カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
「……酷いものだ」
森の中。クロウは白髪死体と化したカミナを見て思わず零した。死亡したダズモズとそのサポート職員の仕事を一番近くにいた教師だからという理由で大部分担わされた結果、F組の生徒――カミナの回収をすることになり、今に至る。禁止カードの件については、後にマギサが処遇を下すことになっている。ただ、結果的にだがマギサ好みの面白い結果になったため、それ程重い処遇は下されないだろうとクロウは推測していた。マギサに倫理道徳はない訳ではないが、己のルールを最優先する人間であることをクロウはよく知っていた。G組とF組――玄咲とカミナをわざわざ隣り合うスタート地点に配置したり、ゾディアックサンダーを解禁していたあたり、ある程度予測してさえいたかもしれない。時々未来視じみた勘をマギサは発揮するところがあった。
「にしても」
クロウはカミナの死体を見て、紫色の長髪ごと額を押さえて嘆息した。
「天之の奴、やり過ぎだろ。本当あいつは極端というか危ういというか……とにかく、頭の痛くなる事態をいつもいつも引き起こす奴だ」
見下ろすカミナの死体に声を被せる。
「ここまで酷い死体はイベント史上初めてだ。危険人物、なんだろうな。分類すれば、無害な人物とは到底言えないだろう。よっと」
クロウはカミナを肩に担ぐ。そして遺体安置所へと走りながら思う。
(……ただ、中途半端なんだよな。傷跡が。多分、シャルナに止められたんだろう。あいつのブレーキ役になってくれたことをシャルナに感謝するべきだな。でないとあいつはちょっと以上に壊れていたかもしれない。極端なんだよな。強さが、弱さが、抜きんで過ぎている。アンバランスで、不安定で、だから狂気に振れる。その辺りの精神性の克服があいつの最大の課題かな。それを乗り越えれば――きっとあいつはとてつもなく強くなるだろう。戦闘レベルは遠からず最大値に達するはず。だから、人間レベルが天之玄咲の強さの鍵になる――シャルナが鍵になると言い換えてもいいかな)
クロウは脳裏に、特異な境遇のせいか天之玄咲と付き合っているせいかその優れた容姿の割に周囲の反応が淡白な亜純白の少女の姿を思い浮かべる。天之玄咲とその他の存在――クララ・サファリアを除く――で露骨に対応を変える、天之玄咲にべったりな、ちょっと以上に尖った少女――シャルナ・エルフィンの姿を。
(あいつもあいつで結構尖ってて、把握しづらい性格をしてるんだよな。最近ようやく見た目とのギャップが激しい奴だと分かってきた。だが、はっきりしていることもある。天之への異常な愛情だ。ほぼ依存に近い。おそらく堕天使族の負の種族特性が関わっているんだろう。シャルナはそこら辺の感情の対処が成長のネックになりそうだ。難儀な奴らだ……ただ)
教室で二人でいるときの穏やかで幸せそうな、平和そのものの光景が脳裏を過る。僅かに頬を緩めて呟く。
「2人でいると本当、安定してるんだよな。2人でいること。それがあいつらにとっては何よりの成長の鍵となるだろう」
それから、カミナをちらと見た。
「……しかし、傷跡に反して不思議と安らかな表情をしているな」
カミナは安らかな表情をしていた。学内で時々、イベント開始前にも見た、絶望に染まった表情とは大違いの、とても自然な表情だった。クロウは少しだけ気を軽くして、頬を緩めた。
「こいつにも何らかの救いがあったようで何よりだ。カミナも、可哀そうな奴だったからな。色々と。おっ」
「クロウ教官! こちらです!」
「ああ。頼む」
山の麓、遺体安置所に配置されたサポート職員がクロウに手を振る。クロウは職員にカミナを渡す。大型テントの下、既に数人の死体が横たわるマットの上にサポート職員がカミナを運ぶ。クロウは並ぶ死体を見てため息を吐いた。
「……さて、どれくらい増えるかな。とにかく今日は全力稼働だ。次の休日は久々に羽目を外して予算度外視の完全趣味打ちでもするかな……」
言いながら、背を翻す。そして再び、魔力光迸る戦乱の只中の裏山へとクロウは足を踏み入れた。