カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
【学園ギルド】
ざわ、ざわ。
「やべぇ、やべぇ……」
「――噂以上だ。光ヶ崎……」
巨大モニター前の生徒たちがざわついていた。スクリーンを埋め尽くした光。それが失せたあとの光景を目にして。
「ば、馬鹿な! あんな威力の魔法、3年の僕にだって放てないぞ……! この、高貴な僕にだって……!」
バナナのような奇抜な髪形をした3年の男子生徒鮫島光貴が唇を戦慄かせた。リュートの魔法は3年生にそのようなリアクションを引き出すだけの破壊力があった。上級生に比べたら決して強力とはいえないADで、ランク5のカードが素材カードの中では最高ランクのフュージョン・マジックでだ。リュートの体質と才覚、そして星魔法の特性が掛け合わさった結果だ。レベル79の鮫島光貴が慄く程の威力だった。
他にも驚いている生徒はたくさんいる。スクリーンに映し出されたジャイアント・アイアン・ゴーレムの凄絶な死体を山田太郎が震えながら指差す。
「……なん、だよ。あの最後の魔法は。反則だろ。反則だろ……」
その友人の田中勇太が頷き返す。
「ああ。最後の1発限りだが、1年であんな魔法を放てることが異常だ。3年だってああはいかねぇぞ。レベルやAD、カードの差を覆す、符闘会を目指せるだけの本物の才能だ……!」
他の生徒も似たりよったりの反応をしている。
「こりゃ勝負は決まったな。やっぱ七王霊家は格が違ーよ」
「ああ。炎条司。彼も凄かった。最後以外はずっと光ヶ崎よりも目立っていた。学園領の縁戚のマルタって子や、理事長の娘も安定して活躍していたし、前評判は伊達じゃないな」
「対戦相手は知らねぇ奴しかいねぇからよく分かんねぇんだよな……精霊神は禁止らしいし、まぁお手並み拝見だな」
「ははは! こりゃ勝負決まったな! 馬場さん、あいつの吠え面が見れますよ……!」
上級生から見てもリュートたちの実力は既にして並外れているらしい。キララは感嘆の息を吐く。
「はえー。やっぱ七王霊家って凄いんだねー」
「ふん……まぁリュートは強いからな。天之以外で俺が同学年で唯一負けた男だ」
「あの赤髮グラサンよぉ、マジで化け物なんだ。何回やっても勝てる気がしねぇ。つえーぜあいつはよぉ……」
狂夜とさとしが反応を返す。話し相手がいなかったからだろう。キララたちはなんとなくG組の4人で一所に集まっていた。
「ふーん、2人が素直に褒めるなんてよっぽどだねー」
「ね、キララちゃん。あの2人勝てるかな?」
「んー? 大丈夫っしょー。だって天之くんにシャルナちゃんがついてるんだよー? 負ける訳ないじゃん」
「――」
雫は目を丸くしたあと、選手控室の方角をチラリと見て言った。
「それもそうだね」
「真央……すまないね……」
2人をストーキングして真央の隣に座ったケビンが憐みの目を真央に向けた。真央にケビンを遠ざける様子は特にない。
「ん? 何で謝んの?」
「正直、彼らは強すぎた。アンフェアな戦いになるだろう。だから――」
「それはどうかにゃ。むしろ安心したよ。フェアな戦いになりそうだって」
「なに?」
「私が集めたこっちのメンバーもね」
「え? 真央後輩に土下座してメンバー集め頼んでませんでしたか?」
「……」
真央の笑みが凍る。だが刹那で切り替える。ケビンの憐みの視線を浴びながらも、不敵な笑みのまま続行した」
「私――の後輩が集めてきてくれたメンバーもね、そっちのメンバーに全然負けてないよ。みんな、化け物だよ」
「……天之。お前何やってんだ」
「えっ、精霊王……」
控室。ダンジョンアタックを終えたリュート達が目撃したのはテーブルに広げられた精霊王のカード。そして向かい合ってカードバトルする玄咲とシャルナの姿だった。クゥとコスモは脇で対戦をやや退屈そうに眺めている。
「……」
「……」
温度差が束の間の沈黙を生む。リュートは机の上に広がったカードゲームを指さして玄咲に尋ねた。
「……まさか君、僕たちが戦っている間ずっとカードゲームして遊んでいたのか?」
「……」
玄咲が大事に握った白眼の天使龍のカードが手の陰に隠れてキラキラを失う。応える声はボリュームが控えめだ。
「……仕方、ないだろ。間を、繋ぐためだ」
「? 暇を潰すなら作戦会議なりウォーミングアップするなりしてもっと有効に時間を使えばいいだろ。何故カードゲームをしている。分からない。僕には全く理由が――」
ポン。
肩を叩かれたリュートが後ろを振り返る。
神楽坂アカネが憐みに満ちた瞳で首を振った。
「それ以上はやめなさいリュート。人には人それぞれやり方があるの。彼にはカードゲームが必要だった。それでいいじゃない」
「しかし、カードゲームで遊ぶなんて子供みたいな真似――」
ガタッ!
「……さ、玄咲! 次、私たちの、番だね!」
シャルナが立ち上がり手を叩いた。そして玄咲の手を引きリュート達の脇を抜けながら笑顔で、
「私に、付き合ってくれて、ありがとね。さ、ダンジョンアタック、行って、勝ってこよ」
「ッ!?」
玄咲の心臓がシャルナの献身に跳ねる。エモーショナルの乱風が吹き荒れる。クゥとコスモも立ち上がり後に続く。
「思ったより待たされたね。こっちはさっさと終わらせようか」
「コスモの本気を見せてあげます。時短スルーなんてありえませんからね」
「クゥ、コスモちゃん……! よし、行こう!」
4人は意気揚々と控室を出た。
「天之玄咲。配信機器忘れてるんだが」
「……」
玄咲は無言でリュートから配信機器を受け取り、ゴチャゴチャ弄りながら転移室に向かった。残念なものを見る目が背中に4通り突き刺さった。
「あいつ、結構抜けてるよな」
「……そうだな」
玄咲も親しい人間からはその本性がバレつつある。
【31階層】
「……さて、戦いだ。いつまでも浮ついてはいられない。気持ちを切り替えて本気で行くぞ!」
「うん!」
「ゲンサック、いつも思うけど切り替え方凄いよね……」
「コスモの本気、見せてあげます! 電波でGOです!」
「行くぞ!」
4人は転移直後から駆け出した。作戦は事前に決めてある。4人のダンジョンアタックが始まる。