カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第19話 B組 VS D組 ―狙撃― 

「……」

「どうしました? アルル様。D組方面の山を見て」

 

 アルルは行軍中、通りがかったD組方面の山を見た。サブリーダーのサリエル・サーキュリッド――プライアが同じクラスにねじ込んだ、水色の髪をショートカットに切り揃えた、可愛いより美しいが勝る美女系の、ゲーム中で玄咲がさほど興味を持てなかったが名前とプロフィールをしっかり覚える程度の愛着は持っていた、盾型ADを持った容姿端麗な魔符士が、アルルにキリリッと歯切れ良い発音で尋ねた。アルルは「いや」と前置きしてから、

 

「いや、D組のリーダーって、どんな子なんだろうと思って」

「確か学園長がスカウトにいった子でしたね。緑の、ふわっとした巻き毛の、眼鏡をかけた、銃好きの半鳥人らしいです」

「半鳥人。自然と共に生きる、山中の秘境にのみ生息するレア種族鳥人。その中でも劣等因子とされる、翼のない半鳥人か……。なのに、スカウトされた。何か、あるよね。絶対」

「そうですね。切り札の一つや二つ、持っていない方がおかしいでしょう。エレメンタルカードでも出てくるかもしれませんよ」

「流石にそれは可能性が薄いかな。エレメンタルカードは本当レアだから。想定しても仕方ない。その想定は捨てよう。にしても……」

 

 アルルはD組の方面を探るような目つきで見る。

 

「強いんだろうね。共闘、でき――」

 

 その視線の先の一点が一瞬緑色に煌めく。何事かと思う暇もなく、

 

 

 

「危ないっぺ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 アルルは突如押し倒された。相手は田舎から出てきたらしいお腹がたぷんたぷんで目にパワーのあるじゃがいも顔の男子生徒――畑耕士。かっぺ君の愛称でクラスメイトから親しまれている。だが、間近で顔を突き合わせると、パワーのある目が無限に恐ろしい。アルルの口元が引きつる。サリエルの眼がおぞましいほどに殺気立つ。

 

「貴様、私でさえ許されていないのに――!」

 

 サリエルが畑耕士に腕を伸ばす。その瞬間――。

 

 

 

 ズガン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 轟音が発生し、サリエルの腕が消し飛んだ。

 

「ひ、ひぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「う、うわぁああああああああああああああああああああああ!?」

「敵の攻撃だ! サリエルの腕が吹き飛んだぞぉおおおおおおおおおおおおお!」

「ひ、ひぃい! グ、グロい!」

 

 小隕石でも地面に激突したかのような衝撃と音。先ほどまでアルルが立っていた地面が、斜め5メートル近くに渡って深々と食い破られていた。攻撃の痕跡。それも凄まじい威力の。あんなものを受けていたら自分はひとたまりもなく死んでいたに違いない――。

 

「――――」

 

 B組の喧騒を背景にしながら、その事実を認識したアルルの頭が一瞬真っ白になる。だが、それも一瞬のこと。

 

「落ち着いて!!」

 

 精霊人の言霊に魔力を乗せる種族特性を全開にして、命令する。B組の面々は、魔法にかかったように大人しくなる。さらにアルルは一切動揺を見せることなくてきぱきと指示を出す。

 

「回復魔法使える人。サリエルを治療して!」

「はい! アルル様!」

「かっぺくん。何があったの?」

「風が揺らいだっぺ! おら、田舎育ちだから分かるっぺ。あれは魔力風の揺らめきだっぺ!」

「――なるほど。そういうことか。そうと分かれば」

 

 アルルはポケットから1枚のカードを取り出す。そして己の金色のマイク型のAD――天歌刻韻(ライム・ドライブ)ライブ・マイクにインサートして、あらん限りの大声で叫んだ。

 

「マジック・ジャフ・スピーカー!」

 

 精霊人の種族特性で強化され、大声によって遠く空まで敷き詰められたアルルの言霊で反復増幅された魔法が、世界に満ちる魔力を大いに揺らめかせる。そして――。

 

 

 

 ズドン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 アルルは動いていないにもかかわらず、アルルと大きく離れた位置に、緑色の魔力弾が着弾した。アルルはB組の面々を振り返り、努めて作った笑みを見せる。

 

「もう大丈夫。でも、いつまでも魔法の効果が持つ訳じゃないから、早めにここを離れようか」

「な、なんかアルル様、落ち着いてんな?」

「知らねぇのか。アルル様はプライア女王に英才教育を受けて育ったんだ。帝王学を収めてるらしいぞ」

「なるほど」

 

 B組は全員でその場を離脱する。サリエルも回復魔法役の生徒のMP50パーセントを犠牲に腕を復元した。今はアルルの左隣を走っている。アルルが指を嚙んで呟く。

 

「しかし、夜だから道が見づらいな。最適なルートが分かりづらい……」

 

 アルルの右隣の畑耕士が鳩胸を叩いて目にパワーを込める。

 

「おら、先導するっぺ! おら、田舎育ちだから山には詳しいっぺ! 最適なルートを勘で導き出せるっぺ! G組まで案内するっぺ!」

 

「!? い、田舎育ちって凄いね。でも、任せた! みんな! かっぺ君に続いて!」

 

 畑耕士を先頭にB組は走る。サリエルはふと思った。

 

(あ、あれ? なんか、彼の方がサブリーダーみたいな……き、気のせい。気のせいです……! 私こそがアルル様の右腕……!)

 

 今度こそ活躍する。強く、その厚くも薄くもない無個性な胸に誓った。

 

 B組は畑耕士を先頭に走る。アルルはD組の山頂を振り返って思う。

 

(――にしても、何キロあると思ってるの? なんで、あそこから届くの!? そして、あの威力、ランク7の魔法に匹敵する。異常。異常すぎる。分かっていたけど、ただものじゃない。学園長がスカウトしに行っただけはある。そして何より――)

 

 思い出す。あの攻撃痕。想像する。かっぺ君に庇われなかった未来を。

 

 死体の自分を。

 

(――あの人殺しへの躊躇いのなさが心底恐ろしいね。全く、彼といい、どんな人生を歩んできたのやら。本当、化け物揃いだよ。この学校は――)

 

 アルルは心の中で歯噛みする。それだけで、敗北感を切り捨てる。前を向く。後ろを向いても何も始まらないから。

 

 

 

 

「――やるね。風を揺るがして風の道を潰すなんて。それも一撃で対応。判断が迅速で的確。流石王女様。でも、あのかっぺ君さえいなければ、初撃で殺せたのに。残念」

 

 己の狙撃銃型AD――破風纏廻(バレルロール)アームズ・ウィングのスコープから目を外し、クゥは夜天にため息を吐いた。今日は裸眼。美しいエメラルド色の瞳を風に晒す。場所は山頂。風がよく届く。そして見える。夜空に輝いて蠢く風の動きを見ながら、クゥは破風纏廻アームズ・ウィングを抱き締める。その美しさに護衛に残した周りの生徒が吐息を漏らす。

 

「き、綺麗だな。眼鏡外すとこんな可愛かったんだ」

「性格もクールで、なんかギャップでグッとくる。クールクゥだ……」

「それに、何より強いわ。尋常なカードバトルでもクラス一なのに、この環境、追い風すぎるわ。もしかしてこのイベント中最強なんじゃないの? うちの組のリーダー」

 

 

 

(この環境、凄く私向き。風がたくさん吹いてる。いくらでも利用できる。こんなの、下駄をはかせてもらってるようなものだよね。負ける訳にはいかないかな。強さの証明がさらなる強さに繋がる。この学園はそういう場所だと聞いた。私は私の強さを証明して、必ず夢をかなえる――ん?)

 

 山の麓に、新たな侵入者(ターゲット)。黒と、白。知ってる二人。クゥの口角が歪む。

 

(……来たね。ゲンサック。迎え撃ってあげる。リベンジマッチだよ)

 

 射程距離に入るまで、待つ。

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