カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
「最初から全力だ。フュージョン・マジック――」
赤い長剣が横を向く。その切っ先の延長線上には誰もいない。炎条司が詠唱する。
「
夜闇に、直径10メートルの真紅の剣身が幻出する。さらに炎条司がその剣を緩く振るう。
軌跡に、炎の真影が残った。
(……炎剣シリーズのフュージョン・マジック
「さぁ、開幕と行こうか! お前ら! 俺の半径10メートル以内には立ち入るなよ! 構わず切っちまうからな……!」
炎条司が単騎で突進する。10メートルとちょっとの距離を開けて他のA組の生徒も。
それが開戦の狼煙となった。
「フュージョン・マジック――
リュートの背後に現れた無数の星型の光点から次から次に魔法の光弾が放たれる。A組の生徒を何人も撃ち貫く。
だが、炎条司には通じない。
「はぁああああああああああ!」
司が剣を回転させる。炎の大渦が盾となり、リュートの光弾を防ぎ切る。
「やはり、厄介だな!」
「粗製乱造の光ヶ崎家とは違う最強の一本なんだよ!」
さらに司が突進する。10メートルの距離から赤い剣を大上端に構える。リュートは詠唱した。
再び、フュージョン・マジック。リュートにはフュージョン・マジックの乱発が許される。
「フュージョン・マジック――
リュートが突き出した剣の切っ先から、巨大な光の防壁が生じる。司は笑った。
「ゴミみたいな魔法をいくら重ねようと無駄だ!」
司が10メートルの遠心力を完全に剣の先端に乗せた一撃を振り下ろす。初撃は防ぐ。続けざまに、もう一撃。
光の防壁が粉々に砕け散った。リュートは鋭く舌打ち一つ。
(レベルも、ADも鍛えた。それでも、一撃防ぐのが限界か――!)
「追い込んだ! これで終わりだ!」
「くっ!」
リュートが攻撃を右に交わす。左に炎の壁ができる。司が剣を再度振り下ろす。リュートは攻撃を左に交わす。右に炎の壁ができる。
リュートを挟み込む炎の壁が完成する。司が笑って剣を振り上げる。
「俺の勝ちだ! いつも通りな!」
「――フュージョン・マジック」
リュートは、心を落ち着ける。今までやってきたことを思い出す。
そしてその真の成果をリュートにぶつけた。
「
剣にオーラを纏わせ強化するシンプルなフュージョン・マジック。星光纏う
「っ! お、おおっ!」
リュートが、打ち勝った。司が瞠目しよろめく。
「な、なんだと……!」
物理的以上に精神的衝撃から司が隙を晒す。リュートはその隙を見逃さない。炎に挟まれた道を真っすぐ駆けながら、フュージョン・マジックを放つ。
「フュージョン・マジック――
リュートが振りぬいた星紡剣ステラから光の衝撃波が飛ぶ。司はファイ・ロードを振り回し炎の防壁を何個か作り出すが、威力を殺しきることは敵わない。最後はADで受けるも、光の衝撃波はその形状から防ぎ切ることは難しい。大部分が直撃する。
「ぐああああああああああああ!」
司が顔を抑えて叫ぶ。だが、すぐに剣を握り締め、滅茶苦茶に振り回した。炎が道を塞ぎ、リュートの接近を妨げる。無理やり突っ切れなくもない。だが、既に司は体勢を持ち直している。その司と動きを阻害されながら斬り合う不利を考え、リュートは一旦距離を取った。炎線の渦の中、傷を負った頬から血を垂れ流す司と対峙する。
「……なぜ、俺が打ち負けた……!」
「シンプルに剣の技量で上回ったからだろう。僕はこの1週間、剣の腕を鍛え直した。カードバトルの根幹を支える、純粋な戦闘技能をな。彼の話を色々聞いて、彼に勝つために一番必要だと思った訓練を行った」
「ふ、ふふ、そんな理由で、たった1週間で、俺に伍する腕を身に着けたのか……」
「ああ」
魂から出ずる魔力は当然ながら感情の影響を強く受ける。感情が高ぶると、その出力も増加する。想いが力になる。この世界はゲームと異なり、そういう現象が起こる。司の全身から赤いオーラが爆発的に迸る。感情の激発の証。
「はぁっ!」
――大地に深々と弧円が穿たれる。残留する炎が、まるでぐつぐつと煮えたぎる地の底のマグマを噴き上げているように見える。その真紅の剣身がさらに色濃く、長くなった
「殺す」
「ああ。闘り合おう――ずっと、君と本気で闘り合いたかった。こんな機会をくれた学園長には感謝しかないな」
「全くだ。ぶっ倒してやる。そして俺の方が上だって証明してやるよリュートォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
2人は再度激突する。激しい魔法剣戟を繰り広げる。
「……凄まじいハイレベルね。とてもじゃないけど割って入れないわ。それに、余計な手出しは無用って雰囲気」
「そ、そうだね。あ、あの赤毛の人に、ぶっ殺されそう……」
「あ、ああ。怖ぇな。なんか……」
アカネ、ユキ、ガッツは対面の少女に視線を戻した。アカネはゴクリ、と唾を飲み込んだ。
(……大きい)
少女は小さかった。小学生と見間違うほど。毛量多めの黒髪を可愛く両サイドに分けている。目はパチクリしている。顔は童顔。どっからどう見ても子供にしか見えない。なのに、大きい。アカネ程ではないが、ユキレベル。体格を考えたら犯罪的なサイズ。
マルタが本型のAD――遠距離魔符士のADとしては王道のAD――を開き、詠唱する。
「ダークネス・ウェーブ」
「!?」
――信じられない威力の魔法が放たれ、3人は勿論、C組の生徒が何人も吹っ飛ぶ。アカネは即座に立ち上がって、SDの数値を確認した。
80%。
「この距離で、一撃で、私のHPを20%――!? 魔力の化け物だわ!」
「ど、どうする!? アカネちゃん!?」
「勝つのよ! ガッツ! 壁になりなさい! あんたの得意分野でしょ!」
「ひでぇ! でも分かった!」
「ダークネスウェーブ!」
「アース・メガウォール!」
ガッツが防御魔法を発動し、攻撃を辛うじて防ぐ。ユキが遠距離魔法を発動する。
「いくわよ! ウィルギーシュ! フィオーレ・フランマ!」
そして、アカネはマルタへと己のAD――