カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第7話 生贄の祭壇

「はぁ、はぁ……!」

 

 カミナは走る。ボロボロの体を引きずって。もう、傍には誰もいない。イツキさえも。死んでしまったから。涙を流し、体を震わしながら、逃げ惑う。

 

「はぁ、はぁ……! なんで、こんなことになるんだよ。何でいつも、最後はこうなっちゃうんだよ……! 僕は、ただ、大好きな人と、ずっと一緒に、同じ夢を見たかっただけなのに。なんで、なんで、何もかも全部壊れていくんだ! 叶わないんだ! 幸せは崩壊するんだ! 夢は圧死するんだ! ゴミは増殖するんだ! 俺は地獄に堕ちるんだ! 永遠の悪夢が覚めないんだ! 好きな人と一緒にいられないんだ! 悪は栄えるんだ! 全ては絶望の中に堕ちていくんだ! 世界は終わるんだ! 愛は嘲笑われるんだ! 世界は地獄のままなんだ! 何もかも裏切られるんだ! 僕は裏切られるんだ! 神は裏切るんだ! 神などいない! 答えろ! 答えろ神ィ! 答えろよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ! 答えないなら死ねェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」

 

 カミナは泣き叫ぶ。そして一人の女性の名前を叫ぶ。

 

「イツキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ! 僕は、僕は、ぼくはぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアなんで君は僕を庇ったんだよぉおおおおおおおおおおおオオオオオオオオこれじゃ死ぬに死ねないじゃねぇかよぉオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ! 君に悪くてさぁあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 その死にざまを思い出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やだぁあああああああああああああああああああああああああああああああ! ジョーさァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん僕を裁かないでえええええええええええええええええええええええええええええ!」

 

 ゾディアック・サンダーが襲い来る。照準がずれたのか、悪夢の蜃気楼を相殺した影響で少し軌道がずれたのか、その端っこの部分が微かに掠るかという起動。避ければ直撃だけは避けられそう。その上で防御魔法を張ればもしかしたら生き残れるかもしれない。だが、カミナの頭にそんな思考は働かない。サンダージョーに裁かれる恐怖しか頭にない。心をも埋め尽くしている。そんなカミナを、

 

「カミナ様!」

 

 イツキが突き飛ばす。カミナは怒鳴った。

 

「ジョーさんの裁きを邪魔するなぁああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 イツキは杖型のADをカミナに向ける。そして詠唱した。

 

生贄の祭壇(ヴィクティム・サクリファイス)! ぐっ!?」

 

 ADから放たれた緑色の光が正方形の防壁となりカミナを包む。それと同時、イツキが心臓を押さえて倒れた。死体のように動かない。当たり前だ。生贄の祭壇は発動者の全ての生命力――命を生贄に強力な防壁を張る禁止カード。一昔前の王族が奴隷を使い捨ての生命力壁として使っていたことで有名な歴史の授業にも出てくるカードで、一昔前の骨董品ながら命を代償にするだけあってその効果は今でも強力で、そして強烈なデメリットを抱えているため買い手が中々付かず、禁止カードの中では安い。イツキが持っていてもおかしくない。そこまで考えたところで、カミナは我に返って防壁を内側から叩きながら叫んだ。

 

「何してるんだイツキ――――――ーー! 俺を死なせろーー―――――――――! 邪魔すんじゃねええええええええええええええええええええ! ジョーさんとやっと会えるんだよぉオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「――」

 

 イツキはニコリと笑った。

 

「ごめんなさい。反射で――」

 

 ゾディアック・サンダーがイツキを飲み込んだ。その余波が地面を伝って広がり、カミナを守る防壁もたちまち罅割れ、そして壊れた――。

 

 

 

 

 

 

「う、うう……」

 

 カミナは生きていた。直撃しなかったこと。禁止カードの力で守られたこと。元々体が雷属性と相性がいいのか雷属性耐性がやたら強かったこと。その全てが合わさって、ゾディアック・サンダーの余波を間近で受けたにしては奇跡的な軽傷だった。どうでもいいことだが、HPゲージもまだ30%も残っている。そういえば、イツキはどうなっただろうかと思って――。

 

 カミナは、見てしまった。

 

「あ、あああ……」

 

 ――こちらに延ばされた手が、白い。肩の付け根に至るにつれて徐々に黒ずんでいき、最後は僅かな炭となって、胴体との結合を失ったまま地面に転がっている。

 

「あああ、アアアアア……」

 

 視線をさらに辿ると、少し離れたところに黒い炭の塊がある。対魔力が強い学園の制服の黒焦げた切れ端が地面に点々としている。そして、その中央には――。

 

「――ッ! ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 壊れたAD。真っ黒な骨。血の一滴も飛び散らない程の大火力を受けて炭化した体。それが、

 

 ――あっはっは。飾るにも値しないオブジェだ。足で小突いたら壊れちゃったよ。

 

「ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 かつての、サンダージョーとの思い出を蘇らせて、それが何だか凄く怖くて、何かを間違えているようで、自分が自分じゃなくなるようで、何も悪いことをしていないのに、なぜだか罪悪感が疼いて、それで、それで、それで、それで――。

 

「あ――」

 

 処刑人が下りてくる。罪を、今までの罪を全てカミナに返しにくる。手始めにイツキを黒焦げに、そして次は――。

 

 あれか? あれか? あれか? あれか? それともあれか? あの時の分か? あのアマルティアンの分か? それともあの堕天使にしようとしたことを全て返そうとして、あんな目でこちらを睨んでいるのか。だとしたら、これから、自分は、どうなってしまうのか。あの、男が、こちらを睨んでいる。殺気が、視線が、心臓を貫く。「はっ、はっ!」。地に下りる。歩いてくる。近づいてくる。走ってくる。男が、一人で――。

 

 カミナに罰を与えにやってくる。カミナは一溜りもない恐怖に駆られて――。

 

「ひ、ひぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 みっともなく叫びながら逃走を開始する。追随してくる足音が止まらない――。

 

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