カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
地球時代。2030年。
真っ暗闇の部屋の中、天之玄咲はベッドの隅で体育座りになって血生臭さを残した目でゲームをしていた。その目に映るのはただ一人のヒロイン。
コスモ・ミストレイン。
「はぁ、はぁ、コスモちゃん、こ、ここ、コスモちゃん。可愛い。可愛いぜ。はぁ、はぁーっ! 愛してる。好きだ。好きだ。好きだ。好きだァ……!」
玄咲はゲームをしていた。愛するヒロインを愛でていた。数あるヒロイン・サブヒロインの中でもトップクラスに好きなキャラコスモ・ミストレインを。心のままに愛でていた。ハァハァしながら頭の中は高速で愛しいコスモのことを考えている。真っ暗闇の中で、ポケットボーイの電光だけが玄咲の眼を照らす。
(コスモ・ミストレイン。メタネタ満載の会話を見てるだけで楽しくなるヒロイン。そして強キャラ。お手軽に強い脳死に適したキャラだ。なにせ、強さがシンプル。HPが高い。攻撃力が高い。防御力が高い。魔力が多い。特にHPと魔力が通常のキャラの約3倍に相当する。MPポーションが使えないのが欠点だが、どっちかというと戦闘中にMPポーションコマンドを使用する必要がないというメリット。実質的な総MP量は変わらないんだが使い勝手は雲泥の差だ。しかもこうやって)
戦闘中に受けたダメージを体力を25%回復しつつ状態異常まで回復するリペア・モードで回復する。そして通常攻撃を行う。隣の大空ライト君のカード魔法攻撃よりも高いダメージが出る。玄咲はにやける。コスモに脳を蕩けさせている。スペースヒロインでスペースヘロイン状態。
(強いと可愛さが3割増しになる。雑魚キャラは愛着が湧きづらい。だからCMAのヒロインは基本強キャラ。開発者、分かってるな。うまい棒をやるよ。脳内でな。ハァ、ハァ。それに何より)
CMAのコスモルートのエピソードを思い出して、玄咲は胸を痛ませる。そしてその痛みで、コスモへの愛情にブーストをかけ、ポケットボーイにキスをしかけ、冷静になってやめた。
(CMA屈指の明るい性格なのに、CMA屈指の悲しい過去を持ってる。そして鬱ストーリーを繰り広げる。それを、俺が救うんだ。はぁ、はぁ、安心してよコスモちゃん。俺がついてる。俺はずっと君の味方だ。俺が、一生君を守る。俺は永遠に君を愛する。例え世界が敵に回ったって、いつだって君を守るんだ――! ハァー、ハァー、コスモちゃん。コスモちゃん。コスモちゃん。コスモちゃん。俺が君を救うから――!)
「誰か俺を救ってよぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
玄咲はCMAをベッドに安置して壁を殴り始めた。10分程してから、CMAのプレイを再開して、コスモの笑顔に癒された。ヒロインの笑顔が玄咲の特効薬で、クスリだった。
「オラァ!」
「ぐぎゃぁ!」
――視界の端で、G組の生徒がE組の生徒を殺す。故意的にだ。大刀についた血を舐め取るG組の生徒――
(一番嫌いなタイプ。すぐ暴力に訴える、純粋に悪事を楽しめちゃうタイプ。天之くんとは大違い。実力者だけどね、目に余るかな。ちょっと程度が酷いから灸を添えたいけど、そんな余裕はないか――!)
「さとし! 行ったぞ!」
コスモに振り切られたG組の生徒がさとしに呼びかける。さとしがキララの前に進み出る。
「クロス・フラッシュ・ガード!」
「バーン・ナックル!」
「ケミカルウォーター・パラライ!」
ズガン!!!!!
「ぐぅうううううううううう!」
コスモの魔力で強化された拳を腫れ上がった腕に装着したADをクロスして受け止めたさとしが地を足裏で削りながら後退する。キララがダッシュでさとしを追いかけてその背に隠れる。キララに投げつけられた試験管型の魔力の塊を受けたコスモの腕が、痙攣する。
「また、これですか。リペア・モード!」
コスモの体が青い光に放つ。腕の痙攣が収まる。コスモは手をグーパーしながら考える。
(あの女の攻撃だけがずっと厄介です。アイアン・モードで防げない。体が痺れる。リペア・モードを使わされる。厄介です。ときめきパワーも減ってきました。これ以上の消耗は避けたいですね。早く倒さねば。っと)
コスモは近づいてきたG組の生徒をワンパンで沈める。吹っ飛ぶ。
「げはっ! あ、あああああああああ――」
木に叩きつけられた生徒が当たり所が悪かったらしく、体を痙攣させ絶叫を上げて死んだ。
コスモの胸裏に、得体の知れない衝動が走った。
(? なんでしょう、今の感覚は。ゾクッとしました。怖気づいた? いえ、まさか――戦闘中に考えることではありませんね。戦闘行動を続行します)
戦闘はさらに激しくなる。劣勢のG組。怪我人や死人まで出る。とうとう、変に悪ぶってバカにしか見えないモヒカンヘアーを自慢げに逆立たせているG組の男子生徒が発狂する。
「も、もう嫌だァアアアアアアアアアアア! 怖いよおおオオオオオオオオオオオ! お母ちゃあああああああああああああああん! 普通に死ぬし痛いし俺より強いやつばっかだし、ああ、もう、もう、もう――!」
モヒカンが懐から取り出したケミカルを静脈注射する。
「どうなったっていい――! 俺を楽にしてくれぇええええええええええええええ! おっ! ――俺は冷静になった」
後遺症や副作用を一切考慮しないキララ特性ケミカルが一瞬でキまる。その生徒にE組の生徒が魔法を放つ。
「バカみたいな髪型しやがって! 流石ヤンキー! 頭の外までバカだぜ!」
「――俺は冷静に攻撃を交わす」
モヒカンは魔法を交わす。次から、次に。そしてあっという間に接近して――。
「バリカン・チェーンソー」
E組の生徒をバリカンから伸びたチェーンソー型の魔力で斜め切った。既に何発か攻撃を受けていたところに、クリティカルヒットが出たらしく、E組の生徒のHPが一撃で0になる。その様を近くで見たG組の生徒の一人がゴクリと喉を鳴らす。
「……あのクラスでも下から数えた方が早いモヒカンが、冷静に敵を倒してやがる。ゴク――お、俺も!」
G組の生徒の一人が、ポケットに手を伸ばす。一人、さらに一人――。