カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
ダンジョンアタック当日。
ざわ、ざわ……。
巨大な空間には学年問わず多くの生徒が集まっている。ダンジョンアタックの見物だ。玄咲とシャルナが学園ギルドに立ち入った途端、ギルド中の視線が2人に突き刺さった。
「人、多いね」
「ダンジョンアタックは配信されるからな。それに対決するのは1年生の中でもトップクラスの生徒ばかり。ダンジョンアタックは認可されるのは結構厳しいからな。人が集まるのも道理だ」
「にしては、みんな、ダンジョンアタックが、開催される前提で、話進めてたね」
「……そうだな。きっと、それだけ興奮してたんだよ……」
2人でギルド内を歩いていると視線が突き刺さる。
「おい、来たぜ。今夜の主役の一人だ」
「へぇ、あいつが今年一番目立ってる1年生か……」
「へへ。イケメンじゃねぇか。それに強そうだ。嫌いじゃねぇ。へへ……」
「ちょっと隣の子目茶苦茶可愛いじゃない! ミスラグナロク……は2年後じゃないと無理か。でも、食べたいわぁ……」
(……注目されてるな。3年生が混じってるからか? 悪寒がする。ラグナロク学園を生き延びてきただけのことはある、か……)
「気が引き締まる、ね」
「ああ。流石ラグナロク学園だな。こちらを値踏みする目だ。下手な所は見せられないな」
2人の全身に緊張感が満ちる。この戦いは人の視線との戦いでもあるらしい。ラグナロク学園は世界中から集まる超大観衆の中開催される符闘会を意識してか衆目を意識させた戦いをよく行う。
(……あれで、配信されるのか)
ギルドの壁面には巨大なモニターがある。あのモニターでこれから玄咲たちのダンジョンアタックの様子が配信される。否が応でも晒される。2人がいつも以上に気を張りながら歩いていると、
「あ、天之くん!」
「! キララ!」
後ろからキララが声をかけてきた。隣には雫もいる。入学直後から共に戦う機会が多かった2人は同性な事も手伝いいつの間にかすっかり友人関係になっていた。
「キララたちは見学にきたのか?」
「うん。ダンジョンって知識はあるけど潜入の実体験に乏しいからさ、1年の中じゃ最上位の生徒の配信は参考になるかなっーて」
「そ、そうか。なるほど」
「七王霊家だけあって相手の方が評判はいいけど、もちろん天之くんたちが勝つ方に懸け――」
一瞬沈黙が生まれた。全員何もなかったことにして話を再開した。
「もちろん天之くんたちを応援してるよ! 勝つって信じてる!」
「……私も一応応援してるよ。同じクラスの仲だしね」
「あ、ああ……応援は素直に嬉しいよ。必ず勝つ」
「うん。勝ってくる」
気負いのない発言。玄咲のみならずシャルナも全く気後れしていない。キララはいつものように二人に微笑みを返す。その笑みは、1か月前よりどことなく柔らかくなったように玄咲には感じられた。一瞬変な発言が聞こえはしたが。
その後しばらく4人で話していると、一人孤立していた赤髪の男が玄咲に話しかけてくる。
「天之」
「なんだ狂夜くん」
「……せいぜい頑張ることだ」
「ありがとう」
「……それだけだ。じゃあな」
狂夜は去っていった。短い会話だった。
「あいつってさ、基本コミュ障だよね」
「違うぞキララ。彼は孤高なんだ」
「その、玄咲。私も」
「孤高なんだ」
「あ、うん」
玄咲にもゆずれない想いがある。狂夜に憧れた幼少期の想いもその一つだ。去り行く狂夜が一瞬体を震わせた。そしてその後も、何事もなかったかのように歩みを再開した。
「それじゃ、私たちもそろそろ席確保しなきゃ。じゃね」
キララが手を振って離れて行く。手を振り返す玄咲の袖をシャルナが引く。
「玄咲。この世界の文明って、妙にちぐはぐだよね。発展してる所とそうでない所の差が凄いというか」
「……そうだな。変な世界だ。だから大好きなんだ。それじゃそろそろ俺たちも」
「へへっ。級長。応援してます」
「あ、うん。ありがとう。行こうか。シャル」
「うん!」
2人は学園ギルドの選手控室へと向かった。
「お、来たね」
控室に入った玄咲たちに真央が声をかける。隣には心亜。クゥとコスモはまだ来ていない。
「来たな。天之玄咲」
リュートが嬉しそうに笑む。左隣にはケビン。右隣にはアカネ、司、マルタがいる。玄咲は司に声をかけた。
「なぜ、そっちに」
「あ? お前の泣きっ面が見てぇから」
「そうか」
「ってのは本音の50%で」
冗談ではないらしい。司がリュートを指差す。
「敵を知り己を知ればなんたらっていうだろ。たまには別角度でこいつの分析でもしようと思ってな」
「なるほど」
「ついでにマルタを誘った。強いからな」
「強いの」
神鐘マルタ――クラス対抗ストラテジーウォーでC組を苦しめた女生徒が頷く。小柄な体躯に反して大きな胸が最大の特徴。毛量のある黒髪を白く丸い団子状の2つの髪留めで左右に分けている。小顔。童顔。だが瞳はパチクリと大きい。余裕で美少女だ。やや吊り目がちな目に少女らしい複雑なエモーションを感じさせる。
(サブキャラだから謎の多い子なんだよな。ルディラ先輩程ではないが高い魔力によるゴリ押しがシンプルに強かったっけ。しかし、ロリ巨乳で可愛いから人気は高く12位。神楽坂アカネより5位上だ。まぁ可愛いからな。当然だよな)
「なんか見下されてる気がするの。お前不快なの」
「!?」
「ははは! 初見で嫌われてやんの!」
シャルナが笑顔で玄咲を慰める一幕を挟んだあと、リュートが玄咲に話しかける。
「ところでそっちのメンバーはまだこないのか?」
「まだこない」
「……そうか」
「その内来る」
「うん。そうだな」
リュートは会話を打ち切った。それから待つこと数分。
バン!
扉が突如開け放たれる。視線が集まる。コスモが瞳にピースサインをあてがって言い放った。
「おっはー! きらりんぶいっ! これでみんなのハートをキャッ……チ……」
コスモは盛大に滑った。硬直するコスモの腕を引きずってクゥが玄咲の前まで歩み寄り、ピースサインをする。
「おっはー」
「あ、うん。おはよう」
ネタが90年代だと思ったが玄咲は何も口にしない。何はともあれこれでダンジョンアタックのメンバーが全員集まった。
「それではルールの再確認を行おうか」
経験豊富なケビンがその場を仕切る。真央と心亜は敵対していながらも当然という顔でその主導を受け入れた。
「ダンジョンアタックはダンジョン攻略の速度を競う競技だ。交互にダンジョンを攻略し帰還するまでのタイムを競う。要するにただのタイムアタックだ。同時に潜るルールと交互に潜るルールがあるが、ラグナロク学園ではボスを倒す能力も見るため基本後者を採用している。また、公平性を期すため後半組は別室で待機する。前半組の情報を遮断するためだな。
以上のルールでダンジョンアタックを行う。再確認となるが規則のため一応語らせてもらった。質問はあるか」
ダンジョンアタックの進行を務めるケビンがギルドハウスに集まった8人をぐるりと見渡す。玄咲、シャルナ、クゥ、コスモ、リュート、司、アカネ、マルタ。それが今回のダンジョンアタックの主役だ。誰も質問をしない。ケビンは最後に補足を行う。
「また、ダンジョンアタックは全校生徒に配信される。リュートくん、ちょっときてくれるか」
「はい」
リュートがケビンに近づく。ケビンは目を細めてリュートの端正な顔を見た。
「これを」
ケビンはリュートに中央にレンズのついた丸い物体を渡した。
「これは?」
「ケツにあるスイッチを押してくれ」
リュートは言われたとおりにした。丸い物体が浮遊しリュートを追尾するようになる。驚くリュートにケビンが解説する。
「それは配信機器。背後から君たちをストーキングしダンジョンアタックの様子を配信・録画する。恥ずかしい姿を晒さないように気を付けるんだ」
「はい。元からそのつもりです」
「いい返事だ。それでは早速始めよう。ダンジョンアタックの開始だ」
「はい!」
「つまらねぇ説明ばっかで待ちくたびれたぜ! それじゃ早速暴れてこうかぁ!」
「行きましょう。楽しみね」
「早く終わらせてカフェ行くの」
リュート、司、アカネ、マルタの4人が転移魔法陣に向かう。ケビンも続いて部屋を出た。そして真央と心亜も。玄咲たちもなんとなく立ち上がりその後に続こうとした。その玄咲に、
「あ、前半組のダンジョンアタックが終わるまで4人はここで待機しててね。アドバイスとか封じるため私は同席出来ないから心亜と外で配信見てる」
「えっ」
「それじゃね~」
真央が扉を閉める。玄咲はシャルナ、クゥ、コスモと密室に閉じ込められた。玄咲は3人を順に見た。全員、とんでもない美少女。これから玄咲は数時間3人と会話の間を繋がなければならない。
(……)
玄咲の額を冷たい汗が一筋伝う。