カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第3話 F組VSG組

「僕に続け! とにかく天之玄咲とシャルナ・エルフィンを見つけたら何を差し置いてでも殺せ! 他の奴はどうでもいい! 苦しめて殺せえええええええええええええええええええええええええええ!」

 

 射弦義カミナは疾走する。F組は必死にその背に続く。隊列や役割分担も何もない、ただ多人数である以外の何物でもない集団。それでも纏まりだけは辛うじて保っているのはカミナの狂気という名の負のカリスマ、そして、もう駄目だ。このイベントは勝てる訳がない。ならせめてこのキチガイから大金を毟り取ってやろうという、自棄糞気味な連帯感のなせる業だった。

 

 5分ほど山を疾駆する。すると、山の麓が見えてくる。そこに、1年G組の生徒の群れが待ち受けていて、カミナは歓喜して飛び込み、

 

 

「「「バフ・マーチャント!」」」

氷棺獄原(コキュートススタンプ)!」

悪性反転魔薬水(バッドトリップウォーター)幻壊嘔塗(ヴォイドヴォミット)

 

 

 一瞬で凍り付いた森の中で突如噴射された極大量のキラキラした水の煙をもろに浴びて激しく嘔吐した。

 

 

 

 

 

 

「うっわ、もろに決まった。考えなしに飛び込み過ぎでしょ……ビリビリなら一網打尽にできたかも」

 

 キララはケミカライザーをカミナたちに向けたまま、隣にさとし、背後にG組の生徒を伴った状態で、一瞬で狂乱状態に陥って体を掻き毟りながら嘔吐し続けるF組の生徒たち――特にカミナに冷ややかな視線を向けた。

 

 悪性反転魔薬水(バッドトリップウォーター)幻壊嘔塗(ヴォイドヴォミット)は相手に不快感を与える。ただそれだけのフュージョン・マジックだ。ビリビリのような決まれば相手を実質イチコロにできるような攻撃能力にはかける。だが、その分効果範囲が膨大で、また成功率、効き目、持続時間などに攻撃能力以外の全ての面に優れるフュージョン・マジックだ。対集団能力なら手持ちのフュージョン・マジックでは最高。味方がいる状況ならデバフとしての効き目を見込んでビリビリよりも優先して使ってもいいかもしれないフュージョン・マジック。なにせ、幻壊嘔塗(ヴォイドヴォミット)の与える不快感は強烈だ。一度かかってしまえばもはや戦闘などままならない。自分で試したことのあるキララには分かる。自室で試したらあまりの不快感に我を失い泣き叫び暴れ狂って挙句大事な調合道具を壊してしまって、二度と自分には使うものかと思ったものだ。その手の魔法、薬に耐性のあるキララでさえ、そうなのだ。耐性のない相手にはとても耐えられないだろうとキララは思った。思いながら、指示を出す。

 

「キララちゃんの魔法無差別だから巻き添え食らわないよう近づかないでね。遠距離魔法に徹して。あと近づいてきたら容赦なく追い返して。ぶち殺してもいいから。あと――」

 

「ジャッジメント・アロー」

 

 淀みない声で詠唱されたランク6の弓魔法が煙を突き破ってキララへと襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 カミナは不意打ちで糞不快な状態異常を付与する煙を受けた直後こそ戸惑ったものの、すぐに気を取り直してサンダージョーとの思い出の詰まった愛AD神威挽(アムネシア)パーティクル・レインを構えて、状態異常攻撃を仕掛けてきた糞不快な女に狙いを定めた。依然、不快な思いを引きずったまま。

 

(不快だ、不快だ、不快だ、不快だ……ジョーさんのいないこの現実の方が不快だッ!!! それに比べればこんな口に蛆を腹にハサミを突っ込まれたかのような不快感、極楽浄土の蓮の香だ! 気持ちいいよ、むしろ。なにせ、地獄の温度を忘れさせてくれるからなぁッ!!!!!!!!!!!!!!!)

 

 今のカミナには少しランク過剰で魔力消費の重い、だがサンダージョーとの思い出の詰まった愛カードだから使うランク6【ジャッジメント・アロー】を集団の中で一番危ない眼つきをしている――つまり集団のリーダーと思しき青髪の女に放つ。

 

「ジャッジメント・アロー!」

 

 銃弾のように回転する魔力を纏った緑色の矢が放たれる。高い貫通能力を持った個人戦で真価を発揮する強力な単体攻撃魔法。ただ、十八番のクリティカルには失敗した。カミナは舌打ちを漏らす。なんだかんだでバッドステータスの影響を受けてしまっているようだった。だが、それでも狙いは外さない。ランク6の魔法だ。急所に直撃すれば即死は免れないだろう。青髪の女目掛けて放った魔法。しかしうんこみたいな髪色のドリルリーゼントの大男が女と魔法との間にサッと割り込み、

 

「インパクト・クロス・ガード」

 

 ランク4の防御魔法を展開する。問題ない。その程度の魔法ならば男ごと貫通して女を殺せる。ほくそ笑むカミナの視界の中、ジャッジメント・アローは大男の、カードを扱うために左手の指先にちゃんと小さな穴のあいた一対のボクシンググローブ型のADの胸の前でクロスした交差点から生じたバリアに受け止められ、僅かな折衝の後突き破り、そして大男もまた――

 

「……ってーなぁ」

 

 突き破れなかった。驚愕に目を見開くカミナの視線の先、いかつい顔がへっと、不適な笑みを浮かべる。

 

「だけど、へへっ、リーダーの言う通り、俺ぁ防御の方が得意だったみてぇだなぁ……」

「――なんっちゅー抗魔力だ」

 

 制服の爆ぜた前腕部。赤く腫れ上がりながらも、肉が破けてすらいない。皮膚は裂け僅かに血が滲んでいるがそれだけ。ランク6魔法を素手で受けたにしては異常な軽傷。驚くカミナは、しかし類例を思い出して、すぐ納得する。

 

(こいつ、ジョーさんの部下の岩上若芽の同類かッ! ん? 岩下? 岩上? わかめ? じゃくが? ……どうでもいいッ! 糞ゴツくてキモイ癖にジョーさんに馴れ馴れしかった不快な男のことなどッ! とにかくメカニズムは分かった! にしても――でかい)

 

 改めて大男を見る。身長は2メートルを優に超え、さらにガタイのでかさが実身長以上に男を大きく見せている。筋骨隆々で、気骨のある性格。見るからに攻撃力もありそうだ。魔力もそこそこあるに違いない。もし近接戦になったら足元を救われることもあるかもしれない。

 

(本当にでかいな。年の差を考えたら、こいつ、素質は若芽さん以上か? ならば一筋縄じゃいかないぞ、こいつらは。あの青髪の女も、普通なら絶対に符号魔法にはならないような際物の、それゆえ嵌れば強力な状態異常魔法を使いこなしてやがる。厄介だ。これに天之玄咲が加わったら――)

 

 カミナは気付く。G組の生徒の中に天之玄咲の姿がないことに。さらに考える。

 

(隠れている? いや、その可能性は考えても仕方ない。別の場所を探した方がいい。それに何より……)

 

「あっ、あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ! もう、限界ッ! 死ぬ! しなせてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「何で飛び降りる場所がないのよぉオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ! 死ねないじゃんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「あだっ! す、滑る! 糞ッ! 足が滑るんだよォーーーーーーーーーーーッ!」

「舌を噛み、痛ッ! げ、幻覚より、やっぱ、痛いの怖い。怖い、怖いよ。誰か助けて、寒い、寒い、な、なんか、体が、軽く、楽に、あっ、あっあっあっ――あっ」

「やべーぞ! おげっ、おえっ、カス美が、し、死にかけてる。なんだよこの魔法! 符号魔法だろーけど、頭おかしいだろ! 何でこんな魔法に適正持てんだよ! この魔法の使い手は気が狂ってる! 」

 

(クラスメイトが壊滅状態だ。戦闘になったら負ける。ここはもう――)

 

「カ、カミナ様、うぷっ、撤退を……」

「言われなくても! 撤退だ! 撤退するぞー!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおお! 逃げるんだよぉおおおおおおおおおおおオオオオオオ!」

「逃げろ! やっぱりキチガイに従うもんじゃねぇええええええええええええええええええええ!」

 

 一部の生徒がカミナの指揮を外れて逃げ出す。止める暇もない。そして前後不覚の中、煙を抜けて前方に――G組の前に抜け出た生徒が、

 

「こんなところにこれ以上いられるか! 俺は好きにさせてうぼあああああああああああああああああああああ!」

 

 前方に抜け出た生徒がたちまち魔法の集中砲火を頭部中心に食らってHPが0になった。そして頭部が見るも無惨な有様となった。その光景を見たF組の生徒がさらに半狂乱でキララたちと反対方向に逃げ惑う。来た道を戻る。カミナもまた舌打ちをしてきた道を戻ってゆく。指の肉を血が出るほどに噛みつつ、思う。

 

(要は天之玄咲さえ倒せばいいんだ! 真っ先にこちらに向かってきたということは、あいつも僕を敵視している! いずれ接敵――)

 

 ふと、思う。接敵したとして勝てるだろうかと。不安になる。カミナはここ数日ぶっちゃけ何も考えずに行動してきた。怖くなんてなかった。ただ、牢屋に入れられて、糞婆から酷い目にあわされて、聖書からも離れて、いやでも冷静になる時間を設けられて、少しだけ冷静さを取り戻していた。その冷静な頭が言う。

 

 勝てない、と。

 

(――いや! F組総員でかかれば勝てる! 天之玄咲を、シャルナ・エルフィンをぶっ殺す! 待ってろよ――! 待ってろよ――! 待っててよ――! ジョーさん――! あいつらを殺したら、僕も、そっちに行くからね――!)

 

 カミナは狂気で不安を塗り潰して、来た道を戻る。

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