カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第39話 A組 VS C組 3 ―決着―

「あっ」

 

「これで終わりよ――!」

 

 神楽坂アカネが懐に潜り込んだ神鐘マルタの本型のADを杖の柄で弾き飛ばす。そしてがら空きになったボディに桜光魔杖(フィオリトゥーラ)Oi(ウィ) Lu ()Gishu(ギーシュ)を突きつけて詠唱した。鮮やかな動き。

 

「フィオーレ・フランマ!」

 

「ぐわあああああ」

 

 神鐘マルタのHPが0になった。

 

「ばたん、きゅ~」

 

「はぁ、はぁ……なんとか、勝てた」

 

「そう、だね。やっと、勝てた……」

 

「ラグナロク学園は化け物しかいないのかよ……一応故郷の学校じゃ友人に次いで2番目の魔符士だったのによ。ん? あれ。友人の名前なんだっけ……」

 

 その高い魔力でアカネたちを苦しめた神鐘マルタ。最終的にアカネはマルタのカードチョイスの癖を掴み、一人で下した。だが、水野ユキが、大岩ガッツが、他にも仲間がいなければ、癖を掴むまでに負けていた。マルタの魔法の威力を思い出しアカネは額の汗を拭う。

 

「強敵、だったわね。敗北感、凄い。試合に勝って勝負に負けたって感じ。でも、勝った。今はそれで良しとしておきましょう。……さて、あとはリュートね。あっちも大詰めか。……リュート、勝ちなさいよ」

 

 アカネはその巨大すぎる胸にやや腕を埋めながら、胸の前で手を祈り合わせた。

 

 

 

 

 

「俺が、負けただと……?」

 

 A組とC組の戦いにたった今決着がついた。リュートは倒れ伏す炎条司をまだ荒い呼気を落としながら見下ろす。

 

「……紙一重の勝利だった。次やったら負けるかもしれない。だけど、だけど、だけど――ッ!」

 

 ――リュートの眼に熱い輝きが灯る。それを拭うこともせず、いつの間にか星が生まれていた夜天を見上げ、渾身のガッツポーズを取りながらリュートは咆哮した。

 

「――やっと! 勝ったぞ! お前に!」

 

「……とうとう、追い抜かれた、か……」

 

 炎条司は夜天へ吠えるリュートへ、まるで星を眺めるかのように眩し気に、本当に眩し気に見上げる。

 

「――俺はいつかはお前に追い越されると思っていたよ。だからこそ、お前には戦う度に徹底的に敗北感を植え付けた。俺の方が上。そう示したくてな。時間の問題だって、分かってたのにな」

 

「――え?」

 

 炎条司の告白にリュートが驚く。

 

「お前が内に秘めた才能は俺よりもずっと眩しい。分かってた。だから、だからこそ、負けたくなかった。――俺はお前をライバルだと思っていたんだッ! それなのに、負けちまった……う、うぅ……!」

 

「……司」

 

 ――炎条司はボロボロ泣いていた。グラサンの内から涙が溢れる。人によっては幻滅するかもしれない醜態。

 

 だが、リュートはその姿を美しいと思った。戦いと敗北はセットだ。戦えば誰でも負ける日が来る。そして本気であればあるほど、勝利の喜びは、敗北の痛みは、増す。涙は、本気の証。だから、心の底から司を美しいと思う。

 

「……涙を拭え。立て」

 

 だが、甘やかしはしない。司もまたライバルだからこそ、その心の強さを信じている。

 

「一人で立てるだろう?」

 

 それだけで、司には全てが伝わった。司はサングラスを外して涙を拭い、それから再び装着し、いつもの負けん気に溢れた態度を一瞬で取り戻した。

 

「――ったりめーだ。次は負かす。絶対負かす。いや殺す。本気の本気でだ。首洗って待っとけカスが……!」

 

「ああ。待ってる。完璧に勝ち越してみせる。超える。僕もまた、君をライバルだと思ってるからな」

 

リュートは何のてらいもなく言ってのける。ふん、と鼻を鳴らしながら、司はグラサンの位置を直して完璧に瞳を隠した。

 

「……そういえばよ、俺もあいつとカードバトルしたんだけどよ」

 

「なんだと!? いつやった!」

 

「3日前。因縁つけられてな。負けた。確かに強かった。戦闘センスが今まで会った誰よりもずば抜けてるな。だが、魔符士としての素質はそこまででもないと感じた。そして歪だった――お前にも、いやお前だからこそ勝機がある。俺がお前に対天之玄咲戦のアドバイスをしてやる。有難く拝聴しやがれ」

 

 

 

 

 

「彼と何話してたの?」

 

 司との会話後すぐにアカネは尋ねてくる。リュートは隠すことなく答えた。

 

「天之玄咲の対策さ。戦って感じたことを伝えられた。……負けられない理由がまた一つできたな」

 

「そうね。負けられないわね……それと、リュート」

 

 アカネはその顔に柔らかな笑みを浮かべた。

 

「おめでとう。やっと勝ったわね」

 

 炎条家と光ヶ崎家の確執は有名だ。リュートと司の関係も。アカネももちろん知っている。

 

「ありがとう。やっと、勝ったよ。そういえばアカネ。君もあのマルタに勝ったんだな。それも最後は一騎討ちで。凄いよ。おめでとう」

 

「彼女のこと知ってるの?」

 

「学園長の遠戚だよ」

 

「……」

 

 アカネは深々と頷いた。

 

「納得。道理で魔力が凄い訳だ」

 

「まぁ、常識の範囲内だけどね。前戦った。勝った」

 

「あなた、誰とでも戦うのね」

 

「当たり前だろ。魔府士なんだから。戦って、勝って、負けて、そうやってレベルアップしていくんだよ。魔符士は」

 

「ふーん……レベルアップ、したんだ?」

 

「ああ。司のお陰でランクアップした。見ろ」

 

 

 光ヶ崎リュート 魂格 42

 

「私も上がったわよ。ほら」

 

 神楽坂アカネ  魂格 40

 

 

「お、G組戦前に嬉しい戦力増加だ。彼は間違いなく僕たちより高レベルだからな。にしても40……かなり鍛えられてきたな」

 

「まね、おじいちゃん優しいけど厳しいの。昔からずっと鍛えられてきた。恨んだこともあったけど、今は凄く感謝してる。戦闘技能が身についたし、何よりお陰でいいスタートダッシュが切れた。魂に蓄積された経験値は無駄にはならない。魂成期を迎えると体が壊れないようにゆっくりとレベルに還元されていく。これだけの速さでレベル40に到達したのは間違いなくおじいちゃんとの特訓のお陰だわ。お陰でいいスタートダッシュが切れた」

 

「そうだな。スタートダッシュは大事だ。より強い相手と戦えるようになるからな。強敵との闘いこそ魔符士の最大の糧。僕はもっともっとたくさんの敵と戦って、強くなるよ」

 

「……あなたは戦いが成長の鍵なのね。本当、十人十色。難しいわね」

 

「ああ。そして今僕が一番求めているのは彼への勝利――天之玄咲との戦いが今の僕が最も求めるもの。ワクワクしてるよ。やっと、彼と戦える。全力の僕をぶつけられる。フフ、血が騒ぐよ。魔符士の血がね……」

 

 リュートは心底嬉しそうに、武者震いまでして、笑う。アカネは呆れと感心がないまぜになった眼でリュートを見てから、しみじみと呟いた。

 

「やっぱりあなた、魔符士の鏡だわ」

 

「ありがとう。そう言ってもらえて光栄だ」

 

 リュートは微笑み、礼を言う。アカネもまた微笑み返した。

 

「ところでこれからどうする? A組は倒したけれど、それでイベントは終わりじゃないわ」

 

「そうだな。考えないと。今どの組が残っているんだろう」

 

「SDのイベントページを覗いてみましょうか」

 

 アカネはSDのイベントのページを開いた。そして顔色を変えた。

 

「これ、SD見て。残ったのG組とC組だけよ」

 

「え? あ、本当だ……」

 

「3組に挟み撃ちにされてたのに跳ね返しちゃったわ。信じられない」

 

「天之玄咲以外にも強者が揃ってるみたいだな。もしかしたらノーマークの魔符士でもいるのかもしれない。要警戒だな」

 

「どうする?」

 

「……」

 

 リュートは背後を振り返る。C組はまだ多くの生徒が残っている。人数もだが、クラスの主力となる光ヶ崎リュート、神楽坂アカネ、水野ユキ、大岩ガッツが全員残っているのも大きい。B、D、E、F組の合計4組と戦ったG組よりもA組のみと戦ったC組の方が間違いなく多くの戦力を保有しているはずだ。

 

(……少し、不公平かな。できれば僕個人としては――いや、エゴは抑えるべきだ。クラスメイトのために最善の判断を下すべきだろう。となると……)

 

 リュートは少しの間難しい顔をして悩んでいたが、結局は迷いを打ち切り、言った。

 

「山頂に陣取るか。閉所は人数差を活かしづらい。開けた場所で待とう」

 

「分かったわ。向かってこなかったら」

 

「こっちから向かうさ。現状、条件的には僕たちが有利過ぎるからな。それくらいの不利は背負いに行こう」

 

「OK」

 

 C組は移動開始する。リュートは思う。

 

(天之玄咲。どんな形であれ、やっと戦える。強くなった僕の全力をぶつける……!)

 

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