カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
「う、うわぁあああああああああああああああああああああああああ! あの時のあいつだ! うわ! うわ! うわあああああああああああああああああああああああああああああああああおぎゅわ!」
玄咲は顔も名前も知らない男子生徒の顔面を本気で殴り飛ばした。崩壊した顔面から血と骨と肉と脳髄を撒き散らしながら男は吹っ飛んだ。力任せの殺害。
「ひ、ひぃいいいいいいいい! お、俺、味方っ! く、糞ッ! アイス・ハイボール!」
「ヒートロッドの間違いだろうが」
杖型ADを持ったG組の生徒が玄咲にランク2の魔法アイス・ハイボールを発動する。玄咲は避けもせず、抗魔力でその威力のほとんどを減衰し、一瞬で男の懐に潜り込んで、その股座に思いっきり爪先をめり込ませた。全て潰れた。股が裂けた。腹までめり込んだ。あまりの痛みで男子生徒は悲鳴を上げる暇すらなく一瞬でショック死した。
「……コスモ、ちゃん」
「あ、あああ……」
……コスモは、怯えていた。明るさも電波も失って、別人のようだった。絶対に見たくない姿だった。
(……どの程度かは分からない。でも、間違いなく、思い出してしまったらしい……。起こるとしても、もっともっと、先の事態のはずだったのに……! 糞ッ! ゴミが。ゴミが。ゴミが……!)
「あ、ああ、天之玄咲、ですか……あなたは、天之玄咲、ですね……!」
「ッ! あ、ああ! そうだ! 俺だ! だから、大丈夫だ!」
自分を認識してくれた。だから大丈夫。そう思い、コスモを保護するために近づく。
コスモは体をびくつかせて、動かない体を必死に動かし距離を取ろうとした。
「G組の、生徒。私を倒しに、いや、それ以上のことを、しにきたんですね…… やめて、ください。いやなこと、しないでください……! こないでください……!」
「――」
例えようもない痛みを胸に覚えた。だが、ときめきパワーが尽きたと思しき今のコスモを放置するわけにはいかない。
だが、怯えられたまま近づくわけにもいかない。
(この眼、恐怖を煽るよな……大丈夫。今の俺なら天使の力を借りなくてもできる)
眼を閉じて深呼吸。心を落ち着かせて、眼を開く。
それだけで、玄咲の眼は元に戻った。赤い眼に伴う赤黒いオーラも霧散する。見た目の印象はかなり改善されたらしい。コスモは怯えつつも玄咲と目を合わせてくれるようになった。でも、まだ怯えている。
(……キララ、さとし、追い詰めてくれたのに、こんな判断をしてごめん。でも、こんな状態のコスモちゃんを攻撃なんて俺には絶対できない……)
「――
「――え?」
シュヴァルツ・ブリンガーをカード形態に戻す。武装解除だ。カードをポケットにしまい、平手を見せつつ、努めて優しく笑う。
「大丈夫。君を倒しはしない。俺は君の味方だ。一緒に教師を探して、リタイアをしよう。それまで俺が君を守るよ」
「……」
コスモは泣きはらした瞳に、確かに玄咲を映して。コクン、と頷いた。
「近づいてもいいか」
「……」
コクン。
「ありがとう」
常にない殊勝さがたまらなく可愛い。こんな状況にも関わらずそんなことを考えてしまった自分を玄咲はちょっとだけ殺したくなる。だが、自己嫌悪はなるべく抑える。
「その、近づいてもいいか」
「はい。コスモに近づいてください」
「っ! う、うん!」
例えようもない喜びを胸に覚える。玄咲はコスモに近づく。歩き方すら分からない赤子のように地面にぺたりと尻をつけるコスモの頭に手を伸ばし、その頭を撫でた。
「怖かったな」
なで、なで。
コスモはくすぐったそうにする。でも、嫌がらない。
「もう大丈夫。リタイアするまで、俺が君を守るよ。だから安心してくれ。もう怖がらなくていいんだ」
「……はい」
コスモはもう一度コクリと頷く。
「よし、じゃあ俺がコスモちゃんを運ぶよ。えっと」
そこで玄咲は気づいた。動けないコスモを運ぶ。そのためにはコスモと密着しなければならない。愕然とする玄咲にコスモは両手を伸ばして、
「おんぶ」
赤子のようにせがむ。
「コスモをおんぶしてください。抱っこでもいいですよ」
「……お、おんぶ、しようか」
「はい。お願いします」