カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第14話 CARD

「選択肢が多すぎる……」

 

 玄咲は目の前に広げたカードファイルを見ながら唸った。カードファイルにはランク1のカードで、店で購入可能なカードがずらりと並んでいた。

 

 デバイスショップでADの購入を終えた玄咲とシャルナは当然の流れとして次にカードショップを訪れた。カードショップにはデバイスショップと同様に膨大な数のショーケースがADの代わりにカードがおさめられているという違いはあるが並んでいた。

 

 だが、そんなショーケースには目もくれず、玄咲は入り口で店員に渡されたカードファイルとずっとにらめっこしていた。カードファイルには1000以上のカードのサンプルが分類分けされて載っていた。その殆どが玄咲の既知のカード。だが、中には玄咲すら知らないカードもあり、ゲームで登場したカードが作中世界に存在するカードのほんの一部でしかないという、よく考えたら当たり前の事実を、しかしある種の痛感を伴う驚きを以って玄咲は思い知らされていた。

 

 店は玄咲と同様カードファイルを手に渋面や思案顔を作る生徒で溢れていた。そんな中、隣でシャルナがパタンとカードファイルを閉じた。玄咲は思わず尋ねた。

 

「……シャルは、買うカード決まったのか?」

 

「うん。というか、決めてあった。一応、見ただけ」

 

「何を買うんだ」

 

「ダーク・スラッシュ」

 

「ダーク・スラッシュ……」

 

 玄咲はゲームでのダーク・スラッシュの性能を思い出す。

 

(武器に闇の魔力を纏わせて近接攻撃する闇属性の近接カード。ゲームでの攻撃力は60。消費MPは3。単発攻撃。近接カードだから前衛にしか攻撃できない。発生も遅い。が、その分威力が高い。ワンオンワン向きのカード。つまりこの試験向けの良いカードだ)

 

「うん。悪くないんじゃないか。ところでなぜダークスラッシュを」

 

「ずっと、練習してきた。使い慣れてる。剣と同じ。今更変えるのは、ありえない」

 

「慣れ、か……確かに、それは重要だな」

 

 シャルナの言葉に玄咲はゲームと現実の違いを見る。ゲームならばどの武器、どのカードを、どのタイミングで使っても結果は変わらない。慣れなどという概念が存在しないからだ。しかし、シャルナの言葉は、この世界には慣れ、あるいは習熟という概念が存在することを明確に語っている。

 

「ダークスラッシュということはシャルの魔力は闇属性か」

 

「うん。なんで?」

 

「いや、髪が白いなと」

 

 CMA世界のキャラクターは髪の色に魔力の色の影響を受ける。ただ、必ずしも色が一致する訳ではないのでちょっと気になった程度の質問だ。

 

「あ……ほら、必ず、一致する、訳じゃ、ないから」

 

「まぁ、そうだな。変なこと聞いて悪かった」

 

「ううん。いいよ。じゃ、買ってくるね」

 

「ああ」

 

 シャルナがレジに向かう。玄咲は一人でカードファイルとにらめっこする。

 

(……慣れ、か。確かに重要だな。よし、ここは俺も慣れを重視してゲームと同じカードを選ぶとするか)

 

 玄咲は頭の中にゲームの情報をポケットボーイの画面を再現するイメージで思い浮かべる。

 

(えっと、この場面で主人公がグッドフィーリングを感じて選ぼうと提示してくるカードは8つ。確か――)

 

 ファイア・ボール。  使いやすい攻撃。 

 アクア・ヒール。   回復ができる。

 アース・ウォール。  壁をつくれる。

 ウィンド・ステップ。 早く動ける。

 サンダー・ショック。 たまに麻痺させる。

 ダーク・スラッシュ。 遅いが高攻撃力。

 ライト・ソード。   早いが低攻撃力

 アイス・バーン。   氷の地面を張る。

 

(こんな感じで糞みたいな一言説明文とともに選択肢が表示されるんだよな。うむ。完璧に思い出せた。まぁ、ここは鉄板のアイス・バーンだろう。よし、決まった)

 

 玄咲はシャルナとは別のレジに向かう。レジは横広のカウンターに20台ほどあり、店員も20人ほどいた。どのレジにも生徒が並んでいる。

 

(……ゲームじゃスクロールもしない1マップにショーケースが数列とレジと店員が2ずつ並んでいるだけの店内だったのに、デバイスショップと言いもはや別の店だな)

 

 そう思いながら一番人の少ない列の最後尾に並ぶこと、数分。玄咲はレジの前に出た。若い女性店員が玄咲を出迎える。美人と言えば美人だがシャルナには遠く及ばなかった。とくに緊張することもなく玄咲は店員と会話を交わす。

 

「いらっしゃいませ。ご希望のカードは何ですか?」

 

「アイス・バーン」

 

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

 

 店員がカウンターの後ろの、何やらカードが色々詰まったケースをごそごそして、一枚のカードを取り出し、玄咲に見せてくる。

 

「こちらのカードでお間違いないですか?」

 

「ああ、間違いない」

 

「では、こちらのレジに生徒カードの挿入をお願いします」

 

 アイス・バーンのカードをレジ――レジスター・リード・デバイスの略称――の店員側のカード挿入口に差し込んでから、店員が玄咲に生徒カードの挿入を促してくる。玄咲はSDから生徒カードを抜き出してレジに挿入した。すぐにRDからジャキーン!と金属チックな音が噴き出した。

 

「はい。お会計完了です。試験終了後のご利用を店員一同お待ちしております」

 

 店員が玄咲にアイス・バーンのカードを渡して頭を下げる。

 

(うむ、ゲーム通りの台詞、落ち着くな)

 

 そう思いながらカードを受け取り玄咲はレジを立ち去る。

 

「玄咲。何買ったの?」

 

 先に会計を済ませていたシャルナがレジから離れたところで玄咲に合流し、そう尋ねてくる。玄咲は得意げにカードを見せた。

 

「ああ、アイス・バーンだ」

 

「えっ」

 

 きょとんと、玄咲とカードを交互に見たあと、はっとした表情を浮かべてシャルナはあわあわと玄咲に詰め寄る。

 

「その、やめた方が、いい。低ランクの、地形干渉系カードは、ゴミカード。役立たず。常識。自殺行為。もう、遅いかもだけど、一応、店員さんに、カードの交換を――」

 

「だ、大丈夫だ、シャル」

 

 顔を近付けてくるシャルナとの間に両手を挟み、全力で顔を背けながら玄咲は言った。

 

「こ、この世界(CMA)に存在するカードにゴミカードなんてない。どんなカードにも生まれてきた意味がある。役に立たないカードなんて1枚もないんだよ」

 

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