カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第42話 前哨戦

「うわあああああああああああああなんだよこいつううううううううううううううう!?」

「速すぎる。それに攻撃力も異常だ! 一撃でHPを0にされちまうぞ!」

「集団でいるのが逆に仇になるわ! 散開ぎゃぁあああああああああああああああああ!」

「容赦もねぇ……流石あの男の女だぜ……戦い方がそっくりだ……」

「こ、こんな奴がいるなんて聞いてねぇぞ! 糞! いつも2人でバトルルームに籠っていたのは隠し玉にしておくためか! イチャついてた訳じゃギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアおっ」

「死んだ……」

 

 

 ――シャルナが無双していた。動きが止まらない。淀むことなく効率的に動き続ける。攻撃が止まらない。その全ての攻撃が致命の威力を有している。B組と戦った時よりもさらに動きが洗練されている。もう誰にもシャルナは止められなかった。

 

「流石ね! 頼もしいわ!」

「ああ。一人で敵を殲滅する勢いだ! 味方でよかったぜ!」

「……認めざるを得ませんか」

 

 模擬戦を経てシャルナの実力を知ってるG組の生徒たちも改めて驚く。初めての実戦を経て、シャルナの中の何かが覚醒し始めていた。もう、誰がどう見てもシャルナは()()()()特待生レベルの実力を身に着けていた。

 

 この場の誰もが、シャルナを認めていた。

 

「……なぁ、君、あの子より強いのか?」

「……うん」

「なんで自信なさげなんだよ……でも、正直気持ちは分かる。僕でも勝てるかな……」

 

 リュートが戦闘フィールドの隅っこで体育座りで隣り合う玄咲に真顔で尋ねる。玄咲は強気に断言することができなかった。また強くなっていた。ゲーム準拠なら最強になりうる素質を秘めていることは分かっていた。でも、本当に敵キャラ前提のステータスのまま味方になるとは思わなかった。その才能がここまで早く花開くとも思わなかった。

 

 シャルナは既に部分的には玄咲を遥かに凌駕する強さを身に着けていた。頼もしくも、自分が情けなくなる光景に、玄咲はちょっと落ち込んだ。リュートがその背を優しく撫でた。

 

 あったかかった。

 

「なによあの子!? あんな強かったの!? あの子を止めないと勝ち目はないわ! ユキ! ガッツ! 止めに行くわよ!」

「う、うん! 私なら、当てられなくは、ない!」

「ああ! 攻撃は俺が防ぐぜ!」

「おっと、そうはいかないぜ」

 

 アカネたちの前にG組の残りの生徒が立ちはだかる。アカネたちは足を止めざるを得なかった。釘バットを持った男子生徒がぽんぽん手を叩きながら、戦意に満ちた笑みを浮かべる。

 

「厄介そうなお前たちの相手は俺だ。時間稼ぎさせてもらうぜ」

「ええ。シャルナちゃんが敵を殲滅するまで食い止めさせてもらうわ」

「こっちの方が楽そうですしね。ま、付き合ってあげますよ。時間つぶしにね。ほら、かかってきてください」

 

 アカネは罅割れてむしろ前が見づらいであろう眼鏡をなぜかかたくなにかけ続ける男の手招きと台詞になんかいらつき、ギリッと歯ぎしりした。

 

「上等! 一瞬で倒してあげるわ! フィオーレ・フランマ!」

 

 アカネは己のAD――桜光魔杖(フィオリトゥーラ)Oi(ウィ) Lu ()Gishu(ギーシュ)から、極大の火炎弾を発射する。

 

 

 

 

「11人いる、わね! 今、10人になった!」

 

 己を囲む10人のG組の生徒をアカネは危なげなく相手取る。G組の生徒たちが悲鳴を上げる。

 

「くっ! 強ぇ! マジで足止めが精一杯だ! ハァ、ハァ、動き回りやがって。動き、回りやがって……!」

 

「糞っ! あの胸がどうしても気になる! ばるんばるん揺らしやがって! ハァ、ハァ……こうなったらイチかバチか接近戦だ! うおおおおぉぉヒートロッドぎゃあああああああああああああああああああああああ!」

 

「品がないねぇ……まぁでもイラつく乳だよ。毟り取ってやらぁ!」

 

「あんたら本気でやめてくんない!? ラストバトルのムードじゃないんだけど!?  流石、あの男の率いるクラスね!」

 

「っ!」

 

 戦闘フィールドの端で予期せぬ流れ弾を受けた玄咲が心臓を抑える。アカネがまた一人、G組の生徒のHPを0にする。

 

 

 

 

 

「ぐっ! 出せ! 出せよコラ!」

「あなたに独塞聖権は破れませんよ……」

 

 ガッツがやたら柔らかくて弾性があって手触りが気持ちい、己に膜のように張りつく透明のバリアを必死で叩く。そのガッツに、釘バットを持った男が近づく。ガッツの顔が青ざめる。さらに激しくバリアを叩く。

 

「出せー! こんなモブみたいな眼鏡に追い込まれるなんて絶対嫌だ―! 糞! バリアが柔らかくて落ち着くんだよぉ……!」

 

「残念でしたね。貴方はもう詰みです。釘男くん。お願いしますよ」

 

「おうよ! タイミング合わせろよぉ! フュージョン・マジック! 釘大爆発(ネイルバット・ボンバー)!」

 

「……おい、やめろ。ていうかそのAD、魔法使わなくても人殺せるんじゃ――」

 

 釘男がガッツに釘バット型ADを振り下ろす。そのタイミングでしるけんが魔法を解除する。

 

「ちょっと待て釘バットはやばいってぇえええええええええええええええええええ! おっ!」

 

 ガッツに直撃した釘バット型ADが釘の先端から大爆発を起こす。ガッツのHPは0になった。ついでに死んだ。

 

 

 

 

 

「こ、この人、じ、地味に強い……!」

 

「ありがと。でも、そろそろ決着をつけさせてもらうわよ!」

 

 青紙の少女が素早くカードを入れ替える。ユキは勝負を賭けに来たと判断した。己もカードを入れ替える。

 

「フュージョン・マジック!」

 

「! フュ・フュージョン・マジック!」

 

 やはり。そう思い、慌てて呪文を詠唱する。呪文の完成は青髪の少女がやや先行した。

 

氷棺水換(コキュートス・コンバート)!」

 

死柴涙累(デス・パイレーツ)! ――え?」

 

 地面に巨大な氷の棺桶の模様が現れる。水野ユキの足元を飲み込む。それから少し遅れて、水野ユキのフュージョン・マジックが発動する。高攻撃力の、水属性のフュージョン・マジックが。

 

 氷の棺桶が開いた。闇から、氷の息吹が噴きあがる。水野ユキのフュージョン・マジックが全て凍る。そして、水野ユキさえも、凍ってゆく。

 

「な、なんで、こんな、水属性魔法を凍り付かせるだけの、ピンポイント、メタ魔法を……!」

 

「キララちゃんからコキュートススタンプから1枚カードを入れ替えるだけで使えるフュージョン・マジックがあるから素材カードを買っといたらどうかって言われたから。カードショップに行ったら素材カードも安いし、せっかくだから買っといたの。役に立ってよかった。なんでって、言われたら、まぁ、偶然?」

 

「ふ、不幸だぁ……! うっ!」

 

 水野ユキの全身が凍る。意識を失う。HPが0になる。

 

「――ユキを倒すなんてやるわね。あなたがこの集団で一番の実力者みたいね」

 

 神楽坂アカネの声。他の生徒を全て倒して向かってくる。青髪の少女は冷や汗を掻いた。

 

「……早すぎない? 私一人で時間稼ぎかぁ……まぁ、やるだけやってみるか! 水属性は炎属性に有利だし何とかなるでしょ!」

 

「勇ましいわね。ユキにもその勇ましさを半分分けて上げたいわ……ま、やれるものならやってみなさい。私も、本気で行くから」

 

 アカネと青髪の少女が激突する。

 

 

 

 

 

 

「終わったよ。アカネちゃん。やろうか」

 

「……ええ。やりましょうか」

 

 C組の生徒を殲滅し終えたシャルナがアカネの前に降り立つ。それから、一度周りを見渡す。

 

「……全員、やられちゃったんだ。強い」

 

「C組約80人一人でぶっ倒しちゃったあなたほどじゃないわよ。まさかあなたがこんな強いなんてねー。このイベント最大のダークホースだわ……ま、前置きはこれくらいにしてやりましょうか。あなたのそれ、時間制限があるんでしょ」

 

「うん。MPポーション飲んだけど、燃費悪いから3分後には切れてると思う――十分」

 

 シャルナがエンジェリック・ダガーの切っ先をアカネに向ける。

 

「3分で倒すね」

 

「……上等! こっちも負ける気はさらさらないのよ!」

 

 アカネが初っ端からフュージョン・マジックを発動する。

 

 

 アカネとシャルナの戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

「強い、わね……!」

 

「ありがとう」

 

 アカネは満身創痍。だが、シャルナは無傷。二人の実力の差が表れている。アカネは勝負をかけることにした。

 

(残り1回のフュージョン・マジック。これにかける!)

 

「フュージョン・マジック花炎障壁(ファイアウォール・ブルーム)!」

 

 アカネの周りに轟炎の壁が立ち上る。触れるものを焼き焦がす灼熱の壁だ。シャルナは少し考えて、言った。

 

「それで時間切れまで防ぐつもり?」

 

「ええ。時間制限付きの魔法は時間切れを待つ。常識でしょ」

 

「そうだね。なら、バリアごと、貫く」

 

 シャルナが高く高く飛ぶ。そして、アカネへと急降下する。白光纏うエンジェリック・ダガーをバリアへと突き下ろす。

 

 手応えが、なかった。シャルナの思考が一瞬虚無に侵される。アカネは、笑った。

 

「かかったわね」

 

 花炎障壁がエンジェリック・ダガーによって突き破られた個所から火を噴いた。花炎障壁は攻撃を防ぐのではなく、相手の攻撃に反応して爆発するリアクターシールド。防御魔法に見せかけた、罠的要素を強く持つ相手を倒す為のカウンター攻撃魔法だ。時間を稼ぐ気などさらさらない。会話も含めて、アカネの罠だった。

 

「フィオーレ・フランマ!」

 

 さらにダメ押しの魔法。勝った。そう思った矢先――。

 

「――大したこと、ない。あの地獄に、比べたら」

 

 声。翼を纏い回転して爆炎を突っ切ってくる。だが、咄嗟の判断だったのだろう。爆炎から身を庇うのが間に合わず全身に火傷を負っている。なのにまるで怯まない。ダメージなどないかのように。そんなものに構ってなどいられないとでもいうように。

 

 その眼が前だけを見て光り輝いている。

 

(ああ、そっか……覚悟が、違うんだなぁ……)

 

 極大の火炎弾が白い光に蹴散らされる。そしてアカネもまた――。

 

 

 

 

「……勝った」

 

 エンジェリックダガー片手にシャルナは気絶したアカネを見下ろし、唇の血を拭った。C組G組合わせて、最後に立っていたのはシャルナ一人だった。

 

 C組とG組の前哨戦はG組の勝利に終わった。

 

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