カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第13話 終着

「死ねよ……お前ら……」

 

 カミナの殺意は相変わらずだった。まだ目が生きていた。狂った精神力だった。だからこそ、心を折らなければ、この場は終わらない。シャルナを守る。玄咲のファースト・プライオリティーは依然変わらない。そのためなら、何でもはしないけど、やるべきことは絶対する。拷問はしない。だけど、それでも、

 

「いいか、カミナ」

 

 やれるだけの抑止はしておく。カミナの頭を両手で挟む。そして、自分の中の得体のしれない狂気を全てここに置いていくつもりで。カミナへと吐き捨てるつもりでその瞳を睨み――。

 

 

「2度とシャルに手を出すな。分かったな」

 

 

 本気の殺意を飛ばした。それは魔力現象としての【殺気】となりカミナに襲い掛かった。

 

 ――カードの補助なしでも、魔力が存在する以上、魔法は使える。ただ、カード、というよりは魔法陣を媒介としない魔法は大抵実用的なレベルに達しないので、この世界ではカードを用いた【カード魔法】が発展した。そして、人力の魔力操作で起こせる魔法の中でも、殺気は数少ない有用の範疇に入る魔法だった。シンプルながら有用な【生体魔術(ナチュラル・マジック)】。玄咲が、自分の中の得体のしれない狂気を全て吐き捨てるつもりで、ここに置いていくつもりで、それだけの覚悟で、カミナの中に全て叩きつけようと、無意識のうちに、しかし最善の形の魔力操作でカミナにぶつけた殺意は。

 

 一点集中されて尚、玄咲と親しいシャルナをビクつかせるほどに、狂気的な濃度と総量で。

 

 それを、全て、余すところなく、至近距離で、玄咲への恐怖が極限まで増大した状態で受け取ったカミナは。

 

 

 

 一瞬で髪が総白髪になった。

 

 

 

「――あ、あ、あ、あーーーー……」

 

 

 涎の垂れた半開きの口から意味のない呻きを漏らすカミナ。ガクガクと体を痙攣させている。大きく見開かれた瞼の中でガックンガックンぐりんぐりんと虹彩がスーパーボールのように跳ねまわっている。正気を逸したものの振る舞いだ。想定外すぎる反応。意図せずして発動した、そしてその使い方をすっかり覚えてしまった殺気という技術の凄まじさに恐ろしさを覚える。少しだけ同情する。

 

 だが――。

 

「いいかカミナ。分かったな。分かったら頷け」

 

 態度には挟まない。カミナに心の底から諦めさせるために、あえて冷酷に振る舞う。カミナは玄咲の声を聴いただけでビクッと反応し、そして視線に動きを縫い留められて、しばらく玄咲と微動だにせぬまま眼と眼を合わせた。そしてしばらくして、瞳から意思の光が失せると同時――。

 

「――」

 

 コクリ。

 

 と、頷いた。まるで糸の切れた人形のような動きだった。そして玄咲が手を離すと同時、大木によれかかり、死体のように沈黙してそれきり動かなくなった。玄咲はしばらくカミナを見つめた後、

 

(折れた。呆気なく。……この方法で、良かったんだな)

 

 思いながら、ADを突き付ける。

 

「今からHPを0にする。殺す。生きてても逆につらいだけだろうからな。何か、言うことはあるか」

「……」

 

 カミナに反応はない。無意味な質問だった。そう判断して、引き金を引きかけて、

 

「ジョーさん、もう、いいんだね。もう、楽になっても……」

 

 カミナの声に、動きを止めた。カミナは眼を瞑って、涙を流しながら、唇から垂れる血と共に吐いた。

 

「つらい、よ。あなたのいない、世界は……絶望、だったよ……ずっと、死にたかった……もう、復讐なんて、しなくて、いいんだね……ジョーさん、あなたの元に、いけるんだね……」

「……」

 

 今殺してもカミナに訪れるのは束の間の死だけだ。すぐに学園長に蘇生させられる。だが、それでも、束の間の幸福をカミナに与えたいと玄咲は思った。今すぐに。銃口から伸びる赤い線――死線に照準を合わせて詠唱しつつ引き金を引く。

 

「ダーク・アサルト・バレット」

 

 頭部に魔力弾を受けたカミナは即死した。SDのHPゲージも当然0になりブザーが鳴る。だけど、不思議と穏やかな顔をしていた。

 

(……最後にちょっとだけ、お前のことが好きになった。シャルナがいなくなったら、奪われたら、きっと俺も、お前みたいに――お前は、あるいは俺の鏡だったのかもしれない)

 

「――いこうか」

「う、うん……」

 

 玄咲はカミナに背を向けて歩き出した。シャルナもまた、一瞬カミナを振り返ったのち、玄咲と同じ方向に――G組の集合場所へと歩き出した。

 

 

 

 カミナはその背を追わない。もう二度と。

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