カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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精神の安定と推敲時間の確保のためやはり隔日投稿で行きます。申し訳ありません。


第11話 グルグルとAD談義

「クゥゲットだ」

 

「やったね。クゥちゃんがいれば、心強い。次はどうする?」

 

「もちろんコスモちゃんだ。グルグル工房に向かおう。あそこが一番いる確率が高い」

 

「グルグルにも、会えるね」

 

 2人は次はグルグル工房に向かう。

 

 

 

 

 

 

「もちろんOKです! コスモ、天之玄咲と同じパーティ―に入ります!」

 

 予想通りグルグル工房にいたコスモは玄咲の頼みに2つ返事で了承した。これで4人パーティーが組める。戦力的にも交友関係的にも申し分のない2人の勧誘に成功して玄咲は安堵した。

 

「ただし、無条件にとはいきません。古来よりタダより怖いものはないといいますからね。しっかり対価は頂きます。コスモは天之玄咲に怖い思いをさせたくないのです」

 

「?? あ、ああ。当然の判断だ。もちろん俺に出来ることなら何でもするよ。何でも言ってくれ。」

 

 人差し指を立てながらのコスモの要求に玄咲は二つ返事で答えた。コスモの目がキラーンと光った。

 

「ん? 今、何でもするって言いましたね? では早速――」

 

「え? こ、コスモちゃん――?」

 

 

 

 

 

 

 

「ときめきエネルギー満タン! コスモは満足です! サティスファクションです! では、コスモはこれからお花摘みに行ってくるので!」

 

 顔がテカテカになったコスモが玄咲たちに手を振りグルグル工房を出ていった。地に倒れ伏し気絶する玄咲にシャルナが近づく。

 

「こ、コスモ、たん。凄い、凄いよ……」

 

「せい!」

 

「うっ!?」

 

 首に手刀。玄咲は跳ね起きる。周囲を見渡し、言った。

 

「俺の女神がいない」

 

「せい!」

 

「うっ!! ……シャル、おはよう」

 

「おはよう。」

 

「よく止めなかったな」

 

「交換条件、だもん」

 

「そうか」

 

 コスモの柔肉の感触をまだ肌に思い出している玄咲にシャルナが淡々と告げる。

 

「トイレ、行っちゃったね」

 

「違うぞ。お花を摘みに行ったんだ」

 

「え?」

 

 グルグルが補足する。

 

「コスモちゃんはコスモスの花が主食なんだよ。美味しい上に微量のときめきエネルギーを摂取できるらしいよ」

 

「……コスモちゃんって、本当、変わってるなぁ」

 

 それがこの場の総意だった。コスモは変わっていた。

 

 だが、強い。何だかんだありつつもコスモの助力を取り付けた玄咲は安堵した。

 

 

 

 

 

 その後、2人はグルグルと少し雑談をした。

 

「お兄さんたち、そう言えばさ、改造したADの調子はどう? 150万ポイントかけて補正値100に上げて新しいギミックも搭載したけどレスポンスとか悪くなってない?」

 

「バッチグー。パーペキ。流石グルグル。天才」

 

「何でだろ。補正値以上にグルグルのADは使いやすいし強力な気がするんだよな」

 

「補正値って結構無理やり数値化してる所があるんだよ。僕は細かいところで最適化を行っているから最終的な出力は補正値10くらい上乗せされてるんじゃないかな。レスポンスも通常よりいいはずだよ」

 

「えっ。そうなのか?」

 

「うん。実感したことない?」

 

「……いや、言語化できないだけでなんか強いなって思ってた。なるほど……補正値と属性適応とギミックだけがADの全てじゃないんだな」

 

 チープなスペックかつデジタルゆえ単純な数字の多寡でしかADの性能を表せなかったゲームのADとの違いを玄咲はまた一つ実感した。グルグルが深々と頷き補足する。

 

「うん。武器種によって相性のいい魔法は違うし、形状やパーツによっても差異が出てくる。凄く複雑なんだよ。だから近代に補正値や適応属性という基準を設けて分かりやすくしたんだ。ちょっと簡略化し過ぎたけど、指標として優れているのは確かかな」

 

「近代に?」

 

 シャルナが首を傾げる。グルグルは頷いた。

 

「うん。古代ADに古代カードと言ってね、昔はADやカードにランクや補正値がなかったの。知ってる? 補正値1やランク1未満の補正値0、ランク0とでもいうべきカードを昔は大真面目に運用していたんだよ」

 

「へー……」

 

「近代の再編の際に弱すぎるカードやADも残す価値がない……と当時の人は判断した。だから、それらは全て不必要なものとされて歴史からほぼ葬られちゃったんだ。ついでに何かを犠牲にして出力を上げるような今では製造を禁止されている類の禁止カードも一緒にね。今のカードやADは低ランク、低補正値でも昔の基準からしたら破格なまでに強いんだ。実感としては飲み込みづらいけどね」

 

「ああ。正直しっくりこない。雑魚というイメージが染みついてる」

 

「それも正常な感覚。実際今基準では雑魚だから。でもそんなADやカードも昔――例えば王魔戦線時代とかに持っていけば上等な部類に入る。現代の水準は正直異常なんだ」

 

「……ラグナロク・ウォーで自らを滅ぼしかけるくらいだもんな」

 

「そだねー……とにかく現代のカードやADは強力って話。でも、古代にも勇者ADやカードみたいないわゆるオーパーツ的な強力なADやカードが……」

 

 ――グルグルのヒートアップしたAD・カード談義はそれからしばらく続いた。2人はたまについていけなくなりながらも興味深く聞いた。それから20分の時が経ち――。

 

「――ところでさ、お兄さん」

 

 グルグルが珍しく少し不安げに尋ねる。

 

「そのー……この前、ジャンク改造したじゃん? その後、どうだった?」

 

「ばっちりだよ。何の問題もない。ちょっと待っててくれ。武装解放――シュヴァルツ・ブリンガー」

 

 玄咲の手中にシュヴァルツ・ブリンガーが顕現する。その銃身の両サイドには翼を象った小さなパーツが新たに追加されていた。だが、今は折り畳まれている。

 

 ジャンク改造はグルグルがこれはと見込んだジャンク品を再利用したパーツを換装してADを強化する改造方法だ。ゲームでは単純な補正値の増加でしかその効果は表せられなかったが、この世界ではどうやら違うらしい。

 

「ギミック発動時にはこの翼が広がって補助輪の役割を果たすんだよな。正直もっとゴテゴテしたゴミみたいな見た目のパーツがついてくると思った」

 

「そんなものつけたら使いづらくなるじゃん。実験品ならともかく本作成品で機能性を損なうパーツはつけないよ」

 

「……まぁ、そりゃそうか」

 

「デザインも悪くなるしね。シュヴァルツ・ブリンガーとエンジェリック・ダガーは僕にとっても特別なADだからデザインにもなるべくこだわっていきたいんだ」

 

「うん。私も凄く気に入ってる。だから、なるべくは、拘って欲しい」

 

 ADのデザインは直接には性能に関わってこない。だが、やはり感情的にはデザインにこだわりたくなるし、何よりテンションやモチベーションが上がる。それは案外、無視しかねる心理作用だった。

 

「えっとね……シャルナちゃんのジャンク改造のアイデアは正直まだ思いついてない。ごめんね。いいジャンク品が見つからなくて……」

 

「いいよ。待つ」

 

「うん。必ずばっちりなジャンク品見つけてくるよ! ちょっとギャンブル性あるからいついつとは言えないんだけどね……」

 

 グルグルは頬を掻いて笑う。だが、2人は全く心配していなかった。グルグルの腕前、そしてジャンク改造によりシュヴァルツ・ブリンガーに加わった新たなギミックのその力を既に目の当たりにし、心配など吹き飛ばされていた。

 

 シュヴァルツ・ブリンガーの両脇の翼を見つめながら、玄咲はそのグリップを握りしめた。

 

「レインボー・ドライブ――虹色の魔力を研究して作った新たなギミック。これは俺の切り札になる」

 

「うん。凄かった……」

 

「んふふ。そうでしょ。でも、まだ発展途上。まだまだ進化の余地がある。当分はレインボー・ドライブの強化がシュヴァルツ・ブリンガーへの僕なりの課題になるから――ふふ、楽しみ」

 

 グルグルはいつものように明るい、そして頼もしい笑みを見せて、当たり前のように言った。

 

「その内研究が進んだらまた改造するね。もっともっと出力上げれるはずだよ。レインボー・ドライブは。正直今はまだ僕的には未完成品。でも、必ず完成させてみせるね!」

 

「ああ。期待してる」

 

「……ちょっとだけ本音を語るね。今回のジャンク改造はちょっと不安だったんだよ。何もかも未知だったから。でも試さずにはいられなくて、お兄さんを実験体みたいにしちゃってごめんね……」

 

 グルグルが殊勝な顔で言う。玄咲は強く頷き返した。

 

「いいよ。俺達はグルグルを信頼している」

 

「……ぐすん」

 

 グルグルが目元を拭い、そしてその顔に笑顔を浮かべて言った。

 

「うん、ありがと。僕、本当にお兄さんたちに会えて良かったよ」

 

 

 

 

 

「次は、どうする?」

 

「もう遅いし真央先輩に報告してバトルルームに寄ってカードバトルして今日は帰ろうか」

 

「分かった」

 

 2人の1日は終了した。

 

 

 

 

 

 ダンジョン・ハンターズ

 

「司、何で君がここに」

 

「へへ。リュートォ……面白そうなこと黙ってしてんなよ……おいお前らァ!」

 

 炎条司はダンジョン・ハンターズの面々を振り返り、傲慢なまでに不敵な笑顔で言い放った。

 

「残りの2枠、俺が1枠いただくぜ。文句のある奴ァいねぇよなァ!」

 

「……力を」

 

 ケビンは突然の事態にも一切動じず応じた。

 

「力を示し給え。話はそれからだ。炎条司くん」

 

 司は口角を上げ獰猛に笑った。ケビンが司の胸に手を当て切なげに目を細める。歌い上げるようなハスキーボイス。

 

「……いい顔をしてるね。私好みだ。育て甲斐があるよォ……」

 

「……」

 

 司は笑んだまま冷や汗を流す。

 

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