カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第38話 あなたの弾丸で

「……クララ先生だ」

 

 森の中、玄咲はようやく教師を見つけた。それもクララ・サファリア。玄咲が最も信頼し、敬愛以上の感情を今なお抱き続けている教師だ。玄咲のテンションが跳ね上がる。クララの名前を何度も呼ぶ。

 

「クララ先生―! クララ先生―!」

 

「嬉しそうですね」

 

「クララ先生は女神なんだ」

 

「……」

 

「クララ先生―!」

 

 近づいてくる玄咲にクララはなおも呼びかける。クララは若干呆れつつも笑みを向ける。

 

「はいはい。何度も叫ばなくても聞こえてるわよ」

 

「クララ先生。コスモちゃんをリタイアさせてください。そして治癒と保護をお願いします」

 

「分か――ん? 玄咲くん。その子、E組のリーダーよね?」

 

「はい。コスモちゃんです」

 

 クララが言いたいことを察する、その上でいう。

 

「でも、関係ありません」

 

「……」

 

 クララはコスモを見る。ボロボロだ。とても戦えそうにない。そして扇情的だ。さらにその容姿は1学年全員見渡しても間違いなくトップ5に入るほど美しい。G組と交戦していた。単騎で恐ろしい活躍していた。大いにG組の生徒のヘイトを、そして関心を買ったことだろう。G組の生徒には犯罪者レベルの不良まで必ず混じっている。学園長の頭がイカレているからだ。

 

「……ふふっ」

 

 クララは玄咲がコスモをここまで背負ってきた理由を察して、優しく微笑んだ。

 

「分かったわ。リタイアを」

 

 

「いえ、それには及びません」

 

 

「――え? コスモ、ちゃん……? なん、で……?」

 

 

 ――コスモが一人で地面に立つ。ありえないことだった。だが、玄咲はすぐにその理由を察する。

 

(ときめきパワーが尽きていたはず――そうか! 俺のコスモちゃんへのときめきパワーを吸収して復活したのか!)

 

「天之玄咲」

 

 コスモがクララと玄咲の間――つまり玄咲の真ん前に立つ。戸惑う玄咲の前で、己の胸に手を埋めて微笑んだ。

 

「私を撃ってください。あなたの銃で」

 

「――え?」

 

 玄咲は驚く。言ってることの意味は分かるが理由が分からない。クララの顔も引きつっている。

 

「コスモは負けました。当然の帰結です。それに何より、あなたに、たくさん助けられてしまいました……。だから、これ以上、あなたに甘えられません。しっかり負けて、あなたにポイントを稼いでもらいたいと思います。あなたに、コスモはやられたいのです」

 

「……」

 

 ゴクリ。

 

「……いいのか?」

 

「はい」

 

 コスモはほほ笑んで答える。

 

「あなたがいいんです」

 

「……」

 

 妙に深読みしてしまうセリフだが、コスモとフラグを立てた覚えはない。だからいつもの天然発言だろうと確信しつつ、玄咲はコスモにADを突き付ける。

 

「……分かった」

 

 胸の少し手前で照準を合わせる。コスモは銃口を掴んで。

 

「もっと奥です」

 

 ぐにゅ。

 

「ッ!?」

 

「ここがコスモの急所です」

 

 銃口を胸の只中に突っこんだ。際して、玄咲の手もちょっと胸に触れた。むにゅり返してきた。玄咲は激しく動揺する。その玄咲に、

 

 

「あなたの銃弾でコスモのハートを撃ち抜いてください」

 

 

 コスモが、微笑みかける。

 

「――」

 

 その笑みは玄が今まで見たコスモの表情の中で間違いなく一番美しい笑みだった。一瞬、何もかもを忘れて、玄咲はその笑みに魅入った。

 

「……分かった」

 

 だがすぐに、コスモの誠意に応えるために、動揺や浮つきを意思の力で押し殺し、しっかりとADを胸の中央に押し当てて、左右から挟み込んでくる胸の感触を努めて無視しながら、玄咲は詠唱した。

 

「ダーク・アサルト・バレット」

 

 

 

 

(……これで、いい。ときめきを、ありがとう……)

 

 HPが0になったコスモはクララの腕の中で気絶する。だが、その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。

 

「……」

 

 腕の中のコスモの満足げな笑みを見ながら、クララは戦々恐々呟いた。

 

「玄咲くん、あなた、とんでもないことしたわね……」

 

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