カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
「さとしって、よえーのか?」
「いや、さとしはつえーよ。あいつと戦った俺が言うんだから間違いねぇ」
「でも、まるで子ども扱いだったぜ」
「だからそりゃ、つえーんだろ。天之の野郎がそれだけ」
「ふむ。中々ですね。まぁ僕は彼より強い人をいくらでも知ってますけどね。学園長とか」
「す、好き。格好いい……」
戦闘後。観客席。クラスメイトたちのどよめきの中、キララの顔色は悪い。
(や、やば。思ったより強そう。嵌れば勝てるけど、その確率は正直低い。やめたい。けど、この空気……)
「次はキララの番か。楽しみだな」
「ああ。まさか逃げるなんて魔符士の風上にも置けないことするわけないしな。したら軽蔑するぜ。輪すことも検討する」
「ハァ、ハァ。逃げてくれないかなー。でへへ」
「舐めさせてーゾ……!」
(……とてもじゃないけど逃げ出せない。そもそもクラスメイト全員集まるのが想定外過ぎた。ど、どうしよう……)
「キララ。次、上がれ」
(ちっ)
クロウの催促に笑顔でキララは答える。
「はーい! キララちゃんには魔符士の誇りがあるから逃げたりしませ―ん!」
「ちっ」
観客席の一部から響いた舌打ちにキララの顔が一瞬引きつる。それでもリングに上がる。その途中。
「キララ。君にもハンデを上げようと思うんだが」
(!)
キララはがっつかない程度にくいついた。
「えー? キララちゃんには魔符士の誇りがあるから本当はいらないんだけどなー。でも、天之くんがどうしてもっていうならキララちゃんは優しいからハンデ貰っといてあげるね」
「どうしても」
玄咲はどうしてもと言った。
「……」
キララは口元を引きつらせつつ言った。
「あ、ありがと。で、どんなハンデをくれるの?」
「5対1でやらないか。適当に生徒を見繕っていいから」
「……5対1、ね……」
キララは少し考えて、自分に向いてるルールだなと思った。
「OK。それでやろうか」
「じゃあやろうか。クロウ教官。それでよろしいでしょうか」
「ああ。文句は言わせない。サブリーダーとしての経験を積ませようって魂胆か」
「まぁ。そうですね」
玄咲の返答をキララは意外に思った。
(少しは先のこと、考えてるんだ)
「という訳でキララ。選べ。生徒たちに拒否権――抗う権利はないから安心しろ」
「それじゃ」
しるけん。青髪のギリ美少女。土竜さとし。火鉢狂夜。
「僕には断る権利がある!」
「べ、別にいいけど? クロウセンセの頼みだもんね」
「い、いや。俺はもういい」
「ふん。俺に群れる趣味はない」
「き、キララ。最後の二人は流石に……」
「そう? じゃ――」
リングに6人の人影がある。
天之玄咲。死水綺羅々。眼鏡おかっぱ。青髪のギリ美少女。ガタイのいいちょっと鼻の下の伸びた野球部顔の男子生徒。。授業中や説明中の謎の大人しさに定評のある常時眼がイッてるモヒカンリーゼント。キララが手持ちの情報を参考に選んだベストメンバーだ。
「じゃあ、やろうか」
「あ、ちょっと待って」
キララがチームメイトにこしょこしょこしょ。
「いい? キララちゃんの作戦通りに動くのよ? そしたら勝てるかもしれないから」
「ふっ、任せてください。僕は尽くしますよ。あなたに(くいっ)。そして守りますよ。あなたを(くいっ)。そして勝利の女神にプロポーズを(ちらっ)……」
「異論はないわ。合理的だと思うわ」
「……へへ。任せろよ。俺に」
「作戦は理解した。安心しろ。完璧に遂行する」
「……ま、急造ならこんなもんかなー。練度に不安しかないけど、一人よりはマシか。じゃ、説明終了」
「あひゃははははははははは! お星さまが見えるぜええええええええええ! お前の瞳の中によおおおおおおおおおお☆」
「「「「……」」」」
こいつは何で説明中だけ大人しくて物分かりがいんだろう。キララ以外のチームメイト全員が頭と頭の上の髪型の狂ったモヒカンに同じ感想を抱く。キララもちょっと不安になる。
(……あいつは相変わらずだな)
玄咲はネームドモブ
「まぁ、負けてもペナルティはないし、萎縮せず全力で――あ」
ペナルティという言葉から思い出したアイデアをキララは元気いっぱい玄咲に投げかける。
「あのさー、リーダーとかどうでもいいからさー、私が勝ったらさー」
「なんだ」
どうせ勘違いされたなら徹底的に。そんな思いで。
「天之くん。私の
「――――――」
静まり返る空気の中、玄咲はルビをしっかり把握しながらあっさり言った。
「ああ、いいよ」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!? 玄、咲!」
シャルナの危機感に溢れた声。玄咲は笑って振り返る。
「大丈夫。負ける気がしない。こういう時は絶対俺は負けない。負ける気がするときは全力でみっともなく勝ちを狙いに行く。その俺がこれだけ正々堂々戦ってるんだ。シャルならその意味が分かるだろ?」
「――」
シャルナは口の端をひくつかせて、それから言い惑った後、結局は、
「そだね」
困ったように、でも笑った。
「じゃあ、始めようかキララ。SD対戦申請ボタンを――じゃない。多人数モードで対戦相手と自陣のメンバーを設定してっと。これでよし」
ピコ。
キララのチームメイトたちが次々に己のSDに表示された【YES】をタッチ。魔法陣の上に立つキララ――一人魔法陣の中に立っていれば十分――は、押さない。玄咲は首を傾げる。
「どうしたキララ。早く押してくれ。――いや」
戦いたがっていない。その可能性に思い至った玄咲は優しい声で言う。
「別にやりたくないなら無理しなくていいよ。うん。俺は全然構わない。当初とは色々条件が変わってしまっているしな。戸惑うのも仕方ない。時には退くのも立派な戦術。できればやりたいが、負ける可能性が高い戦いを避けるのもそれはそれで立派な判断力だ。別に俺に人を負かす趣味はないから――」
玄咲がキララが戦闘を辞退しやすい空気を作ろうとそこまで言いかけたその時――。
ビタン!
「――えっ」
――SDに指を叩きつけた音。キララの気性を考えればおかしくはない。だからクラスメイト達のようにそこには驚かない。
(だが、なぜ、このタイミングで!? まるで俺が煽ったみたいになってるじゃないか)
「――キララちゃんはねー、舐められるの大嫌いなの。天之くんのことはさー、結構気に入ってるけどさー」
「!? そ、そうか! 俺も、キララちゃんのことが」
「でも、今は死ぬほど叩きのめしたくて仕方ないかな。身動き取れなくしてから衆人環視の中でたっぷりいたぶってあげるネ? 体に傷はつけられなくてもねー……」
キララがにこっと笑みを浮かべる。
「心に傷をつける方法は一杯あるんだよ。特にこれだけ人目があればね☆」
ピシピシ。
「――うん」
既にして玄咲の心に亀裂が入る。何かがキララの逆鱗に触れてしまったらしい。半切れモード。ドン引きの視線がキララに突き刺さる。シャルナだけ安堵の表情。どうしてこうなったのか。戸惑いの涙が一粒舞い散る。白くキラキラと光りながらリングへと舞い落つる。そして――。
ピチョン――。
涙が、リングに跳ねた。水輪が花弁を散らす。
それと同時――。
「おいお前ら、早く武装解放しろ。新入生はいつも武装解放前に対戦開始ボタン押すんだよな……」
クロウの注意がその場の空気を引き戻した。全員が慌てて武装解放する。
「
「
「
「
それぞれ柔らかそうな円球。クララが使っていたものとデザインが似た籠手。釘バット。大きめのカード型のAD。馴染みを良くするた為本人の魔力を混ぜるやり方で自動生成させられた名前は魔符士の特徴をちょっと宿す。そんな感じの名前のADをキララのチームメイトが次々に展開する。そしてキララも、
「武装解放――」
ADを展開する。
「
――それは美しい白色の銃だった。赤十字や星型のデコやラメがたくさん入った丸みを帯びた玩具みたいな銃。だが、先端についた巨大な針がそれらが生み出すキラキラ感を帳消しにしていた。先端の尖った太い針。ぶっ刺したら痛そう。さぞ大量の液体を注入できそう。ケミカルの静脈注射をしたら気持ちよさそう。キララらしいAD。玄咲は心の中でただ、
(流石)
と声に出したらきっと煽りと取られていたであろう賛辞を緩い笑みと共にADに送った。玄咲は割とAD馬鹿なところがある。カードよりもADが好きだと思ったことが百回以上ある。その玄咲が世界で一番格好いいと思っているADを展開する。
「シュヴァルツ・ブリンガー」
黒と赤を基調とした悪魔が宿っているかのような銃が玄咲の手中に顕現した。勝負の準備は整った。あとはカウントダウンを待つだけ。もう5まで迫っている。
4。
3。
2。
1。
【0】
ビィーッ!
「行くぞ!」
「あひゃひゃはヒャ! 死ねー!」
玄咲が飛び出すと同時、モヒカンリーゼントが飛び出してきた。その背後で、キララたちがカードのインサートを開始する。