カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
同年代の男の子が泣きじゃくる女の子を囲んでいる。
「やーい! 羽なしー!」
「死んじまえよてめぇなんか!」
「生きる意味ねぇんだよ!」
「山の中に放置して魔物に食わせてやろうか? どうするクズオくん」
「そうしようぜ! おら、立てクゥ! お前に救いを与えてやるよ! 来世でワンチャンやり直すチャンスをな!」
「や、やめてよぉ……! 殺さないでよぉ……! あっ、あっ、本当にやめてーーーーー―――――――!」
男の子たちが本当にクゥを山中に連行して魔物に食わせようとする。
「こらーーーーーーー! あんたたち! 私の娘に何しやがる! クソガキどもが! ぶっ殺してやる!」
「やべっ! クゥの母ちゃんだ! 逃げろ!」
「ほら、クゥ、帰るよ。この里の鳥人は時代遅れの土人なんだ。関わっちゃいけないよ。家にいるんだ」
「う、うん……」
(でも……)
クゥは母に連れられながら森を振り返る。
「キャン! キャン!」
「あはは! キャンキャンドッグって可愛い! ぷーた。君だけだよ。私の友達は! ずっと一緒にいようね!」
クゥはぷーたを抱えて頬ずりする。
「ずっといっしょにいようね!」
「キャン!」
この幸せがずっと続くと思ってた。
ある日ぷーたがいなくなった。クゥは必死に探し回った。でも、どこにもいない。自然の世界は弱肉強食。もしかしたら他の魔物や動物に食べられたのかもしれない。でも、諦め切れない。クゥは持ち前の運動神経を活かして里で一番高い木の枝の上に登って、羽がない代わりとでもいうように授かったその眼で、遠く遠くまで見渡した。
そして、見つけてしまった。数キロメートル離れた地点に。
尻の穴から口までを鉄の杭で貫かれたぷーたの焼死体を。壮絶な苦痛に歪んだ表情。生き地獄を味わったらしい。鉄の棒を持ってぷーたを担ぐ人間の親子が笑顔で談笑し合っている。その唇の動きまでもをクゥは読み取る。
――こいつの苦しむ姿は絶品だったなぁ。魔物は苦しめて殺してなんぼだ! 帰ったらきゃんきゃん鍋だ!
――わーい! 僕、きゃんきゃん鍋大好き! また狩りに行こうね!
「――殺す」
クゥは狙撃銃型ADを背中から抜いた。鳥人族はみな。狙撃銃型ADを子供のころから携帯している。カードは既にインサートされている。ランク1、ウィンド・スナイプ・バレット。普通に考えたら届くはずがない。でも。合理的な思考など今のクゥにはなかった。
(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す――)
殺意を装填して引き金に指をかける。その時、
――あなたの意志に力を与えましょう。命の冒涜には死の制裁を――。
声が聞こえる。同時、体に魔力が満ちた。瞳に何かが宿った。魔力微精霊の流れが生み出す風の道が見えた。あとは引き金を引くだけだった。
「死ね」
ランク1魔法ウィンド・スナイプ・バレットが今までとは段違いの威力で放たれる。そして、風の道を通る弾丸は魔力を纏い微精霊を取り込み加速し輝きを増し――。
「あぶっ」
ビチャ。
「え、父、ちゃん……? ――父ちゃぁあああああああああああああああああああああああああああああぶっ」
ビチャ。
クゥは人間の親子を殺害した。なのに心は全く満たされない。虚無の風が吹いている。いつの間にか傍にいた巨大な赤い鳥が話しかけてくる。
――優しく正しきものよ。貴方こそ私の所有者に相応しい。このカードを授けましょう。
キュイン、とクゥの目の前に光が生まれる。クゥが光に触れた瞬間、光は実体化し、カードになった。
ランク8 裂空将ガルダ。
「どうでもいい」
――ま、待て、捨てるな! そのカードを村長に見せなさい! それで、あなたの人生は変わります。
「……」
クゥは捨てても貰ってもどっちでもいいので気まぐれでカードをポケットにしまった。そして、友達の元に向かう。
「ぷーた。ぷーた……死んでも、友達だよ……」
――私はいつでも見守っている。それだけだ。
「ぷーた……」
クゥは森の中にぷーたの墓を作った。初めての死別だった。クゥは一晩中墓の傍で泣いた。
クゥの立場は並の大人より上になった。両親が喜んだのだけが嬉しかった。クゥは森を荒らしに侵入した人間をADで殺害する仕事を任せられた。望むところだったので引き受けた。大人でも使わせてもらえないような高性能ADを任せられた。何千人もの人間を殺した。殺す度、村での立場は上がった。いつしか立派な鳥人として認められるようになった。その頃には少しだけ毎日を楽しめるようになった。
それから色々あってラグナロク学園に入学して、誰とも気が合わなくて孤立して、でもやっと気の合う、それも物凄く格好いい男の子と友達になって。
「当たら、ない……!」
今、本気で殺し合っている。