃくちゃになってしまってるんです!アカネ先輩やカリン先輩が、制圧を試みていますが……じょ、状況的に、助けが必要かと思い……」

 

「あぁん?暴走??……ったく、あれを差し押さえたのなんか随分前だろうに、まだ整備が終わってねぇのか。……はぁ、仕方ねぇな」

「……どうせならカオナシも呼んで続きでもやっか?偶数だったせいで引き分けに終わっちまってたしな」

 

「……?今、なにか……?」

 

「気にすんな、こっちの話だ。……んで、あんたはどうする?一緒に来るか?」

 

「い、いえ……わ、わたしはここの片付けをしておきます。そ、その、戦闘は怖くて……経験もあまりないですし……」

 

「そうか」

 

 

 

 ネルは特に気にした様子もなく頷いた後、保管所の扉の方へと向かっていく。そんな彼女へと道を開ける為に、ユズは横へとずれて扉の前から立ち退いた。

 

 そのまま側を素通りし、出ていこうとしたネルは……唐突にピタリと足を止め、ユズへと振り返った。

 

 

 

「……あんたに一つ、言っておきたいことがある」

 

「は、はい……!?」

 

「そう怯えんな、別に取って食ったりなんかしねぇっての」

 

 

 

 怯えた様子の彼女に苦笑しながらも、ネルはただ真っ直ぐにユズの目を見ながら、告げる。

 

 

 

「こいつはあたしの持論なんだが……戦闘において一番大事なのは、武器でも経験でもねぇ」

 

 

 ──度胸だ

 

 

「その点、あんたに素質が無いとは思わねぇ」

 

「そ、そうでしょうか……?」

 

「そうだ。……自分がどう思われてるかくらい、あたしにも分かってる。それに、あんたが結構ビビりなこともまあ分かる」

 

「それなのに初対面でこのあたしに声を掛けたんだ。あたしが保証してやるよ───あんたには、間違いなく度胸がある」

 

「は、はい!あ、ありがとうございます……!?」

 

「言いたいことはそれだけだ。……じゃあな、またどっかで会おうぜ」

 

 

 

 笑みを浮かべ、右の手を振り振り返ることなく保管所をあとにする。……ネルの姿が見えなくなってから暫くして、ユズはへなへなとへたり込んだ。

 

 ──人と接することが苦手なはずの彼女が勇気を振り絞ってここまで来てくれたおかげで、無事に窮地を脱することが出来た。モモイたちは机の下から這い出ると涙を流しながらユズを抱き締める。

 

 

 

「わっ!?」

 

「ユズうぅぅぅぅー!!来てくれてありがとぉぉおっ!!」

 

「ユズちゃん凄い!おかげで命拾いしたよっ!」

 

「えへへ……ち、力になれて良かった……。そ、それで、いまアリスちゃんが持ってるのが……?」

 

「はいっ!これが人類と世界を救う、私たちの新たな武器──」

 

 

 

 ──"鏡"です!

 

 

 

 改めて全員の目に映るようにと"鏡"を手にした両手を天へと掲げ、アリスは満面の笑みを浮かべる。……ヴェリタスやエンジニア部の協力もあって、ようやく手にすることができたとモモイたちもまた喜びを露わにしていた。

 

 

 

「……っといけない、今は一刻も早くヴェリタスの部室にいかなきゃ!もしネル先輩が戻ってきたら、折角ユズが作ってくれたチャンスが無駄になっちゃう!」

 

「そうだね、私たちの任務はまだ終わってない!」

 

「この先には戦闘型ロボットがたくさんいる……気を付けて!なるべく素早く、セミナーやC&Cに気取られないように突破しよう……!」

 

「後方は私が担当します。先生、指示を!」

 

 

 

 先生の指揮のもと、ゲーム開発部は必要最低限のロボットの撃破で効率よく、足早に部室へと向かっていく。

 

 

 

「オラァ!ゴミは掃除しねぇとなぁ!!」

 

「ひぃっ!?」

 

「だ、大丈夫だよね!?急にこっちに来たりしないよね!?」

 

 

 

 ……道中、遠く離れた場所で響く銃撃音に混じって聞こえてきたネルの怒声に恐怖しながらも……彼女たちはヴェリタスの部室にたどり着き、此度の"鏡"奪還クエストを無事に終えたのであった。




※ゲーム開発部VSC&Cについては、原作と全くもって展開が変わらない為カットとなりました。


>戦闘が発生した場合の勝利確率……0%……!
原作では「ほぼ0%」でしたが、本作では「0%」と断定。理由はまあ……ね?


>偶数だったせいで引き分けに終わっちまってた
リンくんも対多数戦は得意ではありますが、どちらかと言えば殲滅よりも能力を駆使しながらのサポート方面。
対風紀委員戦の時みたく相手の武器を利用したり、また準備を整えさえすれば能力を用いて大質量で押し潰したりもできるが、単純な殲滅速度で言えば火力と連射速度を兼ね備えたネル先輩には劣る。……にも関わらず、引き分けとなったのは何故なんでしょうね?
※要因はリンくんではなくネル先輩にあり

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