カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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去年の正月に書いた特別番外編。完全に機を逸してしまった。来年まで待つのもあれなのでもう投稿してしまうことに。元ネタの台は相応に古いです。


番外編2
お正月企画番外編 クロウとパチンコ。もち麺とシャルナ


 時系列不詳。

 

「天之、久々のパチンコはどうだ」

「面白くないです」

 

 玄咲はクロウとパチンコ屋に来ていた。ジャラジャラパチパチ煩い店内でクロウと並んでパチンコを打っている。クロウが煙草を取り出しかけて、舌打ちをしてポケットに戻してハンドルを回す。ちょっと回し過ぎたハンドルを左打ちに戻しながら、玄咲に語る。

 

「最近パチンコの規制がきついんだ。台の出玉性能を絞られてるだけじゃなくて禁煙化まで進んだ。この台ももうすぐ期限が切れる。パチンコ嫌いのプライア女王が雷丈家の締め付けがなくなったのをいいことに法整備を進めてしまったんだ」

 

「英断ですね」

 

「俺の打ってる新機動戦姫シン・セブンスも来月で期限切れだ。数少ない勝ってる台なのに悲しいよ」

 

「良かったですね」

 

「お前が今打ってる10000ちゃんも来月で期限切れだ」

 

 ガタッ!

 

「……」

「……」

 

 黙秘権。

 

「まぁ、座れよ」

「……」

 

 玄咲は無言で席に着いた。クロウもそれ以上追求しなかった。二人並んでパチンコを打つ。

 

「お、リーチだ」

「強演出ですね」

 

 強リーチ演出の画面で手を止めて、虹色の残光を描くサーフボードに乗ったメカニカルな少女が宇宙から来襲した人造人間に歌いながらルシファーズ・ハンマーを振りかぶる画面を腕組み真剣な目で見つめるクロウ。玄咲も画面に食い入ってメカニカルな少女を見つめる。

 

「“これ”が私の“悪魔の鉄槌”DEATHゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!?」

 

 PUSH。

 

「行け!」

「DEATH子ちゃん!」

 

 クロウがボタンを押す。

 

 ぷしゅ。

 

「ダメ、DEATHした……」

 

 ガン! 

 

「“フリーズ”しただろうが!? “勝ち取れ”よ!? あと”DEATHDEATH”うるせぇんだよッ!? いつもいつも俺の前でだけ”雑魚”になりやがってッ!!!!!!!」

「で、でもDEATH子ちゃんはそのクドさが売りなんです……!」

「……ちっ、一理あるな。台移動するぞ」

「あ、はい」

 

 クロウは結局「波に乗れよ。敗北者が」と言い捨てて玄咲と台移動。真剣な眼で釘を見極め、最終的にクロウは【真・バンコク無双】、玄咲は隣の【戦乱恋姫6】に座った。

 

「この台今一番人気あるんだよ」

「なぜ、そんなむさくるしい台が」

「勝ちやすいから」

「……理解できませんね」

「その台は勝ちにくいけど人気はある台。戦国×美少女は鉄板ネタだからな。ネタ被りの台がいくつもある。花魁コレクションってシリーズもあるぞ」

「美女には興味がないです」

「……」

 

 クロウは可愛らしい絵柄の美少女が乱舞する玄咲のパチンコ台をチラ見して美女と美少女の定義の違いについて真剣に考えた。それから、少し悪い顔をして、言った。

 

「花魁と言えばさ」

「なんですか」

「お前、避妊魔法って知ってるか」

 

 ゴン!

 

 パチンコの画面に玄咲は頭突きをかました。頭をさすりながらオウム返し。

 

「……ひ、避妊、魔法?」

「ふふ。その反応、やっぱり知らなかったようだな」

「は、はい。いや、ええ……。そんなものが、あるのですか?」

 

 CMAは全年齢向けゲームだ。サンダージョーや8人も攻略可能なメインヒロインが出てくるが、ヒロインの誰もが美少女ゲームと見間違うような絵柄とキャラ付けをされているが、それでも全年齢向けゲームだ。避妊どころか性的な話題そのものがほとんど出てこない。パンチラさえしてくれない。それっぽい仄めかしはたくさんするが、エルロード聖国編などそれのオンパレードだが、とにかく全年齢向けゲームだ。避妊魔法など、出てくるはずもない。

 

(となると、まさか風俗とかも普通にあるのか? この、美少女だらけの世界に? いや、男の本能的根源的生物的欲求と密接に関わっている以上、ないと考える方が不自然――いや、いやいや、俺は何を考えている。クロウ教官のくだらない話のせいでくだらないことを考えてしまった。全くくだらない。くだらなすぎる。ハァ、ハァ、くだらない。俺は全く風俗なんか興味ないんだ。くだらない、くだらなすぎる――! 大体そんなのシャルに報告できるか? できないだろ。シャル、ハァ、ハァ、俺は風俗なんていかないんだ。だって、シャルがいるんだから――!)

 

「天之、当たったぞ」

「はっ! や、やったぞ! やっぱりソウリンちゃんは最強なんだ!」

「……」

 

 クロウは呼気荒く目を血走らせる玄咲を見なかったことにして話を続ける。

 

「ああ、あるんだ。お前くらいの年頃の奴ならふつう知ってるんだが、お前変なとこで初心だよな」

「は、はい……」

「……ま、そういうものもこの世界にはある。それだけ覚えとけ。いざというとき、選択肢になる」

「……はい」

「正直俺はもういつそういう関係になってもおかしくないと」

 

 脂汗と弱気がぶわっと湧き出た玄咲の表情を見てこの話題は鬼門だと悟ったクロウは話を打ち切った。クロウはそれ以上その話題を引き摺らず、黙々とハンドルを回し続ける。玄咲もソウリンの活躍を眺めながら、黙々とハンドルを回し、たまにPUSHボタンを押す。恐ろしく気まずい雰囲気。玄咲は気まずさと話題を洗い流すため、クロウに尋ねてみた。

 

「そういえばクロウ先生って、符闘会でもらった賞金どうしたんですか? 大金のはずですよね?」

 

「……闇ギャンブルで、消えた」

 

「えっ」

 

「あぶく銭って感覚だったし、段々感覚マヒしてきてさ、パチンコスロットじゃ満足できなくなって、段々レートが上がっていって、気が付いたらって奴だ。あまり語らせないでくれ。トラウマなんだ……俺にはパチスロ程度のお遊びギャンブルが丁度いいんだって分からされたよ……」

 

 クロウは苦々しそうな表情。本当にトラウマらしい。玄咲はそもそもギャンブルを辞めればいいのにと思いつつもそれ以上何も言わなかった。ただ隣り合ってパチンコを打ち続ける。

 

「お、リーチだ」

「それも強演出ですね」

 

 クロウの台の画面にメタルスーツを纏ったバンコクプレジデントが滑走路を火を噴かして滑りぬけて宙を舞い世界連合軍相手に単独――いや、バンコク無双するリーチムービーが流れる。アメリカンプレジデントが現れバンコクプレジデントとアメリカンプレジデントの一騎打ちの末――。

 

「行け!」

 

【バンコク・アズ・ナンバーワン!】

 

 PUSH!

 

 ドカーン!

 

 ビカビカビカ―ン!

 

「よっしゃ!」

「やりましたね!」

 

 2人して喜ぶ。RUSHに入る。そこそこ継続して9600発分のプラス。玄咲も6000発のプラス。ほくほく顔で二人は景品交換し店を出る。

 

「今日は簡単に勝ったな。小勝ちだが、こういう勝ちが一番精神衛生上いいんだ」

「そうですね。パチンコに汚染されずスパッと気分を切り替えられますしね」

「そうだな。あまりパチンコに嵌り過ぎるなよ。レベルは滅多なことでは下がらないが、あまり怠けすぎると下がったりするからな。俺みたいにはなるな」

「え? 下がるんですか」

「そりゃ下がるさ。レベルだもの」

「……」

 

 また一つゲームとの違いを発揮して玄咲は慄いた。絶対パチンコに嵌り過ぎないようにしようと思った。

 

「それで、お前、これからどうする。俺と一緒にスロットの閉店前データチェックでもするか?」

「――シャルに」

 

 手の中のマネーカードにシャルナの笑顔を重ね合わせ、玄咲は握り込んだ。

 

「シャルに、カップラーメンを買っていきます。プレミア付きの1万マニー以上する奴を」

「……そうか」

 

 なんでそこでカップラーメンなんだ。そう言いたいのをグッと堪えてクロウは玄咲と手を振り別れた。玄咲はゲーム知識を頼りに店を探し当て、そこで予定通りにカップラーメンを買ってラグマに帰った。

 

「あ、玄咲、お帰り!」

 

 校門前でそわそわしているシャルナに勝利の証たるカップラーメンを見せながら歩み寄る。シャルナは輝くような笑顔を浮かべて、受け取るなりその場でくるりと回って、カップラーメンを抱き締めた。そしてその後、

 

「玄咲、ありがと!」

 

 玄咲にも抱き着いた。玄咲も抱き締め返して手を握って寮まで帰る。進展した関係性。ふと、クロウの言葉が脳裏によみがえる。

 

 ――いつそうなってもおかしくない。

 

「……」

「玄咲、どうしたの?」

「ん? いや、なんでもない。ただ――本当に、色々あって、仲良くなったなって、感慨に耽ってた」

「……そう、だね。仲良く、なったね」

 

 沈黙。だけど、そこまで気まずくない。心地よさに変換できるだけの、親しみがあった。

 

「そういえば、今月、まだ玄咲の部屋、行ってないね」

「ああ、バエルとの約束か」

「よし、今日行こっ! それで、これ一緒に食べよっ! 丁度、二つ、あるしさ!」

 

 シャルナがカップヌードルもち麺おしるこ味を掲げて提案する。

 

「そうだな。そうしようか。実はそうなるんじゃないかと思って2つ買ってきた。というか2つしかなかったんだけどな」

「うん! いこ、いこ!」

 

 シャルナの無邪気な笑顔には裏の意味なんて籠っていない。きっと今夜もなんて事のない一日を過ごすのだろうと思った。

 

(……ま、当分、いや、一生、それでもいいか)

 

 シャルナと一緒に入れるだけで幸せだから。思いつつ、玄咲は心を弾ませながら、シャルナと2人で寮の自室へと帰った。そしてカップラーメンもち麺おしるこ味を一緒に食べる。

 

「この麺、もちもちして、面白いね。むに、むに……うん。美味しい」

「この黒いスープも甘くて美味しいよ。まるで麵型のもちを入れたおしるこだ」

「そだね。もっと売れても、良かったのに」

「高いってのはそもそも買われないってことなんだよ」

「もの売るって、難しいね。……あのさ、3人で食べると、美味しいね」

「……その割には無視されてるような気がするんだけど。せっかくまたカードを改造して簡易召喚機能を拡張したのに……」

「バエル。ちょっと食べないか。今召喚するよ」

「! うん! 玄咲! 愛してるわ!」

「……ま、いいか」

 

 ポイントで買ったコタツに入りながらの3人――いや、4人での幸せな食事。おしるこの再現度に拘るあまり1000マニーと値段設定を高くし過ぎて売れなかった商品だが、クオリティもしっかり値段相応。麺型のもちの入ったおしるこを食べているかのような不思議な味わいに4人は夢中になった。バエルも最近、非常に明るくなった。嬉しそうにもち麺を啜る姿が、本当に年相応の少女のようで、玄咲はたまらなく愛おしかった。シャルナとバエルの関係も最近は大分改善した。仲良く談笑する姿さえ見られるようになった。

 

 その後はバエルもシーマも交えて一緒に遊んで、明日の相談をして、雑談して、そして最後は二人で一緒に寝て、特に何事もなく朝を迎えた。そういう関係になる日は来るとしてもまだまだ先のようだった。

 

 何てことのない、それでも幸せな一日だった。

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