カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第4話 オン・ステージ

 カミナはイツキとF組の先頭を走り先導しながら、指示を出す。何の思い入れもないが、F組の雑兵はいないと、天之玄咲に勝ち目はない。しっかりと、使い捨ての兵として大事にしなければならない。

 

「とにかく、開けた場所で一旦態勢を整える! 山頂に戻るぞ!」

「カミナ様! 開けた場所ならこの先の分岐道の先により近いところが!」

「よし! そっちに行くぞ!」

「はい!」

 

 見通しの悪い山中の左右分かれた分岐路を右に。そしてしばらく走ると開けた場所に出た。少々の安堵を覚え速度を緩めるカミナの耳に。

 

 ギィー―――――――ン!

 

 と、突如ギターの音が響いた。前方からだ。木々の暗がりの向こう。開けたスペースの中央に、よく見たら一人の赤髪の男が立っている。男はギターをかき鳴らし続ける。狂気的な腕前の演奏。男が吠える。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお俺の歌を聞けええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 

 ギターをかき鳴らす。かき鳴らす。かき鳴らす。無意味な演奏ではない。ギターの演奏に呼応してギターが帯びる赤紫の魔力光が増加してゆく。どんどん、暗闇を照らしてゆく。そしてある時、ギターをかき鳴らしていた尖った爪で最後にギャン! と音を立てて演奏を締め、髪を振り乱して、面を上げて、犬歯を剝きだして笑う。

 

「ハッハァ! 貴様ら程度ならこのくらいでいいかァ! 悪いがここは通行止めだァ! 通りたい奴は泣けェ! 叫べェ! そして死ねェ! 月は出てないが狂っちまえぇえええええええええエェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエえええええええええええええええええええええええええ!」

「ちっ、またキチガイかよ! この学校はキチガイばっかりだ、な!」

「待て! 飛び出すな! あの魔法は演奏に応じて自己バフする強力な――!」

 

 カミナが警告を出して飛び出した生徒を止めようとする。だが、もう遅い。ルーキー・棍棒を装備した生徒が雄たけびを上げて魔法を詠唱する。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおオオオオオオ! ハイパー・クラッシュ!」

「死ねぇっ!!」

 

 狂夜が紫炎を纏ったギターを一閃した。

 ADがへし折れ、耳にギターが叩き込まれ、血潮を撒き散らしながら男子生徒はぶっ飛んだ。カミナは瞠目した。カミナたちの元に送り返された男子生徒のHPが一撃で0になっていた。それもだが、カミナが一番驚いたのはそこではなかった。

 

(ど、どんな攻撃力だ!? 馬鹿みたいに頑丈なADを一撃で破壊するだと!? まるで、ジョーさん並の素質、いや、こと攻魔力に限ればあるいはそれ以上の――はっ! ぼ、僕はなんて失礼な考えを――!) 

 

「――ヴァイオレット・ビート。その耳に刻んで帰れ。雑魚どもが」

「くっ! 貴様のせいで失礼な思考をしてしまっただろうが! 死ねぇ! エメラルド・アサルト・アロー!」

 

 カミナが放った魔法の矢が狂夜のギターの一振りでかき消される。瞠目するカミナに狂夜が襲い掛かる――!

 

 

 

 

 

 

 

 敗走。カミナは逃走していた。

 

「はぁ、はぁ! なんだあいつ。化け物かよ! たった一人なのに、突破できなかった。敗走を、余儀なくされた。はぁ、はぁ、天之玄咲はあいつより、強いのか。糞、糞ォ……はぁ、はぁ……!」

「カ、カミナさま。もう復讐なんてやめた方が」

「ッ!? 黙れクソアマがァ!」

「キャァ!」

 

 カミナは反射でイツキを殴りつけた。頬を押さえて地面に倒れるイツキ。カミナは胸倉を掴んで怒鳴り上げる。

 

「あいつらのせいでジョーさんは死んだ! そして僕の人生も破滅した! じゃあ僕に何が残されてるっていうんだ! 復讐しかねぇだろうが! ええっ!? そうでもしてなきゃもう僕は狂い死にそうなんだよぉオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおオオオオオオオオオオオ!」

「……変わりましたね。カミナ様。本当に、出会ったばかりの子供の頃は凄く優しかったのに、思えばあの聖書に嵌り始めてからおかしくなりました。ただの偶然かもしれまあがっ! あ、あがが……」

 

 カミナはイツキの首を絞めあげる。そして殺意を込めて睨んだ。

 

「聖書を悪く言うな。イツキだろうと許さない。僕が救ったその命、天に還したいのか?」

「い、いえ……失礼、しました。ゴホッ! 失言、でした……!」

「その通りだ。失言だ。今後は控えろ。イツキだから許してやる」

 カミナは手を放す。イツキはせき込みながら礼を言う。

「は、はい。ゲホッゲホッ! ありがとう、ございます……」

「とにかく今は戦力が一人でも必要だ。合理的に考えても殺す訳には天之玄咲ゥ!」

「ひっ!」

 

 カミナが突如怒声を上げる。イツキが怯える。カミナの眼にも入らない。その視線の先にいる人物は、一人だけ。

 山頂に立ち、こちらを見下ろしている、天之玄咲だけ。天之玄咲がフッと笑って、やたらと裾の長い制服を翻して背を向けて山頂――途切れた視界の向こう側へと姿を消す。カミナは激怒した。

 

「貴様ぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! 逃げるなぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! この卑怯者がァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! 己の罪から、ジョーさんを殺した責任から逃げるなぁあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! 僕から最愛を奪った罪を償ええええええええええええええええええええええええええええ!!!」

「ッ!? 最愛……や、やっぱり……!!!」

「追うぞッ! ついてこいイツキ!! 雑兵ども!!! 絶対、何が何でも、ぶち殺す!!!!!!!!」

「罠……いえ、はい……」

「……はい」

 

 カミナをイツキは追いかける。そして随分数を減らしたF組の中でも現金な生徒たちも追いかける。カミナは追いながら、カードケースに手を這わせる。

 

(大丈夫。僕にはこの禁止カードがある。一度使ったらバレて失格になるだろうが、一度だけなら問題ない。使ったら壊れる代わりにランク9相当の威力の魔法を放つ、使い捨てにも関わらず高額のカードだ。何より相手に激痛を与えながら死に至らせるという性質がいい。待ってろよ天之玄咲。このカードで貴様に裁きを与えてやる――! いや、目の前で最愛の存在を殺してやるのもいいな。そっちの方がいいか? いや――どっちも殺せばいいか。どっちも殺す。どっちも殺す――!)

 

 カミナは山頂へと走る。

 空が、昼の残滓を残すオレンジを脱ぎ捨てて、夜へと移り変わってゆく。

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