カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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今年1年、お付き合いいただきありがとうございました。来年も良いお年を。


第16話 それぞれの戦場へ

 G組の合流地点。F組の山頂にて。

 

「……」

 

 集合したG組総員の総意をキララが代弁する。

 

「死体が、ヤバい」

「……そうかもしれない」

「あと、地形がヤバい。クレーター出来てんじゃん」

「……そうかもしれない」

「あんた気まずくなるといつも無言か曖昧に誤魔化そうとするよね」

「……」

 

 玄咲は戦況確認することにした。

 

「F組は壊滅させた。損耗は」

「……一人も脱落してないよ。軽傷者はいるけど、全然動ける。回復魔法はもったいないから使ってない」

「よし。他クラスの動向は――いや、見ればわかるか」

 

 玄咲たちが陣するF組の山に3方から他クラスが接近している。

 

 アルル・プレイアズ率いるB組。

 クゥ・クロルウィン率いるD組。

 コスモ・ミストレイン率いるE組。

 

 この3組にG組は対処しなければならない。キララが言う。

 

「多分、ゾディアック・サンダーが目立ち過ぎたんだろうね。あの魔法以降、露骨に他クラスの動向が変わったから。結託してG組を叩くって流れも全然あると思うね」

 

「アルルは結構強かだからやりそうだな。クゥも馬鹿ではないし。コスモは何考えてるか分からないが。まぁ、想定内ではあるか」

 

「A組とC組が激突したから。あちらの警戒はしばらく必要なさそうのが救いかな」

 

「リュートと炎条司くんがか。まぁ、無視できる性格と関係性じゃないもんな。B、D、E組にしばらくは集中して良さそうだな。距離と挟み撃ちのリスクを考えると、3組全部を同時に相手どる必要があるか。となると――」

 

 玄咲は少し考えて言った。

 

「D組方面に俺とシャルナ。B組に狂夜くん。E組にキララとさとしと残り全員。これで行こう」

 

「正気!?」

 

「ああ、正気だ。能力の相性差と、実質的な戦力比を考えてG組のトップ5を割り振る形で采配した。正直、3陣営対1陣営は最初から少し無茶がある。少し奇抜な采配だという自覚はある。けど、だからこそ、俺はこれが最善だと思う。3組を同時に抑えつつ、同時に撃破も狙えるフォーメーションだと」

 

「……確かに、よく考えたら、そこまで悪くないか。作戦を聞かせてもらえる?」

 

「ああ」

 

 キララの質問に答えつつ、同時にG組全員へ作戦を語る。

 

「といっても作戦は単純だ。先に言った通りに人員を分散し、各組を相手取る。そしてB組とE組の間に位置するD組を速攻で撃破し、挟み撃ちのリスクを潰したうえで俺がE組に、シャルがB組に援軍に向かい、そのままB組とE組を撃破する。そういう作戦だ。E組はもしかしたら俺が参戦するまでもなく倒せるかもしれない。だから、一番負担が大きいのは狂夜くんだ。ただ、君を一番活かせるのはこの形だとも思う。だから、狂夜くんには悪いが――」

 

「ふん――気にするな」

 

 狂夜の不遜が玄咲の躊躇いを吹き飛ばす。

 

「もし俺がリーダーになったら適当な奴に指揮を任せて一人で暴れようと思っていた。だから、むしろ歓迎する。実に俺好みの采配だ。ふん、俺の乗りこなし方がよく分かってるじゃないか、天之。お前のために一肌脱いでやろう」

 

「「「……」」」

 

「――む。少し冷えるな。山頂だからか……? まぁとにかく任せておけ。B組ということはアルル・プレイアズが相手だろう。丁度いい。俺も一度あいつと闘りたいと思っていた。フッ。叩きのめしたいの間違いだったかな? ――同じ音魔法を符合魔法とする魔符士。確かに相性はいい。対処の難しい音魔法といえど、同じ音魔法なら相殺は容易い。そして出力で俺が負ける訳がない。終始優位に立ち回れるだろう。アルル――あの金持ちの首を持ち帰ってきてやるよ。環境も俺向き出しな。やってやれないことはないだろう」

 

(……狂夜くん)

 

 ゲームではフィールドの垣根を越えて単独で動き回りBOSS性能でランダムエンカウントする雑魚キャラというキャラ設定を反映した特殊なキャラだった狂夜。しかも特定条件下でイベント中最強の逃走一択のキャラに変身するというおまけつき。強キャラとして印象付けるにこの上ないインパクト抜群の演出がなされたキャラ。その尖り方が玄咲もまた大好きだった。黒と赤のカラーリングが大好物だった。子供の頃は憧れさえ投影していた。そんな狂夜のふてぶてしさが玄咲にはとても格好よく映った。胸がときめく。素直な賛辞が口から洩れる。

 

「格好いいよ。狂夜くん。君のそういうところが俺はとても好きだ」

「ッ!!!!!!!? たまに妙に純粋な目で過剰に褒めてくるのはやめろ! 調子が狂う! ま、まぁ褒められて悪い気はしないが……」

「……」

 

 教室の一部の視線がムワッと熱を増す。一方でまた一部の視線が冷やっと冷める。さとしが笑う。

 

「へっ、このMサイズホモドッグが。お前は本当にMサイズホモドッグだな。このMサイズホモドッグが!」

「さとし、もうやめろよ。そのネタいまだに擦ってんのお前だけだぜ。見ててきちぃぜ……」

「……? どういう意味だ?」

「ええ……」

「それよりリーダー!」

「うん?」

 

 さとしが嬉しそうに玄咲に話しかけてくる。

 

「あんたの言う通りだったぜ。防御に力入れるようになってからむしろ相手の苦しむ顔がよく見れるようになった。これはこれでたまんねぇなぁ……!」

「それが受けの楽しさでもあるな。その快感をもっと味わえ。楽しめ。なんでも楽しんでやるのが一番だ」

「「「……」」」

「ん? なんか寒いな。山頂だからか……? あと、さとしくん。君の役目は前も言った通りキララの死守だ。E組攻略のキーパーソンはキララだ。指揮、そして攻撃を一手に担うことになるだろう。防御に魔力を使う余裕はおそらくない。だからこそ君がキララを守るんだ。頼んだぞ。君にしか頼めない役割だ」

「へっ。任せろよ。カミナの野郎のジャッジメント・アローだってほぼ無傷で受け切ったんだ。余裕だぜ」

「……そうか。凄いな」

 

 流石。頼もしさと共に、玄咲はそう思った。

 

「キララも、色々とすまないな。このイベント中、頼りっぱなしだ」

「本当にねー、このイベント終わったら、なんかお願い聞いてよ。それくらいしてもらわないと割に合わないんだけど」

「ああ。俺にできることならなんでもするよ」

「OK。言質取ったから。あとから撤回効かないから。証人たくさんいるから。ばっちり何でもしてもらうから」

「……うん」

 

 玄咲は安請け合いをちょっと後悔した。

 

「……ま、私にもポイントと評価ってメリットあるからね。一生懸命やるよ。天之くんのことは個人的に気に入ってるしね。だから」

 

 キララがなるべく目線の高さが合うように背を伸ばし、人差し指を玄咲の胸の中央に突き付けて、睨み上げる。

 

「キララちゃんがこの場は助けてあげる。感謝してよね。特別だからね」

「……うん。ありがとう。キララ。頼む」

「うん。頼まれた」

 

 キララが笑顔を見せる。後悔はすぐに霧散した。

 

「そして最後、シャルは俺とD組に向かう。2通りの攻略方法を考えている。でも、もしかしたら別行動になる可能性もある。その時は苦戦してそうな方面のサポートに回ってくれ」

 

「……一人で?」

「ああ、一人でだ」

「――うん! 分かった! 頼りにしてて!」

 

 シャルナは嬉しそうに頷いた。玄咲も笑んで頷く。

 

「さて、作戦会議はこれくらいにして行動に移ろう。巧遅は拙速に如かず。時にはつたなくてもスピードが重要になる状況もある。今がまさにそれだ。各自、行動に移れ。キララの班はキララの支持をよく聞け。行動違反者は後で俺から厳罰を与える。分かったな!」

 

 玄咲の指示で全員が行動開始する。キララがポツリと、

 

「……ところでさ、天之くん。実践となると、普通に頭が働くんだね。教室では地蔵だったのに」

「ん? ああ。戦闘時はな、ちょっと別人になる。あと、部隊指揮の経験があるのが大きいんだろう。これくらい、手慣れたもんだよ」

「……か、格好いい」

「え? 何だって?」

「!」

 

 シャルナが玄咲を急かす。

 

「早く、作戦行動に移ろう。キララちゃんも」

「……あんた、結構黒いよね」

「な、何のことかな?」

「そうだ。何のことだキララ」

「……なんでもない。あんたたちって結構似たもん同士よね……」

「……うん。そうだよ」

「なぜ、唐突に」

「……違うところも多いけどね。さて、キララちゃんも頑張りますか! ポイントのために!」

 

 キララがE組方面へとG組の生徒を連れて向かう。

 

「吉報を待ってろ。俺がちゃんと強いってことを貴様に思い知らせてやろう」

 

 狂夜もB組方面へと向かっていく。残るは、玄咲とシャルナ。

 

「――よし、俺たちも行くか! シャル!」

「うん! 玄咲! 行こう!」

 

 2人もまた自分の戦場へと向かう。さらに強まった絆をその胸に。

 

「――一緒に、どこまでも!」

 

 新たな戦場へと、共に駆け出す。

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