カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第47話 切り札

「……ゴホッ」

 

 HPは残り10%。地面に打ち付けた体が痛む。だが、すぐに体を起こさなければならない。

 

 敵が、すぐそこまで来ているから。

 

(……参ったな。こちらに分があると踏んだ接近戦で負けるなんて。天才だな。司に剣術の領域なら僕が上と言われたが、とんでもない。彼が知らない技を知ってるだけだ。それさえ一度でコピーされ、上回られた。悪い司。君のアドバイスは役に立たなかったよ。今の僕じゃ勝てる気がしない。

 

 だからといって遠距離攻撃はHPを削るペースよりこっちの魔力消耗の方が激しい。魔力消費を抑えたシングル・マジックなんて焼け石に水。そもそも彼は遠距離魔法、そして銃型ADの熟練も常軌を逸している。遠近両立。どちらも同等以上の練度。不得手が見当たらない。魔力的素質に劣る以外は、本当に完璧だ。もうこうなったら打てる手は――)

 

 リュートはよろめきながらも立ち上がる。そしてカードケースに手を伸ばし、

 

(一つしかない)

 

 カードを2枚入れ替えた。そしてMPポーションを飲む。

 

 

 

 

(――2枚。とうとう、切り札を切ってくるか。リュートの体質をもってしても魔力消費が絶大な、普通の人間では発動することすら敵わない、使った後には自らもまた反動で行動不能になるフュージョン・マジックを。勝負を、賭けにきたな)

 

 玄咲もまた、リュートがカードを入れ替えたのを見て、カードを1枚入れ替える。カードの表面が見えないようにダーク・アサルト・バレットを排府し、同じく表面を隠して新たなカードをインサートする。この距離で絵柄が見えるかどうか分からないが、情報はなるべく隠しておきたい。

 

「――天之玄咲。君は強いな」

 

 リュートが笑んで、玄咲に話しかけてくる。玄咲は首を横に振った。

 

「そうでもない。魔府士としては君の方が強い。魔法以外の部分で必死に誤魔化しているだけだ」

 

「――まぁね。その言葉も間違いない。でもさ」

 

 リュートの言葉には含みがない。100%本音だけで話していると相手に伝わる何かがある。

 

「そんな君がこれからどう強くなっていくのか、僕は楽しみで仕方ないよ」

 

 だからこそ、心に響く。

 

「……そうか。俺も別に、強さを諦めるつもりはない。断言してやる。俺は最強になってやる。だって、ずっとシャルの前を走らなきゃいけないんだ。そしてシャルを守らなきゃいけないんだ。俺自身がそうしたいんだ。だから、俺はお前にも永遠に負けない。絶対、勝ち続けてやる」

 

「……」

 

 リュートが目を丸くして、玄咲を見た。

 

「なんだ」

 

「いや……ドライに見えて、意外と感情的なんだなって」

 

「悪いか」

 

「……いや、むしろ好ましいよ。魔府士らしい。改めてそう思った」

 

「……そうか」

 

 なんだかんだで自分もこの世界に染まってきたらしい。リュートの言葉に気づかされる。しかし悪い気はしなかった。リュートと視線を合わせる。不思議な一体感。これがライバルなのだろうかとふと思った。

 

(……いや、男相手にこの感情はやはり少し気持ち悪いな……。リュートのことは嫌いじゃないんけどな……リュートが可愛い女の子ならいいのに)

 

「君も今、同じ気持ちなんだな。その熱い視線。間違いない――そんな君に、僕の全てをぶつける」

 

 リュートが歩みだす。玄咲へと。

 

「切り札を切る。察してるだろうがな」

 

 玄咲もまた歩みだす。リュートへと。

 

「ああ。俺にも切り札はある」

 

「そうか。当然だな。魔府士なら切り札の1枚2枚」

 

「ああ。もっとあるぞ」

 

「え?」

 

「冗談だ」

 

「……そうか。まだまだ、色んな秘密があるんだな。これから先、何を見せてくれるのか楽しみだよ。僕はいい学友を持ったよ」

 

「え? 冗談――」

 

「さぁ、言葉はもういいだろう。後はただ互いの全てをぶつけ合うだけだ」

 

「……そうだな。言葉はもういい」

 

 リュートが駆け出す。玄咲も。真っすぐ、互いへと駆け出す。勝利を目指して。

 

 己のADと、カードで、望む未来を切り開かんと。

 

 正真正銘最後の対峙。

 

(――シャル)

 

 最後に、シャルナを見る。その瞳は玄咲の勝利を何ら疑っていない。最初から最後まで、一瞬たりとも。

 

(――全く。嬉しいな。信用されるというのは。胸が暖かい。離れていても、戦っていても、一つ。俺もまさに今、そんな気分だ。シャルもこんな気分だったんだろうな。今、ようやく分かったよ)

 

 微笑み、改めてリュートに視線を戻す。ADを振り上げている。視界の端でずっと確認していた。玄咲もまた引き金にかけた指に力を加える。

 

「フュージョン・マジック――!」

 

(さぁ、来い。4枚のカードを素材とする今のお前の最大の切り札――!)

 

 そしてリュートがADを振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――五光極星刃(クインテット・ニルヴァーナ)!」

 

 

 

 

 

 

(――シャル)

 

 全ての条件が揃った。玄咲は微笑み、詠唱しながら引き金を引いた。

 

(勝ったよ)

 

「召喚――夢幻牢(プリズメア)メリー」

 

 世界が白い光に包まれる。

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