カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
バトルセンター7号館22番室。
「ダーク・バレット」
玄咲は銃口をシャルナに向け詠唱する。そこそこの弾速の闇色の小さな弾が飛んでくる。高速、されど、高レベルの魔符士にとっては低速。シャルナは余裕をもって避ける。
「ダーク・ハイ・バレット」
カードを入れ替え、続けて詠唱。ランク1のダーク・バレットの純粋上位スペルカード。以前アルルに打った時とそう大差ない弾速の魔弾がシャルナへと飛来する。シャルナは再び余裕をもって避ける。その後、ダーク・メガ・バレット。ダーク・アサルト・バレットと、ランクを1つずつ挙げて同じことを繰り返す。シャルナは全てさっと避けた。
「流石に、遅いね」
「結構早くないか?」
「うーうん。これくらいなら余裕で避けられるよ」
「そ、そうか……」
シャルナの意外、ではないけれど、しかし目の当たりにするとやはりびっくりする運動神経のハイスペック。流石ゲームで敵キャラ準拠のぶっ壊れ性能だっただけあるなと思いながら、玄咲はADを持ち替える。
ベーシック・ガンから、シュヴァルツ・ブリンガーへと。
「さぁ、初お披露目だ――シャルナ、しっかり避けろよ」
「うん! ばっちり避けてみせるよ!」
比較検討。性能を確かめるならそっちの方がいい。そんな考えのもとベーシック・ガンで玄咲の主力カードである銃魔法バレット・シリーズの試射を挟んでから、シュヴァルツ・ブリンガーへとカードを4枚装填し、シャルナに向ける。
そして、詠唱した。
「ダーク・バレット」
先ほどとは比べ物にならない速度の闇色の魔弾が一直線にシャルナへと飛来する。ベーシック・ガンで放ったダーク・ハイ・バレットと見間違う速度。シャルナは余裕を持って避ける。
「ダーク・ハイバレット」
やはり、ベーシックガンで放ったダーク・メガ・バレット――1ランク上の魔法と相違ない弾速と輝きの闇色の弾丸が発射される。シャルナは余裕を持って避ける。
「ダーク・メガ・バレット」
「っと」
避けたものの、シャルナの喉から掛け声が出る。少し調子を崩した証。1ランク上、よりも少し高い出力を出しているらしい。そう判断して、玄咲はさらに銃口をシャルナに向け、
「――ダーク・アサルト・バレット」
「――ッ!」
シャルナは横っ飛び。先ほどまでシャルナがいた空間を闇色の閃光が走り抜ける。地球で使っていた拳銃ともうそこまで使い勝手に差はない。まだあちらの方が早いが、ランク、補正値が上がるにつれて追い越すのも時間の問題だなと玄咲は確信した。
「やっ、補正値の影響って、凄いね。全部の魔法が1ランク上がった感じ。別物」
「シャルナもよく避けたな。偉いぞ」
「えへへ。この距離で、フェイントなしのダーク・アサルト・バレットなら、100回撃たれて100回は避ける自信あるよ。ブラック・フェザー使ってたら、もう余裕」
「本当、凄いよ。シャル、すごい。すごい。すごい。すごい。すごい」
なんとなくひたすらシャルナを褒めてみる。するとシャルナは
「えへへぇ……」
でれーっと、心底から嬉しそうな表情で顔を蕩けさせた。危険だ。そう判断した玄咲は速やかに賛辞を打ち切った。実態以上の自分への過剰評価は実戦で判断を狂わせる。そう判断してのことだ。可愛すぎて理性が溶けそうになど決してなっていない。少し、忠告を挟んでバランスを取る。
「でも、実戦ではこんなに素直に今から打ちますよと言わんばかりの攻撃は飛んでこないだろう。相手の思考を読む。そういう訓練も今日はつもうか」
「うん! 実際のカードバトルじゃ、ばんばん当てられたしね!」
「それじゃ、今度は攻撃に当たってくれないか? HPゲージの減り方を確認したい」
「うん! いいよ」
バンバンバンバン。
「あたたた……」
「……今度から、シャルが俺に撃ってくれ」
「気にしないで。強くなるためだもん。それにこの施設は安全だし、大して痛くない。バトルルームって、凄いね!」
「ああ、凄いよ。安心安全にカードバトルが行える。ヒロユキらしい、優しさに満ちた空間だな」
「うん。時々凄みを見せるけど、基本優しそうなお爺ちゃんだったね。それにね、私、玄咲になら、どれだけ痛めつけられても嬉」
「それじゃHPゲージの確認をしようか」
危険だ。そう判断した玄咲は速やかにシャルナの台詞を遮った。
「うん!」
「HPの減り方はね、こんな感じ」
ベーシック・ガン
ダーク・バレット 1%
ダーク・ハイ・バレット 3%
ダーク・メガ・バレット 5%
ダーク・アサルト・バレット 10%
シュヴァルツ・ブリンガー
ダーク・バレット 2%
ダーク・ハイ・バレット 5%
ダーク・メガ・バレット 18%
ダーク・アサルト・バレット 37%
「約3倍近い出力差があるみたいだな」
「なんだかHPの減り方が不規則だね」
「抗魔力で殆ど威力が減衰されたんだろう。高い抗魔力は足切りラインと呼ばれる、一定値以下の威力の魔法を大きく減衰する効果があるからな。高レベルの魔符士に低威力の魔法が殆ど効かない理由だな。ベーシック・ガンはダーク・アサルト・バレットで、シュヴァルツ・ブリンガーはダーク・メガ・バレットででようやくその足切りラインを超えたんだろう」
「なるほど。にしても、シュヴァルツ・ブリンガーの最後の一撃はよく減ったなぁ……」
「クリティカル・ヒットしたからだろう。抗魔力には薄い個所と厚い個所がある。その薄い個所を見抜いて攻撃を当てることをクリティカル・ヒットという」
「あ、私ね、抗魔力の薄いところ、なんとなく分かるよ! ここかなーって当てたら、バシッて手ごたえが違うの!」
「そ、そうか……」
自分は全然分からないとは言えない。
「あと、単純に魔法の放ち方によって魔法が走って威力が上がることもあるらしい。剣を魔力の流れと完璧に一致させて振ったり、鞭をよくしならせて振ったりとか。それもクリティカルと呼ばれる。ちなみに銃は、というか銃はそっちのクリティカルが出にくい。同じ遠距離型でも弓とかは比較的出しやすいんだが」
「あ、私そっちも得意だよ! こうかなって、魔法を放つと、シュバッて手ごたえが違うの!」
「……そうか」
(そっちも俺には全然分からない。戦闘に関してはシャルナは本当にハイスペックだな。ゲームで敵キャラ基準のぶっ壊れキャラだっただけはある……)
「こんな感じでさ」
「む」
シャルナがADにカードをインサートする。そして玄咲に笑顔で、
「見ててね! バシッ、シュバッ、って行くからね! 避けないでね!」
「え? ああ、うん」
そう宣言し、詠唱しながらADを振るった。
「ダーク・スラッシュ!」
HP 75%。
「……」
ランク1の魔法一発で25%も減らされた。微量の痛みが残る胸を摩りながら玄咲は笑顔ではしゃぐシャルナを戦慄の目で見る。
「見て見て! 25%も減ってる! これって、クリティカルヒット、した証でしょ! えへへ! 珍しく、玄咲にいいところが見せれて、嬉しい!」
「……うん」
強い。玄咲はそう思った。シャルナはやっぱり普通に天才な部類に入るようだった。思い、そして心底からの闘志を燃やした。
(追いつかれないようにしないと。シャルナに負けたら俺のアイデンティティーが崩壊してしまう。絶対シャルナにだけは負けられない……! 俺はシャルナの前では常に格好いい姿だけ見せていたいんだ!)
「にしても、剣に比べて、短剣って本当に、使いやすい。狙いをつけやすいし、魔力がよく走る? っていえばいいのかな。そんな感覚。もう剣には、戻れないかな」
「よく、今まで気づかなかったな」
「お父さんの形見、ではないけど、影響かな。剣を使いたいって、思いがあった。最期の姿が、まだ脳裏にこびりついてるからさ」
「……そうか」
「ちょっとしめっぽい話に、なっちゃったね。気分を切り替えて、頑張ろうか!」
「ああ、そうだな! 今度はギミックの試し打ちをしよう」