カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
第20階
ボス部屋前。
「あっという間にたどり着いたな」
「うん。全く、苦戦しなかったね」
「……そういえばシャル。道中何かしたか」
「モンスターを3匹倒した」
「そ、そうか……」
「3匹倒した」
「う、うん。十分な戦果だ。大丈夫。シャルがやればできる子だって俺は知ってる」
「やればできるよ、私は」
「この辺は雑魚ばっかだからねー。シャルナちゃんが戦うまでもなかった。それだけの話だよ。あまり気にしなくていいかにゃー。シャルナちゃんはダンジョン探索の経験浅そうだし、これから慣れていけばいいってー」
「! はい!」
シャルナは真央のフォローに勢いよく頷いた。そういう言葉が欲しかった。そんな反応だ。真央は笑顔で頷き、全員に語り掛ける。
「これからボス戦な訳だけど、私と心亜は見学に回るから。大丈夫大丈夫。君たちなら余裕だよ。早く第3層へのワープゲート解放しちゃお」
20階層のボスはデスコブラだった。体長10メートル。毒々しい赤と紫の斑色。
「フシュルルル……」
鋭い呼気が威圧感を生む。4人は身構えた。デスコブラが動く。
「ジャアッ!」
長い長い尾を翻し一瞬で玄咲たちへと届かせる。コスモが前に出た。
「アームズ・エイド!」
コスモのデストロイ・アームが黄色い光に包まれる。腕力を強化する魔法だ。コスモは当たり前のようにデスコブラの尾を受け止め、そして背負い投げた。尻尾一本背負いだ。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
「ギャッ!」
遠心力で伸びきったデスコブラの頭部をコスモは思い切り地面に打ち付けた。大地が揺れる。デスコブラはふらつき体を起こし、頭部を玄咲たちに向ける。クゥが引き金を引いた。
「フュージョン・マジック
「ギャヒッ!」
クゥの放ったエメラルド色の魔力弾がデスコブラの眼球を貫き頭蓋に侵入し脳を破壊し頭部を爆散させる。デスコブラは死んだ。あっという間だった。クゥとコスモがハイタッチする。
「イェイ」
「楽勝でしたね」
「玄咲。私たち、何もしてないね」
「……そうだな」
2人への頼もしさと自分への情けなさが同時に来る。クゥとコスモは強かった。そして相性も抜群だった。明確な強みがあり、互いに互いを補完し合う。ゲームでもお手軽に仲間になって最後まで使えるこの2人は鉄板パーティメンバーだった。何かと交流の機会も多いので愛着も湧きやすく、性能では最上位キャラに一歩劣るものの最後まで使い続けるプレイヤーも多かった。玄咲も初期から符闘会まで何度も使い続けた。
伊達に特待生はやっていない。
(ルディラ先輩や明麗先輩の方が強いんだが仲間って強さで切り捨てるものじゃないもんな。愛着。それが一番大事だ。味方になると弱いアルルだって磨けば符闘会で戦えるようになるんだから。……いや、この思考冷静に考えると凄く失礼だな……)
玄咲が一人で勝手に懊悩している間にも真央がクゥとコスモに駆け寄りその肩を抱いてはしゃぐ。
「凄いよ二人とも―! 2人で瞬殺しちゃうなんて! 玄咲くんとシャルナちゃんも凄かったけど負けず劣らずだ! 今年の1年生は本当凄いなー……」
「ええ。本当に凄いですね。ルディラしかいない私たちの年代とは大違いですね」
ルディラ。その言葉を聞いて玄咲は反射的にゲーム中最強キャラの一人であるルディラ・メルキュールの情報を脳裏に思い浮かべる。
(ルディラ・メルキュール。ミス・ラグナロク。絶世の美貌と学園長に次ぐ魔力を持つ才媛の貴族嬢。明麗先輩と並ぶゲーム中最強キャラの一人で攻略最難関キャラ。そういえばまだ会ったことないな。いつか、合う時も来るんだろうな……普通に嫌われるかもな。何せ気難しい人だから)
「そんじゃ、帰還しようか! 部室でレアピッグを焼いて食おう! ご飯は常備してあるよ!」
「あ、はい」
玄咲はそこで思考を打ち切り、真央に従って帰還した。
「っと、ちゃんとストレージカードに保存したモンスターを会計しないとね」
「合計1万2387ポイントとなります」
「……」
ストレージカードを読み込むためのレジスター・リード・デバイスに表示された数字を見てクゥが呟いた。
「ボス倒したのに、しょっぱい」
「コスモは5393ポイントでした……コスモがゴミクズだとでも……?」
「回収した魔物のポイント交換は基本低レートだからねー。ダンジョンばっか潜られても学園としては困るからさー」
「なるほどなー……とコスモはコスモは納得を示します」
「この子変わってますね……」
学園ギルド。
受付カウンター。
討伐したモンスターはカウンターに置かれたリード・デバイスにストレージカードを差し込み計量し、モンスターに応じたポイントを獲得できる。ポイント内訳もリード・デバイスに表示されている。また、ポイントにせず素材や食料として保管することも可能。ダンジョンから学園ギルドに帰還した玄咲たちは当然受付カウンターで回収したモンスターのポイント変換を行い、その最中でのクゥの発言だった。
「私300ポイント……前回は5648ポイントだったのに……」
「えっと、俺の番か。いくらかな……」
「300ポイント。少ないね」
「え? あ、うん。いくらかな……」
6666ポイント。
「分かってたけどしょっぱい……。ゾロ目なのは縁起がいいのか悪いのか。とりあえず交換――」
「あ、後輩くん忘れてる。すいませーん。ギルドのお姉さん。このレアピッグだけ除外で」
「はい。かしこまりました」
3666ポイント。
「あ、3000ポイント減った……まぁ誤差だしいいや」
ギルド嬢がストレージカードからレアピッグを取り出し袋に包んで渡してくる。
「こちらレアピッグの死体になります。袋に包んで置きました」
「んにゃ。ありがとございます」
ギルド嬢から受け取ったレアピッグが収まった血の滲む袋を手に提げた真央が玄咲に確認する。
「これ、みんなで食べていい? 勝手に引き出しといてなんだけど後輩くんがポイントにしたいならそれでもいいよ。まだ手続きできるから」
「いいですよ。俺も食べてみたい。食べましょう」
「うん! じゃ、これ――」
真央がレアピッグの収まった食料袋を顔の前に吊り下げて満面の笑顔で言った。
「みんなで食べようか! もちろん私が調理するよ!」
「ふぇんはく! ほいひい!」
「こ、これは、滲み出る肉汁が七色に光って、まるで
「コスモスより美味しいです!」
「肉はやっぱりいいね……!」
「私の調理もいいんだよ。そこ忘れちゃ駄目だからね」
「流石です! 真央の調理は最高です! はふっ、はふっ」
その日、6人で安っぽいテーブルを囲んで食べたレアピッグの超大ぶりサのイコロステーキは玄咲の生涯でもトップクラスに美味しい食事となった。