カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
「真央。ダンジョン・ハンターズに戻ってくるんだ。僕が必ず君を輝かせる」
「大きなお世話だよ。もう私に関わらないでくれるかな。ケビン」
「それは無理だよ。僕は君が戻ってくるまで君の説得を続けるつもりだよ」
「気持ち悪いからやめてくれないかにゃー……本気で」
ケビンは切なげに瞳を細めた。ケビンはアメリカンモデルのような金髪イケメンだ。たくましい顔と体をしている。ガチムチだ。だが、どこか少年のような憧憬をその顔に宿している。だから切なげな顔をすると耽美が宿る。だが、その耽美に感じ入る感性の持ち主は今この場に一人もいなかった。ダンジョン・ハンターズだったら男女問わず歓声が上がっていることだろう。
ケビンが切ない顔のまま真央を見つめる。真央は嫌そうに顔を背けた。
「真央……どうしても戻ってくる気はないんだな」
「しつこいにゃー……私は私の作ったダンジョン・サバイヴァーズで楽しくやってるから戻ってくる気はないって」
「楽しくやるだけじゃ駄目だ。真央。苦しみから逃げる限り君に成長はないよ。僕はそんな君を見たくない。僕の指導の下もっと苦しむ君が見たいんだよ……そして、苦しみを乗り越えた先の景色を知って欲しいんだよォ……真央……」
ケビンは胸に手を当てて今日一切ない表情で真央に訴えた。真央は鳥肌の立った両腕を抑えて玄咲の後ろに隠れた。頼られた玄咲の心臓が跳ねる。やる気を出す。
「新入生! ケビンを追い払うにゃ!」
「はい」
「玄咲?」
玄咲は進み出てケビンと相対した。ケビンの表情から切なさが減る。
「僕は真央の今後に関わる大事な話をしている。下がり給え1年生」
「真央先輩は嫌がっている。下がるのはあなただ。ケビン・レイナード」
玄咲は目にパワーを込めて威圧した。ケビンは表情から切なさを消した。
「……君、名前は」
「天之玄咲」
「そうか。君がか。……真央の指導はどうだい」
「最高です」
「もっと具体的に」
「しっくりきます」
「もっと具体的に」
「参考になります」
「……なるほど。言葉に出来ないほど稚拙だったのを何とか庇っている。そう言う訳か」
「違います」
「やはり真央に部長なんて務まるはずなかったんだ。真央。戻ってきなさい。君たちもだ。まとめて僕が面倒を見てあげよう。悪いようにはしないよ……彼女には指導の才能がないんだ」
「むっか〜〜〜〜!」
ビキビキ!
切れた真央が前に出た。
「やいケビン! 1年生は私の指導が完璧だったって言ってるだろ! 私は何だってやればできる子なんだよ! それをあんたに証明してやる!」
真央がケビンに指を突きつける。
「1週間後、ダンジョンアタックで勝負だ! 1年生同士で競わせて勝ったほうが指導力が上! 自明の理だ!」
「ね、ダンジョンアタックって、何?」
「要するにただのタイムアタックだ」
「そっか」
玄咲の返答にシャルナが微笑む。ケビンはため息をつき、緩く首を振って切ない顔で真央を諭す。
「……そういう所だ。1年生は私達の私闘の道具じゃない。そのような発言が出る時点で君は指導者の器じゃない」
「うっ!」
「いえ、やりましょう先輩」
玄咲が張り切る。ゲーム通りの展開。ならば遂行しなければいけない。そういう考えが根底にある。まだちょっとゲーム知識に囚われている。
「俺は平気です。先輩の指導力を見せつけてください」
「こ、後輩……!」
「……君には悪いが私には乗る気は」
「いえ。ケビン部長。僕が出ます。僕が彼とやります。やりたいんです。やらせてください」
リュートが進み出て参加を申し出る
「君か。……彼と、因縁でもあるのか」
「はい。僕は何だって彼に勝ちたいんです。この機会、逃したくない」
「……」
ケビンは少し考えてから頷いた。
「この戦い、君の成長に繋がりそうだ。ならばやる価値がある。真央、前言撤回だ。受けて立つ」
「……ああ。やろう。この勝負、私が勝ったらもう私に付き纏うのは諦めて貰うからね」
「ならば、私達が勝ったらダンジョン・サバイヴァーズはダンジョン・ハンターズに併合させてもらう。真央。君は私が導く。君の穴を僕が埋めて見せる」
「ね、玄咲。これ、私も、参加する、流れだよね?」
「うっ! ……すまない。正直、無意識に頭数に数えていた」
「いいよ。私は、何だって、玄咲に、ついてくから」
「シャル……!」
玄咲はシャルナを一瞬本物の天使に幻視した。
「よし! 話は決まったにゃ! ケビン! お前との縁をこれで永遠に断ち切ってやる!」
「っ!」
ケビンは本日最大の切ない顔をした。
「……それでは、また1週間後。私の元に来るのを楽しみにしてる、真央。2人とも、行くぞ」
「ねぇリュート。これって私も参加するの?」
「当たり前だろ。艱難辛苦には血汗塗れの笑顔で立ち向かうんだよ」
「……あなたちょっとケビン部長に通ずる所があるわよね」
「そ、そうかな。照れるな…」
「ええ……」
3人はボス部屋を出てすぐの所にある転移魔法陣から帰還した。真央は3人に笑顔で告げる。
「よし! 私達も帰ろっか! 大丈夫! 君たちの腕なら勝ったも同然! 1週間後にはあいつの吠え面が――」
「はっ! 真、真央。我に返った今ようやく気付いたのですが……」
「何? 心亜?」
「ダンジョンアタックって4人パーティで行う競技じゃないですか。あと2人1年生集めないとそもそも勝負すらできませんよ……!」
真央の笑顔がピシリと凍った。