カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第10話 射的勝負

 待ち人がいるからと玄咲が即答でカードバトルを断ってから数分後。ならばとクゥが常備しているエアガンで射的勝負をすることになり。

 

 玄咲がエア射的に使っていた木々から30メートルの地点。

 

「うんしょ。うんしょ」

 

 クゥがそこらに落ちてた木の棒で地面に円を描いている。几帳面な性格なのか楕円にぶれるたびに足で消して新たに正円を書き直している。玄咲はちょっと離れたところでその作業を、というかクゥをじっと見ている。ベガ立ちだ。

 

(うむ。眼鏡越しでも可愛いな。水野ユキクラス――いや何を考えているんだ俺は。ちゃんと恒例のゲーム知識のおさらいをしよう。クゥ・クロルウィン。孤独を好む割に気を許した相手にはとことん人懐っこくなる銃と自然と鳥好きのバーディアン。眼鏡をかけているからか、スナイパーだからか、少し正確さに拘り過ぎることがある。狙撃の腕は超一流。そしてかなりの銃オタク。俺なんかに話しかけてきたところからもそれは察せられる。性格は純朴で基本いい子。ただし狙撃時は眼鏡を外し人が変わってクールになる。どっちかというとそっちのが本性)

 

 

「あ! また失敗した! 書き直しっと!」

 

 ゲシゲシ。

 

 

(あとは、うーん……まぁ、やっぱクゥの一番の特徴は眼かな。鳥人の種族特性は魔力を消費した飛行と風を読む眼。クゥは翼がない代わりにその眼の機能が鳥人の中でも並ぶものがないほどに優れている。あまりに眼が良すぎるため普段は特殊な眼鏡で抑えているほど。本気を出すときは眼鏡を外す。そして当然、そっちのモードの方が人気がある)

 

 

「あっ! いい感じ! あっ、ブレた。もう1回」

 

 カキカキ。

 

 

(なにせ眼鏡を外したクゥは超絶美少女だからな。アルルにだって負けていない。性格もちょっと変わる。目つきが鋭くなるとともに一気にクールな性格に転じるそのギャップがたまらない。人気投票の順位は11位とヒロインにしては低順位。眼鏡だからだ。眼鏡には美少女オーラを抑えるネガティブエフェクトがある。今の俺にとってはポジティブエフェクトだが。お陰で割と普通に接せる。ゲームでの性能は結構な強キャラ。鍛えれば最後まで使える、いいキャラだったなぁ……)

 

 

 

 

 

「これでよし、と!」

 

 クゥが綺麗な正円を地面に描き終わる。木の棒はポイ捨て。さらにバッグから5つの的を取り出す。

 

「あとはこの的をあなたが自分を重ね合わせて撃ち抜いてたあの木々に」

 

「重ね合わせてなんかない」

 

「思いっきり名前を叫んでたじゃん」

 

「……」

 

「この的を張り付けて」

 

 クゥがバッグから5つ取り出したダーツゲームに使うような円型の的を木々に張り付けていく。

 

「よし! 準備完了! ルールは簡単だよ。30メートルの距離でこの円に入って10発ずつエアガンを撃ち合って、よりポイントが多い方が勝ちにしましょう。中央の小さな円が3ポイント。その周りが2ポイントで、外周が1ポイント。外れたら-1ポイントね。それでいい?」

 

「いいよ」

 

 玄咲は即答した。物わかりのいいところを見せようと張り切った結果だ。

 

「やる気十分だね。ふふ、やっぱりあなたも銃が好きなんだ」

 

「気づけばいつも隣にあった。俺を何度も助けてくれた。生死を共にしてきた相棒さ。銃は」

 

 好きとは答えない。嘘はついてない。

 

「やっぱり。私と同じで筋金入りなんだね」

 

「そうだな」

 

「気に入った! 早速勝負を始めましょうか!」

 

「ああ」

 

「先行は私が頂くね」

 

「どうぞ」

 

 玄咲はちょっとコミュ障気味だ。だが、美少女相手に精一杯食い下がっている。ボロを出していないだけ大したものだと玄咲は自分を褒めた。シャルナで美少女に耐性がついたお陰だ。

 

 クゥが円の中に入って、フッフと笑う。

 

「さぁ、今度は私の腕を見せてあげる。30メートルなんて――0距離だよ!」

 

 エアガンを木々に構える。そして不敵な笑みを浮かべて眼鏡越しに数秒かけて狙いを定めて――。

 

「ファイア!」

 

 パキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュン。

 

「……」

 

 あまりにも実弾とかけ離れた軽い音。玄咲は何とも言えない気持ちになったがとにかく拍手をした。全弾的の真ん中に命中したからだ。パチパチ、パチパチ。ちょっと得意げな表情でクゥは銃の輪っかに指をかけてクルクル回した。玄咲はさっき以上に何とも言えない気持ちになった。具体的には背伸びをしている子供を見ているような気持になった。クゥが自慢げにふふんと笑って玄咲に手を振って次を促す。

 

「このルールは少しアンフェアだったかもね。私がこの距離で狙いを外す訳ないもん。ごめんね。でも、あなたにいいところを見せたくて――」

 

 パキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュン。

 

 玄咲は当たり前のようにド真ん中全弾命中。クゥにエアガンの音が邪魔で聞こえなかった最後の言葉を尋ねる。

 

「えっと、最後の言葉が聞こえなかったんだがもう一度言ってくれるか?」

 

「……勝負がつかなかったら、つくまでやるって言ったの。もう一巡、しようか」

 

 パキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュン。

 

「全弾命中。ま、まぁ中々やるようだけど、そう簡単に狙撃手としてのプライドは崩せ――」

 

 パキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュン。

 

 全弾命中。

 

「すまない。最後の言葉をもう一回言ってくれないか? エアガンの音が煩くてな、よく聞こえなかったんだ」

 

「……もう一回って、言ったの!」

 

 パキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュン。

 

「あぅ!」

 

 1発外した。いいところを見せるチャンス。玄咲は眼をキラリと光らせてそこから更に集中力を上げた。

 

 パキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュンパキュン。

 

「ぜ、全弾中央の円の円周上に等間隔に? あ、ありえない……」

 

「ふ、フフ。少しだけ張り切ってみた。どうだ、凄いだろう」

 

 玄咲は得意げに銃をクルクル回す。いいところが見せられてご満悦だ。全く敗者の心情に考慮しない。クゥは歯を噛み締めて悔しがる。だが、ふいに顔を上げ、

 

「――風が、くる」

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