カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第28話 カードバトル3連戦 VSキララ+4人

 物分良彦(ものわかりよしひこ)はキララガチ恋勢だった。恋に狂った頭でキララの言葉を思い出す。

 

「いい。まずはあんたが突撃して時間を稼ぐ。そのあとは」

 

 覚えていない。自分が突撃して時間を稼ぐ。キララにいいところを見せる。それが良彦の全て。思う。思う。想う。想う――。

 

(俺のキララにいいところを見せるんだ俺のキララに、お、おれでのキララに、ケミカル、また、貰える、それで、キララんにいいい所見せて、キララ、ケミカル、キララ、キララ、ケミカル、ケミカル、キララ、キララキララキララキラキラキララ――をあの男から奪い返す)

 

 良彦は知っている。キララがあの男と話すときだけちょっと楽しそうなことを。自分と話すときと笑顔の種類が違うことを。ケミカルの話になるとくれ、くれしか言わない自分と違ってあの男は流暢かつちょっとオタク臭い口調でケミカルの知識を並べ立てることを。それをキララが喜ぶことを。だから自分が図書館で仕入れたケミカルの知識をたどたどしく必死で披露したらさりげなく距離を取られたことを。その全てが天之玄咲のせいだった。あの男が自分からキララを奪った。あの男が、いつの間にか、何の予兆もなく誰も知らないうちにキララを自分のものにしてしまっていた。あの男が自分のキララを、良彦だけのキララを、ケミカル生産機である以上に良彦の人生を|入学()に一変させてしまった、真面目な振舞いを、金の稼ぎ方を、使う幸せを、教えてくれた、星のような輝きを放つ、ケミカルを呑んだ後だと尚輝く天使のような女性を。

 

 奪った。

 

 自分のものにしてしまった。

 

 許せない。許せない。許せない許せない許せない許せない悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい奪った奪った奪った奪った奪った。ぶち殺す。

 

「あびゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 良彦のカード捌きは天下一品。巨大カードにカードを瞬く間に5枚挿入する。カード型ADは武器としてほぼ使い物にならない代わりにどんな魔法にもフィットする。得手はないが不得手もない。良彦のようなテクニシャンに最適の魔法。どんな戦況にもばっちりフィットして戦えるオールラウンダー。それが物分良彦。残り15メートルまで迫った天之玄咲にこの距離で最適なフュージョン・マジック【万物不変(パラダイム・シフト)】を放とうとした瞬間、

 

「ブースト・ダッシュ」

 

 天之玄咲が背後にADを向けて魔法を放った。反動力作用のみを極限まで高めた魔法によって加速する銃魔法系列の加速魔法。一瞬で、距離を詰めてくる。早い。早すぎる。ただ魔法の効果が乗ってる以上に、魔法の効果が乗ったうえで、完璧な体制御をしている。だから、15メートルが一瞬で無になる。良彦はケミカルで最高のトリップを経験しているとき以上の狂乱で慌て口を動かす。

 

「フュージョン・マジッ!?」

 

 カードが手から力づくで奪われた。かと思えば地鳴りのような剛力で一瞬で地に胸板を叩きつけられた。それともはや同時としか思えぬ速度で、衝撃につんのめった口が自然現象で開く前に銃口を口にねじ込まれ、

 

「ダーク・アサルト・バレット」

 

 良彦の目から闇色の光が弾ける。遠距離では射撃に徹し、中距離では間合い管理に神経を費やし、近距離では接射――できれば0距離射撃を狙う、インファイト・ガンナーのお手本のような戦い方。それも0距離どころか体内で魔法が炸裂した。そのような場所にランク4の魔法を受けては、現実なら死亡してもおかしくない。つまり――。

 

 

【LOSE】

 

 

 良彦のSDからビィーっと音が鳴る。

 

 

 

 

【WIN】

 

 音の確認を受けるまでもなく分かっていたこと。良彦のHPが0になった。玄咲は続けて、

 

「ダーク・アサルト・バレット」

 

 間を置かず視線もむけずADだけ向けざまに詠唱。呆けた顔をした釘バットをもったガタイのいい男子生徒の股間に命中。

 

「ダーク・アサルト・バレット」

 

 股間を抑えて蹲る男子生徒の頭頂部に。仰け反り頭を押さえてがら空きになった股間に3度「ダーク・アサルト・バレット」SDからブザー。HPが0になった。勝利。次――。

 

「フュージョン・マジック――独塞聖権(スーパーセルフバリア)!」

 

「フュージョン・マジック――魔貫光徹弾(ピアッシング・アーマー・レーザー)

 

 防御系のフュージョン・マジック対策でセットしていた魔貫光徹弾(ピアッシング・アーマー・レーザー)――魔法防御貫通効果に特化した超極細の黒い光条がしるけんを包んだバリアを一点突破風穴を開け額を打ち抜き一撃でHPを奪う。次。

 

 

 キララと、青髪のギリ美少女。

 

 

 

 

「ほげっ!?」

 

「十回転釘男くん!?」

 

 瞬く間に良彦が倒された。かと思えば驚いている間に、いや、驚く間もなく、銃口がこちらを見ぬままに向けられ、気付いたら釘男の股間に命中していた。股間を抑えて蹲る釘男の頭部と、そしてまたがら空きになった股間に1発ずつ。それで釘男は終わった。HPが0になった。SDのブザーがビーッとなる。反応が、判断が、迅速過ぎる。同じ速度で頭を回さないと、思考速度の差で時間を詰められる。キララは慌ててしるけんに命令した。

 

「しるけん! 私たち全員を包める全体防御」

 

「フュージョン・マジック――独塞聖権(スーパーセルフバリア)!」

 

 しるけんは迅速な判断で自分一人限定かつ超狭い範囲に限って極大の防御力を誇るフュージョン・マジックを発動した。柔らかい球から溢れ出た光がしるけんだけを優しく包む。キララと、その隣りにいる、青髪のギリ美少女が思わず真顔になった。そして天之玄咲が素早く2枚カードを入れ替え、大して苦労もしていないのになぜかやたらと深刻そうな表情で掻いてもない汗を拭うしるけんに銃口を向け、

 

「ふぅー……これで一安心」

 

「フュージョン・マジック――魔貫光徹弾(ピアッシング・アーマー・レーザー)

 

「あぶっ!?」

 

「しるけんっ!?」

 

 黒糸の光条――魔法防御を貫くことに特化した性能の魔貫光徹弾(ピアッシング・アーマー・レーザー)がしるけんの独塞聖権(スーパーセルフバリア)を一点突破した。頭を打ち貫かれHPを0にされたしるけんがよろよろと地面に跪く。

 

「そ、そんな。ママ、僕にも、勝つ、権利が……! あと少し、あと少し、だったのに、僕は、頑張ったのに……!  糞っ! 糞っ、糞っ、糞ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 しるけんがリングを何度も叩いて悔しがる。どこにそこまで悔しがる必要があったのかは誰にも分からない。多分しるけんにも分からない。だからキララはもうしるけんを見ない。この真面目系クズが付き合ってられるかと思ったからではない。

 

 カードを入れ替えつつ真っすぐ向かってくる天之玄咲に対処しないといけないから。3人の犠牲で僅かばかり稼げた時間でインサートし終えたカードを発動する。隣の、水属性の青髪のギリ美少女と同時に、作戦道理に、

 

「フュージョン・マジック――氷棺獄原(コキュートススタンプ)!」

 

「ミスト・ジャム・プリズム!」

 

 ギリ青髪の美少女が地形干渉型のフュージョン・マジックを発動する。玄咲の足元まで届く雪化粧まき散らし吹雪く氷の雪原が一瞬で現れる。キララはそれに合わせて、遠距離魔法を無効化するのではなくベクトルを逸らして、無効化する霧の結界を張る水属性魔法を詠唱。水属性のフィールド魔法化で効果を発動したので効果が倍増。

 

「ダーク・アサルト・バレット」

 

 玄咲の魔法が霧と氷の結界に惑わせれキララたちと大きく離れた場所に着弾。続けて玄咲は詠唱する。

 

「アンチフィット・シューズ」

 

 自分の足へと、地形干渉系魔法メタのランク3カードを。

 

 

 

 

 

(死水キララ。その眼の隈以外は可愛い系の、物凄く可愛い容姿に反して頭の切れる合理主義者。打つ手が悉く合理的だ。セオリーを外してこないな。読みやすい。可愛いものだ。だが、本当の闘いはこれから。死水キララはまだその本領を全然発揮していない。幾多ものプレイヤーを低確率の事故でステータスなど関係なく問答無用で殺してきた状態異常特化の嵌め殺しキャラとしての本領を。さぁ、使ってこい。お前の符号魔法(ソウル・リンクス)を――!)

 

 玄咲は氷の地面の上を必死にバランスを保ちながら走る。滑りそうになる。シンプルだが厄介な阻害効果。予想通りの魔法。だから予めインサートしておいた対策魔法を予定通り発動する。

 

「アンチフィット・シューズ」

 

 地形のデメリットを軽減しつつ、メリットを増大する、現状対策とこれから使おうとする魔法にぴったりの効果を持つ魔法を。これから使うフュージョン・マジックで3枠、攻撃魔法で1枠、アンチフィット・シューズで1枠。もうカードスロットに余裕はない。あとは信じて突っ込むだけ。

 

 自分の判断にBETし全身全力100%の本気を注ぎ込むだけ。

 

 滑りにくくなった氷の上を培った体幹のバランスを活かして走る。もう普通の走行と何ら変わりはない。キララが少し引きつった表情を見せつつ、しかし霧と吹雪で霞む見通しの悪い視界の中。

 

 確かにその獰猛な本性を剥き出しにした笑みを浮かべた。「キャハ☆」口がそう動く。知ってる笑い方。可愛い。以上に、恐ろしい。まだ半分とはいえ、その瞳に宿る光は、表社会に生きる人間のものでは、決してないから。玄咲もまた、笑う。

 

 その笑い方も、いいなと思ったから。

 

 だが、戦闘に手は抜かない。

 

「キャハハ☆ 躱さないでね!? ぶっ倒れてね!? キララちゃんの玩具になってね!? 行くね!? 逝ってね!? これがキララちゃんのケミカル・ウォーター×3のフュージョン・マジック――!」

 

 隣の青髪のギリ美少女の驚愕の視線を受けながら、キララが玩具みたいな銃の先端についた見た目も用途も玩具みたいでない図太い針を玄咲に向ける。

 

 そして、詠唱した。

 

 

悪性反転魔薬水(バッドトリップウォーター・)電絶神経毒(ビリビリ)!」

 

 

 キララのADから膨大な量の水色の霧が放射された。水色の中に散りばめられた謎のキラキラが毒々しく輝くそれはフィールド魔法で効果が増幅されていることもあり瞬く間に広がる。玄咲へと襲い掛かる。飲み込もうとする。玄咲はただ冷静に前方の地面へと銃口を向けた。

 

 

「フュージョン・マジック――聖悪反転結界(サンクチュアリ)

 

 

 銃口から放たれた黄金色の巨大な光が地面に激突する。そして――。

 

 

 氷の地面を塗り替える形で聖なる光を噴き上げる聖光の地面が誕生した。玄咲は迷わずその中に足を踏み入れ、襲い来るキラキラの霧を全身で浴びる。

 

 

 そして、加速した。

 

 

「え? ちょ、待っ、なん――」

 

「ふん!」

 

 戸惑うキララへの距離を2秒で詰め、その腹に渾身のボディブローを叩き込む。腹の肉をゴムのように伸ばした拳が背中を大きく膨らませる。そんな状態で言葉など発せるはずなどない。「カハッ」と唾と、女の子が人前で見せてはいけない類の奴を口から小量漏らすキララの手からADを取り上げて、

 

「ふんっ」

 

 思いっきり遠くへと投げ捨てる。ドン引きするクラスメイト達のすぐ目前で魔法結界に阻まれて地に落ちる。無力化成功。次――。

 

 青髪のギリ美少女。

 

「やめて! やめて! やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 籠手型のADは解除に手間がかかる。だから殺す(倒す)。腹パン。「ゴフッ!」。それから悲鳴を突き破るように銃を喉奥深くに突っ込んで地に叩き伏せて、体内0距離射撃。

 

「ダーク・アサルト・バレット」

 

 涙と闇色の光が同時、青髪のギリ美少女の瞳から迸った。SDからブザー。一撃でHPを0にした。続けてキララをADを拾いに行かれる前に始末しに行く。

 

「キララちゃん、降さ――」

 

 両手を上げるキララの口に銃口を突っ込み詠唱した。

 

 

「ダーク・アサルト・バレット」

 

 

 HPを0にするためには3発必要だった。玄咲は美少女の涙と引き換えにカードバトルに勝利した。

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