カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第21話 シャルナのAD制作

「まずはさっきのお兄さんと同じ要領で仕様書を書いてね。最終稿を契約書に書き写すから」

 

「分かった」

 

 

 名前  自動

 武器種 剣

 

 

「ちょっと待ってくれ。俺の書いてきたシャルのADの仕様書がある。まずはそれを見てくれ」

 

 またか。2通りのそんな視線に怯むことなく玄咲は仕様書を作業台に提出する。バン!とじゃなくスッ……と。シャルナが清書する。

 

 

 武器種   短剣

 補正値   50

 スロット数 5

 適応属性  闇4 水3

 ギミック  クリティカル・インパクト

 

 

(バエルに聞いて判明したけど、今のシャルはまだ闇・水属性なんだよな。プロフィールの闇・光と違って)

 

 感慨深く適応属性の項目を見る玄咲にシャルナが尋ねる。

 

「短剣? 剣じゃないの」

 

「シャルには絶対に短剣の方が合う。これはADだけの話じゃない。体格からして短剣の方が絶対に上手く扱えるはずなんだ」

 

「そうだね。ボクもシャルナちゃんは短剣の方がいいと思うな。シャルナちゃんくらいの体格なら軽量級のADの方が合ってる。魔符士じゃなくて魔工技師としての視点から見た意見だから的外れなところもあるかもしれないけどね」

 

「分かった。短剣にする」

 

 シャルナは迷うことなく言い切った。

 

「提案しといてなんだがいいのか? ずっと剣を使ってきたんだろ?」

 

「いいの。私は玄咲を信じる。それに、深い理由が、あった訳じゃないの。お父さんが剣使ってて、本見ても剣が強そうで、だから剣が強いと、思って使ってた。短剣の方が、強くなれるなら、そっちの方がいい」

 

「……分かった。グルグル、短剣型のADで頼む」

 

「OK。でも、ちょっと待ってて」

 

 グルグルがゴミ山に向かう。そしてごそごそと手を突っ込んで一つのADを発掘して戻ってきた。

 

「これ、以前ボクが開発した短剣型のAD。試しに振ってみて。やっぱ、実際に使ってみるのが一番!」

 

「うん。ありがとう」

 

 シャルナがグルグルからADを受け取る。そして、腰溜めに構えて。

 

「ふっ!」

 

 前に、突き出した。

 

「――」

 

 玄咲は驚きその動きを見た。さらにシャルナは何度かADを振る。そして、ふーっと息を吐いて、満足げな笑みで手の中のADを見下ろした。

 

「うん。初めて使ったけど、使いやすい。私、短剣の方が、合ってたみたい。やっぱ、玄咲って、凄いね。体格見ただけで、ADの向き不向きが分かっちゃうんだ」

 

「……凄いのはシャルだよ。本当に初めて使ったのか?」

 

「うん。初めて」

 

「凄いセンスだ。こんなに鋭い突きを繰りだせるとは思わなかった。速い。そして良く力が伝わってる。体が全身バネみたいだ」

 

「えへへ、私、運動神経、良いんだよ? 足も、速いんだよ?」

 

 自慢げに自分を指さすシャルナ。可愛い。そう思いながら玄咲は思考する。

 

(――そういえば決闘の日、俺の全力疾走に手を引きながらとはいえこけることなくついてきてた。試験も畑耕士君以外には勝ってた。筆記試験の成績が悪いのに合格してた。そもそも――アムネスの亡霊は敵キャラだからこそ許される、味方なら許されないぶっ壊れ性能のキャラだった。確定先制。常時二回行動。クリティカル連発。特にすばやさとこううんに秀でた高いステータス。その両方共が通常キャラの最大値たる素質値10を超えるいわゆる限界突破勢。そうだ。シャルは強いんだ。あまりそうは見えないから学園長に啖呵を切りながらも今一つ確信を持てなかったが、学園で一番を目指せるくらいにシャルは強いんだ……!)

 

「でさ、デザインは、どうする?」

 

 油断するとすぐにゲームの世界に思考を飛ばす玄咲にシャルナが尋ねる。玄咲はポケットに手を突っ込んだ。

 

「……見せるだけ、見せとく。これが俺の考えたシャルのADのデザインだ」

 

 玄咲はポケットから取り出した紙をスッ……と作業台の上に置く。シャルナとグルグルがそれを覗き込み、全く同じタイミングで口を開く。

 

「「皮の黒いバナナ?」」

 

「……翼の生えた短剣だよ。一応、この黒い部分が翼を模した柄で、この白い部分が刃で、この黒い柄の膨らんだ部分がスロットで――」

 

 玄咲が解説していく内に二人の反応が変わっていく。表情が明るんでいく。

 

「ああ――なるほどね。うん。発想は良いと思う。面白いデザインだよ。ボクは気に入った。デザイン案浮かんできたよ!」

 

「本当か!」

 

「私も、気に入った! 白い刀身に、黒い翼が、生えてるんだね。私を、イメージしてるんだね!」

 

「ん?」

 

 グルグルが眉を顰める。そして玄咲に確かめる。

 

「もしかしてお兄さん、入学早々決闘したっていう新入生?」

 

「そうだが、なぜこのタイミングで」

 

「サンダージョーから堕天使の女の子を庇って戦った精霊神の所持者! 魔工学科でも話題になってたよ! そんなセンセーショナルな事件、話題にならないはずがないよね! 同級生が話してるのちょっと聞いただけだから詳しくは知らないんだけど、黒い翼って言葉でピンと来たんだ。やっぱり!」

 

「う、うん。そうなんだ。……話題になってるのか?」

 

「ならない方がおかしくない?」

 

「……確かに。うぅ、嫌だな……」

 

 シャルナが同意する。凄く気まずげだ。もうバレていることとはいえ、それでもやはり自分のアマルティアンという素性が広く知れ渡るのはいい気分ではないようだ。あるいは、グルグルの対応が変わると心配しているのかもしれなかった。グルグルが頬に指を当ててうーん、と唸る。

 

「ま、AD制作に関係ないしどうでもいっか。興味ないし。ごめんね話題逸らしちゃって。話戻そっか。デザインの項目はこんな感じでいいかな」

 

 

 武器種   短剣

 補正値   50

 スロット数 5

 適応属性  闇4 水3

 ギミック  クリティカル・インパクト

 デザイン  黒翼の生えた白刃の短剣

 

 

「え? う、うん」

 

「っ! ご、ごめん! 急に発明のアイデアが閃いた! ちょっと設計図書くね!」

 

 グルグルが作業机にダッシュし、書類をバッと手で払いのけ、猛烈な速度で紙にペンを走らせる。呆然とその様子を見るシャルナに玄咲が言う。

 

「グルグルはああいう奴なんだ。良くも悪くも発明第一で他のことは気にしない。純粋でいい奴なんだ」

 

「そだね。私、グルグルのこと、好きになった。いい奴――」

 

「書き終わったよ! 待たせてゴメンね!」

 

「!? は、はやっ……」

 

 1分そこらで設計図を書き上げたグルグルが2人の元へ戻ってくる。そして作業台の上の仕様書を覗き込んで言った。

 

「あとは名前だけだね。シャルナちゃんは最初に自動って書いてたっけ。普通にオート生成にする?」

 

「うん」

 

「ちょっと待ってくれ。俺にいい名前案がある。自信作だ」

 

 シャルナとグルグルが呆れた眼を玄咲に向ける。またか、と。怯みつつもゆずれない思いを抱いて玄咲は仕様書に名前を書き込んだ。筆圧に力が籠る。

 

 

 名前    エンジェリック・ダガー

 武器種   短剣

 補正値   50

 スロット数 5

 適応属性  闇4 水3

 ギミック  クリティカル・インパクト

 デザイン  黒翼の生えた白刃の短剣

 

 

「――」

 

「どうだ」

 

「いい。すごくまとも」

 

「うん。驚いたな……」

 

「そうだろう! シャルと出会った時から考えていた名前だ!」

 

「そう、なんだ……うん。すごく気に入った。この名前がいい」

 

「あはは。学園で作るADは基本武装解放機能を搭載してるから名前つけられないのに、考えずにはいられなかったんだ。お兄さんって本当に子供みたいな人だね。純粋なんだ。ボク、結構、お兄さんのこと」

 

「グルグル、契約書、書かせて」

 

「あ、ごめん。1枚しか持ってきてなかったね。ちょっと待ってて」

 

 グルグルが机の上の書類の束から契約書を一枚取ってきてシャルナに渡す。シャルナは玄咲とグルグルと3人で各種項目の最終チェックをしながら契約書の項目を埋めていく。その途中、

 

「このギミック、私理解が、あやふやだから、ちょっと詳しく、説明してくれる?」

 

「OK。ギミックって言うのはね、要するにそのAD固有の呪文(コマンド)のことだよ。排符(リジェクト)やフュージョン・マジックみたいな全AD共通の呪文と別口で搭載する呪文だよ。ADの個性の最たるものだね。内蔵してる特殊なバッテリーカードの魔力を消費して発動するんだ。ADに内蔵されたAD強化魔法みたいなものかな。そのチャージは大型の特殊な器具じゃないとできない。長所を伸ばしたり欠点を補ったり、絡め手に使ったり。自分に合ったギミックを選ぶのが重要だよ」

 

「どんなギミックがあるの?」

 

「例えばさっきお兄さんが選んだパワー・チャージ。特定動作で魔法を溜めて高威力の魔法を放つ呪文だね。他には射程距離を伸ばすロング・レンジス、シンプルに威力を高めるアームズ・エイド、効果範囲を広げるワイド・スプレッド。魔法の回転率を上げるブラスト・ラピッド。フュージョン・マジック限定で威力を上げるユニゾン・マジック。で、シャルナちゃんのクリティカル・インパクトは瞬発力を高めるギミックだね。タイミングを合わせるのがシビアだけど上手く合わせられたら魔法の威力が激増するよ。呪文の名前が妙に長いのはカード名と被らないようにするためだね。あとは――」

 

 グルグルはさらにギミックの説明をする。シャルナと、ついでに玄咲もギミックの理解を深めた。

 

「ありがとう。分かりやすかった。じゃ、あとは項目を埋めるだけ――」

 

 シャルナは礼を言って項目を埋める。そして最後は魔法ペンで契約書にサイン――。

 

「ちょっと待って!」

 

「うおっ!」

 

「わっ!」

 

 しかけたところで横合いからグルグルが契約書を取り上げる。ぜー、はー、と息をしながら、珍しく弱弱しい表情をする。

 

「ご、ごめんなさぁい……予算の計算忘れてた……」

 

「あっ」

 

 玄咲もすっかり忘れていた。シャルナも。グルグルが玄咲に頭を下げる。

 

「ごめんなさい。その、パトロンなんて初めてだったから、段取りに失敗しちゃった。お兄さんはもう契約しちゃったね。一旦破棄しようか? 双方の合意はあればできるから。そ、それとも他の魔工技師に頼むとか――」

 

「大丈夫」

 

 玄咲はグルグルの肩を掴んで笑った。

 

「俺はグルグルの何もかもを信じている。契約破棄なんてしないし、グルグル以外の誰にもAD制作を頼む気はない。俺はグルグルがいいんだ。この世の他の誰でもない、グルグルがいいんだよ。初めてなんだ、失敗もするさ。俺との契約の中で慣れて行けばいい。安心してくれ。俺は絶対にグルグルを裏切らない」

 

「――うん」

 

 グルグルはコクリと頷く。その頬は少し赤い。褒められ慣れていないからきっと照れているのだろうと玄咲は判断した。グルグルの肩を正面から掴む玄咲の肩をシャルナが後ろから両手で掴む。

 

「玄咲、一応相手は、女の子だから。無遠慮に、体に触れるのは、良くない」

 

「あっ、そ、そうだな。すまない。グルグル。不快だったよな」

 

 玄咲はグルグルの肩をパッと離して謝った。グルグルは手をぶんぶん振った。

 

「い、いいよ! 全然! 気にしないで! さ、さて! 予算の計算をするかな! SDで購入予定のパーツの値段を調べるからちょっと待ってて! なるべく安く済ませるよ!」

 

 グルグルが猛スピードでSDを操作する。その間、

 

 もみ、もみ。

 

「……シャル、なぜ俺の肩を揉んでいるんだ」

 

「ついでだから、ほぐしてあげる。ちょっと力、強くするね」

 

 ぐっ、ぐっ。

 

「うっ」

 

 シャルナのマッサージはかなり力が強かった。だが、それが玄咲には丁度良かった。天にも昇る気持ちで待つこと10数分。玄咲の肩がすっかりほぐれた頃に、グルグルの計算はようやく終わった。

 

「計算終わったー! これが二人の予定必要予算だよ。前払いでお願いね」

 

 

 玄咲   120万ポイント

 

 シャルナ 40万ポイント

 

 

「ひゃく、まっ……!?」

 

「思ったより安いな」

 

「うん。お兄さんのために頑張ったよ」

 

「!? た、高すぎない?」

 

「いや、法外な安さだ。ラグナロク学園はポイントでパーツやカードを買うと外部価格の10分の1の値段で販売してくれるからな。学園外で同じADを作ろうとすると、俺のは1200万マニー、シャルナのは400万マニーかかるはずだ。だからラグナロク学園にみんな入学したがるんだよ。こんな安い値段でADやカードが手に入る場所国内には他にないからな」

 

「……納得。思い返せば、ショーウィンドウ越しに、見たADは、もっと高いのが、一杯あった。でも、なんで、玄咲と私のAD、3倍も、値段差があるの?」

 

「全属性に適性を振ったからだ。使える属性は増やすほどに、新たな属性の追加に金がかかるんだ。一度増やしてしまえば強化にかかる金は同じなんだが。ちなみに属性は絞っても威力は上がらない」

 

「なるほど。じゃあ、試験ADは凄く金がかかってるんだ」

 

「あれは完全に量産態勢を整えて徹底的なコストカットを図っているからまた別だ」

 

「ふ、複雑なんだ。ADって」

 

「ああ。俺にも分からないことだらけだ。っと、入金しないと。SDを操作して……グルグル、送ったぞ」

 

「うん。入った。シャルナちゃんも、それでいいならお願いね」

 

「……まぁ、元を正せば、玄咲の稼いでくれた、ポイントだしね。そう考えれば、惜しくなんかない。ADを、手に入れるための、必要経費、だもんね」

 

 シャルナがSDを操作してグルグルにポイント移行する。玄咲が頷く。

 

「そうだ。いずれ40万ポイントなんて一日で稼げるようになる。むしろたった500万ポイントだ。上級生の保有ポイントにしてはかなり少ない。おそらく浪費しまくっていたんだろう。もう少し稼げると思ったんだが、誤算だったよ。まぁ、ポイントのやりくりで一番困る序盤を当分余裕を持って過ごせるだけでも十分だ。足りなくなったら稼げばいいしな」

 

「もしかして そのポイント決闘で稼いだの?」

 

「ああ」

 

「なるほど。だから1年生なのにそんなポイント持ってたんだ」

 

「うん。でも、ああ……」

 

 シャルナが己のSDの499万から459万に目減りしたポイント画面を見てがくっとうな垂れる。

 

「やっぱり、一度に失った、ポイントが多すぎて、なんか喪失感。本当、貧乏性だな、私……」

 

「シャルナちゃんも貧乏性なんだ。あはは、なんだか共感しちゃうな。ボクたち、仲良くなれそうだね」

 

「う、うん。私もグルグルのこと、基本的には、結構好き。仲よくしようね」

 

 シャルナが魔法ペンで契約書にサインをしながらグルグルに笑みを向ける。シャルナから契約書を受け取ったグルグルがぐずっ、と涙ぐむ。

 

「ッ! な、なんか涙腺緩んできちゃった。初めてのパトロンがこんないい人たちで良かったな。あはは、眼鏡で涙が拭いにくいや……。ごめん、ちょっと眼鏡外すね」

 

「「え?」」

 

 2人の驚きの視線の中、グルグルが眼鏡に手をかける。そして、何の躊躇いもなく外した。

 

 その素顔を晒した。

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