カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第15話 CMAの精霊とカード

 玄咲は手元のカードを見る。

 

 ダーク・バレット。

 

(攻撃力40。闇属性。遠距離カード。銃魔法。消費MPは3。単発攻撃。ゲームでは近距離、遠距離という概念があって、近距離は前衛に、遠距離は後衛に強いという特徴があった。まぁ、今はそれはいいとして、うーん……)

 

「どうしたの、玄咲?」

 

「いや、ゲーム知識とカード魔法のギャップに時々ついていけなくなってな。感じ入っていたところだ」

 

「うーん……ごめん。私にはよく分からない」

 

「そりゃそうだよな……あっ!」

 

 玄咲は閃く。

 

「俺にはバエルが、シーマがいる! 2人に質問しながら魔法を使って、ギャップの修正をしよう」

 

「バエルさんに……シーマ? ああ、なんか以前、バエルさんを何故かその名前で呼んでたね。あれ、なんだったの?」

 

「ああ、シーマはバエルの中に同居しているCMAの精霊だよ。太陽みたいに暖かくて優しい子でさ。地球時代からずっと一緒だったんだ。俺の相棒だよ。俺はシーマを愛している」

 

「? ?? 何言ってるの? 玄咲?」

 

「……まぁ、何言ってるか分からないよな。実はシーマは――」

 

 玄咲はシーマの素性、そしてバエルとの関係について語り聞かせる。シャルナは難しそうな顔をして頷き、理解を表明した。

 

「中々理解しがたい話だと思うが、そういう訳だ」

 

「……でも、SDでの簡易召喚は」

 

「今は俺とシャルしかいないから無問題だ。それにさ」

 

 玄咲はシャルナに何の疑いもなく、笑顔で告げる。

 

「シャルナもバエルのこと、好きだろう? 命の恩人だし、昨日そう言ってたもんな」

 

「――うん。そうだね」

 

 シャルナはとても儚い笑みを浮かべて頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人で悪魔神バエルのカードを持った状態。シーマと対面させるためにSD越しではなく、一旦普通に簡易召喚することにしたのだ。瞳を潤ませているシャルナに、バエルの姿をしたシーマが笑顔でエア手握りをする。簡易召喚腰でも暖かさが伝わるシーマの必殺技。

 

「だからね、シャルナちゃん。玄咲にとって、シャルナちゃんは、本当に救いなの。これからも、ずっと玄咲の傍にいて、心を支えてあげてね。私ね、玄咲もだけどね、シャルナちゃんのことも、大好きだよ」

 

「うるうる……優しい……バエルさんと全然違うぅ……」

 

(……シーマ。ああ、シーマ。シャル、シーマ、シャル、シャル、シーマ……)

 

 二人を傍で見守る玄咲の目から無限の慈しみが溢れている。純粋で、素直な二人のやり取りに心を癒される。

 

「……バエルちゃんもね、心の底根はいい子なの。だから、あまり嫌わないでね」

 

「はい!」

 

(……うん? あれ、なんか、シャル、バエルを怖がってるような……いや、気のせいだ。間違いない)

 

 一瞬よぎった疑問は速やかに年季の入った現実逃避で脳の隅っこに。バエルの姿をしたシーマの首が突然ガクン、と触れる。

 

(あ)

 

「ど、どうしたの、シーマちゃん! 具合が悪いの?」

 

「……悪いと言えなくもないかもね。シーマちゃんは優しいわね? シャルナちゃん?」

 

「ひっ!」

 

(……)

 

 玄咲は現実逃避は無理があるなと思った。うっすらと、玄咲もこの関係性の正体に気付きつつあった。

 

「それで玄咲! 私に何の用? こんな場所で呼び出してくれるなんて、バエル感激!」

 

「うわ……」

 

 ジロリ。

 

「や、やっぱり、バエルさんは可愛いなぁ……! 可愛すぎて嫉妬しちゃうし畏怖の念が湧いてきちゃうなぁ……!」

 

(! そういう理由か。そういえばシャルは劣等感の強い方だったな)

 

 玄咲はシャルナの言葉を疑わなかった。心の安心する方向へと無意識に思考と感情の舵を取っている。

 

「この場でバエルを呼び出したのは、えっと、その、バエルには悪いんだけど、どっちかというとシーマに用があるんだ」

 

「シーマちゃんに?」

 

「ああ、すまない」

 

「おけおけ。おけまる。シーマちゃん。出番よー。はーい――」

 

 長く一人で孤独を癒していた上に、シーマが批判を躊躇っているためバエルは寒い一人芝居が板についている。見たくない姿を見てしまった。図らずして感想を共有する二人の視線の先、

 

「今日は玄咲と一杯お話しできてうれしいな。えへへ」

 

 バエルとシーマが入れ替わる。2人ともほっとしてその笑顔に癒される。玄咲が口開く。

 

「シーマ。ちょっと君に聞きたいことがあるんだが」

 

「うん! なんでも聞いて!」

 

「ゲームではカード魔法の威力って厳密に数値で管理されていたじゃないか。でも、この世界ではそうじゃない」

 

「うんうん。そうだね」

 

「例えばさ、ゲームではダーク・バレットはどんな状況で打っても性能は変わらない。でも、この世界では、例えば距離で威力が増減する。近距離でぶっ放せばその分威力が上がる。一定の範囲内でだが、声のボリュームによっても威力が増減する。他にも、当たる個所や、角度や、スピードなんかでも威力が変わる。それに魔力の質、属性の純度なんかでも威力が変わるんだ。同じ魔法なのに、あまりにも変数が大きすぎて数値化できないんだ。カードにも威力が書かれていない。パワーとして表面に表記する案もあったらしいんだが、世界観を考慮して書かなかった。その設定に今俺は困惑している」

 

「うんうん。分かるよ」

 

「俺はどうやってカード魔法と付き合っていけばいいんだろう」

 

 

「ゲームのカード魔法の知識を全部忘れちゃえばいいんじゃないかな」

 

 

 シーマはあっさりと言ってのける。玄咲は面食らった。

 

「い、いいのかな」

 

「いいよ。忘れると言ってもデジタルに表記されたカードデザインの部分ね。世界観的な設定とかはそのまま参考にしていいと思うよ。バエルちゃんと話し合ってね、データ管理するために無理やり数値化されたカード知識はギャップが多すぎるから参考にならないって前々から話してたの。それに玄咲がさ、慣れない頭を使って数字で魔法を扱おうとすると、絶対その内失敗して痛い目見るでしょ?」

 

「うっ」

 

 思い当たる節が一杯あった。アイス・バーン。忌み名が頭に浮かぶ。

 

「玄咲、CMAを感覚でプレイしてたもんね。この世界でも、それでいいんだよ。玄咲は感覚でカードを扱った方が上手く行く。玄咲もだ、本能的に察してるから、カード図鑑を買って、毎日勉強しなおしてるんでしょ。今までの知識から脱却して、真っ新な状態から覚えなおす覚悟で頑張ってるんだよね?」

 

「う、うん」

 

「なら。もう迷わなくていい。私と、バエルちゃんがね、保証してあげる」

 

 シーマが玄咲の手に己の手を重ね合わせる。誇張ではなく、同位相上で重なり合う。心の熱が伝わる。

 

「玄咲が本能で正しいと思うようにね、やっていいんだよ」

 

 シーマの笑顔はいつも玄咲を正しい方向に導いてくれる。勇気をくれる。玄咲は、心でシーマの手を握り返した。

 

「……ありがとう」

 

 そして笑いかける。

 

「シーマ、愛してる」

 

「――私も」

 

 シーマが、ただただ純粋な感情によってのみ構成される笑みを玄咲に向ける。

 

「愛してる」

 

「――――」

 

 シャルナは。

 

 初めて、これは敵わないなと心の底から思って。

 

(――シーマちゃんなら、いっか)

 

 でも、不思議と全く嫌な気持ちにはならなかった。

 

 

(――ま、精霊だしね)

 

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