カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第24話 そしてカードバトルへ……

「先ほど使った魔法の効果は単純。ADから発せられた音を聞いた効果範囲内の対象を半強制的に眠らせるんだ」

 

 改めてクロウは教壇の前でクラス全員に語り聞かせる。昏睡させて強制的に喧嘩を中断させられた生徒たちは今はもう大人しい。眼鏡をかけたおかっぱ頭の生徒が半開きの本でサッカーボールキックを受けた額の血を拭いながら答える。

 

「は、はぁ。強力な魔法ですね」

 

「そうでもない。欠点塗れだ。自分の魔力より抗魔力の低い相手にしか通用しない。つまりお前らが成長して同レベルになったら殆どの奴には通用しない。魂成期の法則があるからな。また、専用対策魔法のアウェイクで簡単に対策できる。さっきお前らを起こした魔法だ。放たれた魔力光を浴びた対象を強制的に起こす。ただそれだけの魔法だがそれ故にその用途に限れば絶大な効果を発揮するカード。少々効き目に差異はあるがな」

 

 クロウが一瞬教室の隅に視線を向ける。シャルナは恥ずかしそうに俯く。玄咲は無表情。ショックの余り記憶を失っているのでノーダメージ。何か幸せな気持ちだなぁとは思っている。

 

「ランク9のカードなのにランク2のカードのアウェイクで対策できる。ここからカードは相性が重要というメタの話もできるが長くなるので今はやめとこう。ま、授業に最適な優しい魔法さ。では、イベントの説明の続きを――」

 

「クロウ。あんたまた禁止カードで鎮圧したのかい。懲りない男だねぇ」

 

 ビクン! クロウの背が跳ねる。バッと振り返る。マギサ・オロロージオがそこに立っている。クロウはスライディング土下座を決める。

 

「すいませんでした――――!」

 

「何が優しい魔法だよ。アウェイクで起こさないと永遠に眠り続ける、対策カードがあって尚許されていない禁止カードじゃないか。しかも見ていて面白くないし嵌め殺しの性能の余りの高さにアングラのカードバトルでも禁止されるのが当たり前のクソカードだろう。何平然と良い教師面して嘘ついてんだい」

 

「おっしゃる通りです。しかし、この学校なら別に使っても大事にはならないからいいではありませんか。それに、学園長が俺にやったことに比べたら大したことでは――」

 

「クロウ」

 

 マギサがクロウの肩をガッと掴みギリギリ軋ませる。

 

「意識が低い。あと私はそのカードが嫌いなんだ。使った、勝った。効果がなかった、無意味。カードバトルにおいてはその両極端な何の成長も及ぼさない上に見ていて面白くもないクソカードだからね。私は嫌いなんだよ」

 

「うっ、いてててててて!」

 

「それに私はあんたを強くしてあげただけだ。しかも毎日糞みたいな笑顔を浮かべてパチンコを打つだけの生きる屍と化したあんたをここまで更生させてやっただろう。感謝が足りないねぇ」

 

 ギリギリギリギリ。

 

「い、いたい! 痛いです!」

 

「昔からあんたは真面目な一方ちょっと油断すると快楽に嵌る危険な傾向があった。女性関係とかね。だから心配だったけど、学校を離れた途端案の定だ。この慢性のダメ人間が! 今度また一回くらい殺してやるから覚悟しときな!」

 

「!」

 

 クロウはマギサの足にガバっと縋り付いて懇願した。

 

「それだけは! それだけはぁああああああああああああ!」

 

「じゃあちゃんと生徒を監督しな。全く、乱闘の音が煩いったらなかった。ガス抜きとか思ってちょっと喧嘩させたら思ったより大事になって面倒臭くなって魔法で鎮圧したんだろう。前もこんなことがあった。あんた、本当人の監視がないとダメ人間だねぇ」

 

「……その、俺にも教師としての沽券があるので、そこら辺に」

 

 クロウが立ち上がり、ちらっ、ちらっ、と激しく背後の生徒たちの視線を気にしながら腰を低くして揉み手で懇願。マギサは呆れて物も言えない、といった顔でため息をついて背を向けた。

 

「まぁ授業中だしね。これ以上騒音を立てないように。それじゃ私もバッテリーチャージの仕事があるからこれで失礼するよ」

 

 マギサは毎日大容量バッテリーカードのチャージを何十枚と行っている。その無料で手に入れたバッテリーカードが学内の至る所で使われている。まさしく人間発電所だ。マギサは去っていった。

 

「……」

 

 クロウはマギサが去ったことを確認すると、流石にちょっと気まずそうな表情で生徒たちに向き直った。そして頭を下げる。

 

「すまない。俺の判断が間違っていた。そこのうん――土竜さとしと火鉢狂夜と天之玄咲を最初に止めるべきだった」

 

「えっ」

 

 玄咲は何で自分がという顔。シャルナは何とも言えない表情で玄咲を見た。謝るクロウに対して生徒たちの眼は冷たい。クロウはしばらく立ちすくんでいたが、最後は実に慣れた感じでスムーズに教師としての責務に回帰した。

 

「……では、乱闘前の続きからイベントの説明を始めようか。えーっと、何だったっけな……」

 

「ねぇねぇ、玄咲」

 

「なんだ、シャル」

 

「最近ちょっと、まともだって、思ってたけど、やっぱりクロウ先生って、凄まじい変人だね」

 

「……うん。俺も全くの同意見だ」

 

 玄咲はクロウは怠惰な天才なのでなく、怠惰だから天才なのだなと思い直した。もしもう少しクロウがまともだったら、魂の自我が今より弱く、おそらく才能もそれだけ弱まっていたのだろう。人間性までもが絡む魔符士の強さは本当に複雑だなぁと玄咲は改めて再確認した。この世界で強くなるのは本当に一筋縄ではいかないと。

 

「ああ、そうだった。リーダー決めで難航してるんだったな。そうだな……」

 

 クロウが教室の2か所――いかつい顔をしかめているさとしと無表情で腕組みしている狂夜を点々と見た後、言った。

 

「天之。お前さえ良ければあいつらとカードバトルをしないか? 力の誇示、わだかまりの解消、後々のことを考えたら、俺はそれがBESTだと思っている。別に無理にとは言わないが」

 

「……」

 

 一応玄咲は小規模ながら部隊指揮経験がある。その経験上、人間関係に禍根を残したまま部隊を率いるのは絶対によくない。最悪仲間を一人二人殺すことになる。だから玄咲は考えた結果、答えた。

 

「いいですよ。多分後のことを考えたら。それが俺にとっての最善だ。上下関係の徹底は指揮の基本ですから」

 

 火鉢狂夜と土竜さとしが天之玄咲を激しく睨んだ。どうやって心を折るか。玄咲はそこを思考のスタート地点として、使用カードを考え始める。その玄咲にキララが笑顔で、

 

「あ、天之くん。私ともカードバトルしよ☆」

 

「いいよ」

 

 玄咲は即答で応じた。シャルナが不機嫌になる。クロウは玄咲の将来がちょっと本気で心配になった。

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