カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第10話 【拷問】 ―ENDLESS NIGHTMARE―

 カミナの右手の五指の付け根を紐で縛った。ギュっと、壊死するくらい強く。指はすぐ青黒く変色した。芋虫のように膨らんだ。

 

「何を、するつもりだ」

 

 玄咲は答えない。もう、余裕がない。やりたくない。やりたくない。やりたくない。やりたくない。頭の中でそればかり考えている。

 

 それでも、やるしかない。シャルナを守るためなら地獄に堕ちる。悪魔になる。それが玄咲の決意だから。強さだから。ポケットから取り出したものを見せる。

 

「これを刺すんだ」

 

 返し刃の付いた、小さな針。これが、とても痛かったことをよく覚えている。だから笑顔で言う。笑顔を浮かべていないと正気が零れ落ちそうになる。

 

「……それ、だけか」

 

 カミナは少しほっとした表情をした。想像より大したことない。そう思ったのだろう。

 

「ああ。その前に」

「ぶっ、ご、っほ? !!!? !!!!!!????」

 

 カミナの背中に指を突き刺しつつぶっ叩いた。カミナは悲鳴を上げない。上げれない。一時的に、そういう状態にある。玄咲は解説する。恐怖をあおるため。

 

「背中のここを押すとさ。呼吸器の根っこがつまって、一時的に声が出せなくなるんだ。絶叫ってのはさ、脳を興奮状態に追いやって痛みを逃がす効果があるんだ。絶叫できない状態で限度を超えた痛みを受けるとどうなるか。今から実験しよう」

 

「――! !!!?」

 

 カミナの指に針を当てがう。そして、突き刺す。

 

「――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!? アッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 カミナの腫れた指の爪の狭間に針を刺した途端。間欠泉が破裂したように血が飛び出した。勢いよく飛び出す血が本当に正気が噴出していってると思うほど痛かったことを玄咲はよく覚えている。一発で失禁したこともよく覚えている。カミナは激しく痙攣して、口と眼を大きく開け続けた。それは止まらなかった。大口を開けて海老ぞりになって、声なき絶叫を上げ続けた後、満を持して迸った絶叫は血を噴出しながらの壮絶なものだった。痛ましかった。その状態で、返し刃のついた針を一気に引き抜いた。カミナは命を引き摺り出されたかのように鳴いた。壊れた玩具みたいに痙攣し続けた。

 

 ……玄咲は。

 

 自分の心が壊れる音を聞いた。そしてリミッターが外れた。再び背中を叩いて針を隣の指の爪の間にあてがう。暴れるカミナを殴って体を黙らせ、再度――。

 

 ブスリ。

 

 

 

 

 

 

 

「――安心してくれ」

 

 カミナを抱き締める。びくびくと痙攣する。その不安を癒すように、優しく、優しく。

 

「大丈夫。俺がついてる。だから、そんなに怖がらないでくれ。大丈夫。ずっと俺が見てる。お前が死ぬまでずっと。俺が、ついてる。絶対お前を見放さない。こ、怖いよなぁ。つらかったよなぁ。苦しかったよなぁ。世界を亡ぼしたかったよなぁ。人間は残酷だよなぁ。絶滅した方がいいよなぁ。分かる。分かる。もうあんな世界価値ないよなぁ……」

 

「あっ、あぐっ、いぐあ、あああああ……ッ!」

 

 悪魔は耳を齧ってくる。肉が千切れる。穴が開く。

 

 

 狂気を発している。

 

 

 カミナを壊すほどに自分も壊れていってる。そしてエスカレートしていく。加虐が、拷問が。そしてまたカミナが壊れて、それに呼応して悪魔も壊れて、そして、エスカレートして、またカミナが――

 

 

 終わりのない地獄だった。

 痛みが循環する悪魔の輪だった。

 2人で一緒にどこまでも堕ちていく。

 男の表情はもう人間のものでない。壊れて、壊れて、壊れて、壊れて、悪魔のようで、凡愚のようで、獣のようで、聖人のようで、その両方が極端に表れてて、

 どこまで行っても人間の貌で。

 そしてその瞳が本当に見ているのはただ一つだけだとカミナには分かってしまった。同類だから。

 カミナがサンダージョーしか見ていないように。

 この男も堕天使しか見ていない。

 世界の中心がそれで、世界を犯されかけたからこんなに怒っていて、それはとても当たり前のことで、

 カミナは初めて、目の前の男に少しだけ好感を持った。思わず、ニコリと笑った。

 拳を叩き込まれて潰された。笑っているのがどうしても許せないらしかった。

 

 

 

 

「次だ」

 

 

 

 

「……もう、駄目だ。俺は、壊れた。でも、でも、でも、でも――こいつを放置したらシャルが死ぬ、だからやる、でも、もう、やりたくないよぉ……」

 

 自分を壊しながら、カミナを壊して、弱音を吐いて、カミナが泣いて。

 

「……な、なら、やめて」

「やめないよ」

 

 カミナは底の底まで狂気に濁った瞳を見た。まるで鏡を見るようだと思った。

 

「やめないよ。俺はシャルのためなら何だってするんだ」

 

(――ああ)

 

 これが、僕の、しようとしてた、ことなのか――

 なら、やり返されても仕方ないかな。

 

 心が終わりかける。諦めかける。全てを。今自分がされている行為の本当の意味を理解したカミナの心が。でも、地獄も悪夢も悪魔の拷問も終わらない。

 

「さぁ、次の、折檻だ。次はサンダージョー印の金玉折檻だ。この針を刺して、抜いてやる。ハァ、ハァ、ズボンを、脱がしてやるからな――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってるの、玄咲」

 

 

 カミナの瞳に映る悪魔の瞳が恐怖一色に染まった。落雷でも落とされたかのように激しくビクついた指から針が落ちる。

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