カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第22話 玄咲&シャルナ VS D組 ―死線―

「リーダーは……山頂で狙撃体勢……山に立ち入った敵を、他生徒に迎撃させて……狙撃でサポートする。そういう、作戦だ……」

 

「OK。想定内だ」

 

「ゲフッ!」

 

 玄咲は情報を吐けば見逃してやると嘘をついて情報を吐かせたD組の生徒を気絶させた。これで全員が気絶した。D組の生徒の最後の一人のHPのブザーが0になる。シャルナは複雑な内心を表情に映すも、結局は何も言わなかった。

 

(裏は取れた。ゲーム通りだ。クゥはゲームでも山頂に構えて、フィールドMAPに配置された強制戦闘を余儀なくされる他生徒との交戦中にチクチク狙撃をしてHPを削ってくる敵だった。しかし、ダメージはランク4のウィンド・スナイプ・ライフルなだけあって大したことはない。その知識を踏まえると、そこまで大した攻撃はとんでこないはず。俺とシャルなら十分対応できるはず。速攻で仕留められるはずだ。はず、はず……以前、ゲーム知識を当てにして恥ずかしい思いをしたことをつい連想して思い出してしまった。まぁ、あの頃とは違う。二度とあんな間違いは犯さない。シャルに方針を説明して早速行動開始だ)

 

 玄咲はシャルナに自分の考えを伝えた。

 

「という訳だ。速攻で潰そう」

 

「……」

 

「どうした、シャル」

 

「いや、なんか、このパターンは、嫌な予感が……」

 

「えっ」

 

 シャルナが不安を表明する。玄咲が弁明しようとする。その直前。

 

 赤い、線が、見えて――。

 

「ッ! 危ない!」

 

「えっ? わっ!」

 

 玄咲はシャルナを地面に押し倒した。真正面からガバッと、しっかり抱きしめながら。手をわたわたさせて慌てるシャルナの瞳孔が段々ハート形に変じていく。少し、体を押し付ける。その直後――。

 

 ズドン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

「ひぅっ!!!!!!?」

 

 突然の衝撃に動揺したシャルナが玄咲に激しくしがみつく。抱きしめる。玄咲もまた衝撃に激しく動揺しながら、シャルナをなだめる。

 

「お、おおち、落ち、落ち着くんだ。シャ、シャシャシャ、シャル」

「落ち着いて玄咲!?」

「あ、ああ。そうだな。すまない。取り乱した。早く、立ち上がって体勢を整え――」

 

 シャルナのしがみつく力が思ったより強くて上手く離れられなかった。むしろ一瞬反発で密着した。玄咲の脳を白い稲妻が貫く。ドーパミンの過剰分泌。シャルナが慌てて手を離して立ち上がる。

 

「ご、ごめっ!」

 

「い、いや! 動揺するのも仕方がない。なにせ――」

 

 玄咲は自分もまた立ち上がりながら、視線を背後に向けた。先ほどまで自分が立っていた場所へと。

 

 ――地面に斜めに突っ込み、放射状に土を巻き上げ5メートル近く直進し、地面に大穴を開けた攻撃痕。玄咲はちょっと焦った。額に冷や汗が流れる。

 

「――まるで隕石の衝突だからな。おかしいな。俺の想定と違うぞ……」

 

「やっぱり、嫌な予感、当たったね」

 

「……いや、その」

 

「チクチク、されたら、死んじゃうね?」

 

「うん……ごめん」

 

「仕方ないなぁ……よ、よし、じゃ、空から、一緒に行こうか? 私が、運んであげるよ……」

 

「う、うん」

 

 玄咲はドキドキしながら頷いた。

 

「よし……ブラック・フェザー」

 

 ブゥン。

 

 シャルナの背中に黒翼が現れる。

 

「じゃ、じゃあ、抱えるね」

 

「うん……」

 

 抱きっ。

 

「……」

 

「……」

 

「飛ぶね」

 

「うん」

 

 玄咲は緊張のあまりうんとしか言えなくなっている。

 

「よい、しょ!」

 

「! う、うん!」

 

 シャルナと玄咲が上昇し、木々の上――遮蔽物一つない空の上へと出る。そして泡を食う勢いでシャルナが即玄咲を連れて地上に戻る。その頭上を魔力弾が通り抜け――。

 

 ドッガン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

「……」

 

「……」

 

 背後に聳え立っていた付近一帯一番の大木がへし折れ大地に倒れていく。2人は顔を青ざめさせた。

 

「速い、強い、正確。無理。撃墜される。死んじゃう」

 

「そ、そうだな。空はクゥのエリアだ。風が満ちている。威力も速度も上がるに決まってるよな……」

 

「玄咲、どうする?」

 

「……」

 

 玄咲は少し考えてから、あっさり答えた。

 

「俺一人でD組を潰す。シャルとはこれから別行動になるな」

 

「分かった。プラン2だね」

 

「ああ」

 

 クゥの狙撃の腕、そして制空力を玄咲も知らなかった訳ではない。CMAでクゥのストーリーも何百週もしたのだ。知らないわけがない。その上で、シャルナなら大丈夫だろうと判断して、空を行こうと判断したのだ。

 

 その上で、クゥが玄咲の想定を遥かに上回った。だが、問題はないと玄咲は思う。

 

 狙撃手の相手は玄咲の十八番とするところだったから。

 

「勝てる?」

 

「勝つさ。実際のクゥの狙撃を見て、ようやく勘が計算を終えた。勝てる。問題ないよ。俺がそう確信してるんだ。勝つに決まってるだろ」

 

 傲慢に言い切る。玄咲のここぞというところの勝負勘は外れない。それをよく知ってるシャルナは、笑んで頷いた。

 

「そっか、なら、大丈夫そうだね」

 

「ああ。絶対大丈夫って奴だ。俺の故郷ではな、この言葉は無敵の呪文だったんだ」

 

「いい言葉、だね。じゃ、私は」

 

 シャルナはバサ、と翼をはためかせて、

 

「ちょっと悔しいけど、この場は玄咲に任せて、私の仕事、してくるよ」

 

「う、うん。任せた……」

 

 シャルナと別行動をとる。予め決めておいた段取りにも関わらず、いざその時になると、不安が玄咲の言葉を濁らせる。

 

「――大丈夫」

 

 シャルナが玄咲の胸に手を置く。そして、優しく笑った。

 

「離れていても、心は一つ、だよ」

 

 いつかクゥに授かり、シャルナにそのまま伝えた言葉。その言葉が巡り巡って、玄咲に返ってきた。運命的なものを感じた。今の2人の心境に、これ以上相応しい言葉はないなと思った。そして。

 

「――ああ」

 

 不安が、なくならないまでも、一気に薄まった。

 

「離れていても、一つだ!」

「うん。一つ、だよ」

 

 シャルナが笑顔で頷く。

 

「永遠にね」

 

 さらに、シャルナオリジナルの一言を、最後に付け足す。首を傾けながら、天使で堕天使な笑顔で。

 

「――」

 

 赤面し、言葉を失う玄咲。シャルナは楽しそうに笑ったあと、

 

「それじゃ」

 

 翼が大きくはためかせ。そして――。

 

「行ってくる」

 

 シャルナが飛び立つ。一人で、豪速で、新たな翼を駆使して。

 

 玄咲の元を離れていく

 

「――速いな、本当に」

 

 シャルナが遠ざかっていく速度に一瞬思いを馳せてから、すぐに意識を切り替えて山頂にいるはずのクゥに視線を送る。

 

 ――すぐにそこに行くから待ってろ、と。

 

全排府(オールリジェクト)

 

 AD内の全てのカードを同時に排出する呪文を唱える。シュヴァルツ・ブリンガー底部のスロット部からカードがシュインと5枚束になって排出される。そして素早く、カードケースの中のカードと入れ替える。

 

 5枚全部。

 

 現在の状況に最もマッチしたカードへと。

 

「じゃ、俺も頑張るか。シャルに負けないように。――クゥに、俺に狙撃で挑む無謀を思い知らせてやるとしよう」

 

 玄咲はADの銃口を己のこめかみにくっつける。そして何の躊躇いもなく詠唱しながら――。

 

「フュージョン・マジック【死線(デッドライン)】」

 

 引き金を、引いた。

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