カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第6話 ダンジョン第1層

「キシャ―――!」

 

 醜悪な全身緑色の化け物が体躯相当の小さな棍棒を振りかかり襲い掛かってくる。玄咲は魔法も使わず蹴とばして殺した。足の甲で頭を蹴りもいだ。洞窟の壁にゴブリンの頭が跳ねて転がる。

 

「ダーク・スラッシュ!」

 

「ギョエッ!」

 

 シャルナがエンジェリック・ダガーを振るう。ゴブリンの首が飛ぶ。壁に跳ね返って足元に転がったゴブリンの首を見下ろし、シャルナが首を捻る。

 

「……カードバトルと比べると、物足りない」

 

「そりゃレベルが違い過ぎるからな……それに、単純な能力差以上に魔物は戦い方が単純だ。一点メタカードまで飛び出してくるカードバトルに比べたら物足りなく感じて当たり前だ」

 

「うん。そうだね」

 

「……」

 

 顎に手を当て真剣な表情で玄咲とシャルナを見つめる真央に心亜が尋ねる。

 

「強い、ですね。動きも、魔法の威力も」

 

「うん。そうだね……ねぇ、男の子の方」

 

「はい」

 

「今度はカード魔法使ってみてよ。丁度いい的が飛んできたからさ」

 

「分かりました」

 

 いい的――通路の角から飛来してきた3体の蝙蝠型モンスターバンバンバットへと玄咲はシュヴァルツ・ブリンガーの銃口を向ける。

 

「ダーク・バレット。ダーク・バレット。ダーク・バレット」

 

「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

「ウガァアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

「ギャバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!」

 

 バンバンバットは遠距離攻撃で倒すと激しい悲鳴を上げて絶命する。その鳴き声は他のモンスターを呼び寄せる。

 

「キルキル! キルキル!」

 

「ゴロロロロ!」

 

「ゴブゴブ!」

 

 キルキル・カマキリ。ホイール・ローチ。ゴキブリン。洞窟という環境、そして歩行の素早さにより虫型モンスターが殺到する。真央が命じる。

 

「さ、掃討よろしくねー」

 

「……玄咲。気持ち悪い」

 

「たかが虫だ。蹴散らすぞ」

 

「……うん」

 

 2人は苦戦しなかった。シャルナのレベルが1上がった。

 

 

 

 

「うぅ……」

 

「ま、1層の敵だから苦戦はしないよな」

 

「そうだね……苦戦はしないね……」

 

「……」

 

 2人の戦いぶりを見てい真央は戦闘終了後感嘆の息を吐いた。

 

「んー……もう心亜よりは強いんじゃない?」

 

「……はい。多分現時点でも既に。クラス対抗ストラテジーウォーで優勝しただけのことはあります。流石に生徒会長やルディラ程ではありませんが、逸材です……!」

 

「だよね。これは、凄く面白そうな子たちが入ってきたにゃー……! グッド! ベリーグ―!」

 

 真央が2人に近づき親指を立てる。

 

「強さは申し分なし! というか君の体捌き凄すぎない? 私が教わりたいくらいなんだけど」

 

「恐縮です」

 

「というか今度教えてよー。ラグナロク学園は高め合いが基本。上下関係なんて基本気にしないでいいからね」

 

「あ、はい」

 

「そっちの女の子はまだ気分悪そうだね。男の子よりはメンタル弱そう。虫なんて食うくらいの気持ちでいないとだめだよ」

 

「く、食う……!?」

 

「シャル。虫は食べ物だぞ」

 

「玄咲っ!?」

 

「もちろん望んで食いたくはないが調理くらいできる」

 

「……」

 

 シャルナは玄咲にちょっと引いた。

 

「ダンジョンの探索は少し慣れてない感じがあるけど、サバイバルの経験はあるみたいだね。君ならすぐににゃれそう。よし! これからは私が先導するよ! よーく見てなよ1年生!」

 

「はい」

 

「は、はい」

 

 玄咲とシャルナに代わって真央と心亜が先頭に出る。

 

 

 

 

 

「アース・クロー!」

 

 その手にクロー型のADを装着した真央が天井を、床を、地面を蹴り、3次元軌道でモンスターの群れの周りを駆け巡る。ほぼ同時に、各々異なる箇所から傷を吹き出し絶命した。真央がモンスターの死体に近づき解説する。

 

「モンスターには急所がある。ちゃんと調べて、相手の急所を狙うことが対モンスター戦では大事。見て。全員違う所傷つけてるでしょ?」

 

「あ、はい」

 

「本当だ。凄い。一瞬で、狙ってたんだ」

 

「ダンジョン攻略においては知識も武器になる。潜る階層のモンスターは事前にギルドに置いてるモンスターズ図鑑で調べとくといいよ。例えば」

 

 真央が地面に転がる蟻型モンスターの死体を指さす。

 

「この死体、腹の部分をくりぬいてるでしょ。死ぬ前にくりぬいたんだ。蟻型モンスターは死ぬ際に腹の内のフェロモン袋を破裂させてその匂いで仲間を呼ぶからね。生きてるうちにくり抜いた。高火力カードで匂いごと滅却って手もあるけどちょっと魔力が勿体ないよね」

 

「はい」

 

「メモ、メモ……」

 

「ダンジョンって長期戦なんだ。だから魔力管理は凄く大事。なるべく階層に応じた適切なランクのカードを使うこと。魔力燃費の良いカードをなるべく使うこと」

 

「はい」

 

「魔力、燃費……」

 

「そして一番大事なことは、最低でもエスケープカードを使用する分の魔力は必ず取っておくこと、でないと本当に命を失うからこれは絶対守ってね。数少ないうちの決まり事だよ」

 

「はい!」

 

「命は投げ捨てるもの、じゃない……」

 

 シャルナはメモしながら歩いている。エンジェリック・ダガーは握りつつもその視線はメモ帳に落とされている。真央を信頼している。それだけ、真央のダンジョン探索の腕前は素人目にも分かるほど練達していた。玄咲も少し驚いている。

 

(こんなにしっかり教えてくれるとは思わなかった)

 

「張り切ってますね。部長」

 

「ん? そりゃ、初めての部下――いや、後輩だからね。いいところも見せたくなるのさ」

 

(あ、部下感覚だったんだ)

 

「部下ではありません」

 

「う、うん。分かってる。分かってる――っとストップ」

 

 真央が立ち止まる。そして、床の一点を指さして、

 

「あそこさ、ちょっと色が違うの分かる?」

 

「あ、はい」

 

「違う、ね」

 

「心亜。あそこに適当な魔法放って」

 

「はい。グラビティ・ボール!」

 

 真央が指さした地面に心亜がADを向けて魔法弾を放った。着弾した地面に加圧がかかる。

 

 途端、天井に正方形の穴が開き魔法の矢が降り注いだ。魔法弾が着弾した地面に小型の穴が無数に空く。自慢げに胸を張る

 

「トラップには気を付けてね。魔物との戦闘中に踏むと致命傷になるから」

 

「何で、分かったんですか?」

 

「地面の色が少し違った。天井、壁の色が違ったり、歪に窪んでいたりもするね。ま、でも、違和感があったら見逃さないで」

 

「違和感、ですか……」

 

「うん。違和感を感じたら勘を働かせるんだよ。決め手は勘。私は勘が働くからさ、最初の数回くらいしかトラップにかかったことないんだよねー。凄いでしょ?」

 

「はい。凄いです。ね? 玄咲。凄い、ね」

 

「ああ、凄いな。でも、違和感か。確かに、あった。なるほど、あの感覚がトラップか……」

 

「――」

 

 真央の眼が丸く見開かれる。頭上の耳がピクン、と揺れた。

 

 

 

 

 第五階層。

 

「――止まってください」

 

「……OK」

 

 先頭を歩く真央が玄咲に従う。玄咲は無言で先の通路にADを向けた。

 

「ダーク・バレット」

 

 バキュン!

 

 ジャアアアアアアアアアアアアア!

 

 頭上から魔法で出来た熱湯が降り注いだ。真央が手を叩く。

 

「凄いね。もうコツを掴んだんだ」

 

「はい。危険感知は得意なんです」

 

「んー、本当優秀だにゃあ。もう対等に潜れるレベルだよ」

 

「いえ。まだです。まだまだ分からないことだらけです。だからとにかく、今日は真央先輩の吸収に注力します。やはり、真央先輩は最高の先達でした。凄く、しっくりくる」

 

「……そっか! ま、私に何でも聞き給えよ新入生くん! 何でも答えてあげるから! にゃははー!」

 

 真央は機嫌を良くして笑う。心亜も微笑んだ。

 

「……凄く機嫌がいい。上手く教えられてる自覚からかしら。内心、結構不安だったのかしらね」

 

「?」

 

 何が不安なんだろう、とでもいうようにシャルナは首を傾げた。

 




ややテンポが悪いので明日も投稿。
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