カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
1年G組の教室。玄咲とシャルナはいつもの席で隣り合ってクロウの説明に真剣に耳を傾けている。
「それでは今から3日後に開催が決定したクラス対抗ストラテジーウォーの説明を開始する。人探しに手間がかかり、今日の朝から昼にかけてイベントの詳細の最終決定が行われたため、昼のこの中途半端な時間に説明を行うことになった。今までも何度か開催されたが今年も開催されることになった。少しルールが複雑だから改めて板書しながら説明する。最初にざっくりと概要を書いておく」
クロウが黒板に時間をかけて概要を書く。その間に玄咲はG組の生徒の顔ぶれを眺める。
(やっぱりクラス対抗ストラテジーウォーに決まったか――ってことはこいつらと仲間になって戦うのか。和気あいあい、みたいな雰囲気には絶対ならなそうだな)
頭の悪い生徒と顔の悪い生徒の寄せ集め。我と癖の強さなら全クラス1。協調性のない生徒をそれでも纏めるにはゲームの彼のように圧倒的な力を見せつける必要があるだろうなと玄咲は思った。
(まぁリーダーになったらの話だがな。それにしても、やっぱりストラテジーウォーか……)
密かに、思う。
(
「よし、こんなものかな」
クロウがチョークを置いてパンパンと手の粉を払う。
「早速説明していこう。まずは黒板に書いたイベントの概要を見てくれ。これを基に順番に説明していく」
クラス対抗ストラテジーウォー 概要
・学年全員で行うクラス対抗のフラッグゲーム×チームバトルロワイアル
・旗役の生徒をフラッグリーダー、その下にサブリーダーを一人定める。イベント後に前者は級長・後者は副級長となる。
・勝敗条件は特殊。最終的な勝敗はイベント中に獲得したポイントの多寡で決まる。
・フラッグリーダーが100ポイント。サブリーダーが50ポイント。その他が1ポイント。
・フラッグリーダーを倒されたクラスは以後全員イベント参加資格を失う。
・イベント開始から12時間が立つか、最後の一人のフラッグリーダーが倒された時点でイベント終了。
・イベントの点数は通知表に影響。各自全力で臨むように。
「この概要の箇条書きを戦闘から順に説明していく。質問があったら遠慮なくしてくれ」
当然というか、クララのものより幾分か文章が形式ばっている。その文章を参照にクロウは淡々と話を進める。それは面倒くさがってというより、あえて事務的に徹してる、そんな雰囲気の口ぶりだった。
「クラス対抗ストラテジーウォーはフラッグゲーム×バトルロワイアルの要素を掛け合わせたチームカードバトルだ。舞台は裏山だ。各クラスは裏山のA~G地点に最初に配属される。そこをスタート地点として、クラスメイトと連携して他クラスと戦ってもらう。戦略は完全に生徒に任せる。ここら辺がストラテジー要素といえる。あとで地図を渡す。クラス総員で相談しながら作戦を練ってくれ。
このイベントでは各クラスごとにフラッグリーダーとサブリーダーと呼ばれる存在を一人ずつ決める。前者はフラッグゲームの旗役を務める存在で、後者は指揮権を分担する存在だ。前者が倒されるとそのクラスはイベント参加権を失う。またイベント後、前者は級長・後者は副級長となる。
勝敗は。イベント中に獲得したポイントの多寡で決まる。リーダーを倒すと100ポイント・サブリーダーを倒すと50ポイント。他の生徒が1ポイントだ。リーダーを倒し倒され、そういうイベントになるように意図してリーダー2人のポイントは膨大にしてある。この2者をいかに撃破するかが勝敗の鍵となる。
で、イベント開始から6時間が立つか、最後の一人のフラッグリーダーが倒された時点でイベント終了。イベント中に獲得したポイント数に応じて勝敗が決まる。結構単純だろう。とにかくリーダーを倒せばいい。そういう試験――イベントだ」
「ね? 今、試験って言いかけたよね?」
「……イベントだよ。退学にならないから」
「この学校の判断基準って、そこ?」
「うん。まぁ他の学園なら試験だし、通知表にも影響するし、今の失言の通り多分教師も内心そう思ってる」
「なるほど、なー……。なんか、模擬戦みたいだね」
「みたいというか、そのものというか」
「静かに、静かに……黙れ」
どよめく教室をクロウが一睨みで黙らせる。ゴホンと咳ばらいをして話再開。
「と、大体こんな感じのイベントとなる。何か質問はあるか」
「はい」
最前列中央の眼鏡をかけたおかっぱ頭の真面目系クズの異名を持つ男子生徒が挙手した。手には読みもしない半開きの本を持っている。読んでないのでクロウも注意しない。
「ポイントの獲得契機はどうなっているのでしょうか。倒す、という言葉の定義があいまい過ぎてよく分からないのですが」
「ああ。HPゲージを0にすることだ。HPゲージが0になった生徒はリタイアとなる」
「? HPゲージはバトルルーム固有のシステムではないのですか?」
「頑張って外部でも使えるようにしたらしい。SD装着者のパーソナルデータから抗魔力の計算。そこからHPゲージを設定し、装着者が受けた攻撃によって減少するらしい。ただし、HPゲージが0になっても死ぬ訳ではない。SDが計算した戦闘不能の基準に達する一定威力以上の魔法を被弾した場合に0になる。気絶した場合もだな。流石にそこまで極悪なイベントではない」
「なるほど。理解しました。HPゲージが0になっても生きる権利は保証されているということですね」
「……」
嘘はついていないなと玄咲は思った。
「また、自主リタイアは各所に待機している教師に申し出ないと行えない。戦闘中にポイントを相手に渡さないためにリタイア、という事態を防ぐためだな。学園長の言葉を借りると古戦場に逃げ場はなかった。戦わなければ生き残れなかった。そのつもりで殺れ、ということだ」
「なるほど、理解しました。勝つ権利、そして負ける権利は全ての生徒に保障されているということですね」
「……」
玄咲は殺れ、のルビを正確に把握してちょっと身震いした。あと妙に個性的なモブだなと思った。
「質問はまだあるか? ……ないな。では話を進めよう。イベント開始から6時間経過。あるいはリーダーが最後の一人になった段階でイベントは終了。最終的に最も多くのポイントを確保したクラスが勝利となる。また、イベント終了後は獲得ポイントと順位に応じてクラス全員にラグナロクポイントが給付される。2桁万以上給付されるから頑張れ」
ざわ……。
ラグナロクポイント=大金という図式がここ数日で何度もポイントを賭けて戦った結果脳にエンドルフィンとともに刻まれた生徒たちの眼が一瞬でギラ……と輝く。G組は割と欲望に忠実な生徒が集まっているので他クラス以上のざわ……とギラ……。クロウは満足げに頷いた。
「生徒の成績は教師の成績。うむ。やる気が出たようで何よりだ。そうだ。活躍した生徒には俺からお菓子もやろう。俺の主食なんだが余り過ぎて家でダブついててな。これでもっとやる気が」
出なかった。
「聞かなかったことにしてくれ。そうだ俺から特別指導でもつけてやるかな。それならやる気が」
ちょっと出た。
「俺の捨てた名声もまだ捨てたもんじゃないな。……さて、これから一番大事な解説を行う。驚かずに聞くように」
また褒美の話だろうか。期待に小声の会話がいくつも上がる。シャルナも玄咲に、
「ね、今度は何かな。楽しみ――」
そして真剣な表情をしている玄咲を見て、凍った。なぜだかシャルナは以前退学試験を告げられた時の記憶が脳に過った。そしてクロウは、以前退学試験を告げた時と同様に全くこともなげに淡々と、
「イベント中の死者の扱いに関してだが」
そう告げた。シャルナに遅れて、G組の殆どの生徒の期待に満ちた表情が凍り付いた。