小鳥遊ホシノの先輩   作:燐檎あめ

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気付けば総話数100和、UA数60万目前に迫ってきました|´-`)チラッ


喜びも束の間、襲撃は何の前触れもなく唐突に

 最高のゲームを作ることを改めて決意したゲーム開発部は、ミレニアムプライスへの提出を間に合わせるために寝る間も惜しんで"テイルズ・サガ・クロニクル2"の開発に勤しんでいた。

 

 決して期日に余裕があったわけではない、しかし"大切な仲間(友達)と過ごす場所を守りたい"という思いが彼女たちを突き動かし、過去類を見ないほどの手際で持って開発を押し進める。

 

 ……そして、時は受付期限残り二分前

 

 

 

「おねえちゃん!まだ!?」

 

「ま、待って、急かさないで!あとこれだけ入力したら終わりだから……っ!」

 

「後二分だよ!?急かさずにはいられないって!」

 

「正確には96秒です。そう言っている間に残り92秒……」

 

「わ、分かった分かった!もう出来たから!」

 

「こっちは簡単なテストだけやって……うん、エラーは出てない。モモイ!」

 

「オッケー!ファイルアップロード……開始!」

 

 

 

 受付期限まで残り19秒、対してアップロード完了予想時間は15秒……もし回線の遅れで少しでも止まるようなことがあれば、その時点でこれまでの努力は全てお釈迦となってしまう。

 

 "お願いだから、止まらないで"と両手を合わせ祈るゲーム開発部一同。10%、25%、67%……彼女たちの祈りが通じたのか、進捗パーセンテージは一度の滞りもなく増加していき……

 

 

 

 ──"ミレニアムプライスへの参加受付が完了しました。"

 

「間に合ったぁ~!!」

 

 

 

 画面に表示された"受付完了"の文字を目にすると、ここ一週間気を張っていたモモイたちは安堵の息を吐き、だらりと床に寝転がる。

 

 

 

「ギリギリ……心臓止まるかと思った……」

 

「あとは、三日後の発表を待つだけだね……」

 

 

 

 そう、何とか提出は間に合ったが、まだ結果が出たわけではない。

 

 後三日……ミレニアムプライスの受賞結果次第で、自分たちがこの部室に居られるのか、そうじゃないのかが決まることとなる。

 

 短いようで、今後の進退がかかっている彼女たちには永遠にも感じるほどに長い日数。……このまま座して待っていることなど出来ないと、モモイはとある提案を口にする。

 

 

 

「ねぇ……先に、Web版の"テイルズ・サガ・クロニクル2"をアップしない?」

 

「「!?」」

 

 

 

 彼女(我が姉)は一体全体、何を言っているのだろうか。確かに授賞式までの三日間、ただ待っているだけというのがもどかしく感じる気持ちは分からなくもない。審査員の評価よりも先に、ユーザーの反応を見たいという気持ちも……まぁ、理解はできる。

 

 

 

「うーん、でもちょっと怖いかも……低評価コメントも心配だし」

 

「確かにミドリの気持ちも分からなくは無いけど……私たちはやれるだけの事をやったんだしさ、自信を持って見てもらおうよ!」

 

「それは…そうなんだけど……」

 

 

 

 ミドリは別に、今回作ったゲームに自信が無い訳では無い。にも関わらず、何処か躊躇いがちな理由……それは、ユズの事が気がかりであったから。

 

 "もし、また低評価や誹謗中傷がいっぱい来て、ユズちゃんが傷付くような事があったらどうしよう"……そんな不安もあり、一歩踏み出せないでいた彼女は……無意識のうちに、ユズへと視線を向けていた。

 

 ……そして、ユズもまたミドリの懸念に自分が関わっている事に気付く。

 

 

 

「ミドリ……わたしなら、大丈夫だよ」

 

「ユズちゃん…?」

 

「もし前みたいに、低評価コメントのオンパレードになったとしても……みんなが一緒だから、きっと受け止められる」

 

「それに……わたしたちは、わたしたちに出来る全力を尽くしたから」

 

「作品は、見てくれる人、遊んでくれる人がいて初めて完成されるもの。……わたしは、みんなで作ったこのゲームをきちんと完成させたい」

 

「心配してくれてありがとう……でも、わたしは大丈夫だから」

 

「………ユz「よし!アップロード開始!」え、お姉ちゃんっ!?」

 

 

 

 まさかのセリフキャンセルである。自分の意見を聞くこと無くWeb版のアップを初めてしまった姉に対してミドリは文句を言うが……既に時遅く、転送は完了してしまう。

 

 遊んでもらい、感想が貰えるまでは後2、3時間はかかるだろうか。……アップロードしてしまったものは仕方がない、ミドリはため息を吐きながらも、"コメントが来るまでは休憩かな"と気持ちを前向きな方へと切り替える。

 

 

 

「よし、来るまではゲームでもして待ってよっか!アリスとユズはどーする?」

 

「……って、アリス?どうしてコンピュータの前に座ってるの?」

 

 

 

 モモイの視線の先には、じっとモニターを見つめるアリスの姿が。気になって訊ねて見れば、返ってきたのは一言……"待機します"という言葉のみ。

 

 ……どうやら彼女は、コメントが送られてくるまでずっと座して待つつもりらしかった。

 

 

 

「わ、わたしも一緒に待とうかな……どっちにしろ、緊張で眠れないだろうし……」

 

「そうだね……どうしよ、私もドキドキしてきちゃった」

 

 

 

 そうして待ち始めてから程なくして……"ピロン"と早くも一通目のコメントが届く。

 

 

 

《hermet021:わお、これ前回クソゲーラn《ShirokoKawaii:ん、先輩が話してたゲームを見つけたからみんなで遊んでみる。》

 

「ぉ……?」

 

 

 

 ゲームをやってもいない人からのクソみたいなコメントに被せる様に来た二通目の"遊んでみる"というコメントを目にし、怒りと喜びが綯い交ぜになるゲーム開発部。……アリスに至っては、両極端の感情が一度に発生したためにオーバーフローをおこし掛けてすらいた。

 

 一度コメントが付いたことを皮切りとしてか、ピロン、ピロン、ピロンピロンピロンピロン……と続々と送られて来るコメントの数々。

 

 ダウンロード数は既に2000を越え、更には有名なポータルサイトに自分たちの作ったゲームが掲載されるという予想だにしていなかった事態に目を白黒させるゲーム開発部一同。

 

 その殆どが怖いもの見たさによるものだとしても、遊んでくれる人がいるというのは嬉しく……同時に、まさかここまで注目されるとは思っていなかった為に逆に怖さすら覚え始めていた。

 

 

 

「……ドキドキします」

 

「うぅっ!私は期待と不安で心臓が爆発しちゃいそうだよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドカアァァァンッ!!!

 

「「「!?」」」

 

 

 

 モモイの言葉に呼応するように、突如として爆発音が響き渡る。緊張感が高まっていた中での唐突な轟音に、モモイたちは口から心臓がまろび出かけてもおかしくない程にビクリと身体を跳ねさせ飛び上がる。

 

 純粋なアリスは"本当に心臓が爆発してしまったのか"とモモイのことを心配するが……当然の事ながら先の音は心臓が爆発した音ではない。

 

 音の正体、それは13.97mm砲──C&Cのスナイパー"角楯カリン"の狙撃によるものであった。

 

 部室正面に対して11時の方向、約1kmも離れた距離からの狙撃は流石はミレニアムの誇るエージェントなだけはあると感心してしまいそうな腕前。……今まさに狙われて居るのが自分たちでさえなければ、先生やゲーム開発部もまた、素直に感心していたことだろう。

 

 反撃しようにも距離が遠い……何よりも、ずっとこの場に留まっていては自分たちの守ろうとした部室が壊れてしまう。

 

 

 

「狙撃銃の仕組みの都合上、リロードには少なからず時間がかかる。……モモイちゃんとミドリちゃんは前衛、ユズちゃんは中衛、アリスちゃんは後衛で何時でも撃てるようにチャージをしておいて」

 

「細かい作戦は後で伝えるから、陣形を組んだら即座に部室の外に出て。これ以上被害が及ばないように離れるよ」

 

「「「了解!(は、はい!)」」」

 

 

 

 先生の指示に従い、ゲーム開発部は部室をあとにする。……外には生徒会に属する生徒も待ち受けていたが、先生の的確な指揮もあり無事に包囲網を突破。息も絶え絶えとなりながらも、何とか部室から離れることに成功したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ──その一連の流れを、遠く離れた場所から見ていた少女は嗤う。

 

 

 

「人数差を優に覆す的確な判断と指揮能力……アビドスでの一件で分かっちゃいたが、侮れねぇな」

 

「だが、チビ達の方はまだまだだな。動きは悪くなかったが、周りに人が居なくなったからって直ぐに気を抜きやがった。……まあ、普通の生徒だから仕方ねぇところもあるが──」

 

 

 

 凡そ200mほど離れた建物の屋上で、少女は"グググッ"と小柄な体躯を更に小さく屈める。……その様はまさに、強力なバネを無理矢理に押し込んでいるかの如く。

 

 ──そしてその認識は、決して間違いでは無い。

 

 

 

「──それでも油断は禁物だぜ、チビ共」

 

 

 

 瞬間、収縮した全身のバネを解き放ち──ミレニアム最強の女生徒は破砕音を轟かせながら、ゲーム開発部へと牙を剥いた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……ッ!!何か来ます、下がッ!!?」

 

 

 

 一足先に襲撃に気が付いたアリスが前に立ち、同時に強化ガラスをぶち破りながら到達した襲来者は勢いそのままに、構えられたスーパーノヴァごとアリスを殴り飛ばす。

 

 ガラスの割れる音、殴打する音、殴り飛ばされ背後の壁に衝突する音、発生した瓦礫が崩れ落ち、砂埃を巻き起こし……そこでようやく、モモイたちはアリスが自分たちを庇って殴り飛ばされたことに気が付いた。

 

 

 

「「「アリス(アリスちゃん)ッ!?!?」」」

 

 

 

 ほんの一秒にも満たない、ともすればその一場面のみ時が飛んだのかと錯覚してしまう程の刹那の瞬間に巻き起こされた事象に、ゲーム開発部は驚愕を露わにする。

 

 

 ……全く、気付くことが出来なかった。

 

 

 砂埃の奥に隠れたアリスの名を叫ぶモモイたちの後ろで、"カツ…カツ……"とまるで自身の存在を知らしめるように響く靴音。……彼女らの背筋を冷や汗が伝う。

 

 恐る恐る、割れた強化ガラスの存在する方へと振り返るゲーム開発部一同。……月明かりに照らされ映し出されたダブルSMGを構える、小柄なシルエットに息を飲む。

 

 

 

「咄嗟に武器を盾にして防いだか。……悪くねぇ判断だな」

 

 

 

 外から吹き込んだ風が砂埃を吹き飛ばす。……分かっていた、万に一つも別人である事など有り得ないと理解していた。

 

 ……しかしそれでも、モモイ達は"何故、よりにもよってこの人が"と心の内で悪態をつくことを止めることは出来なかった。

 

 

 

「「「ネル先輩……!!」」」

 

「よォ、チビ共。……このあたしから逃げ切れるとでも思ったか?」

 

 

 

 ミレニアム最強の女生徒──美甘ネルは月明かりを背に嗤う。

 

 彼女を突破しなければ逃げ果せることなど不可能、逃げ切ったと安堵していたゲーム開発部は……一瞬にして、窮地へと追い込まれたのであった。




次回、ネルVSアリス

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