カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

248 / 278
第19話 選手交代

【学園ギルド】

 

 ざわ、ざわ。

 

「やべぇ、やべぇ……」

 

「――噂以上だ。光ヶ崎……」

 

 巨大モニター前の生徒たちがざわついていた。スクリーンを埋め尽くした光。それが失せたあとの光景を目にして。

 

「ば、馬鹿な! あんな威力の魔法、3年の僕にだって放てないぞ……! この、高貴な僕にだって……!」

 

 バナナのような奇抜な髪形をした3年の男子生徒鮫島光貴が唇を戦慄かせた。リュートの魔法は3年生にそのようなリアクションを引き出すだけの破壊力があった。上級生に比べたら決して強力とはいえないADで、ランク5のカードが素材カードの中では最高ランクのフュージョン・マジックでだ。リュートの体質と才覚、そして星魔法の特性が掛け合わさった結果だ。レベル79の鮫島光貴が慄く程の威力だった。

 

 他にも驚いている生徒はたくさんいる。スクリーンに映し出されたジャイアント・アイアン・ゴーレムの凄絶な死体を山田太郎が震えながら指差す。

 

「……なん、だよ。あの最後の魔法は。反則だろ。反則だろ……」

 

 その友人の田中勇太が頷き返す。

 

「ああ。最後の1発限りだが、1年であんな魔法を放てることが異常だ。3年だってああはいかねぇぞ。レベルやAD、カードの差を覆す、符闘会を目指せるだけの本物の才能だ……!」

 

 他の生徒も似たりよったりの反応をしている。

 

「こりゃ勝負は決まったな。やっぱ七王霊家は格が違ーよ」

 

「ああ。炎条司。彼も凄かった。最後以外はずっと光ヶ崎よりも目立っていた。学園領の縁戚のマルタって子や、理事長の娘も安定して活躍していたし、前評判は伊達じゃないな」

 

「対戦相手は知らねぇ奴しかいねぇからよく分かんねぇんだよな……精霊神は禁止らしいし、まぁお手並み拝見だな」

 

「ははは! こりゃ勝負決まったな! 馬場さん、あいつの吠え面が見れますよ……!」

 

 上級生から見てもリュートたちの実力は既にして並外れているらしい。キララは感嘆の息を吐く。

 

「はえー。やっぱ七王霊家って凄いんだねー」

 

「ふん……まぁリュートは強いからな。天之以外で俺が同学年で唯一負けた男だ」

 

「あの赤髮グラサンよぉ、マジで化け物なんだ。何回やっても勝てる気がしねぇ。つえーぜあいつはよぉ……」

 

 狂夜とさとしが反応を返す。話し相手がいなかったからだろう。キララたちはなんとなくG組の4人で一所に集まっていた。

 

「ふーん、2人が素直に褒めるなんてよっぽどだねー」

 

「ね、キララちゃん。あの2人勝てるかな?」

 

「んー? 大丈夫っしょー。だって天之くんにシャルナちゃんがついてるんだよー? 負ける訳ないじゃん」

 

「――」

 

 雫は目を丸くしたあと、選手控室の方角をチラリと見て言った。

 

「それもそうだね」

 

 

 

 

 

 

「真央……すまないね……」

 

 2人をストーキングして真央の隣に座ったケビンが憐みの目を真央に向けた。真央にケビンを遠ざける様子は特にない。

 

「ん? 何で謝んの?」

 

「正直、彼らは強すぎた。アンフェアな戦いになるだろう。だから――」

 

「それはどうかにゃ。むしろ安心したよ。フェアな戦いになりそうだって」

 

「なに?」

 

「私が集めたこっちのメンバーもね」

 

「え? 真央後輩に土下座してメンバー集め頼んでませんでしたか?」

 

「……」

 

 真央の笑みが凍る。だが刹那で切り替える。ケビンの憐みの視線を浴びながらも、不敵な笑みのまま続行した」

 

「私――の後輩が集めてきてくれたメンバーもね、そっちのメンバーに全然負けてないよ。みんな、化け物だよ」

 

 

 

 

 

 

 

「……天之。お前何やってんだ」

 

「えっ、精霊王……」

 

 控室。ダンジョンアタックを終えたリュート達が目撃したのはテーブルに広げられた精霊王のカード。そして向かい合ってカードバトルする玄咲とシャルナの姿だった。クゥとコスモは脇で対戦をやや退屈そうに眺めている。

 

「……」

 

「……」

 

 温度差が束の間の沈黙を生む。リュートは机の上に広がったカードゲームを指さして玄咲に尋ねた。

 

「……まさか君、僕たちが戦っている間ずっとカードゲームして遊んでいたのか?」

 

「……」

 

 玄咲が大事に握った白眼の天使龍のカードが手の陰に隠れてキラキラを失う。応える声はボリュームが控えめだ。

 

「……仕方、ないだろ。間を、繋ぐためだ」

 

「? 暇を潰すなら作戦会議なりウォーミングアップするなりしてもっと有効に時間を使えばいいだろ。何故カードゲームをしている。分からない。僕には全く理由が――」

 

 ポン。

 

 肩を叩かれたリュートが後ろを振り返る。

 

 神楽坂アカネが憐みに満ちた瞳で首を振った。

 

「それ以上はやめなさいリュート。人には人それぞれやり方があるの。彼にはカードゲームが必要だった。それでいいじゃない」

 

「しかし、カードゲームで遊ぶなんて子供みたいな真似――」

 

 ガタッ!

 

「……さ、玄咲! 次、私たちの、番だね!」

 

 シャルナが立ち上がり手を叩いた。そして玄咲の手を引きリュート達の脇を抜けながら笑顔で、

 

「私に、付き合ってくれて、ありがとね。さ、ダンジョンアタック、行って、勝ってこよ」

 

「ッ!?」

 

 玄咲の心臓がシャルナの献身に跳ねる。エモーショナルの乱風が吹き荒れる。クゥとコスモも立ち上がり後に続く。

 

「思ったより待たされたね。こっちはさっさと終わらせようか」

 

「コスモの本気を見せてあげます。時短スルーなんてありえませんからね」

 

「クゥ、コスモちゃん……! よし、行こう!」

 

 4人は意気揚々と控室を出た。

 

「天之玄咲。配信機器忘れてるんだが」

 

「……」

 

 玄咲は無言でリュートから配信機器を受け取り、ゴチャゴチャ弄りながら転移室に向かった。残念なものを見る目が背中に4通り突き刺さった。

 

「あいつ、結構抜けてるよな」

 

「……そうだな」

 

 玄咲も親しい人間からはその本性がバレつつある。

 

 

 

 

 

【31階層】

 

「……さて、戦いだ。いつまでも浮ついてはいられない。気持ちを切り替えて本気で行くぞ!」

 

「うん!」

 

「ゲンサック、いつも思うけど切り替え方凄いよね……」

 

「コスモの本気、見せてあげます! 電波でGOです!」

 

「行くぞ!」

 

 4人は転移直後から駆け出した。作戦は事前に決めてある。4人のダンジョンアタックが始まる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。