カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第17話 カードバトルと決着

 バトルセンター7号館22号室。

 

 玄咲は赤髪の男と対峙していた。部屋の隅ではシャルナがクロウからもらった塩気の利いたスティック菓子を真剣な表情で齧っている。4日経っても残ってるあたり結構大量に貰ったらしかった。玄咲がそのさまをリスのようだなと思いながら見ていると、笑顔で手を振ってくれる。玄咲もまた手を振り返して、そして気持ちを切り替える。

 

(……さて、不幸な偶然の成り行きとはいえ、悪い状況ではないか。本気のA組の特待生とやり合えるなんてついてる)

 

 男子生徒にしてはかなり特徴的な容姿の生徒。そんな男がただのモブ生徒の訳がない。

 

(炎条司。A組の特待生。七霊王家(セブンスロード)の炎条家の長男。雷丈家と名前被りの雑魚と昨今名高い家。武門一筋と言えば聞こえはいいが、一時期は七霊王家の筆頭だった過去の栄光に縋り付いて傲慢になり雷丈家のように手広く商売を行う努力を怠った結果、武門一筋になるしかなかったちょっと残念な家だ。光ヶ崎家のように誇りをもって武門に打ち込みハンター稼業をしている家と比べたらな……とはいえ)

 

 炎条司。燃え盛るような赤髪に小さめのサングラスをかけた、家柄の割にはちょっと軽いノリの男。光ヶ崎リュートに公式戦で全勝しており、序盤ライバル関係にある、2学期までは1年最強の男。だが、段々インフレに置いていかれて、光ヶ崎リュートの成長にも置いていかれて、最後はそこそこ強いけど最上位じゃないという何とも言えないポジションに落ち着く男。その印象が残っていたせいで過剰に軽んじた発言をしてしまったという側面が、玄咲には確かにあった。

 

(結構ボロクソ言ったが、実際のところこいつは全然弱くはない。ゲームの知識を基にした発言じゃない。実際に対峙した肌感覚として、普通に強者の雰囲気を持っている。リュートに全勝しているだけある。雑魚だなんてとんでもない。なのに、なんであんなボロクソ言ってしまったんだろう。不思議だなぁ。ああ、不思議……でもない。嫉妬したんだ。ああ、俺は醜いなぁ……)

 

「さて、早速だが始めようか。天之玄咲か。ふん。確かに、相当以上にやるな。まぁ、リミットであの精霊神のカードが使えない以上、勝つのは俺だけどよ」

 

「ん? ああ。すまない。落ち込んでて聞いてなかった。もう一度言ってくれ。なんて言ったんだ?」

 

「!?」

 

 ビキビキィ!

 

「ぶっ殺してやるから覚悟しろって言ったんだよォ! オラスピーディーに話進めるぜェ!」

 

 炎条司が対戦スタートボタンを押す。SDに表示されたボタンを玄咲は押す。カウントダウンが始まる。

 

「っと、武装解放シュヴァルツ・ブリンガー」

 

 シュイン!

 

「っ! な、なんて禍々しいADなんだ。イカす……!」

 

「!」

 

 玄咲のテンションが上がる。

 

「分かってくれるか!」

 

「ああ。尋常じゃないデザインセンスだ。くそっ羨ましいぜ……じゃなかった。俺もADを展開しないと。武装解放――」

 

 炎条司詠唱。

 

炎剣伝承(レヴァンテイルス)ファイ・ロードォ!」

 

 ――先端から柄に至るまで真っ赤な、異様なまでの長さの剣が司の手中に顕現した。圧倒的リーチを持つが剣としては異様な形で扱いの難しいAD。特に取り回しの悪さが近距離戦でデメリットとなる。しかし使いこなせればその圧倒的リーチで敵を圧倒する、玄人好みの形状。だが、実用性はともかくデザインセンスは抜群。そして、そんな尖った形状のADを、ゲーム時代から玄咲は滅茶苦茶格好いいと思っていた。思わず感嘆のため息を漏らす。

 

「か、格好いい……!」

 

「! だろ! ファイ・ロードは世界で一番格好いいんだ! 俺の……自慢のADだッッッ!!!」

 

「お、俺も自分のADを世界で一番格好いいと思っている。やっぱり、自分のADは特別だよな! 格好いいADを持ちたいよな!」

 

「! 俺のファイ・ロードがてめぇのADより格好良さが劣ってるって言うのかよ! よくもファイ・ロードをディスりやがったな! 許せねぇ……!」

 

「いや、そんなことは全く」

 

「ちっ、やっぱりてめぇは見た目やあの精霊神通り邪悪でバイオレンスでドロドロした性根の奴みてぇだな。てめぇにだけは負けらんねぇ」

 

「! バエルは、清く正しく美しい女の子だ! 決して性悪で性格の捻じ曲がった最近ちょっと残念感漂ってきた面倒臭い女の子なんかじゃない!」

 

(あ、内心察してるんだ)

 

「いや、そんなことは一言も」

 

 ビーッ!

 

「「ぶっ倒す!」」

 

 互いに一瞬で戦闘モードへと移行した。

 

 

 

 

 

 

「――なんだよ。今の動き。しかもあのフュージョン・マジックをガチで運用するとか、お前馬鹿だろ」

 

「これが俺に一番合った魔法だと判断した。その判断が正しかったことは地面に倒れ伏すお前自身が証明している」

 

「……まぁな」

 

 玄咲のSDにはWINの文字。司のSDにはLOSEの文字。激闘の末、玄咲は炎条司を下した。

 

「あーあ。負けちまった。お前、強いな」

 

「いや、君も強かった。想像以上だ。負ける気はしなかったが、想定外の抵抗を何度もされた。驚いたよ」

 

「……皮肉で言ってるわけじゃなさそうなのが文句言う気も失せるぜ。あーあ……あ、そうだ」

 

「なんだ」

 

 炎条司が倒れたまま問いかける。

 

「お前、リュートと俺、どっちが強いと思う」

 

 真剣なトーンで。玄咲はしばし考え、

 

「その、リュートと戦ったことがないから、分からない」

 

 誤魔化さず、伝える。

 

「……そうか」

 

「ただ」

 

 心の底からの本音を。

 

「リュートの方が怖いと俺は思っている。それが俺の本音――というか直観だ。俺は何かを判断する時思考よりも勘を頼りにするようにしているんだ」

 

「……」

 

 司は倒れたまましばし天井を見上げていた。怒らない。だが、何も言わない。しかし、唐突に立ち上がり、玄咲に背を向けて、

 

「――お前、いい勘してるぜ。その勘、大事にしな」

 

「え?」

 

「またやろう。いいバトルだった」

 

 出口に向かいながらそう言った。

 

「……ああ。またやろう。いいバトルだった」

 

 バトルルームから出る時に見えた横顔は、僅かに口角が上がって見えた。

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